The Golden Barge
The Golden Barge (1979)

 副題としてついている"A Fable"(寓話)というのが、この本の内容を一番正確に表しているのではと思います。故黒丸尚氏の『黒曜石のなかの不死鳥』の解説でも触れているので、ここであまり詳しく説明する必要はないと思います。この時期の作品では他に"The Hungry Dreamers"というのもあったそうですが、「原稿はラドブローク・グローブ(ロンドン西部、ノッティング・ヒルにある通りの名前)の地下室のネズミに食べられたのだと信じている」と"Earl Aubec"(1993)の序文で書いています。ちなみにこれはファンタジーではなく、リアリズムだそうです。

 母親と暮らす少年がある日、川を下っていく"Golden Barge"(黄金の御座船)を見かけ、母親の制止も聞かずその船を追いかけていくという物語です。さまざまな都市や人々と出会い、悲劇的なラストを迎えます。見たものに憧れ、母親を捨てて外の世界に出ていくという冒頭部分は聖杯伝説「パルチヴァール」を思い出すし(気がつくのに半年かかった)、結末もどこかで読んだような気がするなど、物語全体がどこかで見たなあというもので満ちています。物語の展開はまどろっこしい部分が目につき、文章もエルリックあたりに比べるとまだまだ。よくできたアマチュアの作品といった感じです。それでも後の作品につながるものがたくさん見られます。わかりやすところだと、作中にMeliboneという都市の名やMr Slormといったキャラクターの名前を見出すことができます。

 この物語の舞台となる世界は不思議です。出てくる都市は中世風でファンタジー的でありながら、武器としては拳銃が出てきてしまうのです。それ以外のテクノロジーは出てこないので、なおさら?が浮かんできてしまいます。また途中、別の世界に紛れ込む場面があるのですが、ここを読むとファンタジーというよりはSFに近いものを感じます。

 作品そのものは"Earl Aubec"(1993)に収録されています。

 なお、"Gloriana"(1978)の冒頭にこの作品の主人公、Jephraim Tallowの名前を見出すことができます。

イラストレーション:
The Golden Barge, 1979, Savoy, Paperback, UK


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