オリジナル版「ストームブリンガー」

 1982年から1985年にかけて、WINGS(新書館)に翻訳が掲載されたエルリック・サーガはThe Stealer Of SoulsStormbringerを底本にしています。『ストームブリンガー』の訳者あとがきで「すこし話の細部がちがうのですが」という部分があるのですが、さほど気にしていませんでした。その後、1965年に出版されたStormbringerの原書を手に入れ、中を見て章立てが違うということに驚いきました。WINGSのバックナンバーを買って内容をチェックすると、物語の流れが予想以上に違うことが判明してしまいました。Death Is No Obstacleでムアコックは「12シリング6ペンスという値段で販売するには長すぎると編集者から指摘され、カットした」と説明しています。参考として、1963年に別の出版社から出版されたThe Stealer Of Soulsの値段は15シリングで、カットなしで出版されたと述べています。

以下に初版の構成を整理してみました。これはだいたいの物語の流れで、オリジナル版にあってDAW版にない部分もあります。

初版 (1965年) DAW版 (1977年)
なし プロローグ
第1部
Coming of Chaos
プロローグ なし
17P〜26P
27P〜40P
41P〜58P
59P〜72P
73P〜85P
6 ※1 86P〜93P4行目
110P17行目〜117P
118P〜131P
132P〜142P12行目
10 142P14行目〜151P
11 152P〜159P
12※2 160P〜167P14行目
168P11行目〜169P8行目
203P17行目〜207P17行目
13※3 212P〜220P1行目
181P15行目〜184P5行目
第2部
Sad Giant's Shield
1 ※4 227P15行目〜228P4行目
222P9行目〜222P16行目
2 ※5 228P12行目〜229P5行目
197P1行目〜199P6行目
231P11行目〜234P8行目
235P14行目〜235P18行目
237P〜248P
249P〜260P
第3部
Doomed Lord Passing
263P〜269P
270P〜282P
283P〜296P
297P〜315P
316P〜324P
325P〜332P

※1 このあと三人はムーングラムと出会い、ニオの港に向かった。ここで二手に分かれ、ディヴィム・スロームはザロジニアとともカーラークへ向かい、エルリックとムーングラムは南方諸国へ行くことになった。
※2 意識のないムーングラムを連れて、カルガンの船に引き上げられたエルリックは南方軍の船がほとんど残っていないことに気がついた。やがて〈混沌〉の船と遭遇する。
※3 海上で漂っている三人はセピリズに助けられ、〈紫の街の島〉へ向かう。
※4 〈紫の街の島〉の〈夕べの城砦〉にラッキールが現れる。エルリックはセピリズからラッキールが予言された4人目の男であることが告げられる。
※5 エルリック一行はカーラークに向かい、ザロジニアと再会する。そして、モルダガの城に向かう。

 大きな相違点は第2の書「黒の剣の兄弟」1がカットされていることと〈水の精霊の王〉ストラーシァが一切出てこないこと。ストラーシァがエルリックへの援助、助言はすべてセピリズが行っています。物語の流れとしてはジャグリーン・ラーンとの対決にすべてやぶれ、打つ手なしとなってから〈混沌の楯〉を取りにいくという形になっています。
 細部を比較するには雑誌に掲載されたものと比較する必要があります。雑誌が入手できたら、もう少し細かく比較してみたいと思います。

 このチェックをしている時、ハヤカワ文庫版130ページ3〜4行目「今までに何度、おぬしを助けるのを断ったか、エルリックよ」の後の文章が抜けていることに気がついてしまいました。このあとには以下の文章が入ります。

"Because," Sepiriz said, "he already had some knowledge that you were to fight in the future."
「それはアリオッチが、いつかそなたと敵味方になることをすでに知っていたからだ」セピリズが言った。
井辻朱美訳「WINGS 1984年11月号」より引用。

この後の11行目にある「誓いを立てるまえにこのことを知らせされていても」という台詞の「このこと」とは上の文章を差しています。

なお細部確認のために使用した英文は以下の通りです。
オリジナル版は1967年、アメリカのLanser Booksから出版されたものを使用。
DAW版は1985年、アメリカのBerkley Bookから出版されたものを使用。
また、参考として1992年にイギリスのOrion Booksから出版されたもの(現時点での最新版)を参照しました。


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