9月27日
 ナンシー・スプリンガー「炎の天使」(ハヤカワ文庫FT)を読み終えました。スプリンガーと言えば、80年代半ばに翻訳された〈アイルの書〉でよく知られていますが、この作品は異世界ファンタジーではなく、現代ロサンジェルスを舞台に、人間になった天使(ロックがキーになっている部分を含めて「ベルリン・天使の街」だ)とかれに関わる人間との物語。道具立てだけを見ると(バイセクシャルの天使、狂信的な宗教の価値観から逃れる女性など)作風ががらっと変わったように見えますが、その本質は何ら変わっていません。〈アイルの書〉と同じものを求める人には合わない作品だと思いますが、スプリンガー=異世界ファンタジーという図式に捕らわれてこの本を敬遠しているのだとしたら、それほどもったいないことはないと思います。

 ロックについてはちょっと苦言を言っておこう。原書の刊行は1994年。アメリカの音楽シーンはシアトルを中心としたオルタナティヴ系へ移り、一部の大物を除き、ヘヴィメタル系バンドはレコード会社との契約を相次いで切られていました。ヴォロスがやろうとしている音楽はヘヴィメタルとなっているのだけど、ロサンジェルスの音楽シーンの雰囲気は1980年代半ばのLAメタル全盛時代を彷彿させ、90年代に刊行された本としてはちょっとリアリティに欠けると思いました。


9月26日
 SF者オフに昼の部から参加しました。今までファンダムに関わることもなく、SFを読む人とほとんど接したことがないためちょっと不安でした。わたしのホームページを見ている人が予想以上に多く(いつもありがとうございます)、思ったよりすんなりと話ができたと思います。ここで話し合われたSFが弱っているかということについて。日本SFの実状に明るくないのですが、ごく一般の人にも広く読まれて、コアなSFファンにも受け入れられる作品がないと感じています。近年、翻訳された海外SFもセンス・オヴ・ワンダーよりは人間ドラマとして方に重きをおいた作品が多く、個人的にはSF度は低いと感じています。(最近の作品だと『レッド・マーズ』はわたしの感覚だとSFじゃないのです)
 オークションではティム・パワーズ「奇人宮の宴」(ハヤカワ文庫SF)とジェイムズ・P・ブレイロック「夢の国」(創元推理文庫)を落札。わたしの提供した本は、すべて溝口さんが落札しました。
 参考までに会場で配られたアンケートで回答したオールタイムベスト5を上げておきます。(海外長編のみです)

『虎よ、虎よ」』アルフレッド・ベスター
『ヴァリス』フィリップ・K・ディック
『カエアンの聖衣』バリントン・J・ベイリー
『ブラッド・ミュージック』グレッグ・ベア
『ハイペリオン』ダン・シモンズ

   渋谷に移って夜の部に突入。人がさらに増えて、実際に話した人が少ないのは残念でした。ミステリはやっぱり苦手という話を延々としていました。(現代がリアリティを求めてしまうのと、頭が悪いので一緒に謎解きできないというのが楽しめない理由なんですが)天狗は2時間で追い出され、ルノアールの会議室で朝暮三文さんと大森望さんによるトーク。これは出版の現場を知る上でも興味深い内容でした。このあとはさらにカラオケに流れました。もうちょっとレパートリーを増やさないといかんなあ。洋楽はマイナー路線、J・ポップスは一切聴かない上に気に入った曲しか歌わないという状態なので難しいのですが。


9月23日
 「モンスターファームマニア」というゲーム攻略本を探しに本屋に出かけました。今年の初め、どこかでプログレとハードロック系のアルバムが細かく出てくる攻略本があるというのを読みました。最近になって実は知り合いが編集者だったというのが判明して、めでたくどの本なのかわかりました。本人によれば本当に3000枚以上のCDを試したそうです。わたしはこのゲームはやったことがありません(笑) PSを買ったら(たぶん年明けに購入する)部屋にあるCDを片っ端から試してモンスターを作ってみたいゲームであるのは言うまでもない。

 偶然、小谷真理「ファンタジーの冒険」(ちくま新書)という本を発見。早速、読んでみました。日本でファンタジーという言葉がゲームなどによって一般的になって久しいが、ファンタジーというのはどういう作品のことをいうのか。現代ファンタジーの原点としてヴィクトリア朝の妖精物語から1990年代の作品まで年代を追って考察したというのがこの本の内容です。荒俣宏『帝都物語』の評価はわたしと近いものを感じました。リアルタイムだとああ感じたのかなとも思いました。第二章「パルプとインクの物語」までは、すでに評価の定まった時代のせいか、わかりやすく手堅くまとまっていると思います。問題は第三章以降の1960年代以降を扱った部分で、残念ながらやや散らかっているという印象を受けました。その中でも第六章「J・ファンタジーの現在形」はまとまりがいい。(J・ポップからの造語だと思われるが、90年代になってから作品に対してなんでもJをつければいいというものではない)
 残念なのは、翻訳のある作品と未訳の作品がきちんと区別されていないこと。新書ということでページ数に制限があり巻末に参考資料という形でまとめられないのなら、わずらわしくなったとしても翻訳のある作品は本文中で出版社は明記すべきだと思います。
 とはいうものの、税抜き600円で児童文学ではないファンタジーを総括した本が読めるというのは素晴らしい。


9月18日
 アレクサンドル・グリーン「深紅の帆」(フレア文庫)を読み終えました。「さまよえるオランダ人」の話に代表される海を題材にした幻想小説は好きです。もともと海が持っている幻想性と絡み合った作品が多いと思います。この作品は海(物語冒頭、父親が船乗りだったという程度)というより船を媒体としているのですが、現実と幻想の世界はあっという間に混ざってしまったという感じを受けました。

 古書ディックの目録販売で山尾悠子「オットーと魔術師」(集英社文庫コバルト)を入手しました。


9月17日
ヤン・ブレキアン「ケルト神話の世界」(中央公論社)を読み終えました。今残っているケルト神話から正体の分かっていない先住民やキリスト教の思想を取り除いて、ケルト人の精神世界の再現を試みている本です。それによってケルト人社会も見えていくるというのがおもしろい。また、著者がブルターニュ出身と言うこともあり、日本ではあまり紹介されていないブルターニュ半島のケルト系の伝説を読めるのが、この本の一番の利点かもしれません。

 15日の晩、ネスケが使えないというトラブル発生。個人的に一番出てほしくなかったトラブルでした。結局、その対応に今日まで追われていました。途中で原因は分かったので、そのソフトをはずして完了。
 EL&P「Live at the Isle of Wight Festival」を購入。今の耳で聴くと、テンポの揺れがかなり気になってつらいのは仕方ないのでしょう。EL&Pを世間に知らしめた有名なライブが聞けただけで良かったと思うべきなのでしょう。あまり熱心なファンではないので(でも、キーボード・マガジンに連載していたキース・エマーソンの自叙伝はある)、録音が存在するということも知らなかったのです。


9月14日
 最近、渋谷に出るときは捜し物があることもあって必ず、まんだらけに寄っています。まだ、迷っているので買っていないのだけど、ここにはジョン・クルート編「SF百科辞典」(タイトルはうろ覚え)が5200円で売っています。大きい本なので、買う前に置く場所を決めて置く必要がありそうです。


9月12日
 「80年代SF傑作選」上(ハヤカワ文庫SF)を読み終えました。アンソロジーということを考慮して、今回は上巻のみ取り上げます。まず、ギブスンとルーシャス・シェパードの作品は個人短篇集で読んでいました。90年代もおしまいにさしかかった今読むと、未来世界を描きつつも、作品の中で提示されている問題点やテーマは書かれた時代を反映したものとなっていると感じました。評判はいろいろ聞いていたものの、やっと読むことのできた「わが愛しき娘たちよ」がやはり後味が悪いです。個人的なお気に入りは「みっともないニワトリ」(この手の話は好きなんだな)と「マース・ホテルから生中継で」(ここで取り上げられている音楽はほとんど知らないけど、個人的な想いを描いた作品は好きだ)。90年代に長編で名声を築く作家が数名いるのも、短篇を中心に発達してきたSFならではなのでしょうか?


9月11日
 地元の古本屋でジョン・ウィンダム「さなぎ」とシオドア・スタージョン「人間以上」(以上、ハヤカワ文庫SF)を購入。個人的に食指が伸びるような本はなかったけど、創元推理文庫の品切れ文庫がいろいろ100円コーナーに落ちていました。

9月10日
ここしばらく夜寝る前に「80年代SF傑作選」(ハヤカワ文庫SF)を読んでいます。アンソロジーなので、いろんな作家の傾向の違う作品が読めるので飽きなくていいです(笑) 感想の方はまとめて書こうと思っています。上巻の巻末の「80年代主要SF各賞受賞作リスト」を眺めながら、やっぱりわたしは80年代のSFで育った人間であることをしみじみ実感しました。SFにやられたと思ったのはウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」とグレッグ・ベア「ブラッド・ミュージック」の2冊。
 思えば金のなかった学生時代、開館したばかりの図書館に昔の文庫を期待することはできず(移動図書館があったのでゼロではなかったのですが。現に「砂の惑星」は映画のスチールではない石ノ森章太郎表紙の本でした。知らなかったので本を見たときにはびっくりしました)、借りることのできたのは文庫の新刊のみ。適当なガイドブックがなかったため、もっぱら新刊ばかり読んでいました。
 キム・スタンリー・ロビンスンの紹介文を読んで、「レッド・マーズ」でわたしが感じたSFなんだけど、SFじゃないように感じた理由がはっきりしました。


9月8日
 「レッド・マーズ」で気力を使い果たしたのか、最近は少し前から懸案であるCristpher priest「Prestige」を読んでいます。本当は先月出たリンダ・ナガタの新刊が読みたいんだけど。
 来月の新刊ではなんといってもソーニャ・ブルー外伝となっているナンシー・A・コリンズ「ブラック・ローズ」だ。最近、売れた作品はコンスタントに翻訳が出てくれるのでとてもありがたい。あとは漫画だけど「クリスタル・ドラゴン」16巻。ここ数日、円高傾向なのでもう少し様子を見てから、しばらく我慢していた洋書を買おうと思っています。


9月1日

 朝暮三文「ダブ(エ)ストン街道」(講談社)を読み終えました。自分の目の前から突然消えてしまった恋人の行方を探し求めるのは一通の手紙。その手紙に書かれていたダブ(エ)ストン。なんとかたどり着いたものの、恋人の行方はわからず、旅路の途中で知り合った郵便屋とともに首都であるドサイをめざすが。この作品はデビュー作で、破綻なくまとまっていますが、主人公の失った恋人への思いというのがどうも希薄なのが気になりました。そのあたりがもう少し書き込まれていれば、ラストシーンで感動できたのかもしれません。


活字の海を渡ろうに戻る

ホームページに戻る