今年、わたし自身の転機となった本はテリー・ビッスン「世界の果てまで何マイル」(ハヤカワ文庫SF)である。この本は邦訳されるファンタジーがエンターテイメント狙いのシリーズものばかりとなって、読むものを失ったわたしに一つの道を示してくれた。SFマガジン1995年11月号の特集記事を手がかりに読んでいくと、現代文学畑にたどり着いていた。キーワードはマジック・リアリズム。それまでガルシア・マルケスを読んだことのないわたしは、この時初めて知った言葉だった。(ラテンアメリカの作家は決して読んでいないわけではないが)
今年読んだ本で印象に残ったのは以下の通り。(上から読んだ順序で、一部、昨年12月の本が含まれている)
今年は英語で読むことを最優先にしたので、読みたいものは読んでいるが数は少ないような気もする。SFに関しては話題作は読んでいないに等しいからなあ。(「アインシュタイン交点」とかさ)「ヴァート」と「銃、ときどき音楽」はともに処女作で、どちらもドラッグが公認された世界を舞台にしているのが興味を引くところ。「魔法」はラストのつめの甘さがなけばもっと評価できたのにと思う。それを差し引いても素晴らしい物語です。「死の姉妹」は大変バランスのよいアンソロジーで、ホラーをあまり読まないわたしでも楽しめました。もっともこのあとJ・A・エフィンジャーにはまるというおまけつき。「ゴルゴン−幻獣夜話」は「パラディスの秘録」(角川ホラー文庫)以来久々の翻訳となるのですが、現代小説に足を突っ込んでいる部分もあるといえ、バラエティに富んで楽しめました。「ナイチンゲールは夜歌う」はタイトル作が美しいけど、やっぱりタイム・パラドックスを扱った「時の偉業」でしょう。「緑の少女」はストーリー・テラーが綿密に書き込んだ作品だけに、読みごたえがある。
個人的に期待した割に今一つと思った作品はキム・スタンリー・ロビンスン「永遠なる天空の調」(創元SF文庫)とタニス・リー「黄金の魔獣」(ハヤカワ文庫FT)。「永遠なる天空の調」は書き手のヴィジョンがこちら側に伝わってこないもどかしさを感じ、「黄金の魔獣」は最近の少女漫画的という部分でしょうか。
未訳の、割と近年の作品ということでは、Lisa Goldstein "Tourist"とMichael Moorcock "Blood: A Southern Fantasy"の2冊を上げておきます。どちらもマジック・リアリズム的な作品です。
来年こそ、ジョン・クロウリーの「リトル・ビッグ」(国書刊行会)と「エジプト」(早川書房)が読めることを願っています。
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