中学校教師による覆面座談会


 【参加者】
S:司会、N:現役中学校教師、
F、U、H:元中学校教師


競争させる


S:今日は行事について、学校内で携わっていらっしゃる先生方にいろいろとお話いただくわけですが、まず、合唱祭についていかがですか?


U:H市にきて初めての経験でした。燃える教員とそうでない教員がいてね。わたしなどは指導もしないし、生徒も乗らないし、苦痛以外の何者でもなかったですよ。


N:教員もそうだけど、生徒も燃えるのと燃えないのがいて、燃えない子はクラスのはみ出し者になっている。昔担当したクラスは燃えるクラスで、子どもたちが自主的に練習をやるわけだけど、帰りたい子も何人か居る。自由練習の時、帰宅した生徒を呼び出したりして、怒るわけ、燃える生徒が。こういう事、よくあるのよね。


S:泣き出したりして・・・


F:学校の授業がつまらなくて元気ない子でも、行事で救われる子っているよね。走るのが速くて運動会に張り切るとか、歌わせると上手かったり・・・自由にやらせればいいのに、「制度」化してしまうと苦痛になる。


N:一等賞、二等賞なんて、やらなければ苦痛にはならないと思う。みんなで何かを楽しむっていうんじゃなくて、「一等をとりたい」ということが全てになる。学校教育って競争なんだよね。


H:そして、一等とれって仕向けるのは教員?


F:いや、小学校時代から真面目にひたすら取り組まされてきたから、やる気が無くても手抜きができない。
U:やりたくない生徒の顔を見ていて、それでも放課後残して練習させるのって、なんなんだろうって思ったよ。


F:昭和30年頃でしたっけ、「新幹線教育」って言葉があったんです。各駅停車じゃなく、"詰め込め速く"→ノルマ達成(賞獲得)。


S:成績表を廊下に張り出すの、やりませんでした?


N:最近はやっていません。個人名を出す事はしないけど、クラス単位などの集団で評価するのだって、源は同じことですよね。


H:B区では八六年頃やっていました。


F:美化コンクールというのもありました。評価採点するのは美化委員の生徒たちなんだけれど、教師間の軋轢が影響して、全然公平じゃないの。


軍隊のよう


S:体育祭については、どうですか?


N:救われる子はいるけれど、競争しないで楽しめればいいと思うのよ。結局、日本の競争社会の凝縮した姿が学校行事なのですね。


S:体育祭の行進が軍隊みたいで嫌だと、私の息子が反発したことがありました。


N:やってない学校もある。I中学校では、「軍隊みたいだからやめよう」ということになった。


S:その意見がすんなり通ったのは、すごい事ですね。


U:朝礼も服従させるイベントなんだって坂本龍一さんが書いていたなあ。あの人くらいになると、わかるんだね。


S:彼の母上は草の実の会員です(エヘン!)


N:服従させて競争させながら一体感を煽る・・・軍隊と同じ。


S:他の行事、修学旅行とか。昔と違って、最近は子どもに選択の自由を与えていますよね、表面的には。


いい子にしてたら、自由服で行かせてあげるとか。ほとんどの生徒はがんばるんだけど、少数の子が反発するの。

すると、連帯責任にされて生徒間で監視体制が出来てくる。


N:私の学年では、連帯責任とか物で釣るやり方はおかしいなど話し合ったけどね。今の学校はひどくて、発言するのもばかばかしい。


F:学年会が現場のスタッフのミーティングだから、昔はそこで決まることは全部通ってたね。


S:もっと現場の声が尊重されなければならないですよね。


U:校長と教師の見解が一致していないのは、「日の丸・君が代」だけだった。校長が泣いて頼んでたけどオーケーしなかった。


N:今は命令口調になっている。東京都が主幹制度を導入しようとしているけれど、もういるよね、そういう役目をはたしてるヤツが。


F:昔は他教室が授業してても、早く終わったクラスの子は外で遊んでいたって誰も何も言わなかった。


N:今、1分早く生徒を出したら、大変!


S:なんで!?


F:他教室に迷惑をかけるから、時間が来るまで収容しておけってこと。少年院みたいね


N:私の場合、授業中課題の済んだ生徒にトランプを許可した件について、匿名の手紙に書かれたので、特に気をつけている。誰でも不適格教員にされてしまう。


子どもは出世の道具


H:行事が多くなってきて、ゆとりがなくなってきたね。子どもを暇にしたら何をしでかすかわからないから、全部管理するんだってハッキリ言われる。


U:子どもはイライラして荒れだすね。


H:子どもの暇を管理する事が目的で、子どもの楽しみとか幸せなんて念頭にないんだ。


N:それもあるけど、もっと対外的なものだと思う。


F:地域から良く思われたいという気持ちがある。子どもを非行から守る,という地域と親の願いを利用して管理する。子どもだけで遊びを創ったりして、自分で考え行動しながら育っていく場が、今の日本には非常に少ない。クラブ活動で賞を取って、ずらっと並べたりしてるよね。


N:最近は、そんなもんじゃないよ。校長がね、子どもたちに「地域から(学校が)認められるように、皆さん、がんばってください。」って朝礼で言うんだから。子どもを非行から守る気持ちが少しでもあれば、いい方なのよ。校長は、"私"が良く思われる為に子どもを利用する。


S:子どもには、わかっているんでしょうか?


F:もちろん。だから不登校になったりする。本当に繊細な子は学校に足が向かなくなるもの。教育は、見せるものになっているのよね。


S:教育研究校っていうのありますよね


U:私のいた学校で、テレビを授業に取り入れる研究発表があったんだけど、これをやると必ず出世する人がいるのね。ああ、あの発表はあの人の出世のためにやったんだということが解かる。


S:教師の一番の出世はどのポスト?


N:教育センター。みんな行きたがるね。


U:何年先に誰がどのポストに納まるか、決まってるんだ。教頭もね。たとえばH市の場合、OBが仕切る研修会があって、論文の書き方なんかを教わる。


S:予備校ですか?


N:そこへ行かないと実力があっても出世しない。


F:正月に実力者の家へ集まって記念写真を撮るの。それが入学証書。一般常識では、優秀な人材が出世すると思えるけど、作文能力もないのが校長になってるのを見てて、疑問に思った。


U:ある意味"優秀"なんじゃない?どのルートに乗って動けば出世できるってわかってるんだから。


F:校長になった知り合いの人が、200万円でなれたって言うのを聞きました。


U:たぶん、本当のことだとおもうよ。ぼくも聞いたことある。とくにH市には元校長の大親分がいてね。


F:ヤクザの世界ね。


制服ってなに


S:それでは、最後に進路指導に関して疑問があるのですが。1年の時から自分で進路を決められるように、様々な視点から指導が入りますね。その基本軸のひとつ
に自立と自律があって、「自分を甘やかすな」と言われるわけです。そして、3年になると具体的に受験対策として、服装や身だしなみについて指導されはじめる。茶髪、ルーズソックス、ピアス、などについて「そんな格好してたら、面接には受からないよ。世間はそんなにあまくないからね。」と教師にいわれるんです。だけどそれは生徒に対して「本音とたてまえを使い分けろ」って言ってるわけですよね。ほとんどの先生は生徒のためだと思って注意しているんだろうけど、おかしいと思うんです。表面つくろって合格した生徒に良くやった!と。
 この矛盾の根源に制服問題があって、先生も、没個性の制服によるストレスが茶髪やピアスに顕れている
とわかっていながら、最後にこんな形で生徒を裏切っている。


F:それが、根津公子教諭が起してる裁判の本質なのよね。子どもたちに本音とたてまえを使い分けてはいけないと教えた。


N:制服についてI中学校では、無くす方向で検討していた時期があった。けれど中心的に動いてた人が移動してしまったので、できなくなってしまったけど、結構自由な格好してたわね。


F:逆に貧乏なうちの子は、制服がありがたかったってこともある。標準服なんだから着る着ないは自由のはずだけど。


S:制度上は自由なはずだけど、自分だけ自由服着て行っていじめられても学校側は助けてはくれない。


F:遠足の時とかは自由にさせるよね。


N:それならどうして普段は自由にしないの?って思う。


S:賄賂が業者から流れてる?


F:そう思うよ。


N:制服だってカバンだって指定するってことは、全部ひとつの物に揃えるってことでしょ。その秩序からはみだせばいじめられる、ということを先生は良かれと思って言っている。すごく犯罪的な事よね。やはり、一体感を持たせるためだと思う。


国家総動員制


S:文化祭ってあります?


N:展示会ね。あれ、ホントにつまんない。


F:国民文化祭って知ってる?


S:なんですか、それ?
あっちこっちで写真展やったり、お祭りやったり、『みなさん参加しましょう、参加しない人は非国民よ』みたいな感じ。


N:流行ってるね。文部化科学省がいってる、伝統文化うんぬんに関連して、地域のお祭りや行事に小中学校の生徒を率先して参加させようというのが始まってる。うちの中学校でも動員されるわけ。地域と学校が一緒になって一体になってやろうとしている、つまり「伝統文化」、「日本人」がキーワードとなってすべて行われているんだと思う。


U:国家総動員だね。


エリート養成


N:話は変わるけど、品川区で学区自由を始めてね。学校の校門か玄関に張り紙をするようになったんだって。『この学校に来るべき生徒は○人で、実際には△人来てる』。当然人気のない学校は、生徒数がマイナスになるでしょ。だから、『ノルマ達成できてない学校はどうしたら人気があがるか、次の教育目標を考えて書き出すように』って張り出されるんだって。
 それから、ピア・ティーチャーって知ってる?私たちがとられている駐車場代で雇っているんだけど、一つのクラスの授業を二分してやるの。数学と英語だけね。出来る事出来ない子に分けるわけ。教室は余ってるからね。


H:能力別ね。


N:職員会議にもかけないで決めちゃって、保護者にも一片の通知が届くだけよ。


U:効率よく授業が出来ると思われがちだけど、そうじゃない。出来る子の方は成績が伸びていくけど、出来の悪い子ばかりの方はもっと悪くなる。私は経験してわかるけど、『オレと同じぐらい出来ないヤツがこんなにいるんだ』って安心しちゃって勉強しないから落ちるばっかり。ますます荒れるんだよ。


N:1〜2%のエリートと99パーセントの愚鈍な国民を作り出そうとしてるんだね。人気のある学校にする為には、良い上級校への進学率を上げなきゃならないから、学区自由で希望してきた子に対して『君は、成績が思わしくないから他所の学校に行きなさい』なんてことを平然と言い出すだろうし、障害児が来ると効率が悪いから敬遠されるだろうね。

 初めて聞く用語あり、ウソのような本当の話あり、背筋が寒くなりそうな未来予想ありで、話はつきませんでした。今回、お忙しい中、本当に良い機会を頂けました事を参加者の皆様に感謝申し上げます。
 先日、小森陽一東大教授の話を聞く機会があったのですが、「戦後学校教育の場から始まった民主主義主義が、今学校現場から崩されようとしている。」とおっしゃっていました。四人の先生方のお話を伺いながら、そのスピードの速さを感じずにはいられませんでした。

(草の実 2002年3・4月号収録)