高校教師  自己申告書って何?              

 初めてC先生にお目にかかったのは、根津さん裁判傍聴後の公園内でした。辺りはもう暗くなっていたのに加えて、ご職業柄、色が黒い(失礼!)方なので、ほとんど顔を覚えていませんでした。

ご多忙中会っていただけることとなり、約束の場所で待っている間、『人物の特定』ができるかどうか不安でしたが、現れた途端「あっ!この人だ。」 とわかりました。スポーティーな上下(トレーナーとトレーニングパンツ)に身を包み、精悍なお顔に人懐っこい笑顔を浮かべて・・・ なんとも 存在感のある方でした。

定時制高校を皮切りに35年間の教師生活、いろんなことがありました。「なぜ、教師に?」の質問に、「母の影響です。」 母上は、「学校にいるうちは平等だけど、社会に出たら絶対に平等じゃないのよ。公務員を除いてね。」とおっしゃったのだそうです。(この親にしてこの子あり) うら若き20代の頃に定時制勤務でしたから、子育てが大変! 近所の方の支援を受けながらの二重保育で乗り切ったそうです。全日制に転勤し、現在の高校には9年目となります。

ご多分に漏れず日の丸・君が代問題では、「強制反対・日の丸・君が代Tシャツ」を着て卒業式前日の準備に臨み、生徒たちにインパクトを与えたとか・・・。

さて、今日のメインテーマは【自己申告書】です。

自己申告書って、何? 教師の教育目標、目標達成の具体的方法、その成果などを"自分で書いて提出する"書類のこと。学期毎にださせられるということで、3年前から導入されました。

 まず、校長から用紙1枚とコピー(下書き用)を一学期の始めに渡されます。"一般"の教師は、このコピー用紙のほうに自分で書いて校長に提出します。その後、管理職による授業監察があり、それに基づく面接が待っています。この面接では、表現の仕方や言葉遣い、過激な文章などにチェックを入れられ、言われたとおり書き直してOKがでたら本物の用紙に記入し再提出するわけです。

これにより、特賞やボーナス査定(近々)が決まるのですが、判定結果と理由の開示は一切なく、この事がC先生の逆鱗に触れたのですね。
 

 さあ、C先生はどうしたか?

この制度が導入された年、1年生を担任していました。その生徒たちの卒業を見守りたかった為に、2年間は黙って提出したのでした。

何故かと言うと、自己申告書の裏には『異動希望記入欄』があり、異動したくない旨を記入しないと、管理側の思うままに異動させられかねないからです。しかし、ころんでも只では起きないC先生は、最初から本物の用紙にボールペンで記入して提出しました。

校長:「こういう書き方をすると先生のためにならないよ。」

C先生:「自己申告だから間違っていようと、不充分だろうとかまわない。」

『自由意見欄』 には、教育行政の悪口をさんざん書きました。授業監察も「教室に来ないでください。もし来たら生徒たちに、なぜ校長先生たちが監察にきたかを全部話しますよ。」と"脅し"、来させない事に成功(!)しました。

 ところが3年目の今年、C先生は提出しませんでした。今までまがりなりにも出していたのに、どうして?と 校長は慌てます。

校長:「今年だけ、どうして? 去年も一昨年も書いて"くださった"のに・・・?」

C先生:「もう、担任した生徒たちは卒業するから、あとはどこへ飛ばされようとかまわない。」

 授業監察予定表(職員室の中に張ってある)の自分の欄にははっきりバッテンを入れました。面接も話す事がないと言ったら、"提出しない事"について話そうと言われたとか。「 もう、どうでもいいからあなた方の好きにしてくれ!と言ったら、教頭がわざわざ職員室に来て、拉致するように校長室へ連行されました。異動希望はないけれど、異動させたいのはそっちのほうなんだから、勝手にやれば?って言ってやりました。」

 世間でレベルが低いと評価されている学校とか、荒れている学校などに異動するならかまわない、生身で生徒たちと取り組むことは楽しいから・・・とは、なんと頼もしいお言葉!

 他にも、定時制の頃の事や組合の話、混合名簿、生い立ち、そして今後の教育現場についてなど、本当に興味深い実体験とご意見を聞かせていただき、2時間にわたる逢瀬は終了となりました。今回書けなかった話は いずれまた。