高校教師 「ジェンダーに挑む!」の巻
                       
2003.6.18

これからの世の中はジェンダーフリー、男女共同参画社会です。

と言われてもそれほど簡単に人の意識は変わりません。

我が生活を省みれば、なんと無意識に男女差別をやってきたことか。

祖父母から両親へ、両親から子どもたちへと、なんの疑問ももたず刷り込まれてきたジェンダー。奥深いテーマです。
 
              

                  “育児”ってたいへん!

 私鉄P駅から繁華街を通り抜けて10分余り、歴史の古いP高校は自由な校風の学校です。

この学校に、高校時代から「都立高校の社会科の先生になる」と決め、その希望通りの人生を歩んでこられた幸せな教師がいます。

生徒たちに社会科を教える中で、ジェンダーについての認識を持たせようと努力されているZ先生です。

 彼自身、ジェンダーについて意識し始めたのは子育てを経験した時からだったといいます。 

子どもの頃は保守的な家庭に育ち、鉄棒ができなくて「男のくせに!」とできるまで父親から厳しく指導されたとか。
結婚しフルタイムで働くパートナーとの間に子どもができた時、どっちが育児休暇取るかで話し合った結果、父親である自分が取る事になりました。

公務員である教師のほうが取りやすい事が決め手となりました。

休んでいるうちに通信教育でいろんな勉強も出来るし・・・・と、早速資料を取り寄せたりして準備万端。
 ところがところが、育児+家事はそんなに簡単で単純なものではありませんでした。

勉強用の資料など開く暇もなく、バタバタと一日が過ぎてゆく・・・・・。
女性のやってきたこれらの仕事について、いかに認識不足であったかを思い知ったのでありました。
 
   

                     生徒の反応、親の反応 

 そんな貴重な体験を踏まえて、Z先生は生徒たちに「女性が社会進出していたとき、どういう問題がおこるか」という問題を提起しました。
ところが、生徒たちはあまり実感がないようなのです。

なぜかというと、生徒会は女性が多いし、現在校内での差別を感じていないから理解しにくいという事のようです。
 

 ある日Z先生は担任クラスで、「どうして家庭科の先生は女性が多いのかな?」と質問してみました。

すると、「だって、家庭科だもん。」という答え。

生徒自身が、疑問をもたずに"家庭科=女性(女子)"と思っているのです。

実社会に出ていないから、なかなか実感がともなわないのですね。

先生の試みは、「それでいいのかな?」と問いかけ、考えさせることから始まります。
 

 生徒たちの家庭内でジェンダーが再生産されていく実態もあります。
進路指導のための面接で、「家の子は女の子ですから短大で充分。」と言う保護者は結構いるとか。

この親も気付かぬうちにそのように育てられたのでしょう。
「ジェンダーは根深いですヨ。」とZ先生は言われます。

                 

                      歴史的にみると・・・・

 

 しかし最初から男性優位なわけじゃないらしいです。ここからはZ先生の専門分野。
 「教科書の中には歴史上の人物として男性の登場が多いけれど、女性の活躍もかなりある。

少しずつ女性も登場数が増えてきている。       歴史は男女が一緒に創ってきたものなのですよ。
卑弥呼の時代などは母系社会、中世あたりは男女平等。   武器を手にしたあたりから男性社会へ。
 たとえば狂言の世界の話で、鎌倉時代は男性がバカにされている話が、江戸になると女性に変わっていたり。話の内容は同じなのに巧妙に変化してきてます。

 こんな話もありますよ。男が浮気をするんですが、最後には女たちに懲らしめられて終わるという狂言が、江戸時代になると、女の側が妥協案をだして、一日交代で男を愛することで決着を見るとなってます。おもしろいでしょ。」
 

 本当に歴史って面白いものなんですね。生徒になった気分でした。

   

                     社会に目を転じてみれば・・・

 Z先生のパートナーも社会で日々ジェンダーと闘っているそうですが、言えばわかってくれることが多いとか。

それより"気付かずにやっている"事のほうが恐ろしいと言われます。
 Z先生曰く、「社会は女性差別であふれている。働くのに支障があるし、女性が働く環境が整っていない。

少子化対策で厚生省が、育児休業(男性の)取得率を10%にと言ってるけど、法律をつくらないと無理。外圧が必要。

たとえば、罰金を取るとか、育児休暇を取らせる会社は法人税を半分にするとか・・・・
掛け声だけではダメ、努力義務だけでもダメ。  企業は得になることしかやりませんからね。」
 

 男性も考えてみればかわいそうです。

"男"に生まれたばっかりに、仕事ができない = 男を否定される → 自殺、という道を歩まされる人もいます。
 

「わたしは、専業主婦を否定しているわけではありません。

女性たちが自分の生き方を自分の生きたいように選択できる社会を創りたい。

女性というだけで選択を狭められるのは問題です。

みんなで考えて、『男女平等社会』とか『男女参画社会』という言葉が死語になるよう、少しずつでも努力したいと思っています。」
 

 本当にその通りですね。
 

この高校は新年度から男女混合名簿になりました。

ジェンダーフリーとして、混合名簿にすれば解決することではありませんが、1ステップになるのではないでしょうか。

このことによって、ひとりひとりの意識を変えていくことが次なる課題でしょう。
 

                      2003.6.18  作成