住宅の品質確保と消費者が安心して良質な住宅を取得できるよう、消費者保護の目的で制定された「住宅品質確保促進法」。2000年4月施行の「瑕疵担保十年の義務化」に続いて、もう一つの柱である「住宅性能表示制度」が10月から施行となりました。その内容を紹介しましょう。

 

どんな制度なの?

 

消費者が住宅の性能を比べて安心して買えるようにすることを目的に設立された制度。

@住宅の性能(構造耐力など九項目)に共通のものさしを用意して、消費者が客観的に比較検討できるようにし、A第三者機関が設計・施工・完成段階に性能評価をして評価書を発行し、Bトラブルが生じた際は紛争処理機関が解決を図る事、などを定めたものです。

 

表示の9項目はどんな内容なの?

 

 性能表示されるのは次の九項目です。詳しくは別表を御参照下さい。

  1. 構造の安定  地震や風などの力が加わったときの建物全体の強さを表示。
  2. 火災時の安全  火災の早期発見のしやすさ、建物の燃えにくさを表示。
  3. 劣化の軽減  建物の劣化(木材の腐朽等)のしにくさを表示。
  4. 維持管理への配慮  給排水管とガス管の日常における点検・補修のしやすさを表示。
  5. 温熱環境  冷暖房時の省エネルギーの程度を表示。
  6. 空気環境  内装材のホルムアルデヒド放散量の少なさ及び換気措置を表示。
  7. 光・視環境  日照や採光を得る窓などの面積の多さを表示。
  8. 音環境  サッシュなどの遮音性能を表示。(この項目だけは選択性になっています)
  9. 高齢者への配慮  バリアフリーの程度を表示。

 

制度を利用するメリットは?

 

消費者にとって、次のようなメリットがあります。

・どの住宅にしようかと検討している段階で、客観的に住宅の性能水準に関する情報を得ることができる。したがって、住宅の相互比較が容易になるのはもちろん、同性能を条件に複数の業者から相見積もりを取り、適正価格を探ることができる。

・設計住宅性能評価書(写し)を契約書に添付すると、評価された性能を実現することが契約内容とみなされる。したがって、契約時に性能表示された水準の性能を持った住宅が実際に引き渡されることが明確になる。

・引き渡された住宅にトラブルが発生した場合、性能トラブルに限らず「裁判外紛争処理機関」を利用して、迅速な解決を図ることができる。

 ・最低の等級でも、建築基準法を満たしていることの証明になるため、安心感につながり、また将来売却するときには「評価書」ともなる。

 

必ずこの制度を使わなくてはいけないの?

 

 この制度は、「十年保証」とは違い、強制力を持たない任意制度です。利用するかどうかは、消費者や住宅業者に委ねられます。

 ただし、最初に図面段階での申請が必要なため、「建売住宅」「分譲マンション」などの物件は、制度を利用するかどうかは、業者の選択となります。注文住宅は、選択権は消費者にあります。

 

対象となる建物は?

 

 住宅性能表示制度は、建築基準法に適合している新築住宅であれば活用が可能です。戸建て住宅、マンション、アパートなどのほか、併用住宅も利用できます。併用住宅の場合は、住宅専用部分のほかに、構造耐力を支える柱などの共用部分も対象になります。

 

いつ申請すればいいの?

 

性能評価を受けるには、まず図面の段階での申請が必要になります。設計図書ができてから、請負契約の締結までの間に、申請者みずから住宅性能評価機関に申請します。

申請は、工務店などの住宅生産者でも、住宅を取得する消費者でもどちらでもかまいません。

 

住宅性能評価機関とは

 

 「日本住宅性能表示基準及び評価方法基準」に定められた表示基準を客観的に評価し、「住宅性能評価書」を交付する第三者機関のこと。建設省が指定します。現在、全国に六十四機関あります。

 

性能評価書とは

 

 設計時、住宅完成時の2回、住宅性能評価機関が交付します。

 設計段階では、申請で提出された設計図書をチェックして、「設計住宅性能評価書」を発行。さらに、一戸建て住宅の場合、基礎工事の段階、棟上げの段階、内装工事の段階、完成段階の4回にわたる検査を実施し、「建設住宅性能評価書」を発行します。

 発行価格は1戸あたり10万円程度で、住宅購入者の負担になります。

 建築基準法に定められた最低限の基準を満たしていれば、「住宅性能表示制度」の対象となるので、「評価」によるグレードを特に「高性能」としなくても、基準の性能を保持していると言う「評価」の効果は十分活用されます。

 また、完成段階の性能評価書「建設住宅性能評価書」は、建築基準法に基づく確認申請の必要な地域では、検査済証が発行されている住宅についてのみ発行されます。

 

紛争処理制度って何?

 

完成段階で性能評価され、「建設住宅性能評価書」が交付された住宅のみについてくる特典です。

 万が一、引き渡し後に評価住宅にトラブルが発生した場合、消費者は評価会社に相談できますが、それでも解決しない場合、全国に設置されている「紛争処理機関」(各都道府県の弁護士会が運営)に話を持ち込み、円滑・迅速で専門的な紛争処理を受けることができます。

 費用は1万円程度で、弁護士・建築士などの紛争処理委員が紛争解決のためのあっせん・調停・仲裁を行います。なお、性能に関する紛争だけでなく、契約に関するさまざまな紛トラブルも持ち込むことができます。

 

「評価」の差異があった場合は?

 

 「設計段階」より「完成段階」のほうが評価が低くなった場合、契約内容と違う住宅と言うことで、「契約内容通りのものに作り直す」ことが基本となります。

 ただし、請負契約の場合には、建築基準法に合致している範囲内であれば、施主との交渉で賠償金、金額の修正などで解決も可能です。

 

時間の経過に伴う「評価」の変化

 

評価書に記載された性能は、あくまでも引き渡し時点のもので、引き渡し後、何年か経って、その性能が低下しないことを保証するものではありません。消費者の方が誤解しないようにきちんと説明することが必要です。

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