第6回

ゆかりの東京駅で辰野金吾を見てきた

 

今年の夏は暑く、毎日3435度の日が続き腕に汗疹をつくりながら仕事をしてきたが、9月も中頃を過ぎると、秋色の風が心の中から身体に心地よい思いをさせてくれるようになってきます。この頃になると各方面にいろいろな展覧会が催されるようになる。

今年は先に女性の建築家の回顧展があり、今回は辰野金吾展が彼ゆかりの東京駅・北口で開かれました。

辰野金吾といえば日本の建築界の草分け的存在であり、西洋建築を得意としたことで知られています。そもそも彼が西洋建築を始めたきっかけは、明治政府が西洋建築を日本に取り入れるため、イギリスから若き建築家のジョサイア・コンドルを招いたことから始まるのです。

現在の東大建築科の前身である工部大学でコンドルに建築学を学んだことから西洋建築に興味を持ち、工部大学を首席で卒業した後、イギリスへ留学しています。

彼の代表作は、なんと言っても東京駅でしょう。そのほか旧日本銀行本店や旧日本生命九州支店など約200棟ほどの建築物を建てています。彼の特徴はレンガ造りではないでしょうか。赤レンガに白いラインを入れた独特の美しさが目を引きます。けれど彼はレンガ造りだけではなく木造やコンクリート造も手がけており、今も福井に残っているそうです。

彼には面白いエピソードが残っていますが、それは東京駅をつくるときのことです。ある人が東京駅を造るのに「コンクリートで建造したらどうでしょう」と持ちかけましたが、「こんなドロドロした物で建物なんか造れない」と言って、今のレンガ造りの東京駅が生まれたのだそうです。

最近は建築家の個展も開かれるようになりました。われわれが知らない建築家も掘り起こされて作品を紹介してもらいたいと辰野金吾展を見ながら思った次第です。

 (2002年)

 

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