第5回

建築からもっと人間国宝を

 

金木犀の香りが漂う頃に恒例の日本伝統工芸展がデパートで開かれるので行ってきました。各部門の優秀作には賞が与えられますが、今年は木竹工部門に珍しく奨励賞で、木工と竹工の2作品が選ばれていました。

毎回この作品展を見に行っているが、竹製品が賞に選ばれる事はあったが、木工品は選ばれる事がなかったので驚きです。

選ばれた木工品の製作者は40代の方でしたが、この方のお父さんが重要無形文化財保持者であることからも技術を受け継いでいるのではないかと思い、この賞を獲得できたのだと思いました。

毎回見るたびに思うのは、各部門には必ずと言ってよいほど、俗に言う人間国宝がいるということ。それに引き換え、建築関係には人間国宝は、私の知る限り宮大工に一人いるだけです。

日本の建築も大きく分ければ日本の伝統芸術のひとつと言っても過言ではありません。建築の分野に人間国宝が一人とはなんとお粗末なことか。これではいくらたっても建築に興味を持ってくれる人は増えません。

大工の技能も衰退するばかりです。墨つけはしない、刻みはしない、造作材は機械で加工する、となれば、手でする事が何もない。ましてやボードを張ってクロスを張るのでは大工の技術を見せる場がほとんどないのと同じです。

日本の国がもっと建築に目を向けて、木造大工など建築に携わる人が文化功労者または人間国宝になるよう人を選ばなければ、木造住宅の発展はおぼつかないのではないかと、伝統工芸展を見るたびに思うのです。

 

2002年)

 

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