第9回

白金の鰹節屋

 

 

 バブルがはじけて不況の嵐が吹き荒れ、建築界にもそのあおりを受けて、仕事は減ってきているのにもかかわらず、残してほしい建物を次々と取り壊されて、いつしか更地になりびっくりする事があります。

 ここ白金には、いまだ新しい文化の波に洗い流される事もなく、しっかりと根をはって建っている3階建てのお店があります。

 大正末期に建てられたと言う事です。関東大震災の後、丈夫な家と言う事で、今の3階建てに建て替えたと言っておられました。

 東大の教授が学生を連れて来て綿密に調べて図面を書いてゆき、また他の新聞社や雑誌社の記者も取材に来たそうです。看板を見ると、上の字の書き方は右から左へ、下は左から右へと書かれています。ここにも時代の流れを感じさせます。

1992年)

 

TOP    BACK