第5回

山の手の三軒長屋――港区三田の木造3階建て

 

 長屋、今では半ば死語になった感じのある言葉で、若い人には理解しにくい響きの言葉かもしれません。

 しかし寄席やラジオ、テレビ等で長屋の花見等で耳にしたことがあると思います。その長屋がまだまだ残っているのです。長屋と言いますとすぐ下町を思い出すことでしょう。

 ところが今回取材に行った所は、下町ではなく山の手で、慶応大学の近くの木造3階建ての三軒長屋です。

 下町でも3階建ての長屋は見つけるのには相当苦労する事と思います。この山の手に毅然として建っている三軒長屋は、大正の末に建てられ既に70年近くになるのに、今なお人々の生活を支えており、コミュニケーションの場として活躍しています。

 今住んでいる人は戦後30年頃にここに来たそうですが住み心地が良く、豪華なマンションには住みたいと思った事はないと話していました。

 1日遅く行ったために、目指す建物が無くなっている事がありますが、この長屋は当分姿を消すことはないでしょう。

 昨年の9月、明治末から大正にかけて造られた木造洋館が取り壊しになり、荻窪の町の歴史が消えていくと嘆いていました。古い建物は代がわりすると持ち堪えられなくなり、企業などに売却すれば、建物は取り壊されてしまい、良い家屋が少なくなりはなはだ残念です。

 長屋が一日でも長く残っていることを念じている次第です。

1992年)

 

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