第3回

木々のシンフォニー――甦った奏楽堂

 今回は趣をかえて、木造建築で、今から百年前に建てられ移築復元された奏楽堂に行ってきました。

 上野公園の一角に新装となった奏楽堂は、お世辞にも綺麗とは言いがたく、隣に都美術館があり、板張りにペンキ仕上げであるからでしょう。

 しかし、創建当時の材料をできるだけ使い、老朽化がひどい所は、その個所だけを取り替えるようにして復元されたのです。

 冷暖房の技術もなく、音響学的な専門分野の人もいず、このような建物が木造で演奏会を主として建てた我々の先輩の技術と腕の確かさには感心します。

 上野の森に復元され、一旦は犬山市の明治村に移転が内定したのですが、音楽関係、建築家、そして地元の人々、全国の人々から奏楽堂は上野に残すべきだとの声が持ち上がり、話し合いの結果、上野に落ち着いたのです。

 旧都美術館に決まり、移築費用を台東区が引きうけることで見事甦ったのです。永遠に奏楽堂は鳴り響くことでしょう。

1992年) 

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