第2回 漆喰と木の調和――文明楼 麻布の閑静な住宅街の一角に大正時代に建てられた木造3階建ての西洋館があるというのを耳にしたので訪ねてみました。 建物のある位置は、西麻布から天現寺へ抜ける大通りからちょっと入り込んだ所にあり、高層建築物が建ち並ぶなかに、ひっそりとたたずんでいました。 そもそもこの建築物は、外国に永く生活しておられた船会社の幹部の方が、大正 12年7月に建てたもので、設計をなされたのは、文化学院の創立者、西村伊作です。この建物がなぜ今注目を浴びているのか、それは大正ロマンがこの館の中に漂っているからだと言われているからで、古き良き時代の名残を今に伝えているからでしょう。 暫く空き家になっていたそうですが、空き家にしておくのはもったいないと、中堅デザイナーや建築家、画家ら 40〜50人が集まり金を出し合って、この建物を借りて会員制クラブをつくり、この館の名前を文明楼と名付けています。会員たちは、安らぎの空間をつくり、人生や夢を語り合っているそうです。木の持つ柔らかさと温もり、漆喰と木の調和。現代ばやりのプレハブなどにはみられない良さがあり、ここに来て語り合うと何故か落ち着くと言われます。 ( 1992年)
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