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花街芸者の検番所――入母屋に唐破風の玄関

 東京港区芝浦に間もなく姿を消すと言われる建物がある、と聞いたので出かけてみる事にした。

 入母屋に大きな唐破風の立派な玄関のこの建物は、昭和のはじめ、花街の芸者の検番として建てられ、当時をしのばせる手の込み入った造りが随所に見られる。

 2階には75畳の広間と30畳ほどの舞台があり、芸者が十分稽古ができるようになっており、今でも時折、催しが開かれている。

 私が最初に行った時はイベントが開かれており、見学はできませんでした。

 都が戦時中にこの建物を借り上げ、東京港に船の出入りが激しくなるにつれ、物資の運搬する人手が必要となり、宿泊所として現在に至っております。

 今まだ数人の方が宿泊していて、故郷へ帰られたら建て替える予定という事です。老朽化が進んでいるからと言わず、少しずつ修理をして後世に残してほしい建物のひとつです。

 建物に携わる者の一人として、切に願わずにはいられない思いです。

1998年)

 

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