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ギリシャ神殿を思わせる柱――不忍池近くの木造3階建て

 4月の末、朝から良く晴れ上がって気持ちの良い日に、上野不忍池の近く、根津神社へと向かいました。おりしも神社では、つつじ祭りが開かれ、人々で混雑していました。

 不忍池に向かう途中に、大正の初め頃に建てられた古いアパートがありました。名前も曙ホームズとなかなかしゃれており、左官屋さんのコテ書きになっている建物を見ながら歩を進めると、目の前にギリシャ神殿の柱を思わせるような木造3階建ての家屋がすっくと建っていました。今では周りとは、異様な雰囲気を漂わせています。

 大正の末から昭和のはじめに建てられたこの建物、村上さんという方が香水屋として建てられ、近所に住む武藤さんという大工さんが手がけたと言われています。

 このあたり道路の拡張などで、周りが変わりつつあり、同様な建物が2、3軒ありましたが、次々と取り壊され、1軒のみが残ったそうです。

 周りが変わりゆくのを、大変嘆いていた当の主人は、「この家だけは、いつまでも残しておきたい」と言っておられ、取り壊された同じような家屋を非常に残念がっていました。

1997年)

 

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