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古都奈良の正倉院

 正倉院の外溝が昨年4月から一般公開されており、昨年の秋に奈良へ行った日は雨降りで観光客も稀で、寺院を見学するには最適でした。

 雨に煙る寺院の木の間隠れに見える屋根瓦や破風、そして反り返った屋根を見ると心の鼓動が激しくなるようでした。正倉院とはもともと正倉と言われ、寺の貴重品を仕舞っておく倉庫を指し、各寺に建てられており、奈良一帯にあった地域を総じて正倉院というそうです。

 幾多あった正倉も戦乱で焼失してしまい、奇跡的とも言える東大寺の正倉だけが生き残り、今日その姿を私たちの目にとどめているのです。

 正確な建立時は分からず、約1300年ぐらいは経ったろうということです。

 南倉と北倉は校倉造りで、一説には後で校倉造りの中倉が増設されたのではないかということです。

 正面から見る正倉は堂々としており、1300年前も前に建てられたとは思えない程で、我々の先人達の腕の冴えもさる事ながら、物の保存のためにこれほどの建造物を造られたのには感心するばかりでした。

1994年)

 

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