お染久松 (12 月25日号)歌舞伎や浄瑠璃で演じられる「お染久松色読版」と、今年流行している新型インフルエンザ。まったくかけ離れている二つの言葉、実は深い関係があるんです。 油屋の娘・お染が丁稚の久松と心中した実際の事件は、冒頭の「色読版」以外にも「野崎村」など多くの脚本を生み、悲劇的な最期をむかえる道ならぬ恋の代名詞となりました。 時代は下り、明治 23年。日本で初めて大々的に流行したインフルエンザは当時の人たちに「お染風邪」と呼ばれました。お染が久松に惚れたように「すぐに感染する」という謎かけから名づけられたと考えられます。そこで、当時の人たちは「お染が入って来ないよう」に「久松留守」や、中には露骨に「お染御免」と書いたおふだを軒先に張りつけることが流行したそうです。 一方「野崎村」の脚本では、久松の婚約者「お光」が自ら身を引いて、お染と久松が心中することはなくなる「人情物」となっています。現代になぞらえると、お光はワクチンの一種でしょうか。皆さんもワクチン接種を忘れずに。
2 種類の奨学金制度(10 月25日号)家庭の事情で、進学資金が用意できない学生がお金を借りる「奨学金制度」。 07年度末で奨学金の返還を3ヵ月以上滞納していた人は約21万人で、滞納額は約2253億円。このうち、約1万3000人(総額約132億8000万円)が、住所不明となって、回収が不能になっています。奨学金は、返還義務がある「貸与型」と返還義務のない「給付型」の 2種類がありますが、夏の選挙で各政党が給付型の奨学金を増やそうとマニフェストの中で表明していました。奨学金で学校を卒業し、自立した成人の義務として何年かかっても返したお金が次の学生を生む、と考える「貸与型派」と、卒業と同時に多額の借金(奨学金)を背負うことを考えてしまい、進学をあきらめてしまう貧困家庭の学生が多くなる、と考える「給付型派」と意見は様々です。 弱者救済の社会を目指す姿勢は大切でもっともですが、弱者が強くなって社会をリードするには時間がかかる。強者が社会をリードする形を一概に退けるのは危険ではないでしょうか。
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