時短は時代遅れ?

1225日号)

賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)があらゆる職種で横行――こんな事実が、だんだん明らかになってきた。過重労働による過労死や過労自殺が増え、社会問題化しているのはご存じの通り。2003年度、一般会社員の年間労働時間は2016時間(もちろんサービス残業は別途)に達する。

「まずは、労働時間を短縮することが必要なのだろうな」と思っていたら、どうやら違うらしい。専門家の考えでは、「年間労働1800時間」を目標に労働時間短縮に取り組んでいる現在の政策は、時代遅れなのだそうだ。

「働き方の多様化が進展する中で、全労働者一律の目標を掲げる時短は時宜にあわない」――厚生労働大臣の諮問機関・労働政策審議会が1217日、こんな意見書を大臣に出した。では、これからはどうすべきかというと、「時間でなく成果によって評価される仕事が拡大」してるから、「多様な働き方に対応し、事業所ごとに労働時間や休日などを設定することが適当」だという。つまり企業ごとに労働時間も休日も勝手に設定してもOKってこと?

将来、アスベスト被ばくによる死亡が増えるという予測がされてるけど、過労死・過労自殺の急激な増加はもっと近いうちに起こりそうだな、こりゃ。

 

 

生活不活発病

125日号)

1123日付朝日新聞によると、中越地震の避難所で、「生活不活発病」という病気がお年寄りを中心に広がりつつあるという。

こんな病気だ。「生活が不活発になると、頭や心まで含めた全身の働きが低下する。そのため『動きにくい』『疲れやすい』状態になり、生活がさらに不活発となる『悪循環』になっていく。『使わない機能は落ちる』のは常識だが、意識的に『悪循環』をとめないと、どんどん進行して改善は難しくなる」。

ふだんの生活の中で、次のような事例に思い当たる人はいないだろうか。例えば…。「日課のウォーキングをサボっていたら、体重が増加。ますます面倒になってしまい、やめてしまった」「部屋の一角にモノが積んだままの状態。片付けようと思いながら、つい面倒くさくてそのままにしていたら、一角が肥大化し、ますます手付かずに」など。その通り、「ものぐさ」と呼ばれる現象だ。

「生活不活発病」と、「ものぐさの恒常化」は、もちろん別物だ。しかし症状的にはよく似てるんだな、これが。

「今の生活の不活発さを認識し、日常生活を意識的に活発化する」のが、生活不活発病への対処法だそうだが、これ「ものぐさ」改善にもじゅうぶん応用できる方法である。ぜひお試しを。

 

 

秋の園遊会で

1115日号)

秋の園遊会で、天皇と米長邦雄・東京都教育委員の間でこんなやりとりがあり、話題になっている。

天皇「教育委員のお仕事ご苦労さまです」。米長「日本中の学校で国旗を揚げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」。天皇「やはり強制になるということではないことが望ましいですね」。米長「…もう、もちろんそう、本当にすばらしいお言葉をいただきありがとうございました」

以上の会話から次のようなことが推測できる。@日本中は大げさにしても、教育委員会はやっぱり、国旗掲揚と国歌斉唱を強制しようとしているのみたいだ。A昨年、都教育委は国旗掲揚・国歌斉唱を徹底するよう都立学校に通達を出し、この春の卒業式などでこれに従わなかった教職員248人に対し、戒告などの懲戒処分をおこなった。天皇は、たぶんこの事実を知っており、しかも教育委員会のやりかたを良くないと思っている。

「日の丸・君が代・天皇」といえば、3点セットである。その当事者である天皇自身が、「強制はよくない」旨の発言をしたのだ。不本意に思った人もきっといるだろうね。

米長氏の突発的な発言から始まった偶発事とはいえ、天皇のナマの意見(しかもまっとうなツッコミ)が聞け、面白かった。

 

 

関心が低下してる

115日号)

「自衛隊のイラク撤退」を条件に日本人が人質になったことは、香田さんを含めて何度かある。が、殺されたのは今回が初めてだ。

イラク戦争をはじめるにあたり、当初から「大量破壊兵器」の存在を疑問視する人もいたが、米国政府はうやむやにしていた。この9月にパウエル国務長官が「大量破壊兵器がなかったこと」を公式に認めたのは、米国にとって初めてのことである。

サマワに駐留する自衛隊。今までにも何回か宿営地周辺が攻撃されたことはあった。しかし、実際に宿営地内を爆撃されたのは今回が初めてであり、「非戦闘地域」という政府答弁はますます根拠をうしなった。

人質事件・大量破壊兵器の存在・自衛隊のイラク派兵。3つとも以前はもっと、マスコミも私たち市民も関心や興味を持っていたような気がする。ところが、今回は起こったことの重要度と反比例して関心はあきらかに低下している。ひょっとして、飽きちゃった?

マスコミは、報道するにあたり「事の重大さ」よりも「新しいか」「刺激的か」「受けるか」といったポイントを重要視する。私たち自身も、「世の中の動き」を、「理性・論理」より「感覚・情緒」でとらえる。そんな情報の需要・供給関係ができているとしたら、まずいよなあ。

 

 

ツキノワグマ

1025日号)

奥山から下ってくると里山に入る。里山をさらに下ると、やっと人里に着く。昔は、そんな風景が当たり前だったという。

人間たちは、昼間は里山エリアに足を踏み入れて、農作業・柴刈り・炭焼きなどの仕事をこなし、夜になると人里へ帰っていく。クマたち野生動物は、昼間は奥山を生息エリアとし、夜になると里山へ出かけて果物を食べたりする。そんなふうに、里山を緩衝地帯(または共有スペース)として利用し、共存してきた。

時は移る。やがて人が手を加えなくなった里山は、里山として機能しなくなり、奥山の一部になってしまった。つまり緩衝地帯は消失し、人と野生動物の生息エリアが一挙に隣り合わせになってしまったというわけ。

いま、日本列島のほうぼうでクマと人間が異常接近遭遇してお互いにパニックを起こし、人間を襲ったり、クマを殺したりという、くまった事件が頻発している。今年は、酷暑や台風の影響でクマの食料となるブナなどの木の実が少ない。そのため食料を求めて人里までおりてきてしまったらしい。

緩衝地帯たる里山を復活すること。この異常接近を回避するにはそれしかないのではないかしら。それとも、どこかの国がやってるみたいに、邪魔者は片っ端から駆除する?

 

 

年齢

1015日号)

自分の本当の年齢をズバリ言い当てられると、男女を問わず、ほとんどの人が不快に思うんです。「エーッ、私って(オレって)、そんなに老けて見えるのかよ!」と予想外のできごとに驚き、ガッカリし、言い当てた相手を逆恨みするんだ。間違いない!

博報堂生活総合研究所が1876歳の男女約400人を対象に調査した結果、年齢が増すにつれて、本当の年齢と実感年齢(自分ではこれぐらいと思っている年齢)との差が広がる傾向にあることがわかった。お察しの通り、実感年齢のほうが若いわけだが、どれぐらい差があるかというと。3040歳代で76歳。50代以上だと111歳というから、十二支で、およそ一回りも若いと感じている人が大勢いるってことだ。ちょっと図々しいっすね。

もうひとつこんなデータも。文部科学省の運動能力調査によると、4079歳の中高年層では「体力年齢」が実際の年齢よりも若い人の割合が増え、50代前半の男性では40%もいるという。

人間の若さ(年齢に対する老化度)を測る尺度は、外見・身体機能・精神など、いくつかある。博報堂の調査は、「見てくれ」を想定しているんだろうし、文科省のそれはずばり「身体機能」だ。

さて、あなたは、どの尺度がいちばん重要だと思う?

 

TOP    BACK