弱者たたき

625日号)

65日付の朝日新聞で、辛淑玉氏が、「大衆の怒りや憎悪が、社会的強者である政府や大企業などにではなく、なぜか立場の弱い人たちに向けられる現象が目立っている」と書いている。具体的には、次のような事柄だ。

北朝鮮による拉致被害者の家族。イラク人質事件の被害者家族。熊本でホテル宿泊を拒否されたハンセン病回復者たち。これらの人たちは、最初、社会的弱者として認知され、同情の対象となる。ところが彼ら・彼女らが自らの意見を主張しだすと、「大衆」は寄ってたかって弱者をつぶしにかかる。

「大衆」の一人一人をみれば、社会的には弱い立場の人が大半だろう。ではなぜ同じ弱者同士なのに「イジメ」に走るのか。いくつかの理由が思いつく。ひとつは、「弱者たち」が少数派だということだ。なぜか少数派に対しては、自らが「お上」になったかのようにふるまってしまうんですねえ、「大衆」は。2つ目は、「他者に対する想像力」が極端に落ち込んでいるのではないかということ。まだあるだろうけど、後は皆さんで考えてください。

権力者が力をふるわずとも、弱者同士でつぶし合って,ますますみんなそろって弱者になっていく図式。社会的強者の方々は「世話ねえな」って、ほくそ笑んでいるんじゃないかな。

 

 

次に問われているのは

615日号)

三菱自動車がしてきたのはこんなことだった。96年、欠陥があることが社内で分かったが、リコールは金がかかるため「ヤミ改修」で対応することを決める。00年、別の欠陥を隠蔽するための「クレーム隠し」が発覚。ただし、96年に分かった欠陥は発覚しなかった。会社は「これ以上隠していることはない」と嘘をつき、さらに隠蔽工作が発覚するのを恐れて「ヤミ改修」自体もやめる。以後、欠陥は消費者に知らされないままとなり、死亡事故をはじめ、欠陥に起因する事故が次々に起きる。

いま三菱自動車は、消費者の信頼をまったく失い、「会社自体が存亡の危機」との報道もある。しかし自動車メーカーとして絶対やってはならないことをやってしまったのだ。消費者が三菱に対して「ノー」と言うのは当然だろう。

欠陥があるのがわかっているのに、与党は「年金改革法」が成立させた。衆議院では法案の通過直後に、与党幹部が年金未納・未加入を発表。法律が成立した後には、法案の前提となるデータが違っているのを隠蔽していたことが明らかになった。

そして参院選。今度、問われているのは有権者だろう。「欠陥商品」を押し付ける相手に対して「ノー」と言うのか。それともいつも通り「寛大な心」で許してあげるのかしら。

 

 

17年ゼミ

525日号)

オリンピックが開かれるのは4年に一回。ふだんはずっと寝ているが、その年にだけ起き出してくる警察官が、マンガの中には存在する。が、セミの世界にはさらに上手を行く奴らもいるのだ。その名は17年ゼミ。米国東部に生息するこの昆虫は、生まれるとずっと地中で暮らしているが、17年目の夏、いっせいに地上に現れて成虫となり、生殖して死んでいく。

17年ゼミの特徴は第一に、どの個体も体内に時計が内蔵されているかのようにちょうど17年目に成虫となること。第二にいちどに発生する数が並外れて大量なことだ。

2004年、その17年ゼミが羽化する年を迎えた。その数およそ50億匹。

17年ゼミの生態の謎を、科学者はこう推測している。@17年という時間は、捕食者(セミを食べる動物)の寿命より長いため、発生のサイクルを感づかれず、狙い食いされにくい。Aいっせいにあまりにも大量に発生するので、捕食者が食べることのできる量よりはるかに多く、逃げ切れる仲間が必ずでてくる。

17年ゼミのライフサイクルの秘密を知っている生物は、地球上でたぶん人間だけだろう。さらに、米国ではこのセミの大量発生にあわせて、さまざまなセミ料理を楽しむという。ってことは17年ゼミの天敵は人間か?

 

 

未納・未加入

55日号)

テレビの某ニュースキャスターが、自らの国民年金未納を理由に番組の出演を自粛している。どうも、この人は「未納問題」の何が「問題」か、よく分かっていないらしい。だからこんな過剰とも思える対応をとったんだろうね。

国会議員の国民年金未納・未加入をめぐっては、マスコミが連日報道を繰り返しているが、いま問題にすべき「未納・未加入」と、そうでないものを区別しないまま、情報をたれ流しているように見える。議員と関係がないときの年金空白期間は、確かに未納・未加入には違いないが、今回の騒動とは別の次元の話である。

いま問題にすべきなのは「国会議員在職期間で、国民年金の加入が義務となって以降の未加入や未納」なのだ。

現在、国民年金はどんどん空洞化が進み、未納率は4割にもなる。今回の年金改革論議でもそのことは重要な課題になっている。なのに法律をつくったり、順守する立場にある国会議員が、こんなにもたくさん空洞化に加担していたという事実。たとえて言えば、「税金から給料をもらって増税のための法律をつくっている人が、自らは脱税していた」からこそ、責任を問われているのだ。

さらに、与党の連中は、法案成立のため、情報開示時期を操作したりして。ズルすぎるね。

 

 

議員年金

415日号)

国会議員の年金廃止が取りざたされている。正確には「国会議員互助年金」という名前のこの制度。どんな内容か、ちょっと見てみよう。

@10年間加入していれば、年金受給資格が得られる。国民年金に比べて25倍もお得である。A在職期間が受給最低条件の10年だとすると、保険料は1266万円だが、その後もらえる年金額は年間412万円。つまり3年間でペイしてしまう計算だ。これまたお得。B3年以上在職して10年未満で退職した(議員でなくなった)場合、払った保険料の約8割が戻ってくる。

いかがかな。私たちが入っている年金から見ると、なんともうらやましくなる制度である。なぜこんなことが可能なのか。その秘密は財源にある。年金額の約70%は税金から支払われているのだ。

「議員年金廃止」に反対する元国会議員(年金をもらっている人)の反対理由は次のようなものが多い。「確かに他の年金よりは多いよ。でも議員時代の絡みで冠婚葬祭などつきあいでの出費も多いんだからさあ」。つまり「交際費がかかる」と言いたいらしい。

私たちの多くが年金問題を「生存権」の問題としてとらえているのに、「交際費」の心配をする余裕があるなんて。やっぱりうらやましい制度だよね。

TOP    BACK