偏差値

925日号)

「偏差値」という言葉を聞くと、ドキッとする方も多いだろう。とくに受験を控えたお子さんを持つ方は、なおさらだ。文部省が行っている「偏差値」教育とは、簡単に言えば、学力による人間のランクづけのこと。いろいろな面で評価すべき人間を、学力という非常に狭い価値観だけで優劣をつけようというものだ。今の子供達がいろいろな場面でバクハツするのも分かる気がする。

この秋、早ければ10月から、住宅品質確保法のもう一つの柱、「住宅性能表示制度」が施行となる。この制度は、耐久性、省エネ性、採光性など、9つの性能について、第三者にもはっきり分かるように住宅をランクづけするというものだ。大手住宅メーカーは、早くも住宅性能表示制度で高ランクの家を次々に売り出してくるという。

しかし、ちょっと考えてみたい。ひとつひとつの性能は、確かにランクで表わすことも可能だろう。が、ランクで全体的に高得点をとることが本当に総合的に「住みやすさ」「心地よさ」につながるのだろうか。

この制度を否定するつもりはない。でも、性能表示制度では表示できない部分にだって、「人が住む」家としての価値もあるのではないかなあ。「性能表示」って結局、住宅に偏差値を導入することなのだから。

 

 

4年に一度のお楽しみ

915日号)

 いよいよ9月15日から4年に一度のお楽しみ、シドニーオリンピックが始まった。オーストラリアは、日本とさほど時差がないので、テレビ観戦は比較的楽だろうが、見過ぎにはご注意を。

各マスコミでは、早くからメダルの数の「皮算用」に熱心だ。しかし、選手たちには「無責任な外野の声など気にするな」と言ってやりたい。国だの故郷だの、余計なものを背負わず、晴れの舞台でのびのびとプレーできれば十分なのだから。

などと言いつつ、注目はやっぱり女子マラソン。高橋尚子をはじめとする日本勢がどれだけ頑張れるか、楽しみだ。事務局のK君は、高橋尚子と同じ高校の出身。しかも、学年一つ違いということで、「絶対、優勝しかないですよ」と張り切っている。水泳も、女性陣は期待できそうだ。

水泳と言えば、先日、茨城・大洗でおこなわれた全分会活動者会議で、こんなことがあった。2日目の朝、ある参加者の方が浮かない顔をしている。わけを聞いてみると、前の晩、仲間数人とホテルの前の海岸で素っ裸で泳いでいて、ホテルの浴衣の帯とパンツを海に流され、なくしてしまったのだとか。しかし、この方、分散会報告では、気分を変えて、立派に重責を果たしてくれた。この立ち直りの速さを、五輪代表にも期待したい。

 

 

大工さんの甲子園

95日号)

今年の夏の甲子園大会で印象に残っていることがある。青森・光星学院を応援している人がとても多かったことだ。劣勢の東北勢にあって、青森としては、あの太田幸司(覚えていますか?)の三沢高校以来31年ぶりのベスト4は、立派なものだ。

8月6日、大工さんの「夏の甲子園」とも言うべき、青年技能競技大会がおこなわれた。詳しくは上の記事をご参照願いたいが、3人ともが初出場で完成まで行ったのは、本当にすごい事なのだそうだ。当日、審査委員を務めた藤谷辰衛さん(大井支部)の話では、事前講習を始めた今年3月の時点では、3人とも規矩術の知識はまったくなかったのだと言う。

藤谷さんによれば、「年配の大工さんでも、分からない人の方が多い」という規矩術。一般の住宅建築では、なかなか使う機会に恵まれないようだが、曲尺一本で部材加工の複雑な製図も行えるという、日本独自の伝統的な建築技術だ。「ぜひ、引き継いでほしい」と藤谷さん。

今年出場した3人は、全員が「来年も絶対出場する」「今度は金をねらう」「全国大会出場が目標」と意欲満々で早くも来年に目が向いているようだ。組合にも、出場資格のある大工さんが80人いる。来年はぜひ、チャレンジしてみては?

 

 

深刻な伊豆諸島

825日号)

テレビを見ていると、突然チャイムのようなものが鳴り、画面上部に地震情報が流れる。しかも、たびたびだ。このチャイムが鳴らなくなり、地震情報のテロップだけが流れるようになったのは、いつ頃からだろう? 伊豆諸島・三宅島で地震が多発し、気象庁が「火山噴火の恐れがある」と発表したのは、6月26日。衆議院選挙の翌日のことだ。

あれから、もう2ヵ月。三宅島だけでなく、新島、式根島、神津島などでも震度3から5の地震が頻発し、今も一向におさまる気配がない。

大自然豊かな伊豆諸島は、観光や漁業が重要な収入源だ。海水浴客の書き入れ時となる夏が始まろうかという時に始まった噴火と地震。この状態では、もちろん観光どころではない。それに、地震の場合、津波も心配だから、漁業もままならない。また、8月18日には、三宅島で、最大の噴火が起こった。降灰の被害などもあり、生活の不安から島での生活を捨てざるを得なくなった人たちが、島外へ脱出しはじめているという。

先の見えないこの状態は、ある意味で阪神大震災よりも深刻で、タチが悪そうだ。同じ東京都民として、「何かできることはないだろうか?」と考えてしまう。組合員の皆さん、何かいい考えはありませんか?

 

 

私も戦争に行った

815日号)

「君の行く道は、果てしなく遠い」で始まる歌は、おなじみ「若者たち」。田中邦衛出演の映画「若者たち」は1967年の作品だが、ご覧になった方も多いだろう。

この作品の脚本家として知られる山内久氏が、最近、子供向けの本を出版した。タイトルは「私も戦争に行った」。1944年秋、19歳で徴兵され、中国へ送り込まれた氏の戦争体験と平和への思いが記された本だ。この中で、こんな話が紹介されている。

中国に渡り、初年兵の訓練をこなしていたある日のこと。班長が「今日は総仕上げだ」とみんなにやらせたのが「生体刺突」。柱に手足を縛られた中国人の農民を銃剣で次々に刺し殺すと言うものだ。本には、次のように記されている。「はだけられた農民の胸板にクサビ型の黒い穴が五、六ヵ所あったのを思い出す。その下の腹の部分はすでにズタズタで、手打うどんの大笊からうどんをぶち撒けたように、真っ白な腸が全部とび出していた」。

被害者としての戦争体験も多く語られるべきだ。が、加害者としての戦争体験をもっと多くの人が語り始めることも必要なのではないだろうか。

20世紀最後の815日がやってくる。戦後55年。私たちは、未来へ何を伝えるべきなのか、もう一度考えてみたい。

 

 

FMいるか

725日号)

ドアを開けると、36uのフロアに、ひょうたん形のモダンなテーブルが数卓並んでいる。各テーブルには普段着姿の若者が2、3人ずつ。何やら大学のサークル室のようでもある。ここは「FMいるか」放送局。函館市と近隣の町をエリアに持つ、ちっちゃなFM放送局だ。

19921月、郵政省は、地域密着型の「コミュニティ放送」を制度化した。これを受けて、日本初のコミュニティ放送局として誕生したのが、「FMいるか」なのだ。FMというと音楽番組のイメージがあるが、同局の特徴は、「地元函館にこだわった生放送」。月曜から金曜の午前中に放送される「人ネットワーク」は、市民をゲストに呼んでのトーク番組で、「市民全員、一回は出演しよう」がモットーだとか。

「音楽では、大きいFM局にかなわない」と言う同局の斉藤さん。「阪神大震災のとき、地元FM局の発信した情報が、被災者の人にとても役立ったといいます。市民の人にドンドン参加してもらい、キメの細かい地元情報にこだわっていければ」。

1998年の聴取率調査で、「FMいるか」は函館エリアのFM4局中、初のトップを獲得している。放送と活字。メディアこそ違うが、組合の新聞も、いろんな点でおおいに見習わなくちゃ。

 

 

捨てるということ

715日号)

「家の中が片付かない」「収納が苦手で…」などとお困りの方に朗報である。画期的な整理法が発見されたのだ。それは、ズバリ!「捨てること」。「捨てる!技術」なる本がベストセラーになったこともあり、現在、「捨てること」がブームになっているのだそうだ。

大量生産大量消費の現代社会。ひたすらモノを追い求め、何が必要で何が必要でないのか、あいまいだからこそ、「モノを捨てよ」の提案は新鮮に響く。同書によると、捨てられない言い訳として多いのが、「とりあえずとっておく」「いつか必要になるかもしれないからとっておく」などだそうだ。

不必要な大規模工事の代名詞として、よくダム工事が話題に上る。市民から「無駄だ」と指摘されて、建設大臣が、答弁で述べていることは、煎じ詰めれば「とりあえず始めちゃったから」「そのうち何かで必要になるかもしれないから」造るというもの。とても似ていませんか? 代わりに捨てられるのが、町場の建設業というわけか。

その建設大臣の新任が先日、決まり、就任が本決まりになっての一言が「ビンボーくじをひかされたようなもの」だった。それほど嫌なら、断れば良かったのにねえ。イヤイヤ大臣になられた国民の方こそいい迷惑だもの。

 

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