同時上映小説『芹緒』第二回



スーパーマーケットで材料を買い込み、家に帰ろうと
店を出ると、外は再び雨が降り出していた。
芹緒が、どうぞ、と言って手提げ袋から折り畳み傘を
取り出し、渡してくれた。
準備がいいなと言うと、芹緒は、事前に天候の変化の
情報を仕入れておきましたからと答えた。
オレは眉をひそめた。
正直、芹緒にはあまりサテライトサービスを使用して
欲しくない。
使う度、芹緒がロボットであることを強く認識してしまう
からだ。
もっとも、仕事の手が足りなくて、芹緒に救援を求める
ときは、この上なく役立ってくれるのだが。
まぁ、ケースバイケースと考え、うまく折り合いを付けていこう。

芹緒と相合い傘で帰れると思いウキウキしていると、続いて
芹緒は自分の分の傘を取り出した。ま、普通はそうだわな。
それでも、一応提案だけはしてみる。
「芹緒、そいつはしまって、ふたりで一緒の傘に入って帰ら
ないか?」
「―その傘は一人用の大きさですので、二人で入るとお互い
の肩が濡れてしまい、傘としての機能が果たせませんが、
それでもよろしいですか?」
芹緒と一緒の傘に入れるなら、少々雨に濡れるくらい構わ
なかったが、雨の勢いは増す一方で、すでに豪雨と呼ぶに
ふさわしい段階にまで達していた。
オレは泣く泣く、相合い傘を諦めた。
相合い傘はまたこの次、小雨の降る日にでも実践するとしよう。



[続く]