「適齢期LOVE STORY?」第七話・大集合!



 俺と先輩は、目の前に繰り広げられた現実に、ただただ目を奪われているばかりであったが、そ、それではいかん、と我を取り戻し、マルチと初音ちゃんの方へと歩いていった。
「あっ、浩之さぁん」
 俺にマルチが声をかける。
 くるっ、と振り向くと、髪の毛が揺れる。
 うっ、か、かわいいっ。
 それと同時に、初音ちゃんが俺の方を向く。
 ぴょこんと跳ねた髪が踊る。
 …この子、本当に鬼なのか…?
 か、かわいーじゃぁねぇかぁ!
 マルチの前でこんな事を考えてしまうなんて、俺もヤキが回ったなぁええぇっオイッどうしてくれようこんちくしょうっ作者のバカヤロウッっごめんよマルチッ俺はこうなったら海に向かって走るぜマルチついてこいっはいっ浩之さんっあははははマルチィうふふふ浩之さぁんなーんて夕日をバックに砂浜を駆ける二人〜!ってな状態で、それがどんな状態なのかはいまいちこの文章では読者のみなさまには理解いただけないとは思うが、要は、「マルチ、ごめん。俺、反省」って事なのである。
 そんな葛藤を、心の中で演じている俺に、初音ちゃんはにっこりとほほえむと、いきなり
「お風呂、早く入ってね」
 そんなことを言い出した。
 な、なぜにお風呂ぉぉぉっっ!?
 今までの会話のどこら辺から、お風呂なんて事がでてくるんじゃぁ!
 君たち鬼は、突拍子もないことを言い出すなぁ。
 鬼の習慣なのかっ?
 そんな鬼の初音ちゃんに、俺はマジツッコミを入れようと、口を開いた。
 と、そのとき、頭に、こんな事が浮かんだっ!

     1、お風呂、一緒に入ろうか?
    2、もう一度、抱っこしてあげようか?

 迷わず、1!
 …?
 な、なんだこれは!
 そう思ったときは遅かったっ!
「お風呂…一緒に入ろうか?」
 (@_@)!
 なにを口走ってるんじゃぁ、俺はぁぁあ!
 あたふたとあわててはみるが、口に出した事実はかわらない。
 マルチは「!」って顔をして、止まってしまっている!
 マ、マルチぃ、ご、ごめんっ、お、俺、そんなこと言いたかったんじゃないんだっ!
 だが、状況はかわらない。
「えっ?」
 初音ちゃんがおどろきの声を上げる。
「身体とか洗いっこしようか?」
 初音ちゃんは、頬を真っ赤に染めると、
「や、やだ、お兄ちゃんのえっち!」

 などと、言い出した。
 ちょ、ちょっと待て俺ぇ!
 そ、そんなことをワシは言いたいんちゃうんじゃぁあぁ!
 マルチは、今にもショックでぶっ倒れそうだ…どうするぅ…!
 だが、そんな困惑も、作者には関係ないらしい。
 そもそも、マルチを愛する作者には、俺なんぞ嫉妬の対象でしかないのだ!
 マルチと俺が引き裂かれることこそ、作者にとってはこの上なくハッピーな事なのだっ!
「小さいときはよくいっしょに入ったじゃない」
「…わ、わたし、もう小さくないもん」
「本当に小さくないかどうか、じっくりと俺が確かめてあげるからさあ」

 俺は、俺の意志とは関係なく、まるで毒電波に犯されたかのように言葉を発していた!
 …でも、なにが小さくないんだろ…?
 ちなみに、作者は、小さい方が好みだぞ。
 ……。
 ピーンチッ!
 俺様大ピーンチッ!
 ご、ごめんよぅ、マルチッ!
 頭を抱えて、その頭をさおりんのスパイクにゆだねたいくらいの衝動に駆られる俺!
 その時!
 まるで俺の願いが通じたかのように、頭に激痛が走った!
 どごっ!
 …鈍い音がした。
 マジでぶん殴られると、鈍い音がするんだぁぁ…、と、遠のく意識…。
「このバカ耕一!なにひとの妹にセクハラしてんだっ、このスケベオヤジっ!」
 !
 その声に、俺は意識を取り戻す。
 …俺は耕一じゃぁないんですよ…。
 もう何度このツッコミを入れたことであろうか…。
 振り向くと、そこには、おそらくヘアバンドがチャームポイントとかいう紹介文しか作者が思い浮かばない、でも作者一押しの女がたっていた。
「あ、梓おねぇちゃん。ぼ、暴力はいけないよぅ〜」
 初音ちゃんが切なげな声をだす。
 梓、というらしい。
 …おねぇちゃん、ということは、こいつも鬼なのかっ!?
「だまれ、初音っ!こいつは、口で言ってもわかんねーんだ!耕一、おとなしく修正をうけぇぇぇいいっ!」
 梓が飛びかかってきたっ。
 い、いきなり登場して、なにをするかなこの娘はっ!
 で、でもっ、ま、まずいっ、やられるっ、鬼との実力差は明らかだっ!
 だが!
 突然楓ちゃんが、両者の間に割って入ったかと思うと、両手を広げ、この俺をかばった。
「!」
「!」
 どっかでみたことのありそうな、そんな風景が目の前で繰り広げられた。
 いい加減に、パクリやめろよー、作者!
 なんだと、これはパロディーだっ、バカ主人公!
 おまえなんてこのまま殺して、俺とマルチが幸せになって終わり、でもいいんだぞ!
 七話で終わる予定だったから、ちょうどいいんだからなっ!
 …今回、作者の出番おおすぎ。
 ……すまん。
 話を戻そう。
 ズバァァッァァァァーーーーーーーーンッッ!
「か、楓おねえちゃぁぁぁっっっっっっんっっっっっっっ!」
 初音ちゃんの悲鳴!
 ……。
 ……。
 身体が宙を舞った…。
 だが、その身体は…楓ちゃんではなかった。
 なんと、梓の方が吹っ飛んでいたのである!
「あ…あれは…崩拳!」
 あれ、いたの?と、読者がつっこみそうな、セバスチャンが叫んだっ!
 な、なんと、楓ちゃんのカウンターが決まったのだっ!
 あまりに意外な展開!
 楓ちゃんは、格闘オタクなのかっ!?
「…う、うっ…」
 地面でうめく梓。
 そこに、初音ちゃんと楓ちゃんが近づく。
「…ごめん、姉さん、大丈夫?」
 楓ちゃんが声をかけた。
「だ、大丈夫?お姉ちゃん!?」
 初音ちゃんが、心配そうに話しかけ、手を差し出した。
 梓は、その手を受けると、立ち上がり、切なそうな顔をした。
 そして…。
「…なんで私は、こんな役ばっかりなんだ…。本編じゃ、猟奇的なシナリオしか無かったし…おまけじゃ身体汚されるし…ガチャピンは殺すし…同人じゃ殺されまくってるし…18禁じゃレズ話ばっかだし…挙げ句の果てにはこれだ…あたしゃ、悲しいよ…」
 泣きそうになりながら言った。
 ……。
 …愚痴りたくもなるの、わかる…。
 大丈夫、作者は梓好きだよ!
 …うれしくない…?
 ……。
「姉さん…」
「お姉ちゃん…」
 楓ちゃんと初音ちゃんが呼びかける。
 …な、なにが起こってるんだ…。
 だいたい、梓はどこからでてきたんだ?
 先輩は、召還してないんだぞ…?
 頭を疑問が駆け抜ける。
 …。
 ま、どうでもいいか。
 あ、マルチ、そうだそうだ。
 あっちはあっちで、話が進んでいるようだから、と。
 俺は、放心しているマルチに近づくと、ぺちぺちと頬をたたいた。
「おい、マルチ、大丈夫か?」
 マルチが、はっ、と我を取り戻す。
 だが、切なげな顔をする。
 …ごめんよぅ。
「マルチ…、ごめん。でも、あれは、俺が言ったんじゃないんだ…。というか、俺の意志じゃなかったんだ…、信じてくれ。っていっても無理だろうけど…それだけはわかって…な?」
 と、目を見つめて、俺は言った。
 マルチは、神妙な顔をした後、少ししてから
「…浩之さんのこと…信じてますから…!」
 そういって、ほほえんだ。
 !
 マルチ!
 お、おまえは…なんていい子なんだっ!
 俺は、マルチを抱きしめると、その手を取って、踊りだした。
「ひ、浩之さぁぁん、み、みなさんがみてますよぅー」
「それがなんだ!俺たちの愛を…みんなに見せつけてやろうぜ…マルチ!」
 俺はそう叫んだ!
 くるくるくるくる。
 踊る俺たち!
 ああっ、しあわせやぁ!
 と、その時だった。
 ドン、と誰かにぶつかった。
「あ、すいません」
 俺が言いながら振り向くと、そこには、シャギーの入った髪に特徴のある、美人が立っていた。
 何となく、むっ、としているように見える。
「…耕一さん、相変わらず浮気性なんですね…!」
 一言、そういった。
 …恐ろしいほどの威圧感だった…!
 鬼…なのか…この人も…俺も、今度こそやばいか…?
 だが、その人(鬼?)は、俺を無視して、鬼の兄弟がいるところまで歩いていった。
「はいはい、あなた達。なにやってんの?召還されたなら、仕事ちゃんとしなきゃだめでしょ!ボーナス下げるわよっ!」
 そう、手をパンパンとたたきながら言った。
 …会長の、言葉…?
「千鶴お姉ちゃん!」
「千鶴姉さん!」
「千鶴姉!」
 そう、三人の鬼が叫んだ。
 …また、姉!
 ということは、やっぱりこの人も鬼なのかっ!
「…なんだ、千鶴姉まできたのかぁ…。いままで千鶴姉ネタ多かったんだから、遠慮してもいいもんなのにー」
 梓が言った、がっくりしながら。
「…なんか言った!?」
 きっ!
 千鶴さんがすごんだ!
「…な、何でもないです…」
 やっぱり…梓は弱弱だった…とほほ。
「やっぱり、柏木四姉妹!全員そろわないと、しっくりこないしねー!」
 高らかに笑いながら、千鶴さんがいった。
 どうしっくりするのかは不明だが、言わんとすることはわかる。
 …。
 ぱたたたた。
 もはや、読者も忘れていたであろう先輩が、千鶴さんにかけよる。
「ん、なんです?」
「…………」
 先輩が話しかける。
「わかりました。では早速」
 千鶴さんはそういうと、妹たちに 「…さぁ、耕一さんを私たちのものにするわよっ!誰のものかは、つれて帰ってから決めましよっ!ついでに、この話ものっとちゃいましょっ!」
 …!
 な、なにいってんじゃぁぁあ!
 四姉妹がうなずく!
 そして、一斉にこちらを向く。
 …!
 先輩は、またも自分の言うことを聞かない鬼に、困惑していた。
 それ以上に、困惑しているのは、俺だった。
 ……。
 ぎゅ、っとマルチを抱きしめる…。
 マルチも、俺にしがみついてくる…。
 俺たちは、作品始まって以来の、大ピンチを迎えていた…!



「ちょっとまったぁ!」
 かなり前に高校の文化祭で多用されていたようなせりふが、校門の所から聞こえた!
 そこにいた全員が、その声の元に意識を集中させるっ!
 そこには、偉そうに腰に手を当てた美女と、これまた美しいロボットが立っていた!
 !
 綾香とセリオ!
 寺女コンビかっ!
 作中では、別の高校みたいだったが、あれは誤植とみなすっ!
 制服が同じだから、同じ学校なんだっ!
「姉さん、抜け駆けはずるいわよっ!」
 そう綾香は、びしっ、と芹香先輩を指さした!
 先輩は、まぁ、どうしましょう、といった感じで綾香をみている。
 セバスチャンは、もっと困っていた…。
 そりゃそうか…兄弟対決だもんな…。
 それに、魔法対科学再びだもんな…。
 って、冷静になっている場合か!
「そこの鬼も、引っ込んでなさい!藤田は、私のものになるのよっ!セリオっ!GO!」
「はい、ご主人様!」
 ひとり勝手に舞いあがって綾香は宣言すると、セリオを促し、ダッシュ!
 ねらいは、俺の奪取!
 ……。
 またもオヤジギャグ…。
 すまん。
 と、とにかく、二人そろって、俺とマルチの所につっこんできた!
 先輩も、鬼も、セバスチャンも、呆気にとられている!
 さすがエクストリーム高校生チャンプ!
 足がはやいっ!
「セリオっ、あんたは藤田とマルチを引き離してっ!マルチはあなたにあげるわっ!すきにしていいわよっ!」
「はいっ!ご主人様っ!」
 うれしそうな声を上げるセリオ。
 ま、まずいっ、セリオはマルチのことをっ!
 それに…あげる、ってあんた。
 そう思ったが、遅かった!
 ばしっ!
 綾香による、マルチを抱きしめる俺の腕への一撃!
 つうっ!
 俺は、思わずマルチを抱きしめた腕を放すっ!
 そこに、セリオが駆け寄ってきた!
 がしっ!
 !
 セリオがマルチの腰をつかみ、俺と引き離すっ!
 ああっ!
「ひ、ひろゆきさぁぁあんっ!」
「マ、マルチィ!」
 引き裂かれた二人!
「マルチさん、私と幸せになりましょう」
 …どうやったら、二人幸せになれるのか…?
 …じゃねー!
 ああっ、なんてこった!
 と、目の前に、綾香が現る!
「ねぇ…あんなロボットほっといて、私と一緒になりましょ…」
 綾香の流し目攻撃!
 おまけに、人差し指で、俺の鼻の頭を軽くつついてきた。
 ぐっ…!
 俺、こいつに弱い…。
 作者の好みだからだ…こいつ…!
 だが、俺にはマルチが…。
 そのマルチは、セリオによって連れ去られる所であった!
「浩之さぁぁぁぁぁんっっっっ!」
 マルチが声を上げ、俺を求める!
 マルチ!



 その時だった。
「解析完了!方位0-2-5!距離127ですっ!」
 そんな声が響いた!
 な、なにっ!
 いったいなにがっ!?
 みんなが、声の元をみる!
 みんなが固まる、綾香さえも!
 そして…四人の鬼さえもが!
 そこには、なにやら3人の女の子と、一人の男が立っていた!
 その男は…長瀬、長瀬源五郎!
 な、なぜ長瀬さんがここにっ!
 それに、連れの女の子たちはいったい!?
「よしっ、さおりん、特殊硬化ベークライト弾、発射だ!」
「おっけー!じゃ、いくよっ!」
 さおりんと呼ばれた、赤い髪の毛で、これまたもみあげに特徴のある女の子が、球状の何かを手に取ると
「うをりゃぁぁあ!くらえぇぇぇ!トルネード投法・大リーグボール改2!」
 なんて言いながら、それをセリオに向かって投げつけた!
 びしゃっ!
 セリオの足下で、そのボールは破裂すると、すぐさまに固まり、セリオの足を止めた!
 お、お見事!
「HMX-13、移動不能!足止め完了です!」
 ショートカットでめがねの子が、またも状況報告をする。
「わかったみずぴー!じゃ、るりるり、インスパイアービームだっ!」
 長瀬が指令を出す!
 すると、どこか焦点の合ってない目をした子が、
「………はい」
 といいながら、ジャキンと、うでのハッチを開いた。
 げっ、こいつら何者なんだ!?
 きゅいん×5回くらい。
 エネルギーがどんどん集まっていく…!
 そして…ドギューーーーーーーーーーーーーーーンッ!
 光り輝くエネルギーが、セリオに命中する!
 な、なんだ、あの光は!
 なんだんだ、インスパイアービームってのは!
「わからない方は、『雫』買って、やってくださいっ!好評発売中ですっ!」
 そう、めがねの子…みずぴーが叫んだ!
「作者さんは、腱鞘炎で腕が痛い、そんなこと書いている余裕がないっ、だから、ゲームをやってくれ!すまぬっ!といってますっ!」
 的確な報告!
 りっぱなオペレーターだ、みずぴー!
 ずば×10回くらい。
 セリオの周囲の空間だけ、ものすごい勢いで時間が進む!
 …そして…きゅーーーーん…、セリオのバッテリーがあがった…。
「HMX-13、バッテリー切れ!完全に活動停止です!」
「よし、るりるり、マルチを保護しろっ!さおりんは、綾香お嬢様をどうにかしろっ!」
 長瀬が、叫ぶ。
 かなりエキサイトしていると見える。
「ラジャー!」×2
 るりるりは、セリオとマルチに近づくと、呆気にとられているマルチをだきかかえ、長瀬のそばに駆け寄った。
 そして、さおりんは、呆気にとられている俺と綾香のそばに近寄ると、なにか筒のようなものを取り出し、中に入っていた液体を綾香にぶっかけた。
 びしゃっ!
 な、なにをしている…?
「こ、これはーーーーーーーーーーーー!おやじ油じゃないっーーーーーーーーーーーーっ!ひぇぇえーーーーーーーーーーーっっ!」
 綾香は、この世の終わりがきたかのような悲鳴を上げて、走り去っていった…。
 …おやじ油って…?
 …そして…この子たちは…いったい…?
「はい、終わったよっ」
「……終わり」
 さおりんとるりるりが、長瀬の元に帰り報告をする。
 それを受けて、
「15:32、任務完了です!通常勤務に戻ります!」
 みずぴーが、誇らしげに叫んだ…。

「藤田君っ!応援にきたぞっ!」
 その声の主は…長瀬源五郎、その人だっ!
 呆気にとられているみんなを無視するかのように、俺に向かって話しかけてきた。
「君とマルチがピンチだと聞いてなっ!あわててやってきたっ!」
 …そ、そうなんですか…?
「今日は、助っ人も一緒だっ!対異次元人戦闘用アンドロイド、『アストラルバスターズ』だっ!ほら、おまえたち、挨拶しなさい」
 そう言って、長瀬はアストラルバスターズのみんなを促した…が、肝心のアストラルバスターズの面々は、長瀬の言うことなんざ、聞いちゃいなかった。
 三人は、最新型アンドロイドであるところのマルチを取り囲み、雑談を始めていたのである。
 作戦終了すりゃ、あとはしったこっちゃありませーん、そんな感じである。
「これが、最新型かぁ。かわいいじゃない。マルチちゃんて言うんでしょ?」
 そんな状況を理解しているのか、いないのか、さおりんがマルチに尋ねる。
「は、はいっ!…えっと、あなた達は…」
「私たちは、生徒会役…じゃなかった、アストラルバスターズといって、Leaf元祖アンドロイドなのよ。あなたの大先輩ね」
 みずぴーが答える。
 大先輩といっても、ただが一年かそこらの話ではある。
「そ、そうなんですかっ!初めましてっ!よ、よろしくお願いしますっ!」
 マルチが深々と頭を下げる。
「……長瀬ちゃん」
 一人、違う方に行っている、るりるり…。
「いやー、しかしさー、最近の汎用アンドロイドも、人間そっくりになってきたわねー。どれどれ」
 そんなことを言いながら、さおりんは、いきなりマルチの胸をもみだした!
 !
 な、なにやっとんじゃぁ!
 昼真っから、やめてーっ!
 じゃ、ない!
 お、俺のマルチに…!
 や、やるなら、ぼ、ボクの部屋でぇ…!
 じゃなかった…。
「………」
 硬直するマルチ。
 そりゃするわ。
 オーバーヒート寸前って所だ。
「ふむふむ、もう、人間と変わりないわねー。まだまだちっちゃいけどさぁ。…それでも、みずぴーよりおっきいかな?」
 にやにやしながら、さおりんが言う。
「!ひ、ひどいです、さおりんっ!私だって、まだまだ大きくなるかもしれないのにっ!」
 みずぴーが声を荒くしていった。
 アンドロイドの胸が、大きくなるものなのか?
「ごめんごめん、冗談だよー」
 さおりんがみずぴーの肩をたたきながら言った。
「…もうっ…!」
 みずぴーが、ぷーっと頬を膨らます。
 本編では、こんなの無かったな。
 それなりに、かわいらしい…。
「……長瀬ちゃん」
 やっぱりるりるりはマイペースだ。
 それとも、バストに自信があるのか…。
 密かに、グラマラススリムだからな…るりるり。
「………」
 マルチは、完全に先輩アンドロイドの雰囲気に飲まれていた。
 ……。
 ぼけっと、そんなやりとりを眺めていた俺と長瀬だったが、はっ、と我を取り戻すと
「こ、こらっ、おまえたち!挨拶をしないかっ!」
 長瀬が焦っていった。
 だが、アストラルバスターズの面々は
「私、祐くんの言うことしかききたくないもーん」
「…私も、祐介さんの命令しか…聞けません」
「……長瀬ちゃん」
 とりつく島もない。
「…おまえら…いつも通常勤務になるとこうだ…!」
 長瀬より、どうもこいつらの方に主導権があるらしい。
 長瀬には、どうしようもないって事か…。
 戦闘は、楽しいからやるの、みたいな…。
 …はぁ…。
 俺は、はぁ、と一息つくと、とりあえず
「…あの、アストラルバスターズ、だっけ?あの…マルチを助けてくれて…ありがとう」
 とだけ言って、マルチを抱き寄せた。
「浩之さんぁん!」
 マルチが泣きついてきた。
 不安でしょうがなかったんだろう…。
「ご、ごめんな、マルチ。俺がしっかりしてないばっかりに…」
 マルチは、首を横に振りながら
「…浩之さんぁぁぁあん、浩之さんぁぁぁん…」
 といいながら、嗚咽を漏らした。
 マルチ…。
 俺はマルチの頭をなでた。
 と、そこまではよかったのだが、
「ふーん、あなたがマルチちゃんの…」
 さおりんが、にやにやしながら話しかけてきた。
 !
「なかなかですけど、祐介さんほどじゃないですね」
 みずぴーが続けた。
「……長瀬ちゃん」
 るりるりがしめた。
 …しまってない…。
 な、なにがしたいんじゃ、この子たちは。
「祐くん以外に、アンドロイドとつきあっている男がいるなんてねー。感心感心!あ、そうだ、こんど、あなたたちと、私と私のカレで、グループデートしない?」
 さおりんが、訳の分かんないまま俺たちをデートに誘ってきた。
 …なにがどうなってるんじゃ。
「さおりん、それって…。カレ、って…?」
 みずぴーが焦って言う。
「そりゃーもう、祐くんにきまってるでしょー」
 へらへらと答えるさおりん。
「祐介さんは、私とつきあっているんです!さおりんは単なるお友達です!」
 腹の底から声を出すみずぴー。
「……長瀬ちゃん」
 るりるりも、それなりに言いたいことはあるみたいだ。
「みずぴーは、太田さんがいるじゃないー!…うふふ」
 にやけながら、さおりんが言う。
「か、香奈子ちゃんは、そんなんじゃありませーんっ!」
 ムキになって反論するみずぴー。
 …。
「なによー」
「さおりんこそ」
「……」
 ………。
 ………。
 ………。
 沈黙。
 ジャキッ!
 みずぴーがプログナイフを取り出した!
 すっ!
 さおりんが、バレーボールを構える。
 …どこに隠し持っていたんだ?
 ビィィィィィィ…。
 るりるりの目が、光り始める!
 …な、仲間割れっ!?
 ぐおっ!
 プレッシャーがかかる!
 今にも、戦闘が開始されそうだった…!
 なにがいったい…どうなっているんじゃぁぁぁ!



「…あなた達は…!」
 いきなりそんな声がした。
 !
 みんなが一斉にその方をみる!
 声は…千鶴さんのものだった…。
 な、なにに対して言ってるんだ…?
 きょろきょろと辺りを見回すと…アストラルバスターズのみなさんが…硬直していた。
 …!?
「…あなた達は…柏木四姉妹!」
 みずぴーが叫んだ!
 さすが分析要員、情報はバッチリだっ!
 だが、
「美女、が抜けています」
 楓ちゃんがツッコんだ。
 ……。
「と、とにかく、何でこんな所にいるのよー、この鬼ぃ!」
 さおりんが言う。
「私たちは、耕一を保護しにきたのっ!あんたたちこそ、何でこんな所にいるのよ!」
 梓がそれはもう迷惑そうにわめいた。
 自分の出番が今以上になくなる、その危機感がそうさせてた…。
 …つくづくあわれなり、梓っ!
 …しかし…先輩に召還されたんじゃなかったのか…?
「Leafの真のヒロイン、この沙織ちゃんが登場しない作品なんて、あるわけ無いじゃないー」
 さおりんが、問題ありありなせりふを、のうのうと口にしてくれた。
「だ、だれが、Leafの真のヒロインよっ!」
 千鶴さんが、あわてて言う。
 どうやら、自分こそがヒロインの自覚があるらしい…。
 見え見えだ…。
「…もうこうなったら…とりあえず…」
 千鶴さんと、さおりんがハミング…!
 こうなったら…、なに?
「あんたたちから…」
 あんたたちから…、なに?
 ……。
 やばい、なにかやばい…!
 俺の心が、そう叫んでいた…!



「やめるんだ、さおりん!」
 誰かが叫んだ。
 俺じゃない。
 …長瀬だった。
「とりあえず落ち着け」
 そういってさおりんを落ち着かせると、長瀬は鬼の方にむき
「キャスバ…じゃなかった、兄さん!こんな事はもうやめてくれっ!」
 そう叫んだ!
 キャスバ…?
 …兄さん…?
 はぁ?
「…アルテイ…じゃなかった、源五郎…おまえか…」
 セバスチャンが、鬼の影から現れ、声を低くしながら言った。
 ……。
 アルテイ…シア…?
 ……どうでもいいか。
 え、ということは…こいつら、兄弟なのかぁっ!
「もう、やめてくれ、兄さん。なんで鬼まで呼んで、こんな事をするんだっ!愛する二人を妨害するなんて、野暮だぞ!そんなことだから、隕石落としだって失敗するんだっ!」
 …隕石落とし…?
「…おまえには、わからんだろうな…私は、もう来栖川…お嬢様のためにいきると、心に誓ったのだ…、拾ってもらったご恩に報いるためにも…。私にとって、お嬢様こそ…神なのだっ!」
 力強く、セバスチャンが言った!
「…兄さん…それは…俺との対決を意味するんだぞ…」
 長瀬がうなる。
「…百も承知だ…」
 ……。
 ……。
「そうか…」
 長瀬が、ぽつりという。
 そして、
「さおりん、行け!」
 怒鳴った!
 それを受けて、セバスチャンも
「いけっ、鬼たち!忌まわしい記憶と共にっ!」
 叫んだ!
 戦闘開始だっ!
 って、戦闘開始させて、どーするんじゃぁぁ、長瀬どもっ!



 そう思ったのだが…
「別に、長瀬さんのためにはたらいてるわけじゃないんだよねー」
 と、さおりん。
「あなたの言う事なんて、聴きたくありません!」
 と、千鶴さん。
 …。
 一筋縄にはいかん、キャラクターであるなぁ。
 作者も大変だ、これだけのキャラがいると…。
 ……。
 と、ともかく、戦闘は回避された…。
 …よかった。
 はずだったが
「やっぱり、Leafの真のヒロインはだれかは、最低でも決めとかなくっちゃね!」
 さおりんが、ふたたび忘れ去られたネタを持ってきた。
「望むところよ…」
 千鶴さんもそれを受けて立つ。
 ででんっ!
 千鶴さんが、鬼の力を解放する!
 もう、すでに俺の事なんて忘れ去られている…。
「はぁぁぁぁ!」
 さおりんも気合いを入れる!
 スカウターも急上昇だ!
 それに伴い、鬼の姉妹も、鬼の力を解放…って、ひとり初音ちゃんだけが、何かを食べていた…なんで?
 アストラルバスターズも、いつもの戦闘態勢に戻り、るりるりがバルカン砲を構える!
 …学校を、破壊するつもりか…おまえたち!
 俺、マルチ、先輩、長瀬、セバスチャン。
 この五人には、どうしようもできない局面を迎えてしまった!
 ついに、話を乗っ取られてしまった!
 TLS?、急展開!
 「To Heart」のSSから、「雫」「痕」どちらのSSになるのか!?
 これから…それが決まるっ!



「あのー、ちょっといい?」
 こんな状況下に、首を突っ込んでくるやつがいた。
 やめてくれ、作者が混乱する。
 だが、そんなことは聴かないやつだということは、わかっている…そんなやつ。
 そう、志保だ!
「いやー、今日はなんだか、戦場ジャーナリスト、って感じね!」
 一人悦に浸っている志保。
 いきなりでてきて、なにやってるんじゃ、おまえは!
「ちょっと、あなたじゃま!」
 さおりんが本当にじゃまそうに言う。
「…じゃまですよ!」
 すごむ千鶴さん。
「邪魔ななんじゃぁぁぁぁっぁぁぁぁ!貴様っ!らっきょお化けみたいな頭しやがってっ!食ってやろうかっ、この鬼の私がなあっ!」
 初音ちゃんが叫んだ。
 …は、初音ちゃん?
 ど、どうしたっ!
 鬼なのにかわいい初音ちゃんがっ!
 …あの、何か食っていたのが、原因なのかっ!?
 …性格反転茸…千鶴さんの料理…?
 ……。
 だが、志保は冷静だった。
「…戦場ジャーナリストには、状況判断と冷静さが必要なのよ…!」
 すっかり、そのつもりである。
 そして…
「あのさぁ、あなた達、Leafの真のヒロインって言うけどさー、実は、そこにいるマルチちゃんと、来栖川先輩が、現時点での二強なのよねー!」
 と、高らかに言った!
 ……。
 ……。
 そ、そうなのか。
「よかったな、マルチ!」
 俺がマルチを祝福する。
「ありがとうございますー」
 うれしそうにマルチ。
「先輩も、おめでとう」
 鬼の横でたたずむ先輩にも声をかける。
 ちょっぴり恥ずかしげにうなずく先輩。
 そうかー、人気あるんだなー、この二人。
 そうだ、お祝いしなきゃな!
 なんて思った…が。
 …!
 殺気!
 その場の空気が凍り付いた!
「…なんだって?」(さおりん)
「何ですって?」(千鶴さん)
「…どういうこと?」(梓)
「一体…?」(楓)
「そ、そんなの、情報にありませんっ!」(みずぴー)
「どーなってるんじゃぁぁぁ!説明しろっ!」(初音)
「……長瀬ちゃん」(るりるり)
 ……。
 そして…。
 キッ!
 7人の目が、先輩とマルチを串刺しにする…!
「…抜け駆け…!」
 7人が、同時に叫んだ!
 ま、まずいっ!
 俺は、このままでいると、とんでもないことになりそうな、そんな気がした!
 こうなったら…
 ひょいっ!
「ひ、浩之さんっ?」
 驚くマルチの腰をつかむと、抱きかかえ、
「おいっ、セバスチャンっ!車、出せっ!」
 そう怒鳴って、セバスチャンの車に駆け込んだ!
 俺の声に、はっとしたセバスチャンが、先輩を抱えて車に乗り込む!
 エンジンをかけるっ!
「お、おいっ、俺はどうなるんだっ!?」
 長瀬が叫んだが、この際無視だっ!
 セバスチャンが、アクセルを踏む!
 ギュオンッ!
 急加速し、車は坂を下るっ!
「ま、待ってくれぇぇぇ!………ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっっっっ………ぐはっ!」
 長瀬の、そんな声が、後ろの方から聞こえた…。
 …。
 ……。
 合唱。



「で、私たち、これで出番終わり?」
 長瀬の身体の上で、さおりんが言った。
「ま、まさか…」
 千鶴さん。
「…そうかもしれませんね」
 楓ちゃん。
「分析結果では、その可能性は…85%、となってます」
 みずぴー。
「…出番がぁ…」
 梓。
「こらぁぁぁ!作者ゃぁぁぁぁ!どうなってるか説明しろぉっっぉぉぉっっっっっっっっ!」
 初音ちゃん。
「…長瀬ちゃん」
 るりるり。
 …。
 君たちの出番、これにて終わり。
 お話は、つづく!


第七・五話に続く!


イタリック部分は、(株)アクア・リーフ、「痕」楓シナリオより引用



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