第一話 『サンタが街にやって来た』



..............夢を見ていた。

僕は広い道路の上にかかる歩道橋の上にいた。
そして、欄干にもたれかかり、ボーッと晴れ渡った空を眺めていた。
頭上には太陽がさんさんと輝いている。
この太陽の位置からすると、どうやら今はちょうど昼頃らしい。
歩道橋の下には、見覚えのある風景が
ひろがっていた。
国道246号線、それも青山近辺の風景だ。

ただ、いつもの風景となにかが違う...。

すぐに僕は気付いた。
車が一台も走っていないのだ。
おまけに、歩道にもあたりにも、人影ひとつ無かった。

真っ昼間だというのに。

頭上で、音がした。
見ると、飛行機が一台、ゆっくりと飛んでいた。

飛行機はほんの少しの間旋回していた。
そして間もなくすると、なにか赤いものが飛行機からパラパラと落ちはじめた。
なんだろう?

赤いものはあとからあとから無数に降りてきた。
そしてその姿が確認できる大きさまで降りてくるとすぐ、それが何であるかが分った。
サンタクロースだった。
飛行機から、パラシュートをつけたサンタクロースが集団で降下してきたのだ。

サンタクロース達は次から次へと青山通りの広い道幅の上に降り立った。
そして、降り立ったかと思うと慣れた手つきですばやくパラシュートをしまいこんでいった。
きっと、もう何度もこんな事をやっているのだろう、と僕は思った。

パラシュートをしまい終えると、サンタクロース達はあっというまに見事に整列をした。

そして一斉に、映画『ウエストサイド・ストーリー』に出てくる踊りを踊り始めた。

輝くような青空の下で、赤い色彩が
規則正しく動いていた。

それは奇妙な光景のはずなのに、僕にはとても美しく感じられた。

僕はなんとも言えない感動で、身動き一つ出来ずに見とれていた。

ただひとつ残念でならないのは、これを見ているのが僕ひとり、という事だった。


(浅野が随分前に見た夢)