ジンクは人体にとって非常に重要なミネラルであるにも関わらず,これまで日本ではほとんど
普及していません.日本ではミネラル全般に対する認識が薄く,特にジンクに対しては、訳語
が「亜鉛」となっていることによって鉛と特に同じではないか”という間違った理解が多く,
適切な商品が少かったためと思われます。
  生物をはじめ植物や動物、さらには人が生きていくために、必須の元素があります。亜鉛
もその一つで、わたしたち人間のからだにも微量ながら含まれていて、鉄や銅などとともに、
生体内必須微量元素とよばれています。亜鉛は、酵素の成分や蛋白質の合成、味覚への関与、
インスリンの生成や機能への関与、また免疫能の賦活や生殖機能そのものなどに重要な役割
を果たしています。 
  また、亜鉛は古くから医薬品として、わたしたちの生活の中で使われています。その代表
的なものが亜鉛華軟膏です。これは、亜鉛が皮膚の新陳代謝に作用し、創傷を修復する作用
を応用しています。 


★Q1: 亜鉛(ジンク)と鉛は関係があるのでは?

×亜鉛は毒
○亜鉛は鉄に次いで大切な必須ミネラルです

亜鉛は鉛と混同され,身体に悪いという先入観を持っている方が大勢いますが,亜鉛は
鉄の次に大切な必須微量金属です.亜鉛は身体の成長のもとになる蛋白合成に欠かせな
い必須ミネラルで,細胞の増殖を促進するRNA(リボ核酸)や遺伝子を中継するDN
A(デオキシリボ核酸)の合成をします.また,インスリンをはじめ,なかでも,男女
『生殖機能』への働きは際だっており,アメリカでは『セックスミネラル』として大量
に使用されています.

人体が含有する亜鉛は2〜3gで,このうち50%は血液中に,25%は骨や皮膚に,
残の25%は各種臓器に含まれています.【表1,表2参照】
亜鉛は体内各部分の生体化学反応および代謝に応じて蛋白質,酵素等と結合し,血液を
介して各臓器,骨と各部細胞間を移動します.
亜鉛の機能についてはまだまだ道野部分が多く今後の研究が待たれますが,最近の医学
薬学栄養学によると,亜鉛には次のような基本機能があるとされています.

表1;人体中の必須微量金属の含有量(体重70sの男性)
元素名 含有量(g) 含有濃度(μg/g)
鉄 4.0--6.0 57.1--85.7
亜鉛 2.0--3.0 28.5--42.8 
マンガン 0.1 1.43
銅 0.08 1.14
セレン 0.012 0.171
モリブデン 0.01 0.143
クロム 0.002 0.029 
コバルト 0.0015 0.021

表2;体内の亜鉛含有量(μg/g灰分)
器官 平均値 範囲 90%範囲
前立腺 6300 1500--9600
腎臓 4500 2300--6500
肝臓 3200 1600--6000 
心臓 2500 1500--3700
膵臓 2200 1000--3500
大動脈 1950 900--3000
卵巣 1600 750--2800
こう丸 1300 680--2500
脾臓 1300 900--1900
肺臓 1300 660--1700 
脳 750 480--1050
上記以外でも眼,側頭葉の海馬にも多く含まれる
(財団法人緒方医学化学研究所「微量金属代謝」第1集)

@蛋白質の合成・DNA・RNAの合成・代謝の促進
亜鉛をアミノ酸が結合して蛋白質の構成を安定的に保ち,細胞分解,DNA・RNAの
合成に重要な働きをします.多数の亜鉛蛋白質の存在が確認されており,最近では遺伝
子に関わる亜鉛フィンガーという活性蛋白質が発見されています.

A蛋白質の分解・消化
亜鉛は,蛋白質の合成だけでなくその電子特性により,蛋白質を分解・消化する機能が
あります.鉄や銅が酸化還元反応に関係するのと異なり,亜鉛は加水分解反応に関係す
ることが分っています.

B人体の生化学反応を制御する各種酵素の生成 
亜鉛は酵素と結合して多様な生化学反応を媒介・制御します.カルボキシペプチターゼ
,サーモリシン,ロイシンアミノペプチターゼなど,現在まで100種以上の亜鉛酵素
が発見されています.

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これら@〜Bまでの点から,亜鉛は人体の成長,代謝作用,各臓器機能の正常化(生殖
機能の強化),脳細胞および中枢神経の発達,創傷の治療作用に重要な働きをします.


C重要ホルモンの生成に関与
さらに亜鉛はインスリン,テストステロン,FSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体形
成ホルモン)等,重要なホルモンの形成に関与しています.
特にインスリンについては,インスリンの生成だけではなく,インスリンの作用である
糖代謝にも亜鉛が不可欠であることと言われており,糖尿病の改善に有効です・

D亜鉛は基本的な免疫系を賦活化し,免疫機能に不可欠
亜鉛は歳とともに衰えて来る甲状腺や胸腺の免疫系とも深い関係があり,T細胞(特に
リンパ球)を増加させるなど,免疫系を活性化します.また増え過ぎると癌や成人病を
引き起こすといわれる活性酸素(フリーラジカル)をコントロールする酵素(SOD等
)の作用に,亜鉛は欠かせません.亜鉛の免疫系における作用は,人体のマスターホル
モンといわれる松果体のメラトニンに似ているといわれています.



★Q2亜鉛(ジンク)は人体に必要なもの?

×亜鉛など特に必要ではない
○中高年男性の成人病や生殖機能障害には,特に亜鉛が必要です

亜鉛は十二指腸から吸収されますが,年令ともに吸収率と貯蔵能力は低下します.アメ
リカでは40才を過ぎたらサプリメントで補給するのが常識になっています.
サプリメントのメリットは,食品からの摂取に比べてカロリー過剰にならず,必要量を
効果的に摂取出来ることです.


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★Q3食事に気をつけてれば自然に摂れるんじゃ?

×亜鉛は食物から充分取れている
○亜鉛は熱に弱く調理で壊れます
食品にはかなりの量の亜鉛が含まれているのは事実ですが,食事から亜鉛の必要量()
を摂取しようとすると,カロリー過多で肥満を招きかねません.
自然の食品には亜鉛が微量ずつ含まれていますが,加熱により大幅に減少します.下の
表は代表的な食品の,加熱前と加熱後の亜鉛含有量を示しています.

表8 代表的な食品の亜鉛含有量(mg/100g)
食品名 mg 食品名 mg 食品名 mg 
【穀物】 【魚類】 【肉類】 
玄米 6.44 かつお 0.80 牛肉 5.00
精白米 3.79 さけ 0.40 豚肉 2.05
小麦薄力粉 8.02 さば 0.50 羊肉 4.00
ふ 19.09 さんま 1.32 鶏肉 1.68
まいわし 1.57 鶏卵 5.97
【芋類】 いか 1.20 
さつまいも 0.32 いいだこ 2.50 【野菜】
じゃがいも 0.66 あさり 2.79 パセリ 2.67
さといも 1.86 あわび 1.72 ピーマン 0.42
やまのいも 0.55 かき 73.07 ほうれん草 1.16
さざえ 10.13 だいこん 0.56
【種実類】 しじみ 3.53 にんじん 0.40
アーモンド 10.73 キャベツ 0.34
ごま 14.00 【藻類】 トマト 0.40
ピーナッツ 3.73 あまのり 27.40 
根こんぶ 2.00 【その他】 
【豆類】 わかめ 6.06 ココア 21.73
あずき 5.04 かんてん 28.00 煎茶(一番茶)135.20
大豆 4.33 抹茶 133.50
絹ごし豆腐 1.70 


表6 加熱による食品の亜鉛含有量の変化
食品名 加熱前 加熱後 食品名 加熱前 加熱後
精白米-->ご飯 3.79 1.18 そば粉-->そば 6.35 1.11 
もち米-->もち 3.83 1.14 そうめん 2.00 0.99 
小麦粉-->パン 8.02 1.09 マカロニ 7.40 1.30 




★Q4亜鉛(ジンク)と味覚に関係あるって本当?


 最近、若者や女性の間で「食べ物の味の違いを感じない。」「何も食べていないのに口
の中が変。」などの味覚異常が増えているのをご存じですか。 
 味覚は舌にある、3,000〜4,000個の味蕾細胞という器管により感じられますが、その機
能が正常に働くには、必須微量元素である亜鉛(ジンク)が不可欠となります。亜鉛は味
覚をつかさどるだけでなく、皮膚組織の維持、生殖機能や腸管粘膜機能の維持、骨格の発
育促進など、生体内で重要な役割を担っています。そのためこれが欠乏してくると、味覚
障害、成長遅延、創傷治癒遅延、脱毛などが起こってきます。さまざまなインスタント食
品の出現や過激なダイエットによる食生活の変化が亜鉛の欠乏をもたらしていると言えます。 

★Q5一日どのくらい摂ればいいの?

×亜鉛は毎日15mg摂取すればいい.
○亜鉛は摂取しても100%は吸収できません.一日15mgではたりません.
FDA(米国食品医薬品局)基準値は,1日あたりの亜鉛必要量を15mgとしていま
すが,これは亜鉛の体内蓄積量が充分な人のケースです.

亜鉛は,大便,尿,膵液,汗などを通じて体外へ排出されます.
排出量は1日12mg〜14mgとされています.
摂取した亜鉛は100%体内に吸収されないので,排出量に見合った亜鉛を補給する為
には15mg摂取するだけでは足りません.加えて,もともと亜鉛の体内保有量が少な
い人の場合,さらに大量の亜鉛摂取量が必要になってくる訳です.



表10 亜鉛の必要量の基礎データ(成人男子平均値・体重70s)
数値 備考
体内の亜鉛保有量 2〜3g ※ネフローゼ,糖尿病,肝硬変,高血圧
1日当り排出量 12mg〜14mg の場合,尿への排出はさらに増加






表3 精液の生成場所
       器官     生成量
分泌液 前立腺   35〜40%
       精 嚢    55〜60%
       精 管     微 量 

精 子  こう丸   詳細別紙

※1回の射精の精液量は1〜3.5ccといわれます



表4 精子の量
正常なケースの平均値 精液1ccあたり4000〜6000万
妊娠能力が低い場合 〃 4000万以下
無精子と見るケース 〃 2000万以下

※射精1回あたりの精子の数は1億5000万〜4億といわれます







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