LADD権利カタログ
《 二の6 就 労 : 実 例 》

 

 知的障害を持つCさんは、知的障害をもつ人が従業員の半分くらいを占める(@)工場の面接を受けました。自分にできる仕事なのか不安が多かったのですが、社長は「俺に任せておけ」と言って、細かい説明はしてくれませんでした(A)

 しかし他に働き口もないし(B)、とにかく働いてみることにしました。

 働き始めてみると、みんな忙しくて細かく教えてくれないし(C)機械の操作がいろいろ分かりにくく(D)、でもCさんにもどう工夫すればいいのかよく分かりません。

 それでも何とか勤め続けて、最初の給料日。Cさんの給料はいかに新人とは言え、驚くほど少額でした(E)。Cさんはもう少し貰えると思っていましたが、自分には知的障害があるのだから働かせて貰えるだけでも有り難いことだと自分を納得させました(F)。ただその給料は現金ではなく、金額だけを手書きした紙切れだったので社長に訊くと、「現金を渡したら無駄遣いをするし、人に騙されるかもしれないので、俺が預かってやる(G)」と言います。仕方がないのでCさんは、お金がいるたびに社長から小出しに貰うようになりましたが、社長は「もう残金がない」などと言ってなかなか出してくれません。

 そのうちCさんだけ早出、残業をするようにいわれるようになりましたが、給料は上がりませんでした。そのことを社長に訊くと「おまえのようなやつを雇っているだけで大変なんだ。こっちの苦労を考えてみろ」とひどく殴られてしまいました(H)。  Cさんは辞めたいのですが、他に行くところもないし、相談する人もいないので、どうしていいか分かりません(I)

 

@従業員に知的障害をもつ人が異常に多い
 → 従業員構成が不自然

A仕事の内容について説明がなされない
 → 事業主は仕事の内容を、理解できる方法で伝えなければならない

B仕事を選ぶことができない
 → 選ぶことができる仕組みが必要

C仕事について教育がなされない
 → 仕事について教育し、本人ができる仕事を見つけ出し、適切な支援を受けられる仕組みが必要

D本人が不便を感じている
 → 本人の力を発揮しやすいように環境を変えることが必要

E障害が給料を安くする口実になっている
 → 少なくとも最低賃金は保障されなければならない

F障害があることで我慢している
 → 障害があるということで我慢する必要はないということを知る必要  

G保護を言い訳にして差別が行われている
 → 外部からの監視や援助を行う仕組みが必要    

H事業主と対等な関係が築かれていない。障害をもつ人を、人間としても労働者としても一段低いものと扱っている
 → 外部からの監視や援助を行う仕組みが必要

I相談するところがない
 → 相談相手になり、守ってくれる人や組織や仕組みが必要


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《 U−6 就  労 》

 

〈基本事項〉

 障害をもつ人が働くということに対してこれまでの我が国の姿勢は、現行の生産システムに障害をもつ人のほうが適応することを求め、適応するように訓練を行うというもので、適応できない人は一般就労の場から閉め出され、作業所といった特殊な就労機会しか得られなかった。そこは福祉就労という隔離施設であり、そこでの障害をもつ人は正当な権利を持つ労働者としての扱いを受けてこなかった。
 労働は賃金を得る機会であると共に、生産活動を通して生活基盤を確立し、人間関係を取り結ぶ場として重要である。障害を理由として労働から排除されてきた人々は、労働というきわめて重大な社会参画の機会と所得を奪われてきた。
 障害の程度や態様は千差万別であり、また必要とされる労働能力も一律ではない。従って、障害があるからといって一律に労働能力を否定することは不合理であり、差別である。
 国、地方自治体及び雇用主は障害を理由とした差別を積極的に是正し、労働現場における対等な一員として障害をもつ人を受け入れなければならず、障害をもつ人に対し労働者としての基本的な権利を確認し、その権利を実現するために必要な施策を講じなければならない。

@差別の禁止

1:事業主は障害をもつ人の採用、就労に当たって、障害を理由にした差別をしてはならない。

2:国は就労希望者や労働者がその能力を発揮し、あるいは正当な賃金を受ける権利を阻害されたとき、被害者が司法的手段を含めたそれへの対抗措置をとることができる手続きの保障と、援助機関が関与できる保障をしなければならない

3:上記援助機関は国からの干渉を受けない独立した存在の、非営利公益の第三者機関でなければならない

4:企業は社会全体の人口構成に比べて不自然な従業員構成によって、障害をもつ人の就労を不当に阻害してはならない

5:国は不自然な従業員構成を防ぐための方策を実施しなければならない

A雇用政策から就労政策への転換

1:障害をもつ人の就労政策は、福祉雇用という特別枠としての意識から脱却し、障害をもつ人を労働者としての権利を持つ主体として扱わなければならない

2:国は上記の就労政策において、不自然な従業員構成や統合されない環境での就労を明確に否定しなければならない

3:上記二項の目的を達成するため、国は目指すべき就労政策を策定しなければならない

4:上記策定作業は定期的な見直し作業を行い、質的向上を図らなければならない

5:上記策定作業および見直し作業には、障害をもつ当事者あるいはその委任を受け障害をもつ人の意見を代弁する代理人が参画しなければならない

6:国は上記就労政策に基づき、職業安定所等、最前線機関の意識改革教育をしなければならない

7:国は障害をもつ人の就労に対する社会的理解と関心の醸成のための社会教育を行わなければならない

B働くという権利を持った主体として扱われる権利

1:障害のある労働者はほかの労働者と同様に、組合運動を行う権利を有する

2:国は労働基準法で認められた労働者としての正当な権利が障害をもつ人にも同様に適用されることの確認をし、その保障をしなければならない

3:労働基準法の差別禁止条項に「障害を理由にした差別の禁止」を入れる

4:雇用主は雇用主としての義務の実行についての教育を受けなければならない

5:労働者は労働者としての権利についての教育を受けなければならない

6:上記2項の教育は国からの干渉を受けない独立した存在の、非営利公益の第三者機関が行い、国はその活動を支援しなければならない 

7:国は障害を理由にした最低賃金除外制度を廃止する
 (最低賃金を満たすだけの労働生産ができない場合は、その不足分を国が企業に対して補填する)

8:上記最低賃金は《所得保障》で述べる、国が保障すべき生活レベルを上回るように設定する

9:雇用主は障害を不採用や拒否の理由付けにするための健康診断と問い合わせをしてはならない

C個人の就労能力を身につけるための教育システムの整備

1:国および地方自治体はBで述べた就労政策に基づき、現行の学力獲得、職業訓練教育の見直しと充実を計らなければならない

2:上記職業訓練教育は能力の不足部分を強調するのではなく、可能なことを伸ばす方向で行われなければならない

3:上記職業訓練教育は、就労現場とは異なる環境で訓練してから就労ではなく、就労の場での実務的な教育でなければならない

4:障害をもつ人は上記の教育を本人の状況に応じて適切に受ける権利を有する

5:国は上記の教育が適切かつ有効に実行されていることを監視する機関を設置しなければならない

6:上記監視機関は国からの干渉を受けない独立した存在の、非営利公益の第三者機関でなければならず、国はその活動を支援しなければならない

D個々人の能力に応じた就労を選択する権利/適切な情報

1:国は就労に関する選択を可能にするために、国からの干渉を受けない独立した存在の非営利公益の第三者機関が客観的に見て同等に評価できると認める充分な数の選択肢を提供しなければならない

2:国は上記の選択を保障する仕組みを確立しなけれならない
(選択肢の開発、提供を行う機関と人材の養成)

3:障害をもつ人は職業選択をする上で必要な情報を請求する権利を有する

4:障害をもつ人は職業選択に関する情報を受け取ることを阻害されない権利を有する

5:国は障害をもつ人が上記の二つの権利を阻害されたとき、本人または本人の委任を受けた代理人が是正の申し入れや訴訟を行うことができる手続きの保障と援助機関が関与できる保障をしなければならない

6:上記援助機関は国からの干渉を受けない独立した存在の、非営利公益の第三者機関でなければならない

7:雇用主は障害をもつ人の身辺自立を採用の基準としてはならない

8:国はBで述べた就労政策の策定に当たり、欠格条項を見直さなければならない

E個人の就労能力を発揮できる職場環境の整備

1:事業主は求人に当たって、どのような職務遂行能力を必要としているかを詳細にわたって具体的に明示しなければならない

2:事業主は上記の職務を遂行する能力を有する者ならば、障害を理由にして採否を決定してはならない

3:上記の職務遂行能力は、本人の能力を十分発揮できるよう整備された就労環境のもとで論じられなければならない

4:しかしながら、上記整備が事業主に過度の負担を強いる場合は、事業主はその負担の限度内での整備にとどめることができる

5:国及び地方自治体、公共交通事業体は移動に障害をもつ人の通勤に支障がないように、移動環境を整備しなければならない

6:障害をもつ人はその能力を発揮するために、職場の物的環境の改善、支援者の配置、職務遂行上の補助スタッフの付与を請求する権利を有し、雇用主はこのような適切な支援の提供を拒否してはならない

7:上記の適切な支援を行わないことは、それがやむを得ない不作為であることを立証しない限り、差別と見なされる

8:国はBで述べた就労政策の策定に当たり、支援者、補助スタッフを養成、派遣する仕組みを確立しなければならない

9:国はBで述べた就労政策の策定に当たり、実際の就労の場で就労政策の理念が実行されているかどうかを監視する仕組みを確立しなければならない

F権利救済

1:国は労働における障害を理由にする差別による権利侵害を救済するため、独立行政機関(差別を禁止する労働委員会)を設ける

2:上記機関は、労働者の申し立てに基づいて差別労働を認定し、これを是正するための適切な、作為または不作為を内容とする具体的命令を発すると共に、紛争解決の斡旋、調停、仲裁を行う

3:上記の機関がなした命令、仲裁に不服がある者は、司法救済を求めることができる

4:司法裁判所は、差別を是正するため、適切な作為または不作為を内容とする具体的命令を発することができる

 


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