LADD権利カタログ
《 二の5 移 動 : 実 例 》

 

 東京に住み、電動車いすを使っているGさんは、新幹線で大阪の知人に会いに行くことにしました。

 しかし自宅から東京駅へのバスは、車いすでは乗ることができません。

 仕方なくリフト付きのタクシーを頼みましたが(@)予約が入っているとか、修理中だとかで使えず(A)、いろいろ調べてやっと市民団体のやっているリフト付のバンサービスを使うことができました。

 東京駅の緑の窓口で切符を買おうとすると、駅の事務室に行くように言われ(B)、そこで車いすで使える席を取って貰うことができましたが、自由席には車いすで使えるところがないとのことで、平日の昼間ですいているのは分かっていても指定席しか取れませんでした(C)。おまけにそれは喫煙車で、禁煙車には席はないとのことでした(C)。

 他の人の何倍も時間をかけてチケットを入手(B)すると、係員が列車まで連れていってくれましたが、一般の客の通路ではなく作業用の空気の悪い地下道を通って、業務用のエレベーターでプラットホームに上がりました(D)。Gさんは友人へのおみやげを買いたかったのですが、地下道に入ったのでコンコースのおみやげ屋に立ち寄ることはできませんでした(D)。

 大阪に着いて知人にこのことを話すと、「まだいいほうだ。昔は一人で電車に乗るなんて考えられなかった」と言われました。

 Gさんは確かに大阪に来ることはできましたが、駅の中では常に駅員さんが付いていて、それはそれで助かる面もありますが、自分で自由に旅行したという気分にはどうしてもなれません(E)。

@移動の選択肢が限られており、結果的に、車いすを使っているということで、余分な出費がある
 → 他の人と同じ選択肢があり、同じ出費で移動できなければならない

A移動手段があるように見えて、実際は役に立たない。あからさまではないが、実質的には自由な利用が拒否されている  → 実際に自由な利用ができる移動手段が提供されなければならない   Bチケット入手方法が、他の乗客とは違う特別な手段になっている

 → 一般乗客と同じ手段で入手できることが必要

C指定席しかない、喫煙車しかない、という風に、席の選択ができない
 → 一般乗客と同じだけの自由な選択ができること

 

D車いすのための特別な移動経路なので、一般乗客と同じ体験をすることができない
 → 一般乗客と同じ経路の中で移動し、同じ体験ができること

  E過保護的な援助、特別な手段のために駅員が付いていないと移動できない状況  → 一般乗客と同じ経路で移動できるという基本条件を確立した上で、ニーズに応じた適切な援助が必要。  


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《 U−5  移 動 》

 

〈基本事項〉

 人の活動範囲はすでに人が自分の足で移動できる範囲を遙かに超えており、何らかの移動手段を無視しては人が社会生活を営むこと自体が不可能である。そしてこの移動手段は全ての人にその属性を超えて平等に提供されなければならない。なぜなら不平等な移動手段しか利用できない環境下では、日本の社会が目指す公正で平等な参加と競争が実現できないからである。

 

@前提条件

1:国は、移動が人が社会に参加する事を保障するための必須な条件であることを認識し、その認識に沿った施策をおこなわなければならない

2:ここでいう移動とは、公共交通機関、公共的な建築物、公私を問わず多数の顧客に対して開かれている企業、集合住宅の共用部分、公園や道路などの公共的空間における移動を指す

3:公共交通機関は、たとえその事業主体が私企業であっても、利用者を恣意的に選別したり、切り捨てたり、障害を理由にした異なる扱いをしたりしてはならない

4:ここでいう公共交通機関とは大量輸送手段だけではなく、タクシーのように個別のサービス提供がなされていても不特定多数の顧客を対象にする事業も指す

A移動の権利

1:社会に参加しようとする者は、平等な移動手段を得る権利を有すると共に、個別ニーズに応じた適切な配慮を受ける権利を有する。上記の適切な配慮とは、一般に提供される移動手段では技術的、実際的にニーズの充足が不可能な場合に限って考慮される。

2:ここでいう平等とは以下のものを指す

 ・障害があることを理由にして、以下のような扱いを受けないこと  
  a:利用を拒否されること

  b:チケット入手に特別な手段を要求されること

  c:特別な移動手段を提供されること

  d:特別な移動経路を提供されること

  e:他の大多数の者に比べてその環境を経験する機会を著しく制限されたり、他者とは異なる経験しか提供されないという状況に置かれること

  f:他の大多数の者に比べて移動手段、価格などの選択肢を制限されること

 ・環境を利用するために個人の能力を超える動作を要求される場合は、状況に応じた適切な援助を受けられること

 ・個人の主体性を無視した援助を受けなければ移動できないような状況に置かれないこと
 ・状況に応じた適切な情報を、理解しやすい形で入手できること

B代替的な移動手段

1:一般的な公共交通手段では移動のニーズを充足できない人には、そのニーズを充足するための代替的な移動手段が、一般的な公共交通手段と同等の料金、待ち時間で提供されなければならない

2:上記の代替的な移動手段の提供については、しかしそれをもって一般的な公共交通手段の整備が不充分であることの言い訳としてはならない

C移動権確立のための配慮義務

1:社会に参加しようとする者は、平等な移動環境の整備を求める権利を有し、国はそれを保障する義務を有する

2:国は上記の求めに対して環境を整備する義務を負う

D権利救済

1:国は上記の、平等な移動手段を得る権利やそれを保障する環境を求める権利が侵害された場合に、侵害された者やその委任を受けたものが是正の申し入れや訴訟などを行うことができる手続きの保障と、援助機関が関与できる保障をしなければならない

2:国は、上記の環境を整備する義務を怠った者に対して、全ての国民が是正の申し入れや訴訟などを行うことができる手続きの保障と援助機関が関与できる保障をしなければならない

3:上記機関は国からの干渉を受けない独立した存在の、非営利公益の第三者機関でなければならない

4:社会は現存する環境が持つ問題点について学習を行い、改善の方策を追求する継続的な努力を行わなければならない

5:国は上記の努力を実現するための教育プログラムを提供しなければならない

6:上記教育プログラムの実行機関は、国からの干渉を受けず、利用者の立場に立って行動する独立した存在の、非営利公益の第三者機関でなければならない

 


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