LADD権利カタログ
《 二の8 所得保障 : 実 例 》

 Jさんは最近足が不自由になり、日常生活の中で車いすが欠かせないものになりました。  しかし車いすを自分の体に合わせて乗りやすく作ってもらうと、びっくりするほど高くなりました(@)
 住んでいる家も車いすで動き回れるように改造しなければなりません(@)
 外出の時は、公共交通を使うことが難しいのでタクシー頼みとなり、出費がかさみます(@)
 このまま身体の不自由さが進んでいくとトイレや入浴に介助が必要になるかもしれず、その時どのくらいの費用がかかるかも不安です(@)

 Jさんは今19歳の大学生で、このままだと障害基礎年金は受けることができますが、それだけではとても生活を支えることはできません(A)し、大学を出てから就職をしようとしてもそう簡単には行かない(B)だろうと思っています。

 このままでは親の経済力を頼りにするしかなく、そうするといつまでも親から経済的な自立ができません(C)。また諸条件が整って生活保護が受けられたとしても、受給に当たっては厳しい条件が付けられるという話も聞いています(D)
 せめて生活基盤をまかなえる額の年金が貰えたら、それを足場にして自分自身の生活設計が立てられ、積極的に社会に関わることができる(E)のにと思います。

 

 

 

 

@障害を持つことで支出が増える
 → 支出の増大に対する対策が必要
         

A現行の年金では生活を維持するレベルが保障されていない
 → 生活を維持できるレベルの所得保障が必要

B就職が難しい。充分な収入を得ることが難しい
  → 《就労》を参照
    収入の減少への対策が必要

C経済的な自立ができない
  → 自己決定を実現し、自立した生活を営める経済基盤の確立が必要

D生活保護の受給に当たって、厳しい制約をかけられる
  → 本人の自立を支援できるかどうかを考慮した柔軟な適用が必要

E所得保障が充分でないために、社会参加できない
 → 所得保障は社会参加の基盤づくりの一つとして、重要な意味を持つ  


LADD権利カタログ 《 U−8 所 得 保 障 》

 

〈基本事項〉

 障害を持つことによって、支出の増大と収入の減少が起こる。支出の増大とは、補助器具の購入、人的援助、住環境の整備など、社会環境と個人のニーズとの齟齬などのために支出が増大することを意味し、収入の減少とは、就労できないこと、職を失うこと、配置転換などのために十分な収入が得られないことを意味する。  これらは社会の中での行動のしやすさが改善され、平等な機会が保障され、個人の能力が十分発揮できる環境が整えられ、差別や偏見がなくなることで解消される部分が多いが、それには時間がかかるし、そのような状況が実現しても問題の全てがなくなるわけではない。  国は障害を持つことによって起こる支出の増大と収入の減少に対して、適切な支援を行わなければならない。この支援は障害を持つ人が社会参加し、社会生活を送っていく上での諸権利の実現を可能にするために行われなければならない。

 ここでは、支出の増大に対する保障および収入の減少に対する保障を合わせて、所得保障と呼ぶ。

@保障すべき生活レベルおよび所得レベル

1:国は、国民に対し、「選択し、自己決定し、それを実現して人間らしく生き生きと暮らせる生活」を保障しなければならない。

 そしてそのために「選択し、自己決定し、それを実現して人間らしく生き生きと暮らせる生活」とはどのようなものかを明確にしなければならない。

2:上記の目的のために国は専門の機関を設置し、国が保障すべき生活レベルおよび所得レベルについて定めなければならない

3:2で述べた機関には障害をもつ人をそのメンバーに含まなければならない。また作業の過程ではその作業の段階に応じてできるだけ多くの障害をもつ人の意見を聞き、反映していかなければならない

4:上記機関はそれに基づき、支出の増大と収入の減少を評価する方法を定めなければならない。

5:上記機関の検討過程および国が保障すべき生活レベルおよび所得レベルの策定根拠、支出の増大と収入の減少を評価する方法の根拠は全て公開されなければならない

6:上記機関は常設され、定期的に見直しを行う

7:上記機関の決定に際しては公正な公聴手続きを経なければならず、また決定に対しての異議や是正の申し立てや、個別の事情を考慮して柔軟な制度適用ができる仕組みを保障しなければならない

8:上記機関の活動に対しては、国からの干渉を受けない独立した存在の非営利公益の第三者機関が常に監視し、必要に応じて異議や是正の申し立てを行うことができる  

A支出の増大に対する保障

1:支出の増大に対する保障は社会参加のスタートラインに着くことを可能にするためのものであり、これは国が保障すべき生活レベルおよび所得レベルに関係しない基礎的な保障である

2:国が保障すべき生活レベルおよび所得レベルについて検討する機関が定める、障害を持つことによる支出の増大を評価する方法は、個人の支出ニーズを反映できる柔軟性を持たなければならない  

B収入の減少に対する保障

〔年金〕
1:現行の年金制度のもとでは、多くの障害をもつ人が無年金状態に陥っている。国はこれらの人たちから提起されている諸問題を速やかに解決すると共に、新たな無年金問題が生じないような方策を実施しなければならない

2:年金の最低支給額を、国が保障すべき所得レベルを満足する水準にする

〔生活保護〕
1:国は生活保護の支給に際し、受給者に対して様々な条件を付けることができるが、その条件は、受給者が自己決定を実現して自立した生活を営むための生活基盤を確立できるかどうかに配慮しながら、柔軟に適用されなければならない
 

C適正手続の保障

1:国は所得保障が個人の事情を十分反映し、柔軟に適用されているかどうかを監視し、問題点を是正する仕組みを確立しなければならない

2:1で述べた仕組みの確立に当たっては、障害をもつ人をそのメンバーに含まなければならない。また作業の過程ではその作業の段階に応じてできるだけ多くの障害をもつ人の意見を聞き、反映していかなければならない

3:上記の作業過程および結果の根拠は全て公開されなければならない

4:上記の仕組みは定期的に見直しを行う

5:上記の仕組みの決定に際しては公正な公聴手続きを経なければならず、また決定や運用に対しての異議や是正の申し立てを保障しなければならない

6:1で述べた仕組みに基づいた監視は、国からの干渉を受けない独立した存在の非営利公益の第三者機関が行う。この第三者機関は監視の仕組みや運用について、必要に応じて異議や是正の申し立てを行うことができる

7:国は所得保障制度全般について、その適用に対する個人および集団での異議や是正申し立ての権利とそれを保障する制度を確立しなければならない    

 


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