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《 二の7 建 築 物 : 実 例 》

 

 車いすを使うHさんは知人と会うために、近所の雑居ビルの二階にあるレストランに行きました。ところが最近できた建物なのに入り口に段差があるし、エレベーターは狭すぎて二階に上がれませんでした(@)。

 仕方がないので近くの喫茶店に移動して話すことにしましたが、そこは古くからのお店で、車いすで使えるトイレがないのでお茶を飲むことができず(A)、楽しい時間だったのに早めに切り上げなければなりませんでした。

 後日、その雑居ビルについて市の建築指導課に訊いてみますと、建築基準法では車いすで使えるような整備を求めていないし、車いすで使えるような整備を定めたハートビル法は強制力がない(B)ので、その雑居ビルは合法だと言います。

 Hさんは「それではもしそこで自分が働きたいと思ったとしても、その建物のために働くことができない(C)ではないですか」と言いましたが、「法律上は仕方ありません」という返事しかもらえませんでした。

 Hさんは次に行った喫茶店についても訊いてみましたが、既存建物を障害をもつ人が使えるようにするための改修は、ルールが定められていない(D)とのことでした。

 Hさんは街でたくさんお客が入って繁盛しているお店を見ても、自分たちだけはのけ者にされていると感じて(E)、割り切れない思いです。

 Hさんはこれはとても不公平で障害を理由にした差別だと思いますが(F)、どうすることもできません(G)。

 

@新築建物でも障害をもつ人が使えるようにはなっていない

 → 新築建物の整備について、ルールづくりが必要

A建築環境の整備が不十分なために、利用が制限されている
 → 平等な利用を保障する建築環境の整備が必要

   

Bハートビル法は努力義務であり、強制力がない
 → 強制力を持たせ、建築確認の要件とすることが必要

C建築物のために、障害をもつ人が職に就く機会が奪われる
 → 整備に当たっては、障害をもつ人が従業員として利用できるようにということも考慮されなければならない

  D既存建物について、障害をもつ人が使えるようにするルールがない

 → 既存建物の整備について、ルールづくりが必要

E建築物の不備によって、障害をもつ人が社会生活を享受できない
  → 建築物の持つ重要性について認識を持つ必要

F障害をもつ人が建物を使えないということは差別である
 → 建築物のアクセス整備は平等な社会参加を保障するために必要なことだという認識が必要

G問題を感じても何もできない
 → 障害をもつ人の相談に乗り、建築物の調査をし、必要に応じて是正を求める役割を持つ人や団体が必要

 


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《 U−7 建 築 物 》

 

〈基本事項〉

 人はその生活の多くを建築物の中で送っている。従って、建築物およびその付属物の整備が不十分なために特定の人の行動の自由が制限されることは、平等な社会参加を阻害するものである。
 社会は建築物を誰でもが利用できるようにすることが、慈善や限られた人への特別な配慮ではなく、社会的平等を実現するために必要な手段であることを認識し、その方針に沿った施策を行わなければならない。
 

 

@前提条件

1:建築物のアクセス環境の整備とは、建築物およびその建築物と外部をつなぐ敷地内通路において、多様な行動手段を持つ人たちが、基本的には単独で自由に行動できる環境を整備することを意味し、その環境は物理的に整備されていると共に、その整備されたものや部分がその機能を発揮できるよう、常に維持管理されていなければならない

A新築建築物の整備のレベル

1:国は建築物が備えるべきアクセス環境のレベルについて定め、建築確認の要件とする。このアクセス環境には、障害を持っていることによって不利になる可能性のある非常時の安全性が含まれる

2:国は上記のアクセス環境のレベルについて定期的な見直し作業を行い、常に質的向上を図らなければならない

3:上記、アクセス環境のレベルの策定、見直し作業には、利用者からのニーズを反映する仕組みの構築と、障害をもつ当事者の参画を必須としなければならない

4:アクセス環境の整備レベルの策定に当たっては、障害をもつ人がその建築物を外来者として利用する場合はもちろんのこと、その建築物を従業員やサービス提供側として利用する場合も含まれなければならない。

B既存建築物の整備のレベル

1:本項は既存建築物に関して、Aと同等な手段として定める

2:建築物所有者は既存建築物のアクセス環境について、建築物所有者が経済的に負担できる範囲で最大限の整備を行わなければならない。このアクセス環境には、障害を持っていることによって不利になる可能性のある非常時の安全性が含まれる。この整備は増築、改築などの建築工事計画のあるなしに関わらず、正当な理由がある場合を除いて全ての既存建築物になされなければならない。

3:国は2で述べた最大限の整備を具体的に実現する方策を確立し、本整備を含む工事が建築確認申請の対象である場合は建築確認の要件としなければならない。この方策には以下のものが含まれる
 ・整備すべきアクセス環境のレベル

 ・建築物所有者が経済的に負担できる範囲を判断する基準

 ・整備箇所の優先順位

 ・建築物所有者の負担能力と整備箇所の優先順位を勘案して整備レベルを定める手順
 ・上記整備レベルに応じて建築物所有者が整備を完了すべき期間
 ・2で述べた正当な理由についての定義
 

4:国は3で述べた整備の方策について定期的な見直し作業を行い、常に質的向上を図らなければならない

5:上記、整備方策の策定、見直し作業には、利用者からのニーズを反映する仕組みの構築と、障害をもつ当事者の参画を必須としなければならない

6:3で述べた整備方策の策定に当たっては、障害をもつ人がその建築物を外来者として利用する場合はもちろんのこと、その建築物を従業員やサービス提供側として利用する   場合も含まれなければならない

7:既存建築物のアクセス環境の整備については、3で定める方策に従って、建築物ごとに個別に検討される

8:既存建築物所有者は3で定めた方策に従い、国が定める期間以内にその整備を行わなければならない

9:国が定める用途、規模の既存建築物の所有者は、国が定める期間内にアクセス整備計画を策定し、国または国が定める機関に提出しなければならない

10:上記整備レベルおよび整備計画についての情報は公開されなければならない

11:9で述べた国が定める機関とは、Cの1で述べる第三者機関を指す

12:上記第三者機関は9で定めたアクセス整備計画について3で述べた方策に基づいて検討し、必要な場合は既存建築物所有者に是正を命じる

C権利救済

1:A、Bによって求められる整備レベルなどの事項が不十分、不適切だと感じた者は、自らその是正を求める訴訟を起こすか、あるいは国に直接、または国が定める独立した存在の非営利公益の第三者機関に異議や是正の申し立てをすることができる

2:建築物の整備あるいは整備計画が定められたアクセス環境のレベルに比べて不十分、不適切だと感じた者は、自らその是正を求める訴訟を起こすか、あるいは建築物所有者に直接、または国が定める独立した存在の非営利公益の第三者機関に異議や是正の申し立てをすることができる

3:1、2で述べた第三者機関は上記の申し立てに関して、建築物所有者に対して、建築物のアクセスレベル等に関する調査の権限を持つ

4:1、2で述べた第三者機関は上記調査の結果、その建築物のアクセスレベルが不十分不適切だと思われる場合は、申し立て者を代理して建築物所有者に対して是正の申し入れや訴訟などを行うことができる。

5:1、2で述べた第三者機関の職員の過半数は障害をもつ当事者でなければならない

6:国は上記のような是正の申し入れや訴訟などを行うことができる手続きの保障をしなければならない

Dアクセス環境の担保

1:建築物所有者、事業主、および建築設計者は、現存する環境が持つ問題点について学習を行い、アクセス環境の改善の方策を追求する継続的な努力を行わなければならない

2:国は上記の努力を実現するための教育プログラムを提供しなければならない

3:上記教育プログラムの実行機関は、国からの干渉を受けず、利用者の立場に立って行動する独立した存在の、非営利公益の第三者機関でなければならない

4:上記第三者機関の職員の過半数は障害をもつ当事者でなければならない  

 


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