食品に含まれる栄養は見た目には同じでも栽培の仕方や季節により異なり、旬の野菜は季節はずれのものに比べて、栄養価(ビタミンC、カロテンなど)が2倍から3倍以上も違うようで、できるだけ旬のものを食べるのが良いとされます。
現在は野菜よりも肉食が主流になっていますが、健康維持の点から考えますと、菜食主体の方が良いのではないかと思われます。
しかし、穀物と菜食を主体にした場合、つまり偏食する場合には、個々の食品に対する栄養素の知識が必要になってきます。
というのは、その認識に欠けるとミネラルやビタミンなどの欠乏が生じかねないからです。
しかし、その知識を持っていれば、何が欠け気味になるのかが分かり、それを意識的に補充することによって栄養の欠乏を回避することができます。
また、穀物と肉だけという場合にも、やはりビタミンやミネラル(特にカルシウム)の欠乏に陥りがちですから、栄養素について理解を深めておく必要があります。
そこで、以下ではこの概要を述べることにします。
上記で、豊富なものとして挙げたのは、食物の可食部100g当り、成人男性の1日当りの所要量に対して2割以上含むものです。
また、大きく類別して挙げたものの中には当然少ないものも結構あります。
病気/症状 | ビタミン | ミネラル | 補助的物質 | |||||||||||||||||||
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A | D | E | K | B1 | B2 | B3 | B5 | B6 | B12 | C | M | Na | K | Ca | Mg | P | Fe | Zn | Cu | Mn | ||
風 邪 | ○ | ○ | ○ | アリイン | ||||||||||||||||||
腰 痛 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
口内炎 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
貧 血 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
糖尿病 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
動脈硬化 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
骨粗鬆症 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
肝臓病 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||
胃潰瘍 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
脳卒中 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
心臓病 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
癌 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
白内障 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
ストレス | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
鬱 病 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
A | D | E | K | B1 | B2 | B3 | B5 | B6 | B12 | C | M | Na | K | Ca | Mg | P | Fe | Zn | Cu | Mn | ||
認知症 | ○ | ○ | DHA,EPAまたはα-リノレン酸 | |||||||||||||||||||
肩凝り | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
筋肉痛 | ○ | |||||||||||||||||||||
冷え性 | ○ | |||||||||||||||||||||
肥 満 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
疲れ目 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||||||
疲労感 | ○ | ○ | ||||||||||||||||||||
精力減退 | ○ | ○ | ○ | ヨウ素 | ||||||||||||||||||
イライラ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||
生理痛 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
更年期障害 | ○ | |||||||||||||||||||||
妊娠中 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
肌荒れ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||||||||
日焼け | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
髪の健康 | ○ | |||||||||||||||||||||
肥 満 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
飲 酒 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||
喫 煙 | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||||||||
睡眠不足 | ○ | ○ | ○ |
- 【風邪】
- ビタミンAは皮膚や粘膜などの上皮細胞の形成や働きに関っている。上皮細胞には細菌などの病原体の侵入を防ぐ働きがある。 ビタミンCはコラーゲンの生成に必要なもので、コラーゲンには細胞同士を接着する働きがある。 ニンニクなどに含まれるアリインはB1の吸収を高めるためのもの。
- 【腰痛】
- 腰痛はギックリ腰や椎間板ヘルニアなどによって背骨が変形したために神経や血管を圧迫して生じる痛みで、この治療には背筋を伸ばしたりして筋力をつけ、脊椎の固定性を強化するのがよい。 これとしては、ウイリアムス体操が推奨されている。 また、血液の循環を悪くしないように冷やさないことも大切である。
神経機能を正常に保つためにはビタミンB1が必要となる。 このことは中枢神経の場合、このエネルギー源となるのは糖質であり、この代謝にはB1が必要となるからである。 また、ビタミンB6はタンパク質や脂質の代謝に関係し、神経や皮膚を正常に保つ働きがあり、痛みの緩和に役立つ。
ビタミンB12は神経細胞の細胞膜の合成に関与し、神経の修復に役立つ。
- 【口内炎】
- 口内炎には様々な原因のものがあるが、よくあるのがうっかり口の中を噛んでしまうもの。 これは神経疲労やストレスが原因していることが多いようだ。 そこで、疲労回復にはエネルギー代謝に関るビタミンB2を摂取するとよい。 また、新陳代謝を促進させるにはタンパク質や脂質の代謝を促進するビタミンB6を摂取するとよい。 また、皮膚や粘膜の形成や働きに関与するビタミンAを摂取することも大事。
- 【貧血】
- 貧血とは、血液中に含まれている赤血球の数が少なかったり、これに含まれているヘモグロビンが少ない状態を言うもの。 いずれにしても貧血にはヘモグロビンの減少が関係している。
ヘモグロビンは酸素を運び(ヘムの鉄に結合することに因る)、炭酸ガスを運び去る(ヘム蛋白のバリン基に結合することに因る)役目を果たしている。 ヘモグロビンは赤血球が赤い色をしている原因物質であるため、貧血は蒼白い状態を引き起こす。 なお、酸素と結合したヘモグロビンは鮮赤色をしているが、酸素と結合していないものは暗赤色となる。 このことが動脈血と静脈血の色の違いの原因となっている。
貧血の原因としては、主に鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血がある。その他の貧血として重要なものに溶血性貧血がある。
鉄欠乏性貧血は鉄分の欠乏によって生じるもので、これが最も多い。 鉄分には動物性の鉄分であるヘム鉄と植物性の鉄分である非ヘム鉄とがあり、前者の吸収率は20%くらいであるのに対して後者は5%くらいと大きな差がある。 そこで、非ヘム鉄を摂る場合には、この吸収率を高めるためにビタミンC、たんぱく質も一緒に摂った方がよい。
悪性貧血は赤血球を作る際に必要となるビタミンB12の吸収障害が原因している。 これが悪性貧血と呼ばれた理由は、以前ではビタミンB12が発見されていなかっため治療法がなく、患者が死亡したことによる。 しかし、この吸収障害は胃から分泌されるB12の吸収に必要な内因子が胃粘膜の変化により分泌されないことが原因であることが分り(このビタミンが腸から吸収されるためには内因子と結合している必要がある)、現在ではB12の投与により治療できるようになった。 このことは胃切除のように胃酸分泌が低下すると起こるが、すぐに起こるわけではなく、体内に貯蔵されているB12が枯渇した場合に発症するようだ。 この枯渇は胃切除後、およそ5年後くらいのようだ。 ただし、胃が正常であっても、腸内にサナダムシや十二指腸虫(鉤虫)などがいると、ビタミンB12を消費してしまうため、この欠乏が生じる。
また、赤血球を作るには葉酸も必要となるが、通常の食事をしている限り、この欠乏に陥ることは稀である。
なお、悪性貧血は外国人には多いが、日本人の場合には比較的少ないとされる。
再生不良性貧血は、赤血球などの血球を作っている骨髄の働きが低下するために起こるもので、これが最も治りにくいものとされる。 この原因にはいろいろあるようだが、比較的多いのは薬の副作用に因るものとされる。 また、レントゲンなどの放射線もその原因になるとされる。 この貧血の場合には白血球も減少するため、細菌に対する抵抗力が減退することから、この感染症に罹り易くなる。
溶血性貧血というのは、赤血球が通常よりも早く壊れることに因るもの。 これによって血色素のヘモグロビンが流出し、これが体内で分解されて、胆汁色素となる。 多量の胆汁色素ができると、その処理が間に合わず黄疸が生じることから、この貧血の特徴は皮膚や目が黄色くなる。
溶血性貧には遺伝的原因のものと、そうでない後天的原因のものとがある。 後天的原因としてはいろいろな原因があるが、その中ではRh因子が関係しているものや、様々なウイルスに対して作られる自己抗体によるものが多いようだ。
- 【糖尿病】
- 糖尿病は、細胞にブドウ糖(グルコースのこと。全ての糖質は単糖であるグルコースに分解されるか、これに変換されて利用される。特に、脳ではエネルギー源としてはグルコースのみが利用されることから、脳活動においては必須の栄養素となる。この嗜好性が高いのは脳の要求によるものと考えられる)の吸収を促すインスリンというホルモンの分泌が低下することによる症状である。 食後には血管内の糖分が多くなることから、これを低下させる為に膵臓からこのホルモンが分泌される。 もし、血糖値が高いままの状態が続くと、毛細血管が傷ついたり、細胞の働きが低下することになる。 特に、精製された甘味料である砂糖などを多量に摂取すると、血糖値が急激に高くなり、このホルモンの分泌が多くなるが、これによって腎臓が疲弊すると、このホルモンの分泌が低下し、血糖値が高いままの状態となり、余剰な糖分は尿成分として排泄される。
- 【動脈硬化】
- 【骨粗鬆症】
- 骨粗鬆症(骨粗しょう症)は、骨密度が減少して骨がもろくなり、骨折しやすくなる症状である。 この骨折が起こり易い箇所としては、背骨、脚のつけ根、腕のつけ根、手首がある。 背骨の場合、圧迫骨折が起こるが、特にこの自覚症状がないことも多く、そのために軽視されやすいが、それを放置すると、一年以内に隣接する背骨も骨折する人が少なくない(二割くらいのようだ)。
骨粗鬆症は閉経後の女性に多く見られるが、これは女性ホルモンの減少が関係するとされる。 また、男性の場合も男性ホルモンのアンドロゲンの減少により、骨の破壊作用が大きくなり、骨粗鬆症になりやすくなるが、男性の場合にはアンドロゲンの減少は45才以降から緩慢に生じるため、女性の場合ほどには顕著ではないようだ。
骨も一定不変のものではなく、この破壊と再生が繰り返されている。 骨を破壊し吸収するものが破骨細胞で、新しく骨を形成するものが骨芽細胞であるが、これらの働きのバランスが崩れて、骨芽細胞の働きよりも破骨細胞の働きの方が強くなることによって骨粗鬆症が起きてくる。 女性ホルモンには破骨細胞の働きを抑制する作用があり、この急激な減少が骨粗鬆症を起こすことになる。
骨は細胞間の結合組織であるコラーゲン(繊維状タンパク質)にリン酸カルシウムなどのミネラルが付着したもので、骨の形成にはカルシウムの摂取が第一に重要である。 ただし、カルシウムを腸管から吸収するためにはビタミンDが欠かせない。 ビタミンDは皮膚に日光が当たることによって体内で作られるが、冬は肌の露出が少なく、また日光も弱いため、ビタミンDが欠乏することが予想される。 (女性は化粧することが多いことから、ビタミンDの摂取は大事と思われる。) 特に、日本海側は冬は曇天になることが多いため、ビタミンDが欠乏しやすい。 そのような場合にはビタミンDを食品(魚、卵、茸など)から積極的に摂取することが求められる。 ただし、ビタミンDを非常に多く含むものもあり、この過剰症に注意する。
アルコールの過剰摂取はビタミンDの代謝を阻害するとされ、特に高齢者などは避けた方がよい。 この過剰摂取というのは、アルコールを1日3単位(この1単位はビール中瓶1本に相当)以上摂取する場合のようだ。
あるいは、ビール大瓶1本(日本酒では1合、焼酎では120cc)程度のアルコールを長期間に渡って毎日飲み続けると、大腿骨頭壊死を起こして骨折する確率が高まる。 (16年間では、休肝日を設けている人に比べて発症リスクが4.4倍になるとされる。この壊死は、肝臓に何らかの障害が起きて、大腿骨頚部に血栓ができるためではないかと考えられている。症状としては、始めに階段の上り下りなどで膝痛が起こり、その後、半年から1年ほどで股関節も痛くなる、ということが多いようだ。) この骨折は背骨の圧迫骨折と並んで最も避けるべきものとされる。
また、アルコールは骨芽細胞の働きを弱めるとされる。お茶やコーヒーなどに含まれるカフェインの過剰摂取もカルシウムの排出を促進させるとされ、骨粗鬆症の危険因子の一つに挙げられている。
カルシウムの吸収をより高めるには、CPPを摂取すると良い。 CPPは牛乳などに含まれるタンパク質のカゼインが消化酵素によって分解してできるものなので、これは牛乳やチーズなどを摂取すればよい。 牛乳には吸収率の良いカルシウムが多く含まれることから、この摂取には特に有効といえる。 ただし、牛乳に含まれる乳糖の分解酵素が少ないために(東洋人の場合、少ない人が多い)、この摂取に難があるという場合にはチーズを摂取するとよい。
ただし、カルシウムを吸収しても、リンを多く吸収するとカルシウムの排出を促すため、リンを多く含む食品(リン酸塩として加工食品に含まれることが多いようだ)の過剰摂取は控えるようにする。 また、カルシウムの摂取においてはマグネシウムとの比率も大事で、骨の正常な代謝を維持するためにはこれらの比率は1:1が理想とされる。
また、糖分や塩分、しゅう酸の過剰摂取を控える。 糖分はカルシウムの排出を促し、塩分はカルシウムの利用効率を低下させ、しゅう酸はカルシウムの吸収率を低下させるため。
骨の形成を促すビタミンとしてはビタミンKがあり、これも重要である。 これは特に納豆に多い。
骨の形成にはコラーゲンの形成も大事になるが、このためにはタンパク質を必要十分に摂取するだけでなく、ビタミンCも十分摂取するようにする。 ただし、ビタミンCを十分に摂取しても、タバコを多量に吸うという場合にはビタミンCの消耗が多くなるため、ビタミンCを多量に摂取する必要がある。 また、喫煙はカルシウムの排出を促し、女性ホルモンの低下を招くとされる。
タンパク質も過剰摂取が続くと、脂肪となるか、体外に排出されることになるが、多量に排出されるときには、血液が酸性に傾くのを中和するためにカルシウムが大量に必要となる。 もしカルシウムが欠乏する場合には、骨から溶出することになる。
食事以外のことでは、適度な運動を行い、骨の形成を促すようにする。 ただし、過度な運動は体内で活性酸素の発生を高めるため、あまりよくない。
活性酸素は血液中のホモシステンという(悪玉)アミノ酸によって増えることが多いようで、体質的にそれが濃くなりやすいという人はコラーゲンの劣化に注意する。 葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の欠乏は、ホモシステンを増加させるとされ、これらのビタミンも十分に摂取した方がよい。
活性酸素だけでなく高血糖状態も「骨質」であるコラーゲンを劣化させる大きな要因とされる。 砂糖は純度が高く消化吸収も速いため、高血糖状態になり易い。
他には、ステロイドの長期使用も骨粗鬆症の危険因子の一つに挙げられている。 具体的には、経口ステロイド治療による1日5mg以上の摂取は骨量を減少させるとされる。
また、次の持病も骨粗鬆症の原因になるとされる。 関節リウマチ、糖尿病、動脈硬化系疾患、腎疾患、甲状腺機能亢進症など。
- 【肝臓病】
- 【胃潰瘍】
- 【脳卒中】
- 【心臓病】
- 【癌】
- 【白内障】
- 【ストレス】
- 【鬱病】
- 【認知症】
- 認知症とは以前、痴呆症と呼ばれていたもので、痴呆という名称の印象がよくないことから、認知症という呼称に変更された。 認知症は脳の神経細胞が死滅することにより生じるもので、これは血管性のものと細胞性のものとがある。 前者のものは血管性認知症と呼ばれ、後者のものは変性性認知症と呼ばれる。
変性性認知症の代表的なものとしてアルツハイマー(氏)病がある。 (上記表の認知症の箇所は、主にこの病態における有効な栄養素である。)
アルツハイマーは、脳の萎縮、老人斑、原繊維変化を三大徴候とする認知症である。 老人斑は細胞外のアミロイド斑によるものである。 これは、膜内在タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の代謝異常によって生じたフラグメントが細胞外に遊離し、これが凝集してオリゴマーを形成し、斑となったもの。 このオリゴマーが神経細胞の膜のイオンチャンネルを遮断して、結果的に細胞死を起こすことになる。 APPの代謝異常はビタミンB1に依存する酵素(α-セクレターゼ )の活性低下によるもののようである。 また、DHAはこのオリゴマーの形成を阻害するとされる。
原繊維変化は微小管結合タンパク質であるタウタンパク質が過度のリン酸化により、微小管から遊離を起こし、糸くず状に絡んだものが細胞内に溜まったもので、これが細胞死を起こす。 過度のリン酸化を防止するためには、脂質内で働く抗酸化物質であるビタミンEの摂取が有効となる。
血管性認知症についてはEPAの摂取が有効で、これには脳血流の改善作用があるとされる。 このことは、赤血球(この直径は毛細血管の内腔よりも大きい)の膜に含まれるEPAやDHAが細胞膜の柔軟性を高めて毛細血管の中をスムーズに流れ易くなることによる。(一般に細胞膜には不飽和脂肪酸が含まれ、これによって膜の柔軟性が維持されている。) また、EPAやDHAには血小板の凝集を抑制する作用もある。このことは、血小板の凝集はリノール酸揺由来のアラキドン酸によって促進されるが、EPAやDHAはアラキドン酸の作用を阻害したり、アラキドン酸を体外に排出することによる。
DHAやEPAは青魚に豊富に含まれているが、この摂取が困難という場合にはこれらの脂肪酸に代謝されるαリノレン酸を摂取してもよい。 αリノレン酸はえごま油や菜種油、大豆油などに多く含まれる。 特にえごま油に多く、これには大豆油の約8倍も含まれているが、流通量も少なく高価であるのが難点である。アルツハイマーは結局のところ神経細胞死によるもので、これを引き起こすものを摂取しないようにすることも大事である。 神経細胞死を起こす物質としてアルミニウムイオンがある。 通常、これは腎臓により除去されることになるが、老化などにより腎機能が低下した場合にはアルミニウムが血管に入り、脳に到達することになる。 それでも、脳には血液脳関門があり、単体ではアルミニウムイオンが侵入することはないが、鉄のように生体に必須なイオンがトランスフェリンというタンパク質と結合して脳内に入り込むのと同じように侵入することになる。 このことは、鉄は3価の陽イオンであるが、アルミニウムも3価の陽イオンであり、これらの金属は似た性質を持つことから、鉄が不足している場合には、トランスフェリンはアルミニウムと結合することによる。
したがって、できるだけアルミニウムを摂取しない方が良い。 アルミニウムはアルミ調理器具やアルミ缶(炭酸飲料や酒類)から溶出し、これらからの摂取が多いようである。 他には、水道水や胃腸薬などの薬剤にも含まれていることがある。
日本の水道水は欧米の水道水に比べてアルミニウム濃度が高く、0.6ppmほど含まれている(これはアルミ缶飲料と比べても低い数字ではなく、だいたい同じレベルとなっている)とされるが、これはWHOで定めた安全基準である0.2ppmを上回っている。 水道水にアルミニウムが多く含まれているのは、浄水場において、凝集沈殿剤として硫酸アルミニウムを多量に投与するからのようだ。生体に必須のミネラルであるカルシウムも、これが過剰にあると神経細胞死を招くようになる。 そこで、カルシウムの摂取を制限しようとすると、この欠乏状態が生じたときに骨などからカルシウムが溶出して、逆にカルシウム濃度が高くなることがある。
また、神経の興奮状態が長く継続すると、神経細胞内でカルシウム過剰が生じて、この細胞死を招くと考えられる。 特に、睡眠不足は神経の持続的興奮状態を引き起こし易いようである。 このことは、睡眠不足により抑制性神経細胞の活性低下が関係しているのではないだろうか。 それは飲酒による興奮状態と似たものと考えられる。 つまり、抑制性の低下が興奮性の増大を招くのだと考えられる。
- 【肩凝り】
- 【筋肉痛】
- 【冷え性】
- 【肥満】
- 【疲れ目】
- 【疲労感】
- 【精力減退】
- 【イライラ】
- 【生理痛】
- 【更年期障害】
- 【妊娠中】
- 【肌荒れ】
- 【日焼け】
- 【髪の健康】
- 【肥満】
- 【飲酒】
- 【喫煙】
- 【睡眠不足】
また、高齢になると(短期的)記憶力が低下してくるものですが、これは核酸やDHAなどを摂取することで、ある程度防止できるようです。
このためには、一日当り2〜3gの核酸を摂取する必要があるとされます。
なお、これまで脳細胞は一旦出来上がってしまうと増殖しないものとされてきましたが、脳細胞の一部は増殖が可能なようです。
これは脳内に(未分化の細胞である)幹細胞があることによります。
(1)ビタミンC
特に、ビタミンC、ビタミンE、カロテンを一緒に摂ることが効果的とされます。
これはそれぞれ働く箇所が異なるためです。
免疫は通常は非自己的物質に対する反応なのですが、誤って自己の細胞や蛋白質に対しても働いてしまうことがあります。
これは自己免疫と呼ばれ、これとしてはリューマチ(関節の痛みや腫れを起す症状のもので、これは遺伝的要素が強いとされます)が挙げられ、これもストレスと関係が深いようです。
電子レンジには食品を簡単に温めることができるというメリットがある反面、分子の衝突によってビタミンなどの破壊が生じてしまうことより、栄養価が低下してしまうことに注意する必要があります。
なお、電子レンジで食品を温めたり調理した場合、食品からの放射線を完全に消散させるため、2〜3分そのまま置いてから取出した方がよいとされます。
アルコールの中には、芳香族環(炭素環ではベンゼン環となる)に水酸基が結合したものがあり、これはフェノールと呼ばれます。
特に、一つの芳香族環に複数の水酸基が結合したものはポリフェノールと呼ばれます。
アルコールに似たものとして、アルデヒドがあります。
これは、酸素が炭素と二重結合し、かつこの炭素が水素と結合したアルデヒド基(O=C-H)をもつものです。
この最も単純なものがホルムアルデヒドで、これはアルデヒド基に水素が結合したもの(H-CHO)です。
ホルムアルデヒドは反応性の高い物質で、殺菌作用があるため、スモークして保存性を高めるために使用されたりしますが、体内では毒性を示します。
これは、蛋白質にある窒素と反応して、蛋白質同士を橋かけ結合して、物質を固くしたり、蛋白質を不活性化するためです。
アルデヒド基の水素が水酸基に置換したものがカルボキシル基(O=C-OH)で、カルボキシル基をもつものはカルボン酸とよばれます。
脂肪酸はカルボン酸の一種です。
カルボン酸(やアミノ酸などの酸)とアルコールからできるものとしてエステルがあります。
これは、カルボン酸RCOOHが、アルコールR'OHと反応して、水1分子がとれたものです。
つまり、次の反応によってできます。
さて、ポリフェノールと関連して似たような用語が多く混乱するでしょうから、以下ではポリフェノールについて整理しておきたいと思います。
ポリフェノールにはよく言われるフラボノイド系の他に、クロロゲン酸系、フェニルカルボン酸系(没食子酸系とも)、エラグ酸系(美白効果があるとされる)、リグナン系、クルクミン系、クマリン系などがあります。
クロロゲン酸はコーヒー、イモ類などに含まれ、抗酸化作用を持ちます。
リグナン系には、ゴマやゴマ油に含まれているゴマリグナンの一種であるセサミノールがあります。
これには強力な抗酸化作用があり、過酸化脂質の生成を抑制したり、動脈硬化やがんを予防する効果などがあります。
また、アルコールの代謝過程でできるアセトアルデヒド(二日酔いの原因物質)の分解を早める作用もあります。
クルクミンはウコンやターメリックに含まれる黄色い色素成分のことで、これには解毒作用、胆汁分泌促進、抗酸化作用があるとされます。
特に肝機能の改善や回復の効果が高いとされます。
フラボノイドは、可視光領域の光を吸収する性質があるため、これは植物の色素成分となっています。
また、紫外線も吸収する性質を持つものもあり、この色素をもつ花(オトギリソウなど)を食べた場合、これが皮膚部分に集って、紫外線を吸収し、炎症を起すことがあります。
フラボノイドの種類としては、アントシアニン(シアニジン系とデルフィニジン系がある)、イソフラボン、フラボン、フラボノール、フラバノール、フラバノン、カルコンなどがあります。
アントシアニンはブルーベリーやブドウなどに含まれる赤〜青紫色の色素成分で、フラボノイドの中では代表的なものとされます。
大豆イソフラボンは大豆の胚芽に多く含まれるに含まれるポリフェノールの一種で、これにはゲニステイン、ゲニスチン(ゲニステインの配糖体)、ダイゼイン、ダイジン(ダイゼインの配糖体)、グリシテイン、グリシチン(グリシテインの配糖体)などの成分があります。
なお、非配糖体のものはイソフラボンアグリコンと呼ばれます。
カテキン類はタンニンの一種で(タンニンは大きく加水分解性タンニンと縮合型タンニンに分類されますが、カテキンはフラボノイド骨格をもつ縮合型タンニンとなります)、これにはカテキン(緑茶など)、エピカテキン(カカオ、赤ワイン、緑茶など)、エピガロカテキン(緑茶など)、エピカテキンガレート(緑茶など)、テアフラビン(紅茶など)などの種類があります。
なお、カテキンは緑茶などに多く含まれることから緑茶ポリフェノールとも呼ばれますが、これは商用名であって正式名ではありません。
また、カカオマスポリフェノールと呼ばれるものがありますが、これはカカオに含まれるポリフェノールのカテキンやエピカテキンなどの成分のことです。
タンニンを化学的構造からいうと、これはポリフェノールの一種で、これは加水分解性タンニンと縮合型タンニンに分類されます。
縮合型タンニンはフラボノイドの骨格を持つことから、フラボノイドとなります。
加水分解性タンニンは、個々のベンゼン様の環(多価フェノールになっているもの)などが縮合を行っていないものです。
これはエステル結合したもの(酸とアルコールから水1分子が取れてできるもの)であることから、熱水や酸、アルカリ、酵素を加えると元の酸とアルコールに分解されます(これは加水分解と呼ばれます)。
縮合型のものは、環の縮合が起っているものとなります。
これは、次のようなフラボノイドの骨格をもつ、単一のもの(単量体またはモノマーと呼ばれる)が、複数結合したもの(オリゴマーまたはポリマーと呼ばれる)です。
縮合型タンニンで最も簡単なものといえるのが、カテキンやエピカテキンで、R1は水酸基、R2,R3は水素となります。
これらは分子的には同じものですが、酸素6員環に結合する水酸基の結合の仕方(立体配置)が異なります。(なお、立体配置を表す場合、破線は結合面に対して下側に付くこと、太い実線は上側につくことを示しています。上や下は基準とする結合配置によって決ります。)
カテキン類は茶の成分で、緑茶な紅茶、ウーロン茶に含まれるものですが、同じ葉を使用した緑茶のものと紅茶・ウーロン茶のものとは、少し構造が違っています。
これは、製造方法が異なることによります。
つまり、緑茶は葉を摘んだ後、蒸すのですが、紅茶やウーロン茶は蒸さないという点が異なっています。
葉を蒸すことによって発酵酵素が失活して、酸化しないようになっています。
カテキンの酸化というのは、このモノマー同士が酸化重合することを意味するのですが、この重合によってカテキンの活性が低下することになります。
このため、緑茶の方が強い抗酸化作用を持つことになり、紅茶やウーロン茶より動脈硬化やがんの予防などに高い効果を持つことになります。
タンニンの性質としては、この定義よりタンパク質の収斂作用がまず第一に挙げられます。
この性質により、タンニンを多量に摂取すると便秘の原因になります。
例えば、ゲンノショウコは便秘に著明な効果を発揮しますが、これはゲンノショウコに多量に含まれている加水分解型タンニンの凝集作用によるものです。
カテキンの作用としては、抗酸化作用、発ガン抑制、胆汁酸の分泌促進(血液中のコレステロールの増加を防ぐ)、殺菌作用、消臭作用、血圧上昇抑制作用(高血圧の予防)、血糖値上昇抑制作用(糖尿病の予防)、抗インフルエンザ作用などがあります。
殺菌作用としては、食中毒を起す腸炎ビブリオ菌やブドウ球菌などの殺菌、歯のエナメル質を溶かして虫歯の原因となっているミュータンス菌の殺菌や、胃潰瘍や胃癌などの原因菌とされるピロリ菌の殺菌が挙げられます。
(ただし、胃内の酸度の強い人の場合には、ピロリ菌の殺菌効果はあまりないという報告があります。
これは、その場合にはピロリ菌が胃の粘膜内に潜り込み、ポリフェノールと接触することがないからということです。)
カロテン類にはカロテン(α,β,γの3種がある)やリコピンなどがあります。
リコピンはカロテンの2つの環が開いた構造のもので、これはトマトや柿、スイカなどに含まれる赤色の色素成分です。
キサントフィル類にはゼアキサンチン、ルテイン、アスタキサンチンなどがあります。
ゼアキサンチンは、カロテンの2つの環で一つの水素が水酸基に置き換わった構造のもので、これはトウモロコシや卵黄などに含まれれている黄色から橙色の色素成分です。
体内では目の網膜の黄斑に多く存在して、紫外線により発生する活性酸素を消去して、黄斑症を予防します。
(黄斑症は黄斑が紫外線などによる活性酸素によって黄斑変性を起すことが原因です。)
また、白内障の予防にも効果があるとされます。
ルテインはゼアキサンチンとは右端の環の二重結合の位置が異なっているだけの構造で、これは緑黄野菜(特にホウレン草に多い)に含まれている黄色の色素成分です。
体内では目の網膜の黄斑部に多く存在し、強い抗酸化作用により活性酸素を消去して、黄斑症を予防するとされます。
また、白内障や緑内障も予防するとされます。
特に加齢によりルテインの吸収や代謝が衰えるため、高齢者の方はルテインを積極的に摂取した方が良いようです。
他には抗癌作用があり、特に乳癌の発生を予防するとされます。
アスタキサンチンは、ゼアキサンチンの2つの環で、水酸基の隣の水素が酸素に置き換わった構造のもので、これは鮭やカニ、エビに含まれる赤い色素成分です。
これは非常に高い抗酸化作用を持つのが特徴です。
また、メラニン色素の沈着を抑制して美白効果があります。
他には、アスタキサンチンは脳の血液脳関門を通過できるため、脳内の活性酸素を直接除去することができ、脳内の活性酸素が原因となっている記憶障害や脳梗塞などの症状の予防や改善をするとされます。
・核酸
生体を構成する物質として重要なものは蛋白質と核酸です。
核酸にはDNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)とがあります。
DNAは細胞核を構成している染色体の重要な物質で、つまり遺伝子の本体です。
しかし、実際に蛋白質の合成を受け持つのはRNAの方で、これには鋳型RNA(m-RNA)と転移RNA(t-RNA)などがあり、鋳型RNAの方はDNAの複写として核内で合成され、細胞の中のリボソームに辿りつき、蛋白質を合成させます。
このときアミノ酸を必要としますが、これはそれぞれのアミノ酸に付着する役目をする転移RNAが受け持ちます。
核酸はそのように重要な物質ですが、これは体内で糖質と蛋白質から十分に合成されると考えられているため、摂取すべき栄養素とは考えられていません。
しかし、体内で十分に合成されるのは20歳くらいまでで、それ以降は合成が不十分となり、このため細胞分裂や蛋白質合成が阻害され、老化が生じてくるようです。
特に穀物や野菜には核酸が少ないとされ、これらのものばかりを食べている人は老化しやすいとされます。
したがって、老化を防止するには核酸の豊富なものを食べるのが効果的だということになるようです。
例えば、老化の特徴の一つである白髪には、高核酸食品と動物性蛋白質、ビタミンA・B2・B6、パントテン酸などの摂取が有効なようです。
ただし、核酸を多量に摂取すると、この成分のプリン類(アデニンとグアニンの塩基)によって血中の尿酸値が高まり、痛風や腎臓結石の原因になるとされます。
よく美食の人に痛風となる人が多いのは、肉や魚を多量に食べるため、核酸を過剰に摂取することが原因のようです。
そうしたことを防止するためには、尿の排泄量を多くするために水分を多く(1日2リットル程度)取ればよいとされます。
・所要量
所要量は、健康を維持するために最低限必要な量(これは平均値)に一定の安全率(2割程度)を掛けたものです。
しかし、摂取したものが全て吸収されるとは限らないので、所要量だけ摂取しても、十分でない場合があります。
例えば、
カルシウムでは、牛乳の吸収率が高いとされますが、この吸収にはビタミンDが必要です。
また、体格や活動性によっても所要量は変化します。
よく男性と女性とで所要量が多少異なるのは、体格的相異が大きいと考えられます。
ただし、発育盛りでは、体格は大きくなくても、所要量が増えるという場合があります。
例えば、カルシウムがそうです。
なお、現在では所要量という言葉の代りに、推奨量という言葉が使用されます。
・生理作用と薬理作用
ビタミンの摂取量の相異によって生理作用のみが現われる場合と薬理作用も現われる場合とがあります。
1日の所要量を満たすだけでは生理作用しか望めません。
ただし、ビタミンA・Dは過剰症もあるので、摂取量に注意する必要があります。
・水溶性のビタミン
水溶性のビタミンは茹でると、水に溶けだして、減少します。
これは、葉のもので5〜7割くらい(5割くらいが多い)、根または豆が1〜5割くらい(1・2割くらいが多い)となります。
・脂溶性のビタミン
脂溶性のビタミンを摂取する場合、そのままでは吸収率が悪く、油や脂肪と共に摂取すると吸収率が高まります。
・野菜の栄養価について
豆類を除外した野菜の栄養価は、肉や魚介類その他に比べて、全般的に低い傾向が見られますが、これは野菜の水分含有率が高いことが関係しているように思われます。
つまり、水分を除外したものが栄養分として表わされるわけですが、多くの野菜の水分の含有率が90%以上であるのに対して、魚介類や肉類は70〜80%程度なことより、魚介類などの栄養分そのものの含有率は少なくとも野菜の2倍以上となり、平均した値としては4倍くらい違うことになります。
そこで、野菜の各栄養価を4倍して比較すれば、結構野菜も魚介類などと張り合います。
ただ、やはり蛋白質や脂質は、肉や魚介類の方が多めですが。
特に野菜には脂質がほとんど含まれていないものが大半です。
また、一般に根よりも葉の方が栄養価が高く、葉も捨てずに利用したいものです。
葉よりも根の方がおいしく、このため根の方が栄養価が高いと思われるのは、根の方が糖質が高く、そして蛋白質が低いことが関係しているように思われます。
(蛋白質は味覚にはほとんど関係がないことより。)
あとは、歯ざわりの違いかもしれません。
(これも味覚情報として関係します。)
・活性酸素対策
食品の摂取や呼吸、ストレスなどで生じた活性酸素は過酸化脂質やガンなどの原因となります。
活性酸素は肝臓で抗酸化酵素によって除去されますが、このことは30代くらいまでで、40才を過ぎるとこの働きが弱まってしまいます。
(抗酸化酵素としては、グルタチオンペルオキシダーゼとSOD酵素があり、これらは黄緑色野菜に多く含まれるとされます。ただし、グルタチオンペルオキシダーゼはセレン、SOD酵素はマンガン、銅、亜鉛の微量ミネラルを必要とします。)
このため、肝臓で処理されなかった活性酸素は食べ物から摂取したもので消す必要が出てきます。
このような食物としては、以下のものが挙げられています。
(2)ビタミンE
(3)カロテン(一般にはこれはカロチノイド類のことで、β-カロテンなどがあります)
(4)カテキン(緑茶に多い)
(5)フラボノイド(特にイチョウフラボノイドの効果が高いとされます)
(6)ユビキノン(コエンザイムQのことで、これは順ビタミンとされます)
(7)含硫化合物(ニンニクやキャベツなどに多い)
なお、カテキンやフラボノイドはフェノール化合物(ポリフェノールとも)に総称されるもので、他にはアントシアニン(赤ワインに多いということで有名)などがあります。
・ストレスと免疫
免疫とは異物(自己の体内以外のものである、細菌・ウィルスなどで、これは抗原と呼ばれます)に対する認識・排除システムのことで(認識は抗体生成によって行われます。一旦、抗体が作られると、それが保持されて異物はすぐに撃退されます。つまり、免疫があるというのは、その抗原に対して抗体ができている状態のことです)、ガン細胞(遺伝子の損傷によって生じる非自己的細胞)もこの対象になります。
ガン細胞はNK細胞(ナチュラル・キラー細胞、リンパ球の一種。リンパ球は白血球の2〜5割ほどを占める)によって撃退されるのですが、NK細胞の活性はストレスと関係が深く、ストレスが強いほどこの活性が低下するようになります。
もしそうした強いストレスを受けつづけていると、NK細胞の活性が低下したままとなって、ガン細胞を増殖させてしまうようです。
また、ストレスによって副腎皮質ホルモンが分泌され、これによってコルチゾール(強い抗炎症作用をもつ)が増えますが、これは免疫系を抑制するとともに、肝臓に貯蔵されているグリコーゲン(糖質はブドウ糖に還元され、これはグリコーゲンとして貯えられます)を血中へ放出するのを促し、血糖値が上がるため、糖尿病の原因にもなるようです。
なお、ストレスによって怒りや恐怖が生じたりもしますが、これは交感神経を刺激し、副腎髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンは肝臓にブドウ糖の放出を行なわせ、ノルアドレナリンは血管を収縮させ、血圧を上昇させます。
ストレスによってコルチゾールやカテコールアミン、成長ホルモンなどが産生するのですが、これらは自己に対する強迫的心理傾向(A型気質と呼ばれるもの)によって増加するとされ、このことによって脂肪組織から遊離脂肪酸の導出が促進されます。
さらに、遊離脂肪酸の代謝産物によってコレステロールが増加するため、動脈硬化を引起こすようになるとされます。
・電子レンジ
冷めたものを温めるものとして電子レンジがよく使用されますが、これは電磁波の一種である波長約12.2cmのマイクロ波を当てて食品中の水分子を高速回転させ、それが他の分子と衝突するときに生じる「摩擦熱」によって食品を温めようとするものです。
水分子の場合、共有結合しているとはいえ、共有している電子が酸素側に強く引きつけらていて分極しています。
このため、水分子の結合面に対して上下に変動する電場を与えると回転するようになります。
そこで、この水分子の回転運動に同期するような振動の電磁波を当ててやれば、この回転運動が非常に高まることになります。
また、電荷を持っているイオン(例えば塩やミネラルなど)もマイクロ波をよく吸収します。
したがって、水分及びイオンを含まない場合には電子レンジによって加熱することはできないことになるのですが、多くの食品は水分を含みますから、総じて食品の加熱が可能になります。
(水分子以外でも動かされる有機分子は多いと考えられています。)
ただし凍っている場合には、水分子同士は水素結合によって比較的固く結びついていますから、回転させることが困難となります。
したがって、冷凍食品の場合にはその表面のみが温まり、中は凍ったままということが起こります。
また、塩分が多い場合にはマイクロ波がよく吸収されるため、食品の表面部分がよく温まる結果となります。
一方、水分が少ない場合には熱容量が小さいために食品がよく加熱されますが、表面は外気によって冷まされるため、表面よりも内部の方が高くなります。
また、分子の立体配置が変るものもあるとされます。
天然の脂肪酸やアミノ酸は固有の立体配置を取っていて、立体異性体のもの(D型アミノ酸やトランス脂肪酸)は体内で利用できなかったり、悪影響が生じる場合があります。
・アルコール、フェノールなど
アルコール(広義)の定義ですが、これは飽和の炭素原子に水酸基(-OH)が結合したものとなります。
(そのようなアルコール分子は一般に、「…オール」や「…ノール」などと呼ばれます。)
アルコールでも、結合する水酸基の数によって一価アルコール、二価アルコール、三価アルコールなどと呼ばれ、一般に二価以上のアルコールは多価アルコールと呼ばれます。
例えば、単糖は多価アルコールです。
なお、多価や多数を意味する「ポリ」という接語がありますが、ポリアルコールという名称は使用されません。
普通、アルコールと呼ばれるものは、エチルアルコール(エタノールとも)またはメチルアルコール(メタノールとも)のことで、飲用のアルコールはエチルアルコールとなります。
メチルアルコールは失明などを起すことから、体内では毒物となります。
これらはアルコールの中では単純な構造のもので、メタノールはメタン(CH4)に一個の水酸基が化合したもので(CH3-OH)、エタノールはエタン(C2H6)に一個の水酸基が化合したもの(CH3-CH2-OH)です。
なお、水酸基を持つものとしては水がありますが、これは炭素を含まないことより、アルコールにはなりません。
次に簡単なものがアセトアルデヒドで、これはアルデヒド基にメチル基が結合したもの(CH3-CHO)です。
これはアルコールが最初に代謝されてできるもので、これが酢酸に代謝されないで、長く残ってしまうことが二日酔いの原因です。
カルボン酸の最も単純なものがギ酸で、これはカルボキシル基に水素が結合したものです。
ギ酸は蟻などの毒虫に刺された時に注入される毒成分の一つになっています。
また、メタノールが代謝されると、まずホルムアルデヒドができ、次にギ酸に代謝されるのですが、ギ酸によって蛋白質が傷つけられることになります。
そのように体内でメタノールからホルムアルデヒドとギ酸ができることが、メタノールが体内で毒性を示す理由になっています。
次に簡単なものが酢酸で、これはメチル基にカルボキシル基が結合したもの(CH3-COOH)です。
次に長い炭素鎖を持つものがプロピオン酸で、これはエチル基(エタンから水素が1つとれたもの)にカルボキシル基が結合したもの(CH3-CH2-COOH)です。
また、乳酸はプロピオン酸の中央の炭素の水素1個が水酸基に置換したものです。
ここで、RCOOR'の COOR'の部分の結合の仕方は、O=C-O-R'となります。
・ポリフェノール
ポリフェノールは植物に比較的多く含まれる成分で、体内で発生する活性酸素を抑える作用があることから心臓病、癌などの疾患に有効な一つとされます。
また、ポリフェノールは通称のファイトケミカルと総称されるものの一つです。
ファイトケミカルはカロテノイド群、ポリフェノール・フラボノイド群、硫黄化合物群に分類されます。
なお、ファイトケミカル(ファイルとは植物の意)とは果物や野菜に含まれる栄養素以外の機能性成分のことで、これは植物が紫外線や酸素などの害から守るために作り出した化学物質のことですが、これは植物の細胞と似ている生体の細胞の場合でも類似の効果を持ちます。
ポリフェノールの一般的作用は抗酸化作用ですが、これが発癌抑制性を示すのは次の理由によります。
癌というのは自己とは異なる遺伝子となった細胞が勝手に増殖して起こる症状であり、この遺伝子の変化を引起こすのが活性酸素やフリーラジカル(活性酸素の中にもフリーラジカルのものがあります)、紫外線などで、ポリフェノールは活性酸素やフリーラジカルを消去することより、癌の予防に大きく寄与するということになります。
この発癌抑制性は抗酸化作用にあるわけで、これはカロテノイドなどにもありますが、カロテノイドと比較するとポリフェノールの発癌抑制効果の方が非常に強いとされます。
また、抗酸化物質は糖尿病の予防にも効果があるとされますが、これは次の理由によります。
糖尿病は膵臓の「ベータ細胞」から分泌される糖の代謝を促すインシュリンの不足によって生じますが、このベータ細胞は酸化(フリーラジカルによる)に弱いことより、活性酸素やフリーラジカルを消去するポリフェノールなどがこの予防に効果を発揮することになります。
もっともこれはインシュリン依存型(T型)の糖尿病の場合で、インシュリン非依存型(U型)の場合には食事療法などにより治療します。
因みに、活性酸素等の消去はSODという酵素によっても行なわれますが、加齢によりこの働きが弱まることから、中高年の人ほど抗酸化物質の摂取が必要となってきます。
・フラボノイド
フラボノイドとは、次の構造のものを含む化合物となります。
ベンゼン様の環:酸素6員環-ベンゼン様の環 (「:」…環同士が1辺で縮合していることを表した)
ベンゼンとは、最多の不飽和炭素数をもつ不飽和炭化水素6員環(つまり二重結合が3箇所ある6員環のこと)のことで、これは芳香族性の性質を示すことから、ベンゼン環を基本環とするものは、芳香族炭化水素と呼ばれています。
(一方、環の中に二重結合があっても、最多の二重結合を含まない炭素環は、脂環式炭化水素と呼ばれます。これは性質が脂肪と似ることによります。)
ベンゼン様の環とはベンゼン環の水素が水酸基などと置換している環のことです。
水酸基が1個結合したものはフェノールと呼ばれ、2個以上結合したものはポリフェノール(多価フェノール)と呼ばれます。
したがって、フラボノイドはポリフェノールとなっていることも多いのですが、当然のことながらポリフェノールでないものもあります。
酸素6員環とは、ここでは酸素1個と炭素5個からなる飽和6員環のことです。
これらの代表的なものとしては、以下のものがあります。
アントシアニン … アントシアニジン、ペオニジン、ペラルゴニジン イソフラボン … ゲニスチン、ダイゼイン(大豆イソフラボン) フラボン … クリシン、アピゲニン、ルテオリン フラボノール … ルチン、ケルセチン、ケンフェロール フラバノール … カテキン類 フラバノン … ヘスペリジン、ナリンジン カルコン … カルタミン、キサントアンゲロール
アントシアニンには抗酸化作用の他に視力改善作用があることで知られます。
この視力改善作用は網膜にあるロドプシンの再合成を促進することによります。
つまり、網膜にあるロドプシンが光エネルギーを受けて分解される時(ロドプシンのシス型のレチナールがトランス型に変って、レチナールと結合していた蛋白質のオプシンと離れることによる)、神経インパルスが発生して脳に視覚情報を伝えるのですが、この分子が再合成されないとこの過程を継続することができなくなるためです。
また、フラボノイドの特徴である抗酸化作用もあり、これよりラジカル消去作用、脂質改善作用(過酸化脂質の防止)、抗変異原作用、抗ガン作用を持ちます。
また、血中のコレステロールや中性脂肪の低下作用があることから、肝機能障害(脂肪肝)軽減作用 があります。
他には、抗炎症作用、高血圧抑制、糖尿病予防作用などもあります。
ただし、アントシアニンは体内では4時間程度しか存在できないとされます。
大豆イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをすることで知られます。
(イソフラボンアグリコンの中ではゲニステインのエストロゲン活性が最も高いとされます。)
エストロゲンは骨の代謝に関わっていて、これが不足すると骨粗鬆症などになりやすく、特に女性の閉経後はエストロゲンが少なくなることより、積極的に摂取した方が良いとされます。
なお、男性の場合も、男性ホルモンであるアンドロゲンの減少により、骨の破壊作用増大のために骨粗鬆症になりやくなります。
男性の前立腺癌は男性ホルモンの過剰分泌が原因であるとされ、女性ホルモン様の大豆イソフラボンを摂取することはこの予防になるとされます。
ただし、ホルモン様物質であるため、過剰摂取の弊害を考慮する必要があります。
この健康影響が考えられない上限値として、大豆イソフラボンアグリコン1r/kg体重/日がフランス食品衛生安全庁により提示されています。
例えば、豆腐100g当たりでは20mg程度、味噌100gでは50mg程度(製品により含有量にかなり違いがあります)、納豆100gでは74mg程度となっています。
・タンニン
タンニンとは、皮をなめして丈夫な革にするために使用されるカシの皮やフシ(没食)などに含まれる物質のことで、蛋白質やアルカロイド、金属イオンと強く結合し、難溶性の塩を作る性質をもつ化合物と定義されます。(なお、これと異なる定義のものもあります。)
生体内では主にタンパク質と結合し、一般に複数のタンパク質と結合することから、タンニンとはタンパク質を凝集させる性質(収斂作用)を持つことになります。
口内では舌や口腔粘膜のタンパク質と結合して変性させ渋味を生じさせることになります。
(このため、渋味は味覚というよりは、タンパク変性によって生じる痛みや触覚に近い感覚とされます。)
また、タンパク質同士を結合して被膜を作る効果もあることから、粘液の分泌を抑えて、消炎・止瀉作用を持つことになります。
毛皮をなめした場合には、この表面を丈夫にし、滑らかにさせます。
タンニンがタンパク質と結合するのは、タンパク質は一般に塩基性官能基を含むことによります。
つまり、それと水酸基の酸素と結合するということになります。
この最も簡単な構造のものが没食子酸で、これはベンゼン環に3個の水酸基とカルボキシル基1個が結合したもの(多価フェノールカルボン酸)で、これは次のようになります。
一般的には、グルコース(ブドウ糖)に没食子酸などのカルボン酸(ただし環同士が縮合していないもの)かこの二量体のものがエステル結合したものとなります。(エステル結合とは、一方の水酸基の水素と、もう一方のカルボキシル基の水酸基が結合して取れ、これらが結合する(…-O-CO-…)ことです。この結合の結果、水1分子ができます。)
緑茶には、他にガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなど(主なものは以上の6種)もあることより、参考までにこれらのものも記述しておきます。
エピカテキンで、R3が水酸基となったものが、エピガロカテキンになります。
また、ガロカテキンはエピガロカテキンの異性体となります。
エピカテキンで、R3がガロイル基になったものは、エピカテキンガレートになります。
エピカテキンガレートで、R2が水酸基になったものは、エピガロカテキンガレートになります。
また、タンニンは胃などの粘膜に対して刺激性があり、過剰に摂取するのは良くありません。
ただし、カテキンによる胃癌の防止作用については、喫煙男性の場合にはこの効果があまり認められないことから、禁煙が条件になるとされます。
・カロテノイド
カロテノイドはフラボノイドとともに植物の色素成分となっていますが、これはテルペン類の一種であり、テルペン類とはイソプレンの化合物のことです。
また、カロテノイドは大きくカロテン類とキサントフィル類に分類され、カロテン類は炭素と水素のみの化合物ですが、キサントフィル類はそれらの他に酸素をもつ化合物となります。
イソプレンは下記の構造となっています。
H CH3 H H H H CH3 H
| | | | or | | | |
H - C = C - C = C - H H - C = C - C = C - H
なお、右側は単に左側を反転させたものです。
ビタミンAの前駆物質であるカロテンはイソプレンなどを連結(両端の水素を置換して結合)した両端に炭素環を結合した構造を持ち(環1-左イ-左イ-右イ-右イ-環2。3種のカロテンの環1は同じだが、環2が微妙に異なる。また、γ-カロテンの環2は開裂したもの。なお、環1と環2もイソプレンが2個結合したものと見れば、カロテンはイソプレンが8個結合したものということになる)、多くの不飽和結合を持っているのが特徴で、着色しています。
これより、動植物の脂溶性色素成分をカロテノイドと言う場合もあります。
抗酸化作用の点では、α-カロテンの方がβ-カロテンよりも10倍ほど高いとされます。
なお、動物性のビタミンAにはレチノールがありますが、これには過剰症があるのに対して(多くはそれほど問題のない量なのですが、例外的にレチノールを非常に多く含む魚の肝臓(特にイシナギのもの)もあり、これを食した場合にはこの過剰症が現れます)、カロテンの方は生体のビタミンAであるレチノールが不足した場合これに変換することより、これには過剰症はありません。
カロテンとして働く場合、これは主に体内の抗酸化作用として働くことになります。