タンパク質を構成する分子はアミノ酸となっていて、タンパク質の理解を深めるため、以下では各アミノ酸の構造などについて説明します。
タンパク質を作っているアミノ酸や細胞核にある核酸は窒素化合物です。
共に線状に伸びて構成されています。
タンパク質の場合には、螺旋状になったり、ところどころ折れ曲がって球状の塊になるのが普通ですが、コラーゲンのように線状に伸びる場合もあります。
核酸の場合には、二重螺旋を形成し、これがうまく丸められ細胞核となります。
分裂する場合には、これがほどけて、それぞれ対となる塩基が「複製」されることで二つの二重螺旋ができ、細胞が複製されるということになります。
この二重螺旋にはアミノ酸の結合順序を指定したコード(塩基の三つ組みであるコドンと称されるものの並びで、開始と終了を指定するものがあります)が書かれていて、タンパク質が正確に合成されることになります。
もしコードの間に一つでも余計なものが入り込むと、コードは全く違ったものとなります。
核酸も体の重要な構成要素ですが、この成分(プリン塩基とピリミジン塩基など)は体内で合成されるため、特に食物から摂取する必要はありません。
余談ながら、有機分子の場合には、共有結合といって、手で結びあうように結合しています。 有機分子を構成する元素は、主に水素、酸素、窒素、炭素で、結合の手はそれぞれ1、2、3、4となっています。 ただし、二重結合などの場合もあるので、結合の手が4本あるからといって、必ずしも4つの原子と結合するわけではありません。 (なお、窒素分子は三重結合になっていて、これはかなり安定な分子であるために、植物は大気から取り込んで利用するということはできません。 このため、植物の生長のためには、水の他には窒素を含む物質(アミノ酸などを含む老廃物など)を肥料として与える必要があるということになります。) そうした結合があるものとしては、不飽和脂肪酸があります。それでは、以下に各アミノ酸の構造を示します。
ただし、有機分子の結合性は共有結合だけで語れるものではなくて、他に水素結合というものもあります。 これは、水素と酸素が共有結合している場合、水素側の電子が酸素側に強く引きつけられて、水素側が正電気を帯びています。 一方、酸素側の方は、負電気を帯びるということになります。 この結果、電気的に中性なはずの有機分子同士が結合するということになります。 この良い例が水です。 水のように小さい分子が常温で液体となるのは、水素結合が緊密に働いていることによります。
同様のことは窒素と水素(N-H)や、炭素と酸素の二重結合(C=O)でも生じます。したがって、ペプチプド鎖において「-N-H…O=C-」という水素結合(…の部分)が生じることになります。
また、生体などにおいてはタンパク質は水の中に存在することになりますが、水は極性分子であるため、極性のある分子とは親和性を示しますが、炭化水素のように極性のない分子とは親和性を示しません。 このため、非極性分子はできるだけ水と離れるようになります。 このことから、非極性分子同士は互いに接近するようになり、このような「結合」のことは疎水結合と呼ばれ(これは非極性分子同士が水溶液中で生じるものです)、タンパク質の立体構造を形成する主要な力であるとみなされています。
1.トリプトファンに関する健康被害
1989年、アメリカにおいて必須アミノ酸であるトリプトファンをサプリメントから摂取しようとして、猛毒のエチリデンビス・トリプトファン及びアニリノ・トリプトファンが混入していた健康食品を摂取したところ、一部の人が非常に苦しみ出しました。
結果、それによって死者39名を出す被害が発生しました。
この事由は、トリプトファンの合成過程において、先の有毒物質が不純物として残っていたためです。
なお、それと似た深刻な健康被害の他の有名な例としてはヒ素ミルク事件があります。
これは、粉ミルクに猛毒のヒ素が混入していたため、このミルクを摂取した幼児において死者131名を出した事件です。
この事由は、粉ミルク製造時に添加する第二リン酸ナトリウムにヒ素が残留していたためです。
一般に合成化合物を作る際には、目的とする化合物以外に原材料物質が残っていたり、他のものが合成されることが多いのですが、それらが十分に除去されることなく販売されることがよくあるようです。
このことは合成添加物(現在では指定添加物という呼称が使用されています)では普通のことのようですが、化学的に合成された物質を摂取する際には、余計な成分に対する危険性について考慮する必要があるといえます。
しかし合成添加物に不純物が存在しない場合でも、合成添加物と他の食品との組合わせで深刻な健康被害が発生する場合もあります。
この例としては、ビールにコバルト塩を添加して泡立ちを長持ちさせたものを飲んだ人において、心筋障害が発生し死亡した事件(1963年)です。
この意味では、例え安全性が保証されている合成添加物もしくは天然添加物であっても、他の添加物もしくは食品との組合わせによっては深刻な健康被害が発生する可能性があるということを念頭に置く必要があるといえます。
また、酸化などによっても成分が変化することもよくあり、例え安全なものでも、長く保存したものが有害なものに変わることもあります。
この代表的な例としては、植物油の酸敗があります。