アミノ酸の種類・構造


アミノ酸の構造
グリシン(Gly) アラニン(Ala) バリン(Val:V) ロイシン(Lue:Le)
イソロイシン(Ile) セリン(Ser) スレオニン(Thr:Th) フェニルアラニン(Phe)
チロシン(Tyr) トリプトファン(Trp:T) アスパラギン酸(Asp) アスパラギン(Asn)
グルタミン酸(Glu) グルタミン(Gln) リジン(Lys:L) アルギニン(Arg) ヒスチジン(His)
システイン(CySH) シスチン(Cys) メチオニン(Met) プロリン(Pro)
タウリン グルコサミン レクチン カルニチン オルニチン BCAA


 タンパク質を構成する分子はアミノ酸となっていて、タンパク質の理解を深めるため、以下では各アミノ酸の構造などについて説明します。

 タンパク質を作っているアミノ酸や細胞核にある核酸は窒素化合物です。 共に線状に伸びて構成されています。 タンパク質の場合には、螺旋状になったり、ところどころ折れ曲がって球状の塊になるのが普通ですが、コラーゲンのように線状に伸びる場合もあります。
 核酸の場合には、二重螺旋を形成し、これがうまく丸められ細胞核となります。 分裂する場合には、これがほどけて、それぞれ対となる塩基が「複製」されることで二つの二重螺旋ができ、細胞が複製されるということになります。
 この二重螺旋にはアミノ酸の結合順序を指定したコード(塩基の三つ組みであるコドンと称されるものの並びで、開始と終了を指定するものがあります)が書かれていて、タンパク質が正確に合成されることになります。 もしコードの間に一つでも余計なものが入り込むと、コードは全く違ったものとなります。
 核酸も体の重要な構成要素ですが、この成分(プリン塩基とピリミジン塩基など)は体内で合成されるため、特に食物から摂取する必要はありません。

 余談ながら、有機分子の場合には、共有結合といって、手で結びあうように結合しています。 有機分子を構成する元素は、主に水素、酸素、窒素、炭素で、結合の手はそれぞれ1、2、3、4となっています。 ただし、二重結合などの場合もあるので、結合の手が4本あるからといって、必ずしも4つの原子と結合するわけではありません。 (なお、窒素分子は三重結合になっていて、これはかなり安定な分子であるために、植物は大気から取り込んで利用するということはできません。 このため、植物の生長のためには、水の他には窒素を含む物質(アミノ酸などを含む老廃物など)を肥料として与える必要があるということになります。) そうした結合があるものとしては、不飽和脂肪酸があります。
 ただし、有機分子の結合性は共有結合だけで語れるものではなくて、他に水素結合というものもあります。 これは、水素と酸素が共有結合している場合、水素側の電子が酸素側に強く引きつけられて、水素側が正電気を帯びています。 一方、酸素側の方は、負電気を帯びるということになります。 この結果、電気的に中性なはずの有機分子同士が結合するということになります。 この良い例が水です。 水のように小さい分子が常温で液体となるのは、水素結合が緊密に働いていることによります。
 同様のことは窒素と水素(N-H)や、炭素と酸素の二重結合(C=O)でも生じます。したがって、ペプチプド鎖において「-N-H…O=C-」という水素結合(…の部分)が生じることになります。
 また、生体などにおいてはタンパク質は水の中に存在することになりますが、水は極性分子であるため、極性のある分子とは親和性を示しますが、炭化水素のように極性のない分子とは親和性を示しません。 このため、非極性分子はできるだけ水と離れるようになります。 このことから、非極性分子同士は互いに接近するようになり、このような「結合」のことは疎水結合と呼ばれ(これは非極性分子同士が水溶液中で生じるものです)、タンパク質の立体構造を形成する主要な力であるとみなされています。
 それでは、以下に各アミノ酸の構造を示します。

【アミノ酸の構造】

アミノ酸は、炭素化合物にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)が結合した分子です。 これが酸と呼ばれるのは、水素イオンを放出しやすいカルボキシル基を持っていることによります。 一方、アミノ基は水素イオンを受取りやすいため、遊離アミノ酸はCOO-, NH3+の状態で存在しています。

 タンパク質には20種類のアミノ酸があり、これは体内で合成することのできる非必須アミノ酸と体内で合成することのできない必須アミノ酸に分類することができます。

 アミノ酸の構造ですが、これは次のようになります。

NH2
R
C
COOH
H
上図は平面的に配置していますが、実際の配置は中心の炭素を四面体の中心に置き、他のものを四面体の各頂点に置いたような形となります。
 上図のRがアミノ酸の側鎖で、各アミノ酸の違いを表わしているものです。 中央の炭素(正確にはカルボキシル基の隣の炭素)はα-炭素と呼ばれることから、この種のアミノ酸はα-アミノ酸と呼ばれます。(なお、αは単に順番を表わすもので、以降、β-炭素、γ-炭素などとなります。しかしながら、α-炭素の定義は化合物群毎に定められていて、混乱が生じる原因となります。 例えば、糖とアミノ酸ではα-炭素の定義が逆になります。)
 α-炭素に結合しているそれぞれの基が全て異なることから、これは不斉炭素と呼ばれ、構造として二つのものが存在することになります。 すなわち、HとNH2、またはRとCOOHを交換したものです。
 対称性を持たない分子の場合、偏光面を回転させることになります。 そこで、分子が偏光面を右回転させる場合を右旋性(または正の旋光度)、左回転させる場合を左旋性(または負の旋光度)を持つといい、右旋性の分子にはd-を、左旋性の分子にはl-を付けて区別します(dは右を意味するdextro、lは左を意味するlevoの略です)。 なお、アミノ酸では最も単純なものであるグリシンは不斉炭素ではなく、これだけが唯一旋光性を持ちません。
 また、似たようなものとして、D-L-がありますが、これは光旋性よりも構造性を重視したものであって、必ずしもD-が右旋性、L-が左旋性を意味するわけではありません。 これは、光学活性物質のα-炭素の空間配置がどうなっているかを示すものです。
 アミノ酸の場合、天然にはL-型が多いのですが、糖の場合にはD-型が多くなっています。 上記のアミノ酸はL-アミノ酸となります

 アミノ酸に似たものとしてイミノ酸があり、これはα-炭素に結合している水素とアミノ基が、イミノ基(=NH)に置き換わったもので、次の構造となります。

R
C = NH
(COOH)
また、上記のNHを酸素Oに置き換えると、α-ケト酸となります。 この代表的なものとしては、側鎖がメチル基(CH3)のピルビン酸があります。

 各アミノ酸はペプチド結合と呼ばれるもので結合します。 これは、一方のアミノ酸のカルボキシル基から水酸基が取れ、他方のアミノ酸のアミノ基から水素が取れて結合したもので、これは次のようになります。

R
O
R
|
|
H2N
C
C
N
C
COOH
H
H
H

上図は分かりやすいように、ペプチド結合の部分を⇔(単結合)で示しました。また、即鎖Rを上に並べてありますが、実際には上(下)→下(上)と交互に並びます。 したがって、構造的にはこの2量体が基本的なものになります。
 ペプチド鎖において、C=Oの部分の共有結合では酸素側に電子が引き付けられて酸素は負電荷性を帯びます。 また、その隣のN-Hの共有結合では、窒素側に電子が引き付けられて水素はむき出しの陽子のようになり、正電荷性を帯びます。 したがって、ペプチド鎖で
-C=O…H-N-
と直線的に並ぶような箇所では水素結合が生じます。 この結合による構造のものとして、α-へリックスやプリーツシート構造(β構造、β配列とも)があります。
 α-へリックスはペプチド鎖が螺旋状に伸びたもので、1回転当たり3.6アミノ酸残基を含みます。 (水素結合の方向は、螺旋が伸びる方向と同じになります。)
 プリーツシート構造は、ペプチド鎖が平行に並んだ間にできる水素結合によるものです。 つまり、次のような構造となります。
―――――――
各水素結合
―――――――
各水素結合
―――――――

プリーツシート構造には、平行プリーツシートと逆平行プリーツシート(逆平行に走っているもので、上図の場合)があります。
 水素結合は弱い結合であるため、常温で比較的容易に切断されます。 このことが、タンパク質の変性の原因の一つとなります。 というのは、タンパク質の性質はこの立体構造に因ることが多く、したがって立体構造が変わることは、タンパク質の性質が変化することになるからです。

 なお、アミノ酸は食物の旨味と関係があるとされます。 ただし、タンパク質になったものは除外されます。 例えば枝豆の場合、種子に含まれるアミノ酸がタンパク質合成のために利用されるので、収穫後は単独のアミノ酸含有量が低下していくことになり、このことが枝豆の味を低下させることになります。

【グリシン(Gly)】非必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は次のように水素のみで、最も単純な構造となります。

H

 グリシンとセリンとは相互に変換可能で、セリンはグリシンの前駆体となっています。

 グリシンはクレアチン(HN=C・NH-(NH・CH2COOH)-CH3)の合成に関与していますが、これはまずアルギニンのグアニジン基をグリシンに転移してグアニド酢酸が作られ、さらにこれがメチオニンと反応(メチル基の転移)することでクレアチンが作られます。
 クレアチンは筋肉に含まれるアミノ酸の一種で、これがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり、これが細胞のエネルギー源であるATPの再合成を助けます。 これはグリコーゲンの代謝で生じる疲労物質の乳酸の生成を抑制する働きがあり、筋肉痛を軽減する効果があります。

【アラニン(Ala)】非必須アミノ酸(疎水性)

側鎖はメチル基(CH3)で、次のようになり、グリシンに次いで単純な構造となります。

CH3

 アラニンは、グルタミン酸のアミノ基がピルビン酸に転移することによって生じます。 これには、脂肪の代謝促進、免疫機能の強化などの効果があるとされます。
【バリン(Val:V)】必須アミノ酸(疎水性)

側鎖は、アラニンの側鎖のメチル基(CH3)の2つの水素がメチル基と置換した構造となり、次のようになります。

CH3CH3
CH

 バリンには、成長促進や筋肉強化、肝機能の改善などの効果があるとされます。
【ロイシン(Lue:Le)】必須アミノ酸(疎水性)

側鎖は、バリンの側鎖の下に炭化水素(-CH2-)が結合した構造となり、次のようになります。

CH3CH3
CH
CH2

 ロイシンには、肝機能を向上させる効果があるとされます。
 また、加齢に伴う筋萎縮の予防に効果があるとされます。 タンパク質は合成と分解がなされていて、成人時にはこのバランスが保たれていますが、加齢によりタンパク質の合成能力が低下してくることから、筋肉を構成しているタンパク質が減少し、筋肉が萎縮するようになります。 また、加齢と共にタンパク質分解酵素のプロテアーゼの活性も高くなります。 ロイシンはプロテアーゼの活性の増大を抑えることから、筋萎縮の防止に役立ちます。
【イソロイシン(Ile) 】必須アミノ酸(疎水性)

側鎖は、バリンの側鎖の一つのメチル基にもう一つメチル基が結合した構造となり、次のようになります。

CH3
CH2CH3
CH

 イソロイシンには、体の成長促進、神経機能の向上、血管拡張、肝臓や筋肉の強化などの働きがあるとされます。
【セリン(Ser)】非必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は、アラニンの側鎖のメチル基に水酸基が結合した構造となり、次のようになります。

H
HOC
H

 セリンはグリシンから作られる場合の他に、単糖であるグルコースの解糖系から直接合成される径路もあります。 これには、肌の老化防止などの効果があるとされます。
【スレオニン(Thr:Th、トレオニンとも)】必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は、セリンの側鎖の炭素の水素がメチル基に置換した構造となり、次のようになります。

H
HO
C
CH3

 スレオニンには、成長を促進したり、脂肪肝を予防する効果があるとされます。
【フェニルアラニン(Phe)】必須アミノ酸(疎水性)

側鎖は、ベンゼン環(六角形の不飽和炭化水素環)に炭化水素が結合した構造となり、次のようになります。

H
ベンゼン環
C
H

 フェニルアラニンは、脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の前駆物質で、これらの神経系の働きを正常に保つ働きがあります。 ただし、この過剰摂取は高血圧を招くとされます。
【チロシン(Tyr)】非必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は、チロシンの側鎖のベンゼン環の水素1つが水酸基に置換した構造で、次のようになります。

H
HO-
ベンゼン環
C
H

 チロシンはフェニルアラニンから作ることができます。 チロシンは神経伝達物質(もしくはホルモン)のアドレナリン(エピネフリンとも)やノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、ドーパミンの合成材料となり、脳を活性化して記憶力や集中力を高めるとされます。 また、成長ホルモンや甲状腺ホルモン、メラニンの合成材料となります。
 メラニンはチロシンが重合することによってできます。 これはどんな波長の光でも吸収することができるため、皮膚や髪にあるこの粒子(メラニン分子とタンパク質が結合したもの)の濃度により淡黄色から黒色まで変化することになります。 (なお、髪が赤色を呈するのは、色素のトリコシデリンが多いためです。) したがって、メラニンの生成が低下すると、髪などが白くなったりします。 メラニンの生成を促すには、タンパク質を十分に摂ることと日光に含まれる紫外線のUV-Bを浴びることが効果的となります。
【トリプトファン(Trp:T)】必須アミノ酸(疎水性)

側鎖は、メチル基の水素1つがインドール環(ベンゼン環+ピロール環で、ピロール環とは一つの窒素を含む不飽和5員環のこと)に置換した構造となり、次のようになります。

H
インドール環C
H

 水溶性ビタミンの一つであるナイアシンはトリプトファンより合成されます。 トリプトファンの長期的欠乏はペラグラを発症させることになります。 また、脳内の神経伝達物質であるセロトニンはトリプトファンから合成され、この神経系の働きを正常に保ちます。 セロトニンはうつ病の改善などに効果があります。(ただし薬として過剰な量を常用すると、体内での該当ホルモンの分泌器官が萎縮するようになり、そうなると一生その薬への依存が生じるようになるとされます。そのような有名なホルモンとしてはインスリンが挙げられるでしょう。)
 トリプトファンの1日の推奨摂取量は体重1kg当たり4mgとなっています。
【アスパラギン酸(Asp)】非必須アミノ酸(親水性、負電荷性)

側鎖は、メチル基の水素1つがカルボキシル基に置換した構造となり、次のようになります。

H
(COOH)
C
H

 アスパラギン酸は、グルタミン酸のアミノ基がオキサル酢酸に転移することによって生じます。 これは窒素代謝やエネルギー代謝などに関与し、新陳代謝の促進や疲労回復に効果があるとされます。 また、尿の合成を促進し、体内から有害なアンモニアの排出を促進します。
【アスパラギン(Asn)】非必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は、アスパラギン酸のカルボキシル基の水酸基がNH2に置換した構造となり、次のようになります。

H
(CONH2)
C
H

【グルタミン酸(Glu)】非必須アミノ酸(親水性、負電荷性)

側鎖は、エチル基(CH3CH2-)の端の水素がカルボキシル基に置換した構造となり、次のようになります。

HH
(COOH)
CC
HH

 グルタミン酸は、α-ケトグルタル酸より合成されます。 これには体内からアンモニアを排出する働きがあるとされます。 アンモニアは脳の機能を妨げるため、脳にとっては有害な物質となります。
 なお、グルタミン酸は代表的な旨味物質で化学調味料に使用されているものですが、この継続的な過剰摂取により、神経症や手足のしびれなどの症状が現れることがあります。
【グルタミン(Gln)】非必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は、グルタミン酸のカルボキシル基の水酸基がNH2に置換した構造となり、次のようになります。

HH
(CONH2)
CC
HH
【リジン(Lys:L)】非必須アミノ酸(親水性、正電荷性)

側鎖は、炭素数4の炭化水素鎖にアンモニア(NH3)が結合した構造となり、次のようになります。

HHHH
H2N
CCCC
HHHH

 リジンには、体の成長促進や組織の修復など、様々な働きがあるとされます。 これは肉には多いのですが、穀類(特に小麦)には少ないため不足しがちなアミノ酸となります。
【アルギニン(Arg)】非必須アミノ酸(親水性、正電荷性)

側鎖は、炭素数3の炭化水素鎖にグアニジン基(H2N-C・NH-NH-)が結合した構造で 、次のようになります。

NH
HHH
H2N
C
NHCCC
HHH

 アルギニンは成長ホルモンの合成に関与し、成長期の子供の場合には必須アミノ酸に分類されます。 これはこの合成速度が体の必要量を満たさないことからです。 成長ホルモン(GHもしくはHGH)が減少すると、新陳代謝が低下することから脂肪の代謝が低下して肥満体質になりやすいようです。成長ホルモンの低下は老化促進、免疫力低下、筋力低下などを引起こすようになります。 このようなことから、成長ホルモンは若返りホルモンとも言われ、またアルギニンは若返りアミノ酸とも言われます。
 また、アルギニンには糖尿病、動脈硬化、高血圧症などの生活習慣病の予防改善効果もあるとされます。 動脈硬化に効果があるのは、アルギニンによる血流改善作用によるとされます。血管は内膜、中膜及び外膜に分けられ、内膜のことは内皮細胞と呼ばれ、これは一酸化窒素を分泌することによって血管を拡張させます。そしてアルギニンは一酸化窒素を作るのに必要な物質です。
 成人でも健康な体を維持するためには体内で合成されるアルギニンの量では十分でないとされ、努めて摂取する必要があるようです。
【ヒスチジン(His)】非必須アミノ酸(親水性、正電荷性)

側鎖は、メチル基の水素がイミダゾール環(二つの窒素を含む不飽和5員環)に置換した構造となり、次のようになります。

H
イミダゾール環C
H

 ヒスチジンは大人の場合には体内で合成できるため必須アミノ酸ではありませんが、子供の場合には必須アミノ酸になるとされます。
【システイン(CySH)】非必須アミノ酸(親水性、中性)

側鎖は、硫黄Sに水素と炭化水素が結合した構造(SH-CH2-)となり、次のようになります。

H
HSC
H

 硫黄は酸素と同じく二価の元素(結合の手が2本の元素)として化合物を作り(ただし、4価または6価の元素として結合する場合もあります)、酸素と類似性を持っています。
 システインはメチオニンから作ることができます。
【シスチン(Cys)】(疎水性)

これは、二つのシステインの側鎖の硫黄同士が水素が取れて結合した構造で、次のようになります。

HH
CSSC
HH

上記で、「…」は側鎖以外の部分であるCOOH-CH・NH2のことです。
 シスチンはメチオニンから作ることもできます。

 上記構造で、「-S-S-」の部分はジスルフィド結合と呼ばれるもので、分子に-SH基を含むもの同士では、水溶液中で酸化されてジスルフィド結合を行うようになります。 タンパク質の長いアミノ酸鎖には、大概どこかにメチオニンを含むことになりますから、ジスルフィド結合が形成されるようになります。
 また、この結合は重金属イオンを間に挟むように結合することになります。(このように、イオン元素を捕捉して安定な結合を作る反応のことはキレーション(反応)と呼ばれます。)この結果、鉛やカドミウム、水銀などの有害な重金属イオンが無毒化され、そして排出されるようになります。
 また、含流アミノ酸はメラノサイトでのメラニンの産生を抑制する作用などがあるとされ、美白効果もあります。
 含流アミノ酸は、一般的にタンパク質の多い食品に多く含まれます。

【メチオニン(Met)】必須アミノ酸(疎水性)

側鎖は、硫黄にメチル基(CH3)と炭素数2の炭化水素鎖が結合した構造となり、次のようになります。

HHH
H−CSCC
HHH

 メチオニンには、アレルギー物質であるヒスタミンの血中濃度を低下させたり、抗うつ作用により、うつ病を改善させる効果があるとされます。 また、メチオニンやタウリンは交感神経に働きかけ、血圧を降下させて脳卒中などの疾患を予防するとされます。
【プロリン(Pro)】非必須アミノ酸(疎水性)

これは、ピロリジン環(一つの窒素を含む飽和5員環)の、窒素の隣の炭素の水素の一つがカルボキシル基に置換した構造となり、次のようになります。

CH2
CH2
CH2
CH
COOH
NH

 プロリンは側鎖に環を持っているのではなくて、NH、カルボキシル基、α-炭素及び側鎖で環を形成したものです。 なお、左上の炭素の水素一つが水酸基に置き換わると、ヒドロキシプロリンとなります。
 プロリンやヒドロキシプロリン(オキシプロリンとも)はα-炭素に結合しているものがアミノ基(NH2)ではなくてNHとなっていることより、厳密にはアミノ酸ではなくて、イミノ酸となります。

 プロリンはグルタミン酸より合成されます。 アミノ酸の中ではプロリンだけが例外的に「-N-H…O=C-」という水素結合を作りません。
 プロリンはグリシンに次ぐコラーゲンを構成する主要アミノ酸で、壊されたコラーゲンを修復する働きがあり、ビタミンCと共に摂取することで、加齢によって生じる皮膚の皺やたるみなどを改善するのに役立ちます。

【その他のアミノ酸】
【タウリン】

タウリンもアミノ酸の一つに数えられることがありますが、これはアミノ酸であるメチオニンやシステインなどから作られるものです。 タウリンは細胞内浸透圧調節因子で、細胞に栄養素や情報を取り入れることに関わっていて、細胞の機能維持に欠かせないものとされます。 このため、病気に対する抵抗力を高めたり、動脈硬化や糖尿病などを予防する効果があるとされます。 また、コレステロールの低下や高血圧を改善させる働きもあるとされます。
 タウリンは魚介類、特にイカやタコ、貝類に多く含まれす。 なお、猫ではタウリンを作れないため食事から摂取する必要があり、魚介類を好むということのようです。 また、人でも疲労時などでは体内の要求量が多くなるため、食事から摂取する必要があるとされます。

【グルコサミン】

グルコサミンは軟骨細胞などで作られるアミノ酸の一種で、軟骨を形成するのに必要となるものです。 軟骨は間接のように骨同士の結合部分にある組織で、これがすり減ると骨同士が接触し、関節痛を引起こします。
 グルコサミンはエビやカニなどの殻を作っているキチン質に多く含まれています。 ただし、これをサプリメントから摂取する場合には、この過剰摂取により毒性が現れるようなので注意します。

【レクチン】

レクチンは大豆やインゲン豆などの豆類やジャガイモなどの芋類に含まれるタンパク質で、これには細胞を活性化する効果があるとされます。 これにより免疫力が高められて、有害な微生物やウイルスが繁殖するのを抑制する働きがあるとされます。

【カルニチン】

カルニチンは脂質の代謝を促して、中性脂肪や脂肪酸を効率的に消費させる働きがあるとされます。 これはリジンやメチオニンから合成されるため、必須アミノ酸ではありませんが、女性では不足しがちなアミノ酸のようです。
 カルニチンは牛や豚、鶏などの内臓に多く含まれているとされます。

【オルニチン】

オルニチンは肝臓においてアンモニアを代謝して無毒・無臭化するオルニチンサイクル(尿素回路)の活性化に必要なアミノ酸で、この遊離アミノ酸はシジミに特に多く含まれ、他にはチーズやヒラメ、キハダマグロなどにも含まれます。
 夏になると汗を多くかき、この臭いが気になります。 汗による臭いとしては腋臭が代表的ですが、これはアポクリン腺によるものです。 これとは別にエクリン腺によるものもあり、これから出た汗が皮膚常在菌によって分解され、脂肪酸が生じ、この臭いが生じることになります。 特に足裏にはエクリン腺が多くあり、夏には足裏から汗が多く出ることになります。
 また、汗と共に放出される老廃物も臭いの原因となります。 このような臭いとしてアンモニア臭(疲労臭とも呼ばれます)があり、これは肉食(蛋白質や脂肪が多い)や疲労によって生じるとされます。 この疲労臭を少なくするには、肝臓のオルニチンサイクルの働きを強化するとよく、このためにはオルニチンを摂取したり、飲酒を控えるのが効果的となります。 (飲酒は肝機能を低下させたり、脂肪肝を生じさせるためです。) もっともほどほどの飲酒はストレスを低下させる効用もあり、臭いの軽減のために一概に断酒がよいともいえませんが。

【BCAA】

BCAAは個別のアミノ酸ではなく、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称のことです。これらは運動時の筋肉でのエネルギー源となる必須アミノ酸となります。
 ただし、BCAAはトリプトファンを減らす作用があり、BCAAを4g摂取すると、トリプトファンの血中濃度が1/10まで低下するとされます。トリプトファンは脳内の神経伝達物質の一種であるセロトニンの原料であるため、この低下によって自立神経の働きが不安定になります。



補足

1.トリプトファンに関する健康被害

 1989年、アメリカにおいて必須アミノ酸であるトリプトファンをサプリメントから摂取しようとして、猛毒のエチリデンビス・トリプトファン及びアニリノ・トリプトファンが混入していた健康食品を摂取したところ、一部の人が非常に苦しみ出しました。 結果、それによって死者39名を出す被害が発生しました。 この事由は、トリプトファンの合成過程において、先の有毒物質が不純物として残っていたためです。

 なお、それと似た深刻な健康被害の他の有名な例としてはヒ素ミルク事件があります。 これは、粉ミルクに猛毒のヒ素が混入していたため、このミルクを摂取した幼児において死者131名を出した事件です。 この事由は、粉ミルク製造時に添加する第二リン酸ナトリウムにヒ素が残留していたためです。

 一般に合成化合物を作る際には、目的とする化合物以外に原材料物質が残っていたり、他のものが合成されることが多いのですが、それらが十分に除去されることなく販売されることがよくあるようです。 このことは合成添加物(現在では指定添加物という呼称が使用されています)では普通のことのようですが、化学的に合成された物質を摂取する際には、余計な成分に対する危険性について考慮する必要があるといえます。

 しかし合成添加物に不純物が存在しない場合でも、合成添加物と他の食品との組合わせで深刻な健康被害が発生する場合もあります。 この例としては、ビールにコバルト塩を添加して泡立ちを長持ちさせたものを飲んだ人において、心筋障害が発生し死亡した事件(1963年)です。
 この意味では、例え安全性が保証されている合成添加物もしくは天然添加物であっても、他の添加物もしくは食品との組合わせによっては深刻な健康被害が発生する可能性があるということを念頭に置く必要があるといえます。
 また、酸化などによっても成分が変化することもよくあり、例え安全なものでも、長く保存したものが有害なものに変わることもあります。 この代表的な例としては、植物油の酸敗があります。