食品添加物


着色料 甘味料 増粘安定剤 酸化防止剤 保存料 発色剤 漂白剤 防カビ剤
酵素剤 光沢剤 香料 酸味料 苦味料 軟化剤 調味料 pH調整剤 膨脹剤
乳化剤 イーストフード ガムベース 製造用剤
かんすい 結着剤 消泡剤 抽出溶剤 凝固剤 日持向上剤 品質改良剤 離型剤 ろ過助剤
【補足】
有害表記 ppm ADI 酸とアルカリ エステル トランス脂肪酸 活性酸素
ストレス 発癌について 放射性物質 環境ホルモン H-LD症 リステリア症 界面活性剤 農薬 抗生物質


 食品添加物の表示は、基本的に物質名で表示しますが、分かり易くするために一般的に使用されている名称で表示することもできます。 例えば、ビタミンCの物質名はアスコルビン酸(正式にはL-アスコルビン酸。分子構造としては同じだが、左右が反転している、光学異性体と呼ばれるものがあり、それを区別するために、右手系を"D-"、左手系を"L-"で表す。自然界に存在する有機分子の殆どはL型だが、合成品にはどちらも同じ確率で生じる。なお、D型のものには有害性があるようだ)ですが、これだと何のことか分かりにくいため、ビタミンCと記述してもよいことになっています。
 また、複数の食品添加物を配合して使っているものは、各物質名を記述する代りに一括名[(種別名)]として表示されます。 この一括名としては、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、軟化剤、調味料(これには種別名として、アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩などがあります)、凝固剤、乳化剤、pH調整剤、膨脹剤(または膨張剤、ベーキングパウダー、ふくらし粉)、イーストフード、ガムベース、かんすいの14種があります。
 用途が甘味料、着色料、保存料または防腐剤 、増粘安定剤、酸化防止剤 、発色剤、漂白剤、防かび剤または防ばい剤の8種については、「用途(物質名)」と記述されます。 しかしながら、物質には複数の用途があり、この8種以外の用途で用いたという場合には、物質名のみの記述になり、必ずしも用途が明確になっているというわけではありません。
 ただし、加工助剤や、キャリーオーバー(食品の加工・製造には使用されていないが、原材料には含まれていて、それが持ち越されているもの。ただし表示が免除されるのは、効果を持たない程度の量に限るとされる)、栄養強化目的のもの、小包装食品(表示面積が30cm2以下のもの)、バラ売りのものには表示義務がありません。 しかし、このことには問題点があります。 例えば、乳酸カルシウムがPh調整の目的で使用されていても、これをカルシウム補強目的とすれば表示義務がなくなります。

 添加物には天然添加物(化学的手段により分解したものも含む)と合成添加物とがありますが、以前では表示義務があるのは合成添加物だけでした。 また、合成食品添加物の印象があまり良くないため、合成添加物は天然添加物に代替されることが多くなりました。 しかし、現在は天然系のものにも表示義務が負わされたのですが、それらは使用されてかなり時間が経っていて、安全性に問題がないとされ、この毒性についてはよく調査されていないのが現状のようです。

 特にリン酸塩は加工食品に多く使用されているのですが、リン酸は天然食品にも含まれ、添加したかどうかが分かりにくくなっています。 このため、リン酸塩が添加されていても表示されていないことが多いようです。
 多くの加工食品になぜリン酸塩が使用されるのかというと、次のような品質改善効果があるためです。 変色・変質防止、鮮度保持、沈殿防止、味のコク出し、フレーバーの保存、ビタミンCの保持、炭酸ガスの保持、缶臭防止、缶の腐食防止、缶の黒変防止、粘度の安定化、つや出し、保存の向上、塩なれ、アク抜き、pH調整、アルコール刺激の緩和、結着力増大、保水性の増加、タンパク質の変性防止など様々な働きがあります。
 リン酸は天然にも多くあり、日常的に摂取しているものなのに、どうしてそれが問題になるかといえば、その過剰摂取により、カルシウム不足を引起こすからです。 つまり、血液中でリンとカルシウムの比率は常に保たれていて、もしリンが多くなりすぎると、それを調整するためにカルシウムも多くする必要があり、このためにカルシウムが骨や歯から溶けだすということになるからです。 マウスを用いた実験によれば、リン酸塩の過剰摂取は、骨の減少以外に腎臓障害や筋肉の萎縮を引起こすとされます。 特に加工食品ばかり食べていている人は、カルシウム不足に注意する必要があります。
 さて、現在では合成添加物に対する危険性が周知されるようになり、食品メーカーなどは合成添加物という呼称を嫌うようになりました。 そこで、別の分類名が厚労省によって提唱されることになりました。 (これは平成7年の食品衛生法の改正に伴って行われたものです。) これは、添加物を次の4種に分類するものです。

分類説明
指定添加物合成添加物のこと。 指定添加物によっては使用食品や使用量に規制があります。
 ただし、人工的に生成したものであっても、(酵素や塩酸を用いて)加水分解したものは天然の食品として扱われます。

 新たな合成添加物を使用する場合、この安全性試験が行われてから使用されますが、この試験は細菌や小動物を用いた比較的短期(最長で約1年)のもので、ヒトに対する安全性や長期摂取の場合の安全性の確認は行われていません。 (なお、ADIという、体重1kg当りの1日摂取許容量は動物実験から推定したもので、実際に人間に対して試験して得られた数値ではないことから、この信頼性に疑問が残ります。このことは、添加物は医薬品と異なり、人間に対する臨床試験が行われていないことによります。) また、そのテストも添加物単体での試験であり、他の物質と併用した場合の危険性については検証されていません。
 したがって、新規の合成添加物に対する安全性の確認は、実際に使用されてから何年もしくは何十年か経たないと分からないことになります。
 近年では、癌による死亡が病死のトップになりましたが、このことは日本人の寿命が延びたことや食事が洋風の高たんぱく質・高脂肪食品の摂取が増えたこと、国が豊かになり人々が飽食気味になったこと、及び高ストレス社会になったこと以外には、合成添加物入りの食品や加工食品、精製食品を恒常的に多量に摂取するようになったことも大きな原因であると考えられます。

 また、合成添加物のもう一つの懸念として次のこともあります。 化学合成によって目的の化学物質のみを純粋に生成するのは困難であり、このため製造時の不純物が残ることが多いのが普通のようです。 もしその不純物として有害物質が残っていれば、その添加物自体は問題なくとも、全体としては有害なものとなります。 この代表的事例としては、森永のヒ素ミルク事件があります。 これは粉ミルクの製造時に使用する第二リン酸ナトリウムに不純物としてヒ素が混入していたためでした。
 この事例を踏まえて、食品業界では毒性の強いヒ素や鉛などの重金属の混入を調べるようになりましたが、全ての不純物を調べているわけではないことから、有害物質の混入漏れの可能性は否定できません。 しかしながら、添加物の純度に対する不安もあり、不純物の混入率が調べられているからといって、全く安心できるということにはならないようです。 というのは、添加物によってこの純度は50〜98%というようにかなり異なっているのですが、このことは不純物を含めた添加物全体の安全性から生じたものではなく、単に製造時の条件から生じた場合もあるようだからです。 (結局のところ、安全性と製造コストとの兼ね合いでその純度が決められるのでしょう。) さらにまた、近年では加工食品のコスト削減のために中国や東南アジアなどの外国産添加物を使用する傾向が強まり、農薬などに汚染された外国産の食品同様に外国産添加物を使用した食品の安全性に強い懸念が持たれてもいるようです。

既存添加物旧来から使用されている添加物のことで、要するに天然添加物のこと。
 ただし、天然添加物であっても必ずしも全く危険性がないと保証されるわけではありません。 特に発癌性を持つものはこの安全性の確認に長い年月がかかることから(これは統計的に推定されることになりますが)、この検証が行われないまま使用されていることがあります。 例えば、アカネ色素はテストにより遺伝毒性や腎臓への発癌性が認められたことから、2004年に使用禁止になりました。
天然香料動植物などの天然の物質を使用した香料
一般飲食物
添加物
通常食品を添加物としたもの

 次に、以下はよく使用される添加物や危険性のある添加物に関するリストですが、食品添加物の有害性、特に発癌性などの慢性毒性については、食品添加物の擁護派と批判派とで見解が異なることが多いようです。 ここでは有害性の疑いがあることを重視しています。

用途・一括名物質名等有害性備考
着色料着色料の代表的なものとして、合成添加物のタール系色素があるが、これは鮮明な色を出し、退色しにくいという特徴を持ち、以前はよく使用されていた。

     一般に着色料を自然食品に使用した場合、この生鮮性を訴えるよりは、感覚に訴えて消費者の注意を惹いたり購買意欲を高めることが第一の目的と考えられ、このため原色系のはでな着色もしくはきれいな単一色となっていることが多いように思われる。 しかしながら、それは不自然なものであり、人工的着色により消費者に忌避感を抱かせるだろうということでは、あまり意味がないと思える。 もっとも原色系もしくは単色系のものを好むという人も少なくない。しかし、そうした大衆志向もしくはそれへの誘導はしばしば誤った判断を導くことになるものである。 (これは究極的には破局的事態に陥るようになるものであり、そのときになって初めてその非を悟ることになる。例えば、戦う者は勝ち続けることはできないし、また負け続けることもない。そして、最強となった者が負ける場合、それは破局的事態を生じやすいのである。しばしば停滞は敗北を示すが、かといって進み続ければ破局を生じやすい。)
     着色料や保存料等の食品添加物をできるだけ避けるためには、加工度のより低いものを買い、自分で調理することが最も効果的である。 この意味では、調理とは食材を美味しく食べるための技術というよりは、安全な食生活を送るための必須技術といえるかもしれない。 よく言われてきた「男子、厨房に入るべからず」というのは、現代においては世迷言と看なすべきものである。このことは、食品の問題は何も食品添加物だけとは限らないからである。自分にとって最良の食は、結局のところ自分で作るしかない。
食用タール系色素日本で使用許可されている食用タール系色素には、赤色2号(アマランス)、赤色3号、赤色40号、赤色102号赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号(タートラジン)、黄色5号、緑色3号、青色1号及び青色2号の12種類がある。 さらにアルミニウムと化合させ、安定性を高めたアルミニウムレーキ(赤色2号アルミニウムレーキ等)というものもある。
 多くが各国で禁止となっているが、我が国では菓子、漬物、魚介加工品、畜産加工品などに使用される。

 赤色2号は動物実験で発癌性があることが分かり、米国などでは使用禁止となっている。 他にも、赤色3号や赤色104号、赤色105号、赤色106号など赤色系のものは発癌性やこの疑いのあるものが多い。
 赤色40号はアレルギーの原因になるとされる。
 黄色4号や黄色5号は喘息や蕁麻疹等を起すとされ、喘息やアトピーの人は注意が必要という。
 タール色素は消化酵素の活性を低下させる作用があるとされ、特にこれは赤色102号による影響が強いとされる。
 合成着色料や合成着香料が子供にH-LD症(興奮しやすい、集中力がないなど)を引起こすということが話題になり、このことは政府の諮問委員会により否定されたが、そうした影響が全くないというわけではないようだ。 特にそれは黄色4号と関係しているとされる。
 なお、複数の着色料が使用されることから、該当の色のものにだけ含まれる、ということではない。例えば、オレンジ色のものにも赤色2号が含まれていることがある。

アナトー色素 黄橙色。ベニノキの種子の皮から抽出したもの。アナトー、カロチノイド色素などとも。
安全性は高いようだが、変異現性の疑いがある。
ハム、ソーセージ、水産加工品、チーズ、マーガリン、焼菓子などに使用。
カロテンなしカロチンとも。α-カロテン、β-カロテンなどがあるが、β-カロテンが一般的。
イモカロテン、ディナリエラカロテン(ディナリエラ藻から抽出)、ニンジンカロテンなど。黄色〜橙色〜赤褐色。
 カロテンもカロチノイドの一種で、V.A(レチノール)のプロビタミン。レチノールの場合には多量に摂取すると過剰症が生じるが、こちらはその心配がない。ただし、これは合成品が多いとされる。
コチニールあり橙〜赤紫色。カイガラムシ科の昆虫のエンジムシから抽出したもの(主成分はカルミン酸)だが、変異原性があるとされる。
清涼飲料水、冷菓、菓子、食肉製品、かまぼこなどに使用。
カラメル(色素)あり茶色。ブドウ糖などの糖類や糖蜜などを加熱処理したものだが、変異原性やビタミンB破壊などの可能性を持つものがある。特に、天然由来のものではなく、アンモニアなどから合成されたものは有毒とされる。
清涼飲料水、乳飲料、菓子、醤油、漬物、つくだ煮などに使用。
ウコン色素なしターメリックとも。ショウガ科ウコンの根茎から得られる色素。クルクミンが主成分。
パプリカ色素なしナス科パプリカから得られる色素。
カロブ色素 マメ科カロブの種子の胚芽から得られる色素。
ビートレッドなし甜菜の変種であるレッドビートの根から得られる色素。
クチナシ色素なし青色、赤色、黄色。クシナシの果実から抽出したもので、本来は黄色だが、酵素を作用させることで青色や赤色のものが生じる。
菓子、冷菓、めん類、農産物加工品などに使用。
ベニバナ色素ありベニバナの花から得られるもので、ベニバナ赤色素とベニバナ黄色素があるが、ベニバナ黄色素には変異原性があるとされる。
清涼飲料水、菓子、めん類、漬物などに使用。
ブドウ色素なしブドウ果皮色素もある。
銅葉緑素あり青〜緑色。銅クロロフィルと銅クロロフィルナトリウムがある。銅クロロフィルは葉緑素の分子のマグネシウムを銅に置き換えたもの。
急性毒性があるとされ、米国などでは使用禁止となっているが、日本ではチューインガム等に使用されている。 使用基準は0.05g/kgとされ、少量でも有害なようだ。
ベニコウジ色素なし赤色または黄色。紅麹色、モナスカス色素とも。
カビの一種のベニコウジ菌から抽出したもの。
魚肉練り製品、味付たこ、畜産加工品、調味料などに使用。
二酸化チタン白色。ホワイトチーズ、ホワイトチョコレートに使用。
ラック色素なしラックカイガラムシが分泌する樹脂状の物質から抽出したもの。
ハム、ソーセージ、ベーコンに使用。
ビタミンB2なしリボフラビンとも。また、リボフラビン酪酸エステル等も該当する。
添加物として表示されている場合、これはビタミンB2の栄養強化が目的ではなく、黄色の着色料として使用されるもので、これは合成添加物となる。
甘味料代表的な甘味食品に砂糖があるが、これには酵母の繁殖を促したり、糖尿病、肥満、虫歯などの弊害があるため、他の甘味料が使用されるようになった。

 なお、清涼飲料水には砂糖やブドウ糖果糖液糖が多く使用されているため高血糖となりやすいが、これは尿量を増やすことから、さらに喉が渇くということになり、その摂取量が多くなる傾向がある。 特に、ブドウ糖果糖液糖はブドウ糖に分解されていることから、砂糖よりもこちらの方が血糖値が急激に上昇しやすい。
 高血糖になると糖分(ブドウ糖)利用のために膵臓からインスリンの分泌を行なうが、常に高血糖の状態が続くとその分泌細胞を疲弊させるというだけでなく、これを傷害する作用もあるとされる。 これによりブドウ糖の利用が低下すると、脂肪を燃焼させてエネルギーとして利用することになるのだが、このときその代謝産物のケトン体が血管に溜まり、血液を酸性にさせるという。

異性化糖 トウモロコシのデンプンを分解した糖を、酵素を用いて果糖に変換したもの。
カンゾウ抽出物ありカンゾウエキス、グリチルリチンとも。
カンゾウエキスは甘草などの根や根茎から抽出したもので、グリチルリチンはそれを精製したもの。甘さは砂糖の約200倍。グリチルリチンは漢方薬にも使用され、肝臓疾患やアレルギー疾患に用いられる。ただし変異原性ありとされる。
 醤油、味噌、漬物、つくだ煮、清涼飲料水、魚肉ねり製品、氷菓、乳製品などに使用。
ステビアありキク科ステビアの葉から抽出。甘さは砂糖の約250倍。
純度の低いものに不妊症、精子減少、変異原性の疑い。
清涼飲料水、菓子など様々な食品に使用。
アセスルファムKありアセスルファムカリウム。
ノンカロリー甘味料で、砂糖の約200倍の甘味がある。しかし、動物実験では発癌性があるとされる。
砂糖代替食品、菓子、清涼飲料水、漬物、つくだ煮などに使用。
キシリトール キシロースに水素添加したもの。清涼感があり、虫歯にならないという特徴がある。
チューインガム、キャンデー、ジャム、焼き菓子などに使用。
ソルビットなしD-ソルビトールのこと。吸湿性がある。
ブドウ糖を還元して作られる。甘さは砂糖の約60%。低カロリーで虫歯になりにくいというメリットがあるが、多量に摂取すると下痢を起す。
煮豆、つくだ煮、生菓子、冷凍すり身などに使用。
マルチット マルチトール、還元麦芽糖とも。
糖アルコール類で(他にD-ソルビット、D-マンニット、D-キシロースがある)、消化吸収されにくいため、低カロリー甘味料となっている。
スクラロースありショ糖(2糖類)に3つの塩素を結合したもので(C-Cl結合があり、これはオルガノクロライドという分子になる)、砂糖の600倍の甘味があるが、この危険性が指摘されている。ラットを用いた実験では、赤血球減少、肝臓肥大・異常、甲状腺の衰え、脳肥大などが生じたとされる。
清涼飲料水に使用。
アスパルテームアスパラギン酸とフェニルアラニンの2種のアミノ酸にメチルアルコールが結合したもの。(これに化学的に近いものとしてネオタームがあるが、これも有害性があるようだ。)
 脳神経異常、アルツハイマー症、脳腫瘍などの発癌性、多発性硬化症、糖尿病、白内障などを引起こす可能性がある。フェニルケトン尿症の人は摂取上限がある(フェニルアラニンの分解能力を持たないという遺伝病で、この人が摂取すると知的障害が生じるとされる)。また、脳障害児が生まれる危険性があるとされ、妊婦は避けた方がよい。
 清涼飲料水、乳飲料、菓子、漬物、アイスクリーム、ガムなどに使用。
サッカリン等サッカリン、サッカリンナトリウム。砂糖の400〜500倍の甘さがある。
発癌性ありとして一時禁止されたが、このことは不純物が原因であるとして(業界からの要望もあり)再許可された。しかし、その後の研究でこれには発癌促進性があることが分かった。
漬物、清涼飲料水、魚介加工品、つくだ煮、煮豆、缶詰、瓶詰などに使用。
チクロ動物では膀胱癌を引起こすとされる。
日本や米国などでは使用禁止となっているが、欧州やオーストラリアなどでは広く使用されている。
増粘安定剤増粘安定剤は食品に粘稠性を与えるために使用され、糊料とも呼ばれる。使用目的によって、増粘剤、安定剤、ゲル化剤に区別される。
澱粉ありスターチとも。コーンやジャガイモからの場合、遺伝子組替え作物を使用している可能性が高い。
CMCなしカルボキシメチルセルロースナトリウムの略。
セルロースを水酸化ナトリウムなどで処理したもの。
アイスクリーム、シャーベット、ソース、めん類など使用。
カラギナンあり紅藻類から抽出した多糖類。カラギーナン、カラーギナン、ユーケマ藻末などとも。発癌性や発癌促進性があるとされる。また、胃潰瘍などを引起こすことがあるようだ。
ドレッシング、果実飲料、乳飲料、ソース、ゼリー、デザート食品などに使用。
キサンタンガムなし細菌のキサントモナスが作り出す多糖類を分離、精製したもの。
ドレッシング、たれ類、漬物、つくだ煮、冷凍食品、レトルト食品に使用。
ペクチンなし柑橘類、リンゴ等から抽出したもの。
ジャム、ゼリー、アイスクリームなどに使用。
グァーガムなしグァー、グァルガム、グァーフラワーとも。
マメ科グァーの種子の胚乳成分。
ドレッシング、ソース、アイスクリーム、即席めん類などに使用。
トラガントガム天然添加物。ゼリー菓子、ソース、菓子類、パンなどに使用。
アラビアガム不明アカシア、アラビアゴムノキなどの幹から得られる多糖類。
冷菓、氷菓、チョコレート、キャンディなどに使用。
ローカストビーンガム イナゴマメの種子の胚乳から得られる多糖類。
プロピレングリコールありPGとも。石油から製造したもので、防腐性や防カビ性の特徴もあり、保存料や品質保持剤としても使用される。
多量摂取により染色体異常を引起こす(他にも赤血球減少、肝臓や腎臓の障害を起すとされる)ことから、使用量が規制されるようになった。
生麺、イカ・タコ燻製品、豆腐、ジャム、ケーキなどに使用。
アルギン酸ナトリウムあり安定剤、ゲル化剤としても使用される。
動物実験では、心臓や肝臓などに障害が発生したとされる
ゆで麺、アイスクリーム、あん類、ゼリー、ジャム、ケチャップ、ソーセージなどに使用。
カゼインナトリウムありガゼインナトリウムとも。カゼインは乳汁の蛋白成分のことで安全性に問題はないが、アレルギー体質の人は注意が必要。また、ナトリウムの過剰摂取に注意する。
アイスクリーム、ゼリー、魚肉練り製品、ハムなどに使用される。
酸化防止剤酸化による品質の低下(褐変や退色、栄養価の低下)を防止する。
アスコルビン酸 ビタミンC(V.C)のこと。ただし、これは合成添加物となる。
自身が酸化されることによって食品への酸化防止の働きを示す。 (主に、油脂が空気で酸化されることによって色・風味が変化することを防止する目的で使用される。)
 したがって、この目的で添加されたビタミンCには栄養的価値がないばかりか、この酸化の過程で、有害な活性酸素の一種である、過酸化水素ができるとされる。 一方、野菜や果実の場合には、過酸化水素を分解する酵素が存在するため、その発生はないとされる。
 酸化されたビタミンCには酸化剤としての働きもある。
 一般に過剰症はないとされるが、毎日過剰摂取(一日6g以上)することにより、嘔吐、下痢などが起こることがある。
トコフェロールなしビタミンE(V.E)のこと。この多くは合成添加物となる。
油脂成分の抗酸化作用がある。ただし、化学合成品であるdl-α-トコフェロールには生理活性がないため、ビタミンEとしての価値はない。
(ビタミンCの方は水溶性であるのに対して、ビタミンEの方は脂溶性であるという違いがある。)
エリソルビン酸等エリソルビン酸(イソアスコルビン酸とも)、エリソルビン酸ナトリウム。
亜硝酸ナトリウムによるニトロソアミンの発生を抑える効果があるとされる。ただし、変異原性があるとされ、避けた方がよい。
果実加工品、魚介加工品、農産物缶詰、漬物などに使用。
カテキン ツバキ科チャなどから抽出。
水産加工品、食肉加工品、菓子、油脂、清涼飲料水などに使用。
エチレンジアミン酢酸等エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA-Na)、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム(EDTA-Ca・Na)。
血中カルシウムの排出、胃腸障害、胎児毒性、催奇形性など。
缶詰、瓶詰に使用。
BHTジブチルヒドロキシトルエンの略。
油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、魚介冷凍品、チューインガムなどに使用。
BHAブチルヒドロキシアニソールの略。
発癌性や女性ホルモン(エストロゲン)作用があるとされる。特に妊婦の場合、胎児の遺伝子の活性がエストロゲンによって左右されるとされ、注意が必要。ただし、原材料に含まれている場合にはキャリーオーバーとして表示されないことがある。 (女性ホルモン作用を示すものとして、ビスフェノールAも挙げられている。これはプラスチック食器・容器や缶のサビ止め塗装樹脂(エポキシ樹脂)などに使用されている。)

油脂(特にパーム油)、バター、魚介乾製品(煮干しなど)、魚介塩蔵品、魚介冷凍品、ビタミン剤などに使用。

因みにBHCというのもあり、これはベンゼンヘキサクロライドの略で、有機塩素系の農薬。1970年に使用禁止となったが、化学的に安定なため、現在も食物連鎖により摂取しているとされる。

没食子酸没(もつ)食子酸プロピルのこと。
アレルギー性皮膚炎や変異原性など。
食用油、バター、マーガリンに使用。
塩化第一スズあり 缶詰、瓶詰食品、フルーツジュースに酸化防止剤や着色保存剤として使用。
保存料
防腐剤
カビや細菌などの増殖を抑制し、食品の保存性を高めるためのものだが、人体にも危険性のあるものが多い。
ソルビン酸等ソルビン酸、ソルビン酸カリウム。
染色体異常のほか、亜硝酸と反応して発癌性の疑いがある。
魚肉ねり製品、ハム、ソーセージ、漬物、魚介乾製品、ワインなどに使用。
しらこたん白不明サケの精巣から取出したプロタミンやヒストンという蛋白質で、細菌の増殖を抑える。
酢酸ナトリウムなし酸味料、pH調整剤としても使用される。
安息香酸等安息香酸、安息香酸ナトリウム。
アンソクコウノキの樹脂に含まれる成分。現在は化学的に合成される。
変異原性、皮膚炎、胃腸障害など。また、ビタミンCと化学反応して強力な発癌性物質のベンゼンができる。
清涼飲料水、シロップ、醤油、果実ペースト、果汁、マーガリンなどに使用。
パラオキシ安息香酸パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル5種がある。パラベンとも。有害性は同上。
醤油、果実ソース、酢、清涼飲料水、シロップなどに使用。
プロピオン酸等プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム。
カビや芽胞菌の発育を阻止するとされる。着香料として使用されることもある。
パン、チーズ、洋菓子などに使用。
デヒドロ酢酸等デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム。
催奇形性、染色体異常の疑いなど。また、ラットを用いた実験では肝変性を起すことが認められた。
業務用マーガリン・バター、チーズに使用。
致死率の高いリステリア菌に対して効果があるため、使用される。
ポリリジン不明放線菌の培養液から製造したもので、アミノ酸の一種であるリジンが鎖状になったもの。 (これ自体には問題はないようだが、微生物が生成する物質などの不純物を含むという問題がある。)
ツヤプリシン天然添加物。ヒノキチオールとも。
菓子類、麺類、生鮮食品に使用。
二酸化硫黄亜硫酸ガスのこと。有害性は胃腸炎、喘息、ビタミンB1破壊など。
抗菌作用があり、アルコール飲料、ドライフルーツ、香辛料などに使用される。
酒精 エチルアルコールのこと。
ビタミンB1 食品への添加物として表示されている場合、これは純粋なビタミンB1ではなくてビタミンB1ラウリル硫酸塩のこと。ラウリル硫酸塩は殺菌作用が非常に強いため、この添加物は保存料として使用されるもので、栄養強化が目的ではない。
発色剤ハム・ソーセージなどの食品を鮮赤色に保たせる目的で使用される。
亜硝酸ナトリウム食肉製品や魚卵などを鮮紅色に保つ。また、ボツリヌス菌などの食中毒菌の繁殖を抑える効果もある。
 亜硝酸Naは青酸カリ(この致死量は0.15g)と同程度かやや弱い程度の毒性を持つ物質である。 このため、食品への使用量が厳しく規制されている。 例えば、イクラ、タラコなどでは5ppm、ハム、ソーセージでは50〜70ppmに制限されている。 したがって、例えば100gのハムでは0.005〜0.007gが含まれている可能性がある。
 また、亜硝酸Naは動物性蛋白質が分解されてできるジメチルアミンと反応して、強発癌物質であるニトロソアミンができることも大きな問題である。 しかし、ビタミンCを添加してその反応を抑えているので、危険性はあまりないとされるが、常食は避けた方が無難。

食肉製品、イクラ、スジコ、タラコなどに使用。また、漬け物にも多いとされる。これは野菜に含まれる硝酸塩が細菌の働きで亜硝酸塩に還元されるため。

硝酸カリウム
硝酸ナトリウム
食品中で亜硝酸となって働く。また、腸内細菌により亜硝酸に変化する。
ハム、ソーセージ、ベーコン、コーンビーフに使用。
硫酸第一鉄あり果実、野菜の発色剤。
漂白剤色素成分や着色物質を無色にするためのもので、酸化漂白剤のものと還元漂白剤のものがある。
亜塩素酸ナトリウム溶液中で生じる酸素による酸化作用で、色素を分解する。また、殺菌目的でも使用される。変異原性あり。
生食用野菜、卵、柑橘類などに使用。
次亜塩素酸ナトリウム果実や野菜の殺菌としても使用される。国内での使用はないとされるが、韓国や台湾では使用されている。
亜硫酸ナトリウム等亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム。
漂白のほか、酸化防止、変色防止、保存、防かびなどの目的で使用される。
かんぴょう、乾燥果実、ゼラチン、ワイン、煮豆、エビなどに使用。
ピロ亜硫酸ナトリウム等ピロ亜硫酸ナトリウム(二亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムとも)、ピロ亜硫酸カリウム。一般に、単に「亜硫酸塩」と一括表示される。
漂白剤のほか、保存料や酸化防止剤としても使用される。
使用製品は同上。
二酸化イオウ無水亜硫酸とも。
過酸化水素殺菌剤としても使用される。発癌性がある。
現在は"かずのこ"のみに使用される。これは"かずのこ"の血管の色を除去するのが目的だが、代替物質がないため製造工程で使用されている。完全除去が前提のため、残留はないとされ、発癌性の心配はないようだ。
防カビ剤
防バイ剤
輸入柑橘類などは長期の輸送によりカビが生えるため、それを防止するために防カビ剤(防バイ剤とも)が使用される。これはポストハーベスト農薬(収穫後に使用される農薬)でもある。
 しかし、日本の柑橘類の栽培ではカビ防止に殺菌剤を収穫直前に散布するように指導されていて、この場合は農薬とみなされ、食品添加物にはならないのだが、結果的には同じことになる。
 なお、熱帯・亜熱帯地域の土壌中に生息しているカビが産生するアフラトキシン(特にB1)は毒性が強く、これに汚染されたものを食べて死亡することもあるほどだが、防カビ剤を用いてもこれの完全除去は難しいとされる。
TBZチアベンダゾール。抗菌剤。
輸入柑橘類、バナナに使用。
オルトフェニルフェノールオルトフェニルフェノール(OPP)の他、オルトフェニルフェノールナトリウム(OPP-Na)というものもある。
かび防止。輸入柑橘類の果皮に使用されるが、果肉への浸透もある(他の防カビ剤も同様)。特に妊婦はOPPやTBZなどを避けた方がよいとされる。
ジフェニールジフェニル(DP)。輸入柑橘類やバナナの果皮に使用。
イマザリルかび防止。輸入柑橘類(みかんを除く)、バナナに使用。
酵素剤酵素は球状蛋白質の一種で、炭水化物・脂質・蛋白質の分解などの生化学的過程で触媒として働くもの。 これは菌の培養・増殖という発酵法で製造されるが、酵素以外の不純物を多く含み、アレルギー物質などの有害物混入の懸念がある。
α-アミラーゼ 糸状菌、枯草菌がもつ酵素。でんぷんを分解。
β-アミラーゼ 高等植物が持つ酵素。でんぷんを分解。
グルコアミラーゼ でんぷんを分解。
プロテアーゼ 蛋白質の分解酵素。
リパーゼなし脂肪の分解酵素。
ペプシン  
レンネットなしキモシン、レンニンの総称。牛の内臓から抽出。また、微生物による産出もある。乳汁中のカゼインを凝固させるため、チーズの製造工程で使用される。
パパインなしパパイアの果実にある酵素。肉を軟化させる。
酵母 パン酵母、ビール酵母がある。
グルコースイソメラーゼ 放線菌等が産生する酵素。ブドウ糖を果糖に変える。
光沢剤食品からの蒸発を防いだり、湿気をおびさせないようにするため、表面に皮膜を作ったりして表面を保護するもの。
シェラック 白シェラック、精製シェラック。
ラックカイガラムシが分泌する樹脂状物質を精製したもの。
キャンディー、チョコレート、果実などに使用。
パラフィンワックス 炭素数20〜40の炭化水素の混合物。
キャンディー、チョコレート、果実などに使用。
ミツロウ ミツバチの巣から製造したもので、主成分はパルミチン酸ミリシル。
菓子、糖衣食品、果実などに使用。
香料香料には合成香料と天然香料があり、これらの香料素材を調合したものが香料ベースで、これを元にして作られる。
 合成香料はアセト酢酸エチル、アセトフェノン、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド化合物などの化学物質を香料として使用したもの。 天然香料は動植物原料から抽出した成分を、単独またはそれらを組合わせて香料として使用したもの。

 なお、喘息発作は香料への曝露が主要原因であるという。他には、ホルムアルデヒドも挙げられる。 また、偏頭痛も香料が誘因となっていることが多いとされる。 この理由は、この物質が血液脳関門をたやすく通り抜けて、中枢神経系に作用するためという。 また、香料への曝露がうつの原因となっていることも多いようだ。

酢酸エチルあり劇物指定物質だが、食品添加物としての使用は微量のため特に問題はないようだ。
バニリン バニラの香り付けに使用。
オイゲノールありクローブ油から作られる。肝臓・胃への障害があるとされる。
ゲラニオールあり合成香料。神経毒性がある。
飲料、菓子、アイスクリームなどに使用される。
サリチル酸メチル胃、肝臓、精巣などに悪影響を及ぼすとされる。
清涼飲料水、菓子、アイスクリームに使用。
ベンズアルデヒド類あり合成香料。バニラン(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド)などがある。
胃腸管などの刺激物質で、胃腸炎を引起こすことがある。
シトラールありレモンの香りの合成香料。
アレルゲン物質。また、エストロゲン作用もある。
香水や洗剤などにも使用される。
シトロネロール バラのような香りの合成香料。
アイスクリームや飲料、菓子など広く用いられる。また、化粧品や日用品にも使用されるが、皮膚刺激物質である。
クマリンあり天然香料。皮膚感作物質。また、動物では肺癌や肝癌の原因となる。
酸味料食品に酸味を与えたり、酸味を調整するために使用される。
酢酸あり酢酸は天然食品にも存在し、食品添加物として指定されるのはエチルアルコールなどを原料にして化学合成したもの。なお、エチルアルコールが分解してできるものが酢酸。
酢酸を大量に摂取すると死亡する。また、酢を毎日多量に摂取すると肝硬変を起すことがある。
クエン酸なし柑橘類の酸味成分で安全性は高いが、長期曝露により歯のエナメル質が損傷するとされる。
清涼飲料水、ジャム、キャンディー、フルーツ缶詰などに使用。
フマル酸不明クエン酸やリンゴ酸の約1.5倍の酸味があるとされる。
特にヒトに対する毒性はないようだ。
清涼飲料水、ジュース、洋酒、ゼリー、缶詰などに使用。
酒石酸ありぶどう酒製造時にできる酒石が原料。
染色体異常などの懸念がある。
清涼飲料水、キャンディー、ゼリーなどに使用。
乳酸あり未熟児では中毒が起こるとされる。
清涼飲料水、漬物、酒類、氷菓などに使用。
アジピン酸ありベンゼンを酸化して作ったもの。
大量摂取により下痢などを起すことかある。
二酸化炭素なしCO2、炭酸ガス。
リン酸ありリン酸の過剰摂取による弊害。
グルコン酸急性毒性が強いとされる。
苦味料食品に苦味を与えるもので、これは胃を刺激して、胃酸や消化酵素の分泌を促す効果がある。
カフェイン(抽出物)ありコーヒーの種子、チャの葉から抽出したもの。
妊婦の場合、胎児に悪影響がある。
コーラ、ドリンク、チューインガムなどに使用。
ナリンジン グレープフルーツの果皮、果汁又は種子から抽出したもの。
清涼飲料水、チューインガムなどに使用。
ニガヨモギ抽出物なしキク科ニガヨモギから抽出したもの。
清涼飲料水、酒精飲料などに使用。
ホップ抽出物 ホップの球花から抽出したもの。日持向上としての用途もある。
軟化剤チューインガム軟化剤のこと。
グリセリン 甘みをもつ粘稠な液体。グリセリンは脂肪酸とエステル結合して脂質を形成している。
プロピレングリコールあり増粘安定剤の項を参照。
ソルビトールなし甘味料の項を参照。
調味料調味料には、天然のものから作られた味噌や醤油などがあるが、これらは食品として扱われる。しかし、化学的に合成されたものは添加物として扱われる。
アミノ酸ありグルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム(グルタミン酸を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で中和したもの。MSG、グルタミン酸ソーダとも)、アスパラギン酸ナトリウムなど。

 グルタミン酸ナトリウムのグルタミン酸は昆布の旨味成分。旨味を出すという他に、塩味を和らげるためによく使用されるようだ。 「味の元」として販売されたが、1960年代の頃、アメリカで多量摂取による中華料理症候群(腕や首のしびれなど)で話題になった。現在は多量使用が改善されたため、その症状は現れなくなったとされる。しかし、グルタミン酸ナトリウムが焦げたものからは発ガン物質が生じるとされ、フライパンで調理しているときに使用するのは避けた方がよい。 また、乳幼児の場合、血液脳関門が完成されていないため、MSGが脳に侵入し、脳細胞を損傷するとされる。しかし、大人でも視床下部や下垂体には血液脳関門がないため、MSGによるしびれや頭痛、ホルモン類の減少などの悪影響が生じるとされる。
 さらには、MSGの過剰摂取は目の損傷(網膜損傷、網膜厚減少、黄斑変性など)を起すとされる。 網膜厚減少については、高濃度のMSGを含む餌(MSGの量は20%)をネズミに与えた場合、幾つかの網膜の神経層が75%も薄くなったという実験結果がある。 黄斑変性は網膜の中央にある黄斑の異常老化によるもので、これによって視覚や視野の機能が低下したり、失明することもある。 (なお、黄斑変性や癌の予防にはカロテノイドの摂取が有効となる。ただし、スナックやインスタント食品によく使用される、ノーカロリーの代替油脂であるオレストラはカロテノイドに付着して、共に体外に排出されてしまう。)
 また、MSGは緑内障の発症とも関係があるとされる。 通常の食事ではあまり心配するほどではないようだが、数十年もの長期摂取の場合には緑内障などの網膜疾患の原因になるようだ。
 また、現在は微生物を用いた発酵法によって安価に製造されるが、これには不純物の問題もある。

 フェニルケトン尿症の人には、L-フェニルアラニンの摂取上限がある。
また、MSG使用の場合、塩分の過剰摂取も心配される。(高血圧の原因は塩素ではなく、ナトリウムであるため。)

 アミノ酸と糖を高温加熱すると、アミノ・カルボニル反応が起こるが、これには有害なものが多いとされる。この代表的なものとして発癌性物質のアクリルアミドがある。したがって、化学調味料やアミノ酸が添加されたものを加熱調理したり、加熱調理したものは避けた方がよいようだ。

核酸 イノシン酸ナトリウム、ウリジル酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、シチジル酸ナトリウムなど。
有機酸 クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、フマル酸ナトリウムなど。
無機塩 塩化カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウムなど。
リン酸塩の過剰摂取は骨の形成異常、骨量減少、鉄分不足を引起こす。
たんぱく加水分解物 旨味物質としてはグルタミン酸ナトリウムが代表的であるが、これは単一な味のため次第に厭きられるようになった。 そこで、より複雑な旨味を持つたんぱく加水分解物が加工食品に使用されることになった。
 これはたんぱく質を分解して個々のアミノ酸(この中のイノシン酸が旨味物質となる)を取出したものだが、この製造方法には塩酸分解法、熱水抽出法、酵素分解法がある。 この中では、塩酸分解法がコスト的に最も優れている。 しかし、この方法では発癌性が疑われているクロロプロパノール類が少量発生するとされる。 このため、酵素分解方法も用いられるようになってきたが、依然として塩酸分解法が主流である。
pH調整剤食品を適正なpH領域に保ち、食品の変色や変質を防止する。また、保存料や酸化防止剤の効果を向上させ、保存性を高める。
アジピン酸あり酸味料としても使用される。
クエン酸 酸味料としても使用される。(発酵法で製造されることから、不純物の問題が懸念される。)
クエン酸三ナトリウムなし混合甘味料、混合調味料などにも使用される。
乳酸ナトリウム 乳酸はpHの低下及び雑菌の繁殖を抑制する。また、保湿性にも優れる。
膨脹剤膨脹剤は、ふくらし粉とかベーキングパウダーとも呼ばれる。
炭酸水素ナトリウムあり重曹のこと。ベーキングパウダーの主剤。かんすいやpH調整剤としても使用。
動物実験(イヌ)では大量摂取により嘔吐、下痢などを起す。
焼き菓子、ホットケーキ、まんじゅうなどに使用。
炭酸水素アンモニウムなし毒性はないとされる。
パン、菓子に使用。
塩化アンモニウムありヒトでは大量摂取により嘔吐などを起す。イヌなどには致死性がある。
パン、ビスケット、せんべいなどに使用。
酒石酸水素カリウムなしブドウ果汁に多く含まれている。
動物実験データはないが、安全性が高いとされる。
他の膨張剤とともに、ケーキ、ドーナッツなどに使用。
グルコノデルタラクトンなしグルコノラクトンとも。凝固剤、酸味料としても使用される。
焼き菓子、豆腐、氷菓、ゼリーなどに使用。
硫酸アルミニウムカリウムありミョウバンのこと。
大量摂取により、粘膜の炎症、下痢などを起すことがある。また、ネコに対する致死性がある。
ビスケット、スポンジケーキ、クッキーなどの焼き菓子に使用。
乳化剤本来混じり合わない水と油などを均一に混ぜ合わせるためのものが乳化剤で、界面活性剤ともいわれる。
レシチンありダイズなどの種子や卵黄から抽出したものだが、ダイズからの場合、遺伝子組み替えのものが多くなった。
グリセリン脂肪酸エステルなしグリセリンエステルとも。
マーガリン、乳製品、乳飲料、豆腐、菓子類などに使用。
乳化の他、消泡、起泡、分散、湿潤、日持向上、品質向上、制菌などを目的としても使用される。
ショ糖脂肪酸エステルありショ糖エステルとも。脂肪酸と砂糖から合成される。
様々な食品に幅広く使用されているが、染色体異常を誘発するとされる。また、不純物を多く含むとされる。
パン、ケーキ、アイスクリーム、チョコレート、乳飲料、即席カレー、マーガリン、ソースなど多くの食品に使用。
ソルビタン脂肪酸エステルなしソルビトールと脂肪酸が結合したもの。
ホイップクリーム、シュークリーム、アイスクリーム、清涼飲料水などに使用。
プロピレングリコール脂肪酸エステル  
ポリソルベートありポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。以前では食品添加物には指定されていなかったが、2008年4月に日本でも食品添加物として認可された。
パン、バター、ジャム、ケーキミックス、サラダドレッシング、アイスクリーム、デザート類など広く使用される。
イーストフードパンのイースト(パン用酵母)の発酵をよくするためのもので、塩化アンモニウム(毒性が強いとされる)、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カリウムなどがある。
 以前は臭素酸カリウムが一部で使用されていて、問題とされたが、現在は使用されていないようだ。ただし、塩化アンモニウムは毒性が強いとされ、安全性にはまだ疑問がある。
ガムベースチューインガムの基材となる物質のこと。
酢酸ビニル樹脂 酢酸とエチレンを原料にして重合反応させて製造される。
ジェルトン ポンチアナックとも。
キョウチクトウ科ジェルトンの枝から抽出。
チクル アカテツ科サポジラの樹液から製造したもの。
ミツロウ ミツバチの巣から抽出。光沢剤としても使用される。

 加工食品に使用される添加物は、その機能、用途が多岐にわたり分類することが難しいことより、それらをまとめたものが製造用剤と呼ばれるもので、以下のものがあります。

用途・一括名物質名等有害性備考
かんすいかんすいは小麦粉に柔らかく弾力性を持たせたり、色(黄色)や風味を出すために即席中華麺、スナック麺に使用される。これは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、およびリン酸塩のうち、一種以上の混合物。
 ビタミン、ミネラルを奪う可能性があり、ゆで汁は捨てた方がよい。
炭酸カリウムありかんすいの主成分。
炭酸ナトリウムあり粘膜に対する刺激性があり、大量摂取により胃や腸などの粘膜を傷つける。
リン酸水素二ナトリウムありリン酸二ナトリウムとも。
リン酸塩の過剰摂取は血中カルシウムの低下を引起こし、骨などが弱くなる。
ピロリン酸四ナトリウム縮合リン酸塩の一つ。かんすいの他、乳化剤、膨張剤、pH調整剤としても使用。
腎臓障害の可能性あり。
魚肉練り製品、乳製品などに使用。
ピロリン酸四カリウムあり縮合リン酸塩の一つ。かんすいの他、乳化剤、膨張剤としても使用。
腎臓障害の可能性あり。
魚肉練り製品、缶詰、麺類などに使用。
結着剤ハムやソーセージ、魚肉練り製品、めん類などの組織の改良などの目的で使用される。

 結着剤には正リン酸塩や重合リン酸塩(縮合リン酸塩とも)が使用されるが、この長期の過剰摂取により次の弊害がある。腎臓機能低下や腎臓障害、骨の形成異常、骨粗しょう症、腎石、動脈硬化など。また、短期的にはカルシウム不足や鉄の吸収不足が起こる。
 なお、リン酸塩は加工食品の品質改良効果により広く用いられていて、物質名での表示の他に、酸味料、ph調整剤、イーストフード、乳化剤、膨張剤、かんすい、調味料(無機塩)などの一括名として表示されている場合がある。 しかし、すり身のように原材料に含まれている場合には、キャリーオーバーとして表示されない場合がある。

正リン酸塩ありリン酸一ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三ナトリウムなど。
重合リン酸塩ありメタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムなど。
消泡剤揚げ油、豆腐、果実ジャム、ウイスキーなどの酒精飲料の製造・発酵工程で使用される。
グリセリン脂肪酸エステル 乳化剤としての働きもある。
加工助剤のため、製品には残留が残らないとされる。
シリコーン樹脂  
抽出溶剤油脂などの成分を効率よく抽出するために使用するもの。ただし、抽出溶剤は最終食品前に完全除去されていることが前提のため表示されない。
ヘキサン植物油の抽出に使用。
アセトンありガラナ成分の抽出に使用。
ヘキサン食用油脂の抽出に使用。
凝固剤主に豆腐用凝固剤のことで、大豆から作った豆乳を固めて豆腐にするために使用される。
塩化カルシウムなし塩化カルシウムなどの塩化物。
塩化マグネシウムなしにがりのこと。
硫酸カルシウムなし硫酸カルシウムなどの硫酸塩。
グルコノデルタラクトンなしラクトン類。膨張剤としても使用され、塩化マグネシウムの場合よりも体積が大きくなる。
水酸化カルシウム 消石灰のこと。こんにゃくの凝固剤。
日持向上剤短期間だけ微生物による腐敗や変敗を抑える目的で使用される。
 実質的に保存料であるが、これは「保存料」の表示が不用のため、消費者への印象を良くするために利用されることが多いようだ。 また、保存量には使用基準が定められているが、こちらは使用基準がないという違いがある。
有機酸 酢酸、酢酸ナトリウムなど。
酢酸ナトリウムは酸味を和らげる効果があるため、酸味料や調味料(アミノ酸等)、pH調整剤などと記載することもできる。
アミノ酸 グリシンなど。(グリシンは調味料、緩衝剤等の目的でも使用される。なお、グリシンを多量に含んでいるものを常用すると毒性があるとされる。
酵素 リゾチームなど。リゾチームは細菌を溶かす酵素で、卵白から抽出される。
ビタミンB1 ビタミンB1ラウリル硫酸塩のこと。
香辛料抽出物  
品質改良剤 
プロピレングリコールあり保湿性、湿潤性を持つことから、生めんなどの品質改良剤として使用される。
臭素酸カリウム小麦粉の改良剤で、除去が原則とされる。発癌性、染色体異常など。
パンに使用。なお、強毒性や強い発ガン性から海外では使用禁止になっているところが多い。
離型剤焼き上がったパンや菓子が型離れしやすくなるように使用される。
流動パラフィン 耐熱性があり酸化されにくいという特徴がある。
ろ過助剤精製ろ過工程で不純物を吸着し、ろ過の効率を高めるために使用される。
二酸化ケイ素(シリカゲル)や酸性白土、カオリン、ベントナイト、タルク、砂、ケイソウ土などがあり、使用後には除去される。


補足

【有害性表記】

ppm
 ppmとは"parts per million"の略で、すなわち百万分の1単位のこと。百分率に換算すると、

となる。なお、ppbというのもあり、これはppmの1000分の1のこと。bはbillion(10億)の略。

ADI
 体重1kgあたりの一日摂取許容量のことで、添加物の安全性を言う場合によく用いられる。 発癌性などの慢性毒性が出ない量に1/100程度の安全率を乗じて設定される。

酸とアルカリ
 アルカリとは塩基性を示す物質のこと。 酸と塩基の現代的な一般的定義は次のようになる。酸とは電子対受容体のことで、塩基とは電子対供給体のこと。 たとえば、水素イオンは電子受容体なので酸となる。
 一般に酸と呼ばれるものは水素を持っていて、これを与えたり、奪ったりすることで化学反応が生じることになる。 (特にOH基やNH基、SH基をもつものは大抵が酸となる。) したがって、酸と塩基は次のようにも定義される。
 酸とは水素イオンを与えることができる物質のことで、塩基とは酸から水素イオンを奪うことができる物質。

エステル
 エステルとはアルコールと酸(特にカルボン酸)とが脱水反応(-OH基と水素イオンが結合して取れること)によって生じた化合物のこと。 一般にアルコールとはOH基を含む化合物の総称で、メタノール(有毒)やエタノール(これが通常言われているアルコール)が代表的なもの。 (これらは最も単純なアルコール類で、分子が小さいために血液脳関門を通り抜けて脳に進入し、酔いを引起こすことになる。) 他には、グリセリンや糖などがある。
 カルボン酸はカルボキシル基(-COOH)を含む化合物のことで、脂肪酸はカルボン酸の一種。

トランス脂肪酸
 マーガリンやショートニング(shortening. 練りこみ専用の固形油脂のこと)にはトランス脂肪酸が含まれている。 これらは植物油の不飽和脂肪酸を水素添加によって飽和脂肪酸に変えたもので、本来の植物油脂とは異なる。 また、近年ではマーガリン類のファットスプレッドというものもよく使用されるようになったが、これとマーガリンとの違いは油脂の含有率の違いで、油脂の含有率が低いものがファットスプレッドと呼ばれる。 また、マーガリン類から派生したブレンドスプレッドというのもある。
 マーガリンやショートニングは食品の加工用に広く用いられるようになったのだが、化学的に製造されたこれらの加工油脂は体に有害性があるとされる。 これは、天然にある脂肪酸はシス型なのに対してマーガリン等の場合にはトランス型のものができてしまうことによる。 (また、業務用途の調理用油にも含まれ、知らずに摂取していることが少なくないようだ。) つまり、これが細胞膜に多くあると、細胞膜が弱くなったり(或いはこの働きが悪くなったり)、有害物質が皮膚から進入しやすくなったり、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎を引き起こす恐れがあるため。 また、悪玉コレステロールの増加、酵素の働きを阻害、心筋梗塞や肥満、血行不良、EDの原因になるなどの弊害もある。
 欧米諸国ではトランス型脂肪酸の含有量が規制されたり、その含有量の表示が義務づけられた。 このため、それを含まない「トランス・ファット・フリー」が販売されるようになった。
 しかしマーガリン等の加工油脂を控えても、トランス型脂肪酸は植物油にも含まれるようになっていて(これは溶剤を用いて作られるようになったため)、これからの摂取もある。 また、業務用でよく使用される硬化油には特に多く含まれ、これを用いて揚げた食品にはトランス型脂肪酸が多くなっている。
 トランス型脂肪酸の一日最大摂取量は2gとされるが、家庭用のマーガリンには平均して10%程度含まれていることや、よく食べるパンやケーキ、クッキーなどの食品にマーガリンやショートニングが使用されていたりするため、容易にこの摂取上限を超える恐れがある。 なお、パンなどにマーガリンやショートニングがよく使用されるのは、味や食感を改善したり、ショートケーキのように柔らかくすることが目的のようだ。

活性酸素

 酸素分子は大気の21%(体積比)を占める物質で、これは植物の光合成によって作られる反応性の高い物質である。 (この意味では、生物にとって植物は非常に重要な存在ということになる。このことは植物が大規模に枯渇するような状況においては無視できないことである。) 一方、大気の78%を占める窒素分子は、三重結合している分子であることから化学的に安定である。 これは、窒素分子を取込みアンモニアに変えることができる根粒バクテリアによって植物に取り込まれる。 また、雷による放電によって窒素酸化物となって雨とともに地上に降り注ぎ、植物に取り込まれる。
 酸素よりも反応性の高い元素としてはフッ素があるが(フッ素が電気陰性度が最も高く、電子を奪いやすい、つまり酸化力が最も強い)、この単体のフッ素分子は存在量が低すぎる上に反応性が高すぎるため、生体にとっては毒物となるだけで利用されることはない。(もっとも歯の象牙質を強化するためにこの化合物(フッ化ナトリウム)が利用されることもあるが、この有害性も指摘されている。)
 酸素分子はO=Oというように(原子価結合法によって)単純に結合しているものと考えられていたが、量子力学の発展によってこの結合が分子軌道法で考えられることになり、これによれば2個の不対電子を持つラジカル分子であることが分かった。 そして、不対電子を持つことから、この分子が磁性を持つ理由が説明された。
 そのように酸素分子は活性が高いのであるが、これ自体は活性酸素ではない。 活性酸素というのは、酸素分子よりも活性の高い分子のことで、これとしてはスーパオキシドアニオン(O2-:アニオンとは陰イオンのことで、これは省略されることもある)、過酸化水素(H2O2… H-O-O-H)、ヒドロキシラジカル(・OH)、一重項酸素(1O2)がある。

 一重項酸素というのは、この分子の最上位のエネルギー軌道であるπ*反結合性軌道のそれぞれに入る電子(このためスピンは同じ向きに揃う)が、この一つの軌道に入った状態のもので(このためスピンは反対向きになり、これらの全スピンは0になる。このことは紫外線などのエネルギーによって電子が励起されることで起こる)、これはエネルギー状態が高くなることから、酸素分子よりも反応性が高くなる。
 一重項とは全電子のスピン量子数が0のものを言う。 通常の酸素分子の場合、これは例外的に全電子のスピン量子数が0ではなく1となることから、三重項となる。(なお、スピンの場合、他の量子数とは違って半整数の1/2または-1/2の値をとり、1/2単位となる。)

 分子というのは結合性が満たされた状態のものであるから、原子の不対電子は他の原子の不対電子と対をなすのが普通である。ある軌道に電子が対に入る場合には、パウリの排他原理によりスピンが逆向きとなることから、対電子の全スピンは0となる。
 酸素分子は上位の分子軌道(これより下位の軌道では結合性と反結合性とでほぼ相殺するため、結合性を考える上では無視してよい)で反結合性軌道に入る電子があるものの全体としては結合性であり、分子として存在できる。

 活性酸素の中ではヒドロキシラジカルの反応性が最も高く、脂質やタンパク質、糖質など生体を構成する全てのものと反応する。 発生量ではスーパオキシドアニオンが最も多いが、他の活性酸素に比べると反応性は低い。

 酸素分子は糖(グルコース)が酸化される時に利用され、この反応は次のようになる。

C6H12O6+6O2 → 6CO2+6H2O+Energy

 つまり、呼吸における酸素分子の利用とは、分子全体がよりエネルギー状態が低いもの(これとしては二酸化炭素や水が代表的)に変化することによって差分のエネルギーを得るということである。 (一方、光合成の場合は反応が逆になる。この場合のエネルギーは太陽からの輻射エネルギーとなる。 また、このとき植物が利用するものは糖となる。)
 しかしながら、体内に取り込んだ酸素の約2%が活性酸素になるとされる。 また、活性酸素は紫外線やストレス、激しい運動、食物、飲酒、喫煙、細菌やウイルスなどの病原体の侵入などで過剰に生じることになる。
 病原体の侵入によって活性酸素が増えるのは、これを撃退するために白血球の一種である好中球が活性酸素を放出することによる。 (好中球やマクロファージは病原体を一般的に撃退するもので、リンパ球は抗原認識後にこの能力を発揮する。傷口から病原菌が侵入して化膿した際の膿というのは、病原菌との戦いで生じた好中球の死骸である。) しかし、活性酸素は自身の細胞をも傷つけることになる。
 アルコールや食物から取り込んだ食品添加物や残留農薬、重金属など生体にとって無用なものが肝臓で処理される際、薬物代謝に従事するチトクロームP450という鉄酵素が主として働くことになる。 これは処理対象の基質とともに酸素と結合して処理するのだが、このときに1個の電子を必要とする。 もしこれが提供されないと、この鉄酵素は基質を手放すとともに酸素を活性酸素として放出する。
 アルコールは脳に入って酔いを生じさせるが、この本質は神経細胞の興奮性を低下させることによるものである。 このことによって脳の興奮性を高めたり、怒りや不安などの過剰な興奮を鎮めたりする効用があるが、これは心理的な有効性であって、生体が特に必要とするものではない。

 アルコールは神経の興奮性を抑制するものであるにも関らず、脳の興奮性を高めるようになるのは脳は抑制性のニューロンが多いため。 脳のある全体的興奮性は側抑制によって速やかに抑制されるのが一般的である。
 そのように、アルコールは脳の抑制性を弱めて興奮性を高めるものの、限度を超えると興奮性が全く低下することになる。 そして、限度を弁えない酒飲みはそのために不快になってしまうのである。 (飲酒の快楽は節度を守ってこそなのであるが、飲酒はこの制御性を失わせるという意味で自己矛盾的である。)
 ただし、脳の興奮性は無からは生じない。したがって、飲食や音楽などによって脳を刺激する必要がある。また、人と心理的に結合することも有効だろう。おそらく、これを目的として騒々しくすることが多いのだと考えられる。彼等がしばしば行なう無意味な行動はこのことによって合理的に説明され得る。 なお、意味のない行動を繰り返すため彼等は愚鈍に思えるのだが、実は狡猾だったということになる。 それを回避するためには、その策略に嵌まらないことが肝要である。

 蛇足ながら、一般的に大人あるいは知識人と呼ばれる人達が否定的傾向が強いのはその現れと考えることができる。 このことは多くの場合、有効であるとしても(というのは正しい見解や事実を述べる場合を除いては間違った意見や考えの方が確率的に高いため)、真実な有害的見解や危機的見解に対する否定的意見に与し易いという意味では重大な過失を産みやすい。 例えば、「…のようなことは有り得ない」というのは何の根拠がなくても信じ込みやすいのである。
 しかしながら、そのような人でも自己の願望に対しては過信を産みやすいのも事実である。大人といった常識を弁えた人でも容易に騙されることがあるのは、相手の言動からというよりは自己の願望から生じていることが多いといえる。
 また、構成的論述も相手の考えに嵌まりやすいといえる。 というのは、自己によってある考えが構成された場合には、それを信じる傾向が生じるからである。 例えば、「AならばBである」ということを考えるためには、とりあえずAが真であるということを受入れる必要がある。そのようにある仮設を元にして論理が展開され、結果が事実と適合する場合、自然にその仮設を真実であると思い込んでしまうのである。
 その極端な例としてはニュートン力学やマクスウエルの方程式に代表される電磁気学が挙げられる。 これらは非常によく現実と適合していために、原子時代を迎える前の19世紀以前の科学者達はこの絶対的真実性を疑わなかった。 しかしながら、ニューロン力学などの古典力学を原子の振舞いに適用すると矛盾が生じることが分かり(荷電粒子である電子が原子核の周りを運動すると、この加速度運動により電磁波が放射され、電子は速やかにエネルギーを失い原子核に落ち込むことになるが、これは原子の実態と合わない。なお、電子が原子核の周りを回っているという原子像はラザフォードの実験によって確認された)、この真実性が揺らぐことになった。 この前には光速度不変性により揺らいでいたが(この観測事実により相対論が提唱され、空間、時間及び質量の絶対性が放棄された)、この揺らぎは原子の観測によって決定的になり、古典力学は真実の座から降りることになった。
 一点の曇りもなく真実であるということが自らの崩壊を招くことになったという意味では象徴的である。 このことは絶対的真実に到達することができない経験的科学に限らず、構成的科学である数学においても起った。 これはゲーデルによる不完全性定理によって証明された。 これは、数学の完全な公理化は不可能である、ということを証明したものだった。 (このことは、論理的構築の前提である公理の選定には任意性があり、この選択的必然性を保証するものは何もない、ということによるのではないかと考えられる。例えば、幾何学の公理的理論であるユークリッド幾何学も非ユークリッド幾何学が現れたことにより、この公理の絶対性が否定された。公理の正当性は、これが証明しようとする事実等の集合と関係性があると考えられる。)
 したがって、論破を回避するためにはできるだけ曖昧あるいは意味不明に述べるということが効果的でありそうした論述は多いが、意味もなく専門用語を多用するならば、それは自分の学識を誇りたいか、相手をケムに巻こうという意図が隠されていると考えるべきだろう。 (知らないことを考えるためには、とりあえずその前提や知識を真であると考える必要があるのだから。)

 また、ストレスも活性酸素を生じさせることになる。 ストレスが生じた場合、ステロイドホルモンの一種であるコルチゾールが分泌されるが、この合成過程や分解過程で活性酸素が生じることになる。 また、アドレナリンなどの合成過程でも活性酸素が生じる。 コルチゾールはリンパ球の一種であるNK細胞(ナチュラル・キラー細胞)の活性を低下させる。 NK細胞は自己の病的細胞を認識してこれを破壊する細胞であり、この活性の低下は病気に罹りやすくなったり、癌細胞の発生や増殖を助長することになる。

ストレス

 生物とは自己の永続的存在性を志向するものであり、したがってこれを脅かすことについては防御反応を起すことになる。 肉体の永続性を保つためには、この様々な不変性や恒常性を維持する必要がある。 これを変化させるものはストレス要因となる。 これとしては、温熱や寒冷、騒音、過労、感染、炎症などがある。
 また、外部の脅威に対しても対処する必要がある。 人もまた動物であり、動物界の常である弱肉強食ということに対処する必要がある。 つまり、他の動物に襲われるという事態に対処する必要がある。 そのような事態が発生した場合、肉体はどのように対処する必要があるかといえば、脳や筋肉の活動性を高めることが第一に求められることになる。 これらはエネルギー源としてブドウ糖(グルコース)を利用するため、肉体はこの供給を高める必要がある。 このためには、肝臓に蓄積したグリコーゲンを分解してブドウ糖に変換して血管に放出するのだが、この指令を行なうものが副腎皮質から分泌されるコルチゾールと呼ばれるホルモンである。 このホルモンの分泌指令は、視床下部の下垂体から分泌されるACTHと呼ばれるホルモンである。
 また、血管についてはこれを収縮させて血圧を高める必要がある。 この指令を行なうものが、副腎髄質から分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンと呼ばれるホルモンである。  ストレスによって活性酸素が生じるというのは次のことによる。 生体は様々な恒常性を維持するものであり、これを変化させるものはしばしばストレスとなる。 例えば、肉体的ストレスとしては また、生物は外部の環境に依存して生きているものであり、生存環境の変化に対して心理的ストレスが生じることになる。 これとして代表的なのは、危険な動物に出会った時に生じる肉体的変化である。 (このことは生存性に対する危機認識によるものといえ、人間の場合にはそれ以外にも様々な危機認識が生じることになる。また、好適な生存条件に対する喪失感も心理的ストレスになり得る。) これに対しては戦うか素早く逃げるかの何れかの対処が要求されるが、このためには脳および筋肉の活動性を高める必要があり、このエネルギー補給として血糖値を高める必要がある。 また、血圧を高めてこの循環性を高める必要もある。 病原体、酸・アルカリ、毒物、打撲などによる炎症、紫外線・放射線などがある。 また、コルチゾールの放出は炎症反応を抑制するため。

発癌について

 癌は癌細胞と間質とから構成されるが、癌細胞は正常細胞(すなわち元の同一遺伝子を持つ細胞)が突然変異した細胞のことであり、間質は血管と結合組織とからなる。 この細胞が分裂を繰り返すことによって増殖し、癌ができるということになる。 ただし、このためには半永久的に分裂が可能なように、染色体の端にくっついているテロメアを保護するためのテロメアーゼ活性を持っていることが重要とされる。 一方、正常細胞では分裂を繰り返す度にテロメアの長さが短くなり、細胞に寿命が生じることになる。
 遺伝子はDNAという二重螺旋の構造を持っているが、この構造は水素結合という比較的弱い結合によって維持されている。 (例えば、小さな分子からなる水が常温で液体となっているのは、分子間で水素結合が働いているからである。これは水素側の共有電子雲が電気陰性度の高い酸素側に引きつけられていて、水素側が正電荷を示すのに対して、酸素側の共有電子雲は酸素側に強く引きつけられるために負電荷を示し、これらが近くに存在する場合には静電気的引力が働くということになるからである。) このため、遺伝子は外部の作用を受けやすい(このことは主に細胞分裂の際の、細胞の核の中の染色体がほどけてDNAが複製されるとき)。 特にフリーラジカルの影響を受けやすい。

 ただし、遺伝子に変異が生じたからといって、それは必ずしも癌化するとは限らない。 癌化が生じるには特定の遺伝子において変異が生じる必要があり、それらの遺伝子は、癌化遺伝子と癌抑制遺伝子とに大別される。 癌化遺伝子は、これが活性化することによって細胞を癌化させるもので、癌抑制遺伝子の場合には、これが不活性化することによって細胞が癌化するということになる。 つまり、遺伝子変異が、癌化遺伝子の活性化や、癌化抑制遺伝子の不活性化となった場合に、細胞の癌化が生じるということになる。

 癌活性遺伝子としては、アーブ-B2遺伝子、K-ラス遺伝子(細胞増殖能の昂進)などが挙げられている。 癌抑制遺伝子としては、P53遺伝子(細胞増殖の停止を行なったり、細胞死を意味するアポトーシスを誘導)、APC遺伝子(細胞増殖の抑制)、DCC遺伝子(細胞の接着能に関与)などが挙げられている。
 癌化遺伝子の活性化は、点突然変異(塩基一つの置換)、遺伝子増幅、遺伝子再構成などによって起こるとされる。 癌化抑制遺伝子の不活性化は、点突然変異、塩基の欠損または挿入(遺伝子は4種の塩基の並びで構成されているが、これから20種のアミノ酸を対応させるためには、塩基3つが必要となる。これはコドンと呼ばれる。 しかし、その並びに欠損や挿入が生じた場合には、その組合せがずれてしまうことより、全体的にコドンが変化することになる。 したがって、生成される蛋白質が全く異なったものとなることより、その影響は大きい)、染色体の欠損などによって起こるとされる。
 しかし、そうした変異だけでは癌細胞の増殖が進展するわけではない。 というのは、細胞が周囲との調和を乱して増殖を続けた場合、この細胞はアポトーシスという機構によって死滅してしまうものだからである。 (これは癌抑制遺伝子(というよりは分裂抑制遺伝子という方が妥当があるが)の一つであるP53遺伝子の働きによる。) しかし、癌細胞はこの機構に欠陥が生じているため、アポトーシスによる細胞死が起らない。

 癌細胞の特徴の一つとして細胞の遊離性があるが、これは細胞表面の接着因子の遺伝子変異が影響しているとされる。 この遊離性により、癌細胞の全身への転移が生じるということになる。 ただし、この転移は癌細胞だけであり、間質は転移しない。 間質は転移先のものを利用することになる。

 さて、悪性腫瘍となる癌細胞は、そうした遺伝子変異が一気に起こるのではなくて段階を踏んで起こる、という多段階説が支持されている。 つまり、遺伝子変異を蓄積していきながら、癌化するのに必要な種々の性質を獲得していくということである。 しかし、癌化が全てこのパターンで説明できているわけではない。
 発癌の二段階説というのは、発癌の引き金に当るイニシェーションと、その促進の段階に当るプロモーションの段階に分けて考えるものである。 このイニシェーションを起すものがイニシエーターであり、フリーラジカル(活性酸素など)、ベンツピレン(タバコの煙やディーゼルエンジンの排ガスに含まれる)、ダイオキシン、ジメチルニトロソアミン(胃の中で、二級アミンと亜硝酸塩が反応してできる)などがある。 また、プロモーションを起すものがプロモーターと呼ばれるものであり、これとしては食塩(胃癌を促進)や胆汁酸(大腸癌を促進すると考えられている)などがある。 そして、発癌はこれらイニシエーターとプロモーターとがセットになって起こると考えられている。 したがって、イニシエーターだけ与えて発癌性を示さないからといって、それに発癌性がないということにはならない。

 癌予防としては、以下のことが挙げられる。

 癌化は細胞分裂が活発な場合(これは遺伝子の修復機構が細胞分裂の速度に追いつかなくなることによる)や免疫能力が低下した場合に起こり易くなることから、乳児や妊婦(胎児)、高齢者において癌の発症率が高まる。 また、人体の中でも細胞分裂が活発なものほど放射線の影響が高くなるが、これとしては骨髄や毛包(毛根を包むもの)、胃腸管を形成する細胞がある。 もし骨髄が障害されると、白血病に罹ったり、出血や感染症で死亡することがある。
 癌細胞に対する免疫機能ということでは、これは主に細胞性免疫機能であるリンパ球が受け持つことになる。 これにはT細胞とB細胞の2種があり、これらが協同して癌細胞等を撃退することになる。 T細胞は骨髄の造血幹細胞で生まれ、その後、胸腺に移り成熟することになる。 このとき自己の細胞の特徴を学習し、「自己」と「非自己」を認識することになる。
 胸腺は胸骨の内側にある比較的小さな臓器である。 これは10代の頃に最も大きくなり、10代後半から小さくなり始め、40歳代では約3割くらいに縮小し、老人の頃にはほとんど無いに等しくなってしまうという。 このことが、特に老人において癌が発生しやすいことの理由と考えられている。

 因みに、癌治療においては癌細胞の増殖や転移を予防するために抗癌剤がよく用いられるが、これは癌細胞の高い細胞分裂性に着目して、これを示す細胞を破壊することを目的としたものである。 したがって、抗癌剤には癌細胞ではない細胞をも破壊するという副作用が生じる。 このような細胞としては、造血機能を持つ骨髄、胃腸などの消化器官の粘膜、発毛関連の細胞が代表的である。

放射性物質

 放射性物質としてはラドン、放射性ヨウ素、放射性セシウムが代表的である。
 ラドンは全て放射性同位体で、ウランやラジウム等の壊変によって生じる。 これは希ガス元素であり、気体として存在することから、大気中に拡散することになる。 このため、これは肺癌や肺気種などの原因となり得る。 (アメリカ環境保全局(EPA)によれば、アメリカの肺癌死亡者数の11%(年間2万人)はラドンによるものとされる。因みに、肺癌は呼吸困難となり、かなり苦しいものとなるため、癌の中でも特に避けるべきものである。) しかしながら、それらの疾患と放射性物質との因果関係の立証は困難であることから、法的に訴えることは困難を伴う。 また、そうであるから、それを政府等が明言するということもない。
 したがって、各々がその危険性に対して(過剰反応とならないように配慮しながらも)十分な予防的措置を取ることが肝要となる。 例えば、アメリカのネバダ州において100回以上も行われた大気圏核実験では、この風下の住民(核実験場からこの方角の半径200km以内が対象のようだ。少なくとも60km以内では死の灰が降り積もり、これにより癌に罹る人が現れた)に対して以下のことが忠告された。

 ラドンの他にヨウ素やセシウムも代表的放射性物質として挙げられるのは、これらは気化しやすいため、広範囲に拡散することに因るものだろう。
 放射性ヨウ素は乳幼児に甲状腺癌を起す確率が高い。 例えば、チェルノブイリの原発事故ではこの汚染地における15歳未満の甲状腺癌の発症率が通常の100〜130倍になったとされる。 ただし、この半減期は8.04日と短いため、汚染地や汚染源が十分な期間を経れば(2ヶ月で放射性ヨウ素は約1/190、3ヶ月では約1/2600となる)比較的安全になると考えられる。 なお、ヨウ素は海藻に濃縮されるため、海洋の放射能汚染に注意する必要がある。
 セシウムの場合、これは半減期が30年(セシウム137の場合。他にはセシウム134もあり、こちらは半減期が2.0年となる)であり、ヨウ素と比べるとかなり長いため、この内部被爆(体内被爆)をした場合には、長期間に渡ってこの影響を受けることになる。 (なお生物学的半減期は110日であることから、3年経過すると約1/150、4年経過では約1/800となるため、実質的には5年以上経てばほとんど影響がないと考えられるが、この期間内に細胞に発癌性が生じた場合にはしばらく経ってから癌が発見されることになる。) 放射性セシウムはβ線を放出して放射性バリウム(半減期は約3分)に壊変し、さらにこれがγ線を放出することになる。 セシウムはカリウムと同族の元素であることから、カリウムと置換しやすく、したがって筋肉(特に心筋)などに集まりやすい。 また、これは細胞内のミトコンドリアの機能を壊すため、心臓や脳の毛細血管に対する悪影響(心筋梗塞や脳梗塞、脳溢血など)についても注意する必要がある。 特にセシウム137は心筋に濃縮されやすく、しかも心筋は非常に寿命の長い細胞のため、心筋は遅々としてしか再生しないため、心臓病で命を落とすことが少なくない。 したがって、不整脈や心筋梗塞を患った場合には要注意となる。
 晩発性放射線障害としては、癌や胎児の奇形がよく知られているが、他には胎児の精神遅滞も危惧される。 胎児の発育において、脳では妊娠後8週目から15週目にかけて小集団をなしていた細胞が遊走して脳の基礎的構造が形成されるが、このときに放射線に曝露されると、脳の形成に悪影響が生じて、精神薄弱児を生むことがある。

 最も危険な放射性物質としてはプルトニウムがあり、これは猛毒として知られているもので、極微量の吸入によって肺癌等を起す可能性が高いとされる。 (経口摂取の場合には、プルトニウムは消化管からの吸収が非常に少なく殆どが体外に排出されるため、この被爆の可能性はかなり低いとされる。)
 他には放射性ストロンチウムも毒性が強いため特に注意する必要がある。 この(物理的)半減期は29年で、生物的半減期も49年と長く、この実効半減期は約18年となる。 ストロンチウムはカルシウムと同族の元素であり、これはカルシウムと置換しやすく、骨などに蓄積されることになる。 骨に蓄積した放射性ストロンチウムはβ線を放出することから、悪性骨腫瘍(骨の癌のことで、骨肉種、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などがある。特にユーイング肉腫は進行が早く悪性度が高いが、これは比較的稀な腫瘍である)や白血病の原因となる。 また、骨髄の障害により白血球の一種の好中球の減少が起こるとされる。この結果、免疫能力の低下が生じ、最悪の場合には敗血症(細菌感染が全身に波及したもの)になることがある(この防止には豆乳ヨーグルトの摂取が有効であるという)。
 ストロンチウムが人体に入るルートは食物や飲料水となるが、特に海藻や魚、牛乳に蓄積されやすいとされ、これらの放射能汚染に注意する必要がある。

 因みに、放射線にはα線、β線、γ線、中性子線などがあるが、これらの実体は以下のようになる。
 α線は高速なヘリウム原子核であり、これは正電荷を持つため数cmの空気層によって遮断されるとされる。 したがってこの悪影響は内部被爆によってもたらされる。 α線の放射線毒性は強いため、この放射性物質の吸入や経口摂取に注意する必要がある。
 β線は高速な電子(負電荷を持ち、これは中性子のβ壊変によるもの)または陽電子(正電荷を持ち、これは陽子のβ壊変によるもの)の流れであり、物質によって遮蔽されやすい。
 γ線は高い周波数(したがって波長が短い)の電磁波であり、このためα線やβ線と異なり、透過性が高い。 これは電磁波でもエネルギーが高いことから、X線と同じように化学結合に影響を与えることになる。 これによりフリーラジカルが発生して、遺伝子の複製に障害を与えることになる。 (化学結合に影響を与えるということでは可視光線でも起こるが、この場合の網膜での化学的変化は可逆的となることから、可視光線では無視される。一般に、紫外線以降の電磁波の場合に人体に対する影響が高くなるが、赤外線やマイクロ波のように可視光線よりも波長が長い電磁波の場合でも人体に対する影響が現れる。送電線のような低周波の電波源では、これは電磁波というよりは磁場が影響することになる。) なお、内部被爆しているかどうかは「ホールボディカウンター」によって分かるが、これによって検出されるのはγ線のみとなる。
 中性子線は電荷的に中性な粒子の流れで、この中性子は高速中性子と低速な熱中性子とに分けられる。 中性子線は粒子との衝突によって減衰するが、熱中性子の場合には高速中性子よりも反応断面積が大きくなるという特徴がある。
 なお、プルトニウムはウランよりも1万倍も中性子を放出するとされ、これに伴ってα線などの他の放射線も放出され、比放射能の高いことがウランよりもプルトニウムの毒性が強いことの理由のようだ。 このことから、タンプリンとコプランの学説に基づいて、「耳掻き1杯で百万人が癌になる」ということが流布されたが、これは誇張した表現であって実際にはこれを支持するデータはないとされる。 しかし、プルトニウムが非常に危険性の高いものであることには変わりがない。
 特にプルサーマル発電の燃料として使用されるMOX燃料はプルトニウムを5%ほど含んでいるとされる。 ただし、これが原発事故により、炉心損壊して水素爆発等が起っても、粉末や微粒子となって遠くにまで拡散することはないとされる。 このことはMOX燃料が陶器のように焼き固められているためという。 しかし、炉心融解が起きた場合には、この限りではない。

環境ホルモン

 ホルモンは神経伝達物質と共に細胞間情報伝達物質で、細胞に対して特異的活動を指示する。 神経伝達物質の作用は局所的なもので、ニューロンから伸びる神経繊維によって接続された細胞(ニューロンや筋肉)に対してのみ作用する。 神経伝達物質のニューロンへの作用は、細胞膜においてイオン物質の透過を行なわせることにより、ニューロンの興奮を促進したり、あるいは抑制することである。
 一方、ホルモンはこの内分泌腺から血管内に放出されて体内を隅無く巡り、細胞表面にこの受容器(レセプター)を持つ細胞(標的細胞)に働きかける。 この場合の細胞への作用は、特定の遺伝子に働きかけて、蛋白質の合成を促すことである。 つまり、これは特定の細胞のある機能の活動を促すスイッチを押すような物質ということになる。
 ホルモン物質とレセプターとの対応関係は、鍵と鍵穴の関係に例えられ、ホルモンの形状に合うものがこのレセプターということになる。 したがって、ホルモンと似たような物質を体内に取込み、血中に流れ込むとこのホルモン作用が現れることになる。(ただし、エストロゲン様活性を持つ化合物の間での構造的類似性はあまり認められない。) そのように体内の細胞が産生するホルモンと同じような働きを行なったり、それを阻害するような物質のことは内分泌攪乱物質と呼ばれるが、一般的にはより分かり易く環境ホルモンという名で呼ばれる。
 そうしたホルモンの中で最も重大なのが、女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモンのこと。女性ホルモンとしては、他に黄体ホルモンであるプロゲステロンがある)で、これは卵巣から分泌され、子宮筋を発達させたり、子宮内膜を肥大増殖させて、受精卵の着床準備を行なわせるものである。 また、これは胎児の成長初期においては性分化を促すものとなる。 したがって、胎児(男児)や胎仔(オス)がエストロゲン様化学物質に曝露されると、生殖器奇形等の障害が現れる。 また、出生時にはその問題が現れなくても、第二次性徴期となる思春期頃に現れることもある。
 また、エストロゲン様化学物質の過剰(身体で作られる量以上)な曝露は、癌を引起こす可能性があるとされる。 (特にエストロゲンは乳癌細胞の増殖を促進させることが多い。) それに、他の物質との相乗効果により、それぞれ単独の場合よりも影響が強くなることもある。

 女性ホルモンのような細胞間情報伝達物質がなぜ癌を引起こすのだろうかという大きな疑問が生じるが、これは次のことが関係しているようだ。 この代表的な疾患である乳癌については、この原因物質はエストラゲンの分解物質である16α-ヒドロキシエストロンであることが推定された。 これはDNAと不可逆的に結合して、遺伝子を損傷させる可能性が高いという。 もし、エストロゲンから16αへの分解を促進させるような物質があれば、この物質は乳癌リスクを高めることになる。 そこで、このような物質が探されることになり、これとしてはDDTやDDE(DDTの分解物)、アトラジン、PCBの一種、ケポンなどがあることが分かった。
 エストロゲン様化学物質としては、フタル酸化合物(フタル酸エステルなど)、ビスフェノールA、アトラジンなどがある。 他には、化粧品に広く使用されているパラベン類も弱いエストロゲン作用があるとされる。 (また、化粧品用防腐剤として使用されることが多いイミダゾルニジル尿素はホルムアルデヒドを放出する可能性があるとされる。 ホルムアルデヒドはエタノールアミン類と反応して発癌性物質のニトロソアミンを生じる。エタノールアミン類としてはトリエタノールアミン(TEA)が挙げられ、これはシャンプーなどに使用される。)
 フタル酸化合物は建材、化粧品、プラスチック(これには柔軟性を与えるために添加されるが、この分子はプラスチックから容易に分離し、溶出したり気化することになる)などに含まれる。 これは広範囲に環境や食品を汚染しているとされ、これへの曝露は微量であっても精子破壊、喘息、アレルギーなどを引起こす可能性があるとされる。(ただし、マウスやラットにフタル酸エステル(DEHPなど)を用いた生体内実験(in vivo)では精巣破壊等の生殖毒性が認められるものの、サルを用いた場合にはこの悪影響はないとされる。しかし、他物質との複合的なこと(カクテル効果)も考えるとこの証明は難しいと思われる。)
 ビスフェノールAはポリカーボネート樹脂プラスチックやエポキシ樹脂などの成分で、耐熱性プラスチック容器であるフラスコや、ブリキ缶(内側にプラスチックをコーティングしてあるものが多い)などから溶け出す。 また、これは多くの河川を汚染し、それから取水した水道水にも微量ながら含まれることになる。
 アトラジンは世界で最も多く使用されている除草剤の一つで、トウモロコシやサトウキビなどの生産に使用されているが、これはエストロゲンやプロゲステロン(黄体ホルモン)、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)などのホルモンバランスを崩すとされる。 世界中でカエルが激減しているが、このような両生類の個体減少はアトラジンによる環境汚染(これは雨粒に混じって広範囲に汚染している)が関係しているのではないかと考えられている。
 アトラジンによる環境破壊などが危惧されているにもかかわらず、これが収量増(3〜4%?)に寄与するため、この使用禁止措置を取っている国はほとんどないようである。

 過去には妊婦にエストロゲン様化学物質であるDES(ジエチルスチルベストロール)がよく使用されたが、この胎児がこの曝露により後年、性器奇形や乳癌、膣癌、精巣癌、前立腺癌等を起すことになったとされる。 また、殺虫剤としてよく使用されたDDTも疑似エストロゲンであり、過去にはこれが大量に使用され、しかも長期間に渡って安定な物質であることから、環境中に多く存在することになった。 また、トランスや電磁石などの電気機器によく使用されたPCBも挙げられる。 これは耐熱性、不燃性、絶縁性の高さから幅広い用途があったため大量に使用された。 しかし、これを封入した容器の劣化等により気化したPCBが環境中に漏れ出したり、その廃棄物が焼却されたりして、PCBは全世界的に拡散することになった。 PCBには多くの種類があるが、この一部にエストロゲン様活性を持つものがあることが分かった。

 DDTやPCB類は乳癌などのリスクを高めるとされる。 例えば、TCBは比較的低濃度で乳癌細胞を増殖させるとされる。 しかも、DDTやTCBなどのTCB類の一種は難分解性で脂肪に蓄積することから、TCBは容易にこの濃度に達し得る。 一方、内因性エストロゲンの方は数分で分解することから、乳癌への影響は蓄積し続けるこれらのエストロゲン様化学物質に比べれば弱いようだ。 ただし、日本的食習慣では乳癌のリスクは欧米に比べるとかなり低いとされるが、最近では日本でも欧米型の食習慣(特に高脂肪)に近づいていることから、やはり無視できないと考えられる。 特に、数世代経るとその影響が現れるとされるが、これは胎児期での環境エストロゲンへの曝露が関係しているようだ。 というのは、胎児期でのエストロゲン様化学物質への曝露はこれへの反応を高めるからである。

 女性が乳癌に罹りやすいのは、卵巣からエストロゲン(エストラジオール)が分泌されるためとされる。 一般に、成人女性では月経周期にしたがって乳房は腫脹と復元を繰り返しているとされるが、これはエストロゲン値の上昇に応じて乳腺組織の増殖が促進されるためという。 乳癌細胞も同じく、エストロゲンによって増殖することになる。
 しかし、閉経後はエストロゲンの分泌が少なくなり、この弊害として更年期障害や骨粗鬆症が起こりやすくなることから、この場合にはエストロゲン様物質の摂取はそれらの症状を改善することになる。

 エストロゲン様化学物質には植物由来のものもあり、これは植物エストロゲンと呼ばれる。 この影響については、オーストラリアの古くからの牧羊地であるパース近郊で見られた。 この地では羊に深刻な生殖障害が現れたが、この原因を調べた結果、地中海地方から導入したある種のクローバーを羊が食べていたためであることが分かった。
 エストロゲン様活性を持つ植物は他にも色々あることが分かり、それらの物質はイソフラボン類、クメスタン類及び酸性ラクトン類に分類される。 この中ではイソフラボン類が一般的であるが、この全てのものがエストロゲン様活性を持つわけではない。
 イソフラボンを含む植物としては大豆がよく知られていて、イソフラボン類の中ではこのエストロゲン様活性は強いとされる。 しかし、日本などの東アジアの国では大豆は日常的に摂取されているにもかかわらず、乳癌等の発生率は欧米に比べてかなり低い。 したがって、必ずしも植物エストロゲンが乳癌等の発癌リスクを高めるわけではない、ということになる。 この理由は、大豆イソフラボンの一つであるゲニステインには、腫瘍細胞の増殖などを促進するチロシンキナーゼという酵素の働きを阻害したり、細胞のアポトーシス(細胞の自己死)を促進する作用のあることが関係しているようだ。 結局のところ、大豆製品の通常の摂取量では特に問題ないとされるが、乳癌に罹っている人の場合には避けた方がよい。 また、妊婦や乳幼児は摂取量を減らした方が良いようだ。

 なお、欧米において乳癌の発生率が高いのは、主に高蛋白質・高脂肪(疑似エストロゲンの多くが脂質に蓄積される。また高カロリーでもある)・低炭水化物(食物繊維を含む)という食生活が関係しているとされる。 つまり、その食習慣によって腸内からのエストロゲンの再利用が高まるためのようだ。
 また、米国では他の国で禁止されている遺伝子組み換え牛成長ホルモン(rGBH)が使用されていることがことが多い(全米の牛の3割くらいが該当)とされるが、このホルモン投与牛のミルクには発癌性が指摘されている。このことはこのホルモンによって乳線炎に罹りやすくなり、膿汁が混入することや、この炎症を抑えるために抗生物質が投与され、これが残存していることが関係しているようだ。 このミルクや乳製品(アイスクリームなど)を摂取した場合、乳癌や大腸癌が発生しやすくなる危険性が指摘されている。

【注】ホルモン焼き
 牛や豚などの内臓を使用した料理としてホルモン焼きというものがあるが、この「ホルモン」という呼び名は関西弁の「ほうるもん」つまり「放る物」から来たとされ、学術用語のホルモンとは全く別の意味のものである。
 なお、腸などを調理する場合には十分に加熱した方がよい。 また、近年では牛にBSEという病気が発生し、これはヒトにも感染するとされるが、この危険部位としては脳や腸、脊髄などがあり、輸入牛を用いたホルモン焼きや脳みそ料理を食べる場合には注意を要するようだ。 因みに、BSEは凝集性を示す異常蛋白質であるプリオンが脳に到達して、中枢神経系が破壊される病気であるが、通常では蛋白質は血液脳関門でブロックされる筈なのでそうした病気はあまり起らないと考えられる。

H-LD症
 都会などでは子供達が大声を出して遊んでいる風景をよく見掛ける。 これは親からすれば非常に元気があって良いと考えているかもしれないが、それがH-LD症によるものだとすれば非常に憂慮すべき事態といえる。
 一般に大声を出して話すということは、大勢の人の前で話す場合や周りの者に対して自己の威厳性を示したい場合を除いては、自分の主張を強引に相手に認めさせたいか、相手の主張を強引に否定したい場合によく行われるわけであり、そうした傾向はそのような環境に陥っている人の場合(例えば、自分の考えが常に正しいと考えるような狭量な支配者に依存して生活している場合)によく形成されやすいものである。 という意味では、そうした性格は環境によって形成されていることが少なくないと考えられる。
 しかしそのような傾向は一般的に多く認められ、このためそれは単に環境によって生じているだけとはいえない。
 近年では子供達は多くの情報と接するようになったため(これは戦後の義務教育及びテレビの普及以後に顕著になった。また漫画文化が隆盛となったことも関係している)、過去に比べれば精神的発達は著しいといえる。 そうしたことから小さい頃から強力な自我が形成され、そのために強い自己主張が生じているのだとも考えられる。 したがって、そのような傾向が都会において著しいようなのは、情報過多に原因が求められるかもしれない。
 或いは、言語的なことが関係するとも考えられる。 人間というのは感情的な生き物であり、その言動においては感情表現が非常に重要なこととなる。 つまり、人は物事を伝えるということだけでなく、自身の感情をも伝えるという傾向が強いのである。 例えば、相手の主張が正しくないということを言う場合、それを単に否定するだけではなく、相手を罵倒するということがよく為されるものである。 後者はすなわち自己の感情を相手に伝えようとするものに他ならない。
 その点、東京の方言ともいうべき標準語は、理性的言葉であるが故に感情表現にはあまり向いていないといえる。 そこで、自己の感情を相手に伝えるためには、音声の強弱やイントネーション(これは文頭を強く発声するということに顕著である)によって行なうということになるのだろう。 しかしながら、彼等の会話に何の意義も見いだせない他人からすれば、それは動物的な「会話」となり、原始的なものに聞こえる。
 原始的会話として代表的なのは赤ちゃんの泣き声である。 赤ちゃんは言葉を話すことができないために、自己の感情を伝えるためには泣き声でしか伝えることができない。 つまり、赤ちゃんは泣き声の強弱あるいは繰返しによって感情を伝えることになる。
 そのことは感情的表現性に弱い標準語を話す状況とよく似ている。 例えば、テレビドラマではよく女性が金切り声を、男性は大声を上げることが多いが、これはそうすることによって感情を表わしたいからだと考えられる。 (しかし、標準語のそうした感情表現にあまり馴染みのない者からすれば、それは作為的なものに感じられ、奇異なものに思われる。)

 さて、理性的抑制性が弱く感情表出が強くなる傾向は(脳の状態としては興奮性ニューロンの働きが強くなり、かつ抑制ニューロンの働きが弱くなった状態か、抑制ニューロンを働かせる興奮性ニューロンの働きが弱くなった状態と考えることができるだろう)、食物にも原因が求められる。 これとして砂糖(これは血糖値を急上昇させる代表的精製糖である。またこれはこの代謝にカルシウムを必要とすることから、砂糖の過剰摂取は骨減少を引起こすことにもなる?)や、グルタミン酸ナトリウム、着色料のタール色素などが挙げられるだろう。
 この中ではタール色素がH-LD症の原因になるということについては永らく疑問であったようだ。  

リステリア症
 リステリア症はリステリア菌による中毒症状で、発熱や頭痛・悪寒・筋肉痛の他には、嘔吐などの胃腸炎を引き起すことがある。 重症になると、髄膜炎や敗血症を引き起こす。
 特に妊婦が感染すると胎児に大きな悪影響が生じ、早産や死産、胎児の死亡あるいは胎児の髄膜炎・敗血症を起すことがある。
 感染はリステリア菌に汚染された食物を食べることによって起こるが、リステリア症となる可能性はかなり小さい。 しかし、中にはリステリア症に罹りやすい人もいて、数時間後に発熱等の症状が現れたら、重症(数日〜3週間後くらい)となる前に医療機関に受診する必要がある。 というのは、致死率が一割くらいになるからである。

 リステリア菌は土や水の中など自然界に広く存在し、これとの接触を回避することは難しい。 したがって多くの動物はこれと接触し、動物は病気になることなくリステリア菌を運ぶようになる。
 リステリア菌は他の細菌に比べて加熱・低温(-4度でも繁殖可能)・塩・酸に強く、この発症リスクの高い人(妊婦や免疫不全の人、新生児、幼児、老人など)は、以下のことを心がけた方がよい。

 日本では妊婦は刺身や寿司を食べてはいけないと言われないが(この理由は日本ではリステリア症が年間100例未満と推定されるようにかなり稀なためか、これに罹患したとしても風邪と間違われているためと考えられる)、海外では妊婦は刺身や寿司を避けることが指導されている。

界面活性剤
 界面活性剤とは水と油のように混じり合わないものを混ぜ合わせる物のこと。 これとしては石鹸が代表的であり、この成分は脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムとなる。 (なお、植物性油脂が70%以上のものが本物の石鹸という。)
 しかし、石鹸では油汚れやカビを落すことが難しいことから、合成洗剤(合成界面活性剤)が広く使用されるようになった。 また、現在では洗濯は全自動洗濯機を用いて行われるようになったが、これは合成洗剤の使用を前提としたもので、粉石鹸を用いた場合には洗浄効果が落ちることになる(粉石鹸の使い方次第では、合成洗剤と同様な洗浄効果を発揮させることもできるが)。
 合成洗剤の成分はABS(分岐型(ハード型)アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)やLAS(直鎖型(ソフト型)アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、AS(アルキル硫酸エステルナトリウム)などであるが、これは高い洗浄効果の反面、皮膚や内臓・胎児に対する有害性や、河川・湖沼などの環境汚染の問題が生じるようになった。
 合成洗剤による手荒れの原因は、合成界面活性剤は皮膚への浸透性が高いのと(界面活性剤は皮脂膜を溶かし、さらにリン脂質で構成されている細胞膜を溶かし、細胞を破壊することになる)、これがタンパク質を溶かすため。 他には、石鹸が分解しやすいのに対して、合成界面活性剤は分解しにくいということも関係している。 このため、合成界面活性剤が体内に蓄積されていくことになり、その使用を止めても、この悪影響はしばらく(1ヶ月以上)残ることになる。

 因みに、洗濯用洗剤成分としては、洗浄力は高いが泡が消えにくいことから環境への悪影響が顕著に分かるABSから、LASに変化することになったが、LASはABSに比べて洗浄力が劣ることになり、これを補うために様々な助剤が加えられるようになった。 この助剤も有害性があるものが多く、界面活性剤と併用することにより、この相乗作用が現れ、悪影響が強まるとされる。 (なお、タンパク質分解酵素も助剤として添加されることが多いが、これが効力を発揮するのは水温が40〜50度とされる。)

 有害な主な助剤としては以下のものがある。

・蛍光増白剤
肌着などの白さが増したように感じさせることを目的として添加されるが、これは催奇形性や発癌性が疑われている。
・酵素
汚れの成分であるたんぱく質を分解することを目的とするが、体内に入ってきた場合、体内のたんぱく質を分解することになる。
・ゼオライト
合成界面摂生剤の洗浄力を高めるために添加されていたリン(トリポリリン酸塩)は湖沼の豊栄養化を招き、アオコが異常繁殖して湖沼の酸素不足により水中生物が多数死滅するという事態を引起こすことになった。 このため、リンに替わるものが求められることになり、この替わりに添加されることになったのがゼオライトである。
 しかし、ゼオライトにはアルミニウムが含まれ、しかも非常に小さい分子であるため血液脳関門をすり抜けて脳に侵入しやすいという特徴がある。 アルミニウムには神経毒性があるため、ゼオライトが体内に入ると神経障害を起す可能性が強まる。 近年はアルツハイマー病に罹る人が多くなったが、これはゼオライト入りの合成洗剤を使用するようになったことも一つの原因になっているのではないかと考えられている。 (他にはアルミ製の調理器具からのアルミニウムの溶出もこの原因として挙げられる。)
・合成香料
毒性は合成界面活性剤と同じくらい強いとされる。
・エデト酸塩
カルシウムと結合するため、体内からカルシウムを排除することになる。
・安息香酸
皮膚障害を起すとされる。
・パラベン
肝臓障害の原因になるとされる。

 シャンプーにも合成洗剤が含まれているが、これを直接頭皮にかけて洗うことは、毛根細胞を破壊して抜け毛やかさぶた、白髪の原因になるとされる。 よく頭頂部が薄くなった人を見掛けるが、これはシャンプーやリンスが原因と考えられる。 また、合成洗剤でシャンプーをすることにより、髪がサラサラになり、髪が綺麗になった印象を与えるが、これは実のところ毛髪のキューテクル(毛小皮)が破壊され、毛髪がボロボロになったことが理由である。 合成洗剤シャンプーで特に気をつけるべきことは、それが目に入ったり、鼻や口に入らないようにすることである。 もしそれが目に入った場合には角膜が白濁し、失明することにもなる。

 合成界面活性剤は化粧品や歯磨き剤にもが含まれているため、これらの継続的使用には注意が必要で、歯磨き剤の場合には舌乳頭などの細胞が破壊されて多少なりとも味覚障害が起こるとされる。

 なお、合成界面活性剤は食品(パン、マーガリン、インスタントラーメン、アイスクリーム等)にも使用されていて、このことは大きな問題があるのではないかと考えるかもしれないが、経口の場合には消化器官を通過して排泄されるため、この影響は皮膚からの浸透の場合と比べれば小さいとされる。 しかしながら、次の誤飲事故も起っている。 それは、1962年の東京で起きた「ライポンF」誤飲中毒死事件である。
 ライポンFはABSを用いた食器・野菜用中性洗剤であるが、これを粉ミルクと間違えて、この15グラムを誤飲した32歳の男性が死亡した。 これは父親が乳児にミルクを飲ませようとしたところ、乳児が飲むのを嫌がったため、試しに自分が飲んでみたからだった。
 なお、そのような事態に至ったにも関らず、不思議なことにこの容器には「〜 毒性を有せず 衛生上無害」と書かれていた。 おそらく、このことは洗剤は水で洗い流すことを前提にしたものと考えられる。 したがって、高濃度の洗剤を15グラムも摂取することは考えられていなかったのだろう。 これは安全性における過大表記というべきもので、これは消費者に対して過剰な危惧を与えないようにするためのものと考えられるが、このようなことはこの取扱いにおいて消費者に安易な気持ちを抱かせるという意味では有害無益なことである。

 合成洗剤から石鹸洗剤に切替える場合の注意点としては2つある。 一つは石鹸は弱アルカリ性であるため、アルカリに弱い絹や羊毛(ウール)製品の洗浄には向かないことである。 (塩基性の水溶液にはたんぱく質を溶かす性質があり、たんぱく質でできている絹や羊毛を溶かすことになる。したがって、これらの洗濯に限り中性の合成洗剤を使用した方が良いことになる。) もう一つは、石鹸は硬水では洗浄力が落ちることである。 (なお、硬水用にはカスティール石鹸を用いれば良いとされる。) しかし、日本の場合には河川が軟水であるため、この欠点は除外される。 一方、欧米などでは河川は硬水となるため、石鹸の洗浄力が落ちることになる。 それらの石鹸の欠点や、石鹸よりも合成洗剤の方が安価に製造できることもあり、世界的には合成洗剤が使用される風潮が強まったが、日本においては特に合成洗剤を使用する必要がないことから、健康及び環境への悪影響を考えると多少割高となっても石鹸を使用する方がよい。 (欧米や日本などの先進国では今や合成洗剤を使用するのが主流であり、時代遅れな石鹸を使用するのは後進的であるというのは全く見当外れな批判である。)
 ただし、自動洗濯機で粉石鹸を使用する場合の注意点として、次のことが挙げられている。

 なお、合成界面活性剤は石油から作られるのが一般的であるが、ヤシ油などの天然油脂からも作ることができるため、天然の素材を使用していると謳われていても合成洗剤の有害性には全く変わりがないことから、やはり石鹸を使用する方がよい。

農薬

 農薬に使用される化学物質には発癌性があったり(食物に因る発癌の殆どは野菜や果物などの残留農薬が原因とされる)、催奇形性があったり、免疫力を低下させるなどの弊害があるが、農薬を使用して育てた野菜や果物には残留農薬が含まれ、これらを水で洗っても完全には除去されないため、この食品の摂取は農薬への曝露を引起こす。
 それを避けるためには、できるだけ有機食品のものを選択した方がよい。 このことは農薬の害を避けるというだけでなく、有機栽培のものは栄養価が高まっていることから、栄養摂取の点でも利点がある。 (実際、野菜の栄養価は以前のものと比べて半減している成分(カルシウムなど)が少なくなく、これは農薬や化学肥料の大量使用やハウス栽培が原因と考えられる。農薬の使用が野菜などの栄養成分の低下を引起こすのは、これによって土壌中の各種生物(ミミズなど)や細菌を死滅させるからではないかと考えられる。)
 なお、有機食品に切替え、農薬への曝露を減らすことは精子減少(これは胎児期での曝露の影響が強い)の抑制にも繋がり、不妊症の男性の症状改善に寄与することになる。

 農薬は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物生長調整剤に大別される。
 殺虫剤は害虫(ダニ類や線虫類)を駆除するためのもので、神経系に障害を与えるものが多い。
 殺菌剤は細菌やカビなどを駆除するためのもの。これは、合成阻害剤(菌体構成物質の合成を阻害)と呼吸阻害剤(エネルギー物質であるATPの産生を阻害)とに分けられる。
 除草剤は植物を枯らしたり、この発芽や生育を阻害するもの。このことは、光合成やタンパク合成を阻害したり、細胞分裂を阻害したり、ホルモン作用を攪乱させたりすることに因る。
 植物成長調整剤は、果実を多くしたり大きくしたり、この落下防止などを目的とするもの。

 以下の表は、発癌性や催奇形性のある農薬あるいは危険性の高い農薬について、主な化学成分系列別に分類して示したものである。 この表の「性質」欄は順に、急性毒性、魚毒性、発癌性、催奇形性を表わす。

分類物質名性質備考
有機塩素系 有機塩素系は塩素を含む炭素化合物のこと。分解されにくいのが特徴で、環境中に残留し、生物に蓄積される。 また、毒性の強いものが多い。
DDT 殺虫剤として大量に使用された。DDTは非常に分解されにくいが、一部はDDEに変化する。DDEも発癌性がある。
BHC BHCも殺虫剤として大量に使用された。分解性が悪いため、環境中に残留している。
TPN   クロロタロニル。殺菌剤として多くの作物に使用される。
水洗いで落ちやすい。
アルドリン ハエやウジなどの殺虫剤として使用された。発癌性があるとして1975年に使用禁止となったが、海外ではまだ使用しているところがある。
ディルドリン ハエ、カミキリムシ、ガ、シロアリなどの殺虫剤として使用された。
エンドリン 殺虫剤として1954年から1975年まで使用された。
クロルデン 殺虫剤として使用された。分解性が非常に悪いため、環境中に残留している。
2・4-D  2,4-ジクロロフェノキシ酢酸。除草剤として広く使用される。
双子葉植物に作用してこれを選択的に枯らすことができる。
不純物としてダイオキシンを含むことがある。
PCNB 野菜などのネコブ病やタチガレ病などの防除に使用される。発癌物質のHCB(ヘキサクロロベンゼン)を不純物として含む。
オキサジアゾン水稲、陸稲、ゴルフ場などの除草剤として使用。
クロルベンジレート ハダニ類の駆除に用いられる殺虫剤。
ケルセン ジコホルとも。ハダニ類の殺虫剤。
プロピザミド 除草剤。
ネオニコチノイド   ネオニコチノイドとはニコチンの分子構造と似た物質で、これにはアセタミプリドやクロチアニジン、イミダクロプリド、ジノテフランなどがある。これは神経伝達物質の一種であるアセチルコリン(主に末梢神経と筋細胞との情報伝達を行なっている)の受容体と結合する性質を持つ。 ただし、アセチルコリン受容体はムスカリン受容体とニコチン受容体の二つに大別され、ネオニコチノイドは後者のニコチン性アセチルコリン受容体と結合する。
 昆虫がこれを摂取するとアセチルコリンの働きが阻害されて死ぬことになる。哺乳類の場合には昆虫に比べてこの受容体に対する結合率はかなり小さいため悪影響はあまりないとされるが、実際にはこの中毒症状(心臓の不整脈、動悸、痙攣、筋の脱力、皮膚疾患など)が起こることがあるとされる。 ネオニコチノイドは血液脳関門を通過することは少ないため、中枢神経系にはあまり影響を及ぼさないが、血液脳関門が十分に発達していない乳幼児では注意を要する。
 特に日本ではこの残量基準が諸外国に比べて高いため(US基準では2倍以上、EU基準では10倍以上のものが多い)、この過敏体質の人は国産の果物やお茶に注意する必要がある。
 また、昆虫の重要な働きとしては花粉の媒介があるが、蜂など昆虫の多くが死滅する事態になると、植物の受粉が為されなくなり、果樹などの農作物が実らなくなるという事態が生じる。 このことを憂慮して昆虫毒性の弱いジノテフランが用いられるようにもなったが、これを含む花粉で育った蜜蜂の成虫は方向感覚に異常を起すようで帰巣しなくなるとされる。このことは結局、蜂の集団生活を阻害してこの減少をもたらすことになる。
有機リン系 有機リン系は問題の多い有機塩素系に代わるものとして登場し、現在はこれが殺虫剤や除草剤の主流となっている。 しかし、これもそれほど分解性はよくないため、野菜や果物に残留していることがある。
DDVPジクロロボスのこと。アブラムシ類やヨトウムシなどの殺虫剤。
揮発しやすいため、多量の吸入に注意する。
アセフェート アブラムシ類、ヨトウムシ、アオムシなどの駆除に用いられる殺虫剤。
ダイアジノン  殺虫剤。野菜や果物に残留していることが多い。水洗いや洗剤洗いでもかなり残留することが多いようだ。
MPP フェンチオン。殺虫剤。
スミチオン フェニトロチオンのこと。殺虫剤として広く使用される。急性毒性は弱いとされるが、中毒による死亡事故がある。
マラソン マラチオンとも。殺虫剤としてよく使用される。また、ポストハーベストとしても使用される。有機リン系であるが、分解性が非常に悪い。また、精子減少の問題がある。
パラチオン  殺虫剤。中毒事故死が多発したため、日本では1971年に使用禁止となった。しかし、外国では使用が許可されているため、サクランボなどに残留していることがある。
EPN  害虫駆除用に広く使用される。
ピレスロイド系 ピレスロイド系は除虫菊の殺虫成分であるピレトリンに似た化学構造をもつもので、殺虫剤として使用される。
ペルメトリン 野菜や果樹の害虫駆除に使用される。また、家庭用殺虫剤の主成分として使用される。急性毒性は弱いが、魚毒性は強い。
シペルメトリン 野菜や果樹の害虫駆除に使用される。
カーバメート系 カーバメート系は炭素・窒素・水素・酸素からなるカーバメート結合をもつもので、タンパク質の合成を阻害する。 殺虫剤や除草剤に使用される。
 これは胃の中でハムなどの発色剤として使用される亜硝酸塩と結びついて発癌物質のニトロソ化合物ができやすい、とされる。
 なお、チオカーバメイト系のものは光過敏性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎を起こす。
NAC殺虫剤として広く使用される。水洗いで落ちやすい。
ジネブ野菜や果物のサビ病やタンソ病の予防に使用される。
ベノミルベンゾイミダゾール系の殺菌剤で、様々な病気の防除に使用される。
チオファネートメチル ベンゾイミダゾール系の殺菌剤で、様々な病気の防除に使用される。分解しにくいため、作物などに残留しやすい。
マンネブコクテン病、アカホシ病、エキ病、ベト病、サビ病などの防除に使用される。
不純物として発癌性及び催奇形性のあるETU(エチレン尿素)を含む。
マンゼブマンコゼブとも。コクテン病、アカホシ病、クロホシ病、ツルガレ病などの防除に使用される。不純物としてETUを含む。
メソミルアブラムシ類、ヨトウムシ等の殺虫剤として使用。
IPC クロルプロファムのこと。除草剤。また、ポストハーベストとしてジャガイモの発芽防止にも使用される。このため、ジャガイモの残留基準がかなり甘くなっている。
アミノ酸系
グリホサート アミノ酸の合成を阻害する。除草剤として広く使用される。分解性が悪いため、土壌にしばらく残留する。
その他
パラコート ビピリジン系の除草剤。急性毒性が強く、解毒剤がない。農薬中毒死の大半を占める。
ジクワット   ビピリジン系の除草剤。変異原性あり。パラコートと同じく解毒剤がない。
土壌中では直ちに活性を失う。このため、収穫前のジャガイモの地上部の除草剤として使用するところもある。これによりジャガイモの皮が硬くなり、傷みにくくなるという効果もある。
D-D  殺線虫剤で、広く使用される。
D-Dはジクロロプロパンのことで、D-D、D-D92、テロン92などがある。
塩素の結合の仕方により、1,3-ジクロロプロパンと1,2-ジクロロプロパンがある。D-Dは前者を55%含むもので、D-D92やテロン92はこれを92%含むもの。
EDB 二臭化エチレン。1984年頃まで土壌用殺虫剤や燻蒸剤として盛んに使用された。発癌性の他、生殖器への悪影響(精子減少など)がある。
キャプタンフタルイミド系の殺菌剤。水洗いで比較的よく落ちる。
アトラジントリアジン系の除草剤。
分解しにくいため、土壌に長く残留する。
トリフルラリンフッ素含有除草剤。
MCPフェノキシ酸系の除草剤。分解しにくく、土壌に残量する。
カルベンダゾールMBC。分解性が悪く、土壌に長く残量する。
臭化メチル 燻蒸用の殺虫・殺菌剤として使用される。多量の吸入により、目眩い、嘔吐、頭痛、呼吸困難などを起す。
ダミノジット 植物生長抑制剤で、リンゴの落下防止、ぶどう(巨峰など)の着粒増加に使用された。発癌性が指摘されて、メーカーが販売を中止したが、これは不純物として含まれるジメチルヒドラジンが原因のようだ。
マレイン酸ヒドラジド 植物生長抑制剤で、ジャガイモやタマネギの発芽防止、芝の生長抑止などに使用される。不純物として発癌性のヒドラジンを含む。
アミトラズ ダニ類の駆除用殺虫剤。
亜硝酸塩と反応してニトロソ体ができ、これによる発癌性の問題もある。
ダイホルタン カルボン酸イミド系の殺菌剤で、最も多く使用される。
アシュラム 除草剤。
リニュロン 広葉雑草一般の除草剤。発癌性が最も強い農薬とされる。
アラクロール イネ科の雑草駆除に使用される。
CNP 除草剤で、主に水田に使用される。不純物としてダイオキシンを含む。
CNPに汚染された河川を取水源とする水道水にこれが含まれ、この長期摂取により胆道癌のリスクが高くなったという疑いがある。

抗生物質

 食用に動物を養殖したり飼育する場合、生産効率を高めるために密飼いがよく行われるが、このようにすると食料や衛生状態が悪くなったり、ストレスが生じたりして動物に病気が発生しやすくなる。 病気が発生するとそれが蔓延して家畜などの全滅の被害も起こり得る。 そのような事態を起こさないためには、動物に抗生物質や合成抗菌剤を与えることになる。
 抗生物質(アンチバイオチックス)とは分かりやすく言えば、微生物が産生する殺菌作用もしくは静菌作用のある物質で、しかもヒトなどの多細胞生物には殆ど悪影響を与えない物質のことである。

 アンチバイオチックスという命名は、アクチノマイシンなどを発見したワックスマンに因る。 これは「生命に抗する物質」の意であるが、意味的に少し分かりにくい表現と思われる。 なお、一般に微生物は他の微生物の発育を阻害する物質を産生するとされる。
 細菌にのみ有効な殺菌性というのは、次のことによる。 細菌の場合には自身を保護するために厚い細胞壁に被われているという特徴があり、この合成を阻害させてやると、細胞壁が作れずに浸透圧によって崩壊することになる。 この抗生物質がペニシリンである。
 しかし、細菌の中には細胞壁の外側に脂質の外壁を持つものもあり、ペニシリンはこの外壁を通り抜けることができないため、このような細菌には効かない。
 細菌が脂質の外壁を持つかどうかはグラム染色法によって調べることができ、脂質の外壁がないものは紫色に染まり、これはグラム陽性菌と呼ばれる。 一方、これに染まらないものはグラム陰性菌と呼ばれる。
 グラム陰性菌にも効くような抗生物質としてはストレプトマイシン(これに類するものが多数作られたことからマイシン族を形成)がある。 このように細菌に一般的に効くような抗生物質は、広範囲性抗生物質と呼ばれる。 これは脂質の外壁をすり抜けて細胞内に入り、(細菌の30Sリボソームに結合して)タンパク質の合成を阻害するものである。 しかし、これは細菌の生育を阻害して増殖を阻止するが、死滅させるまでには至らない。 このようなものは、ペニシリンのような殺菌剤に対して静菌剤と呼ばれる。
 細菌の生育を阻害させるには、核酸の合成を阻害したり、タンパク質の合成を阻害させればよい。 また、核酸の合成に関与する葉酸の合成を阻害するのも効果がある。
 核酸の合成を阻害するものとしては、ピリドンカルボン酸系などがある。 タンパク質の合成を阻害するものとしては、テトラサイクリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系などがある。 葉酸の合成を阻害するものとしては、サルファ剤などがある。

 さて、細菌も抗生物質にやられているばかりではなく、それに耐性を持つものが現れてくることになる。 これは耐性菌と呼ばれる。 これに対応するために抗生物質に様々な改良が施されることになり、ペニシリンに改良を施したものとしてセファム剤がある。
 しかしながら、やはり様々な抗生物質に耐性を持つ菌も現れ、これとしてはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE) がある。 これはヒトには害を及ぼさないため、これ自体は問題がない。 しかし、この耐性機能を他の微生物が獲得し得る(これは耐性遺伝子の挿入による)という問題がある。

 主な抗生物質としては以下のものがある。

抗生物質系統備考
ペニシリンβラクタム系細胞壁の合成を阻害。青カビの一種が産生するもの。分子の本体にβ-ラクタム環を持つ。極希にペニシリン・ショックという急性アレルギー反応を起すことがある。
セファロスポリンβラクタム系糸状菌の"Cephalosporium acremonium"(カビの一種)が産生するもの。ペニシリン耐性菌に有効。
ストレプトマイシン アミノグリコシド系放線菌の一種が産生するもの。細菌のリボソームに結合してタンパク質の合成を阻害する。ヒトに対して肺炎を起すマイコプラズマ(通常の細菌と異なり細胞壁を持たないのが特徴)に有効で、結核の特効薬となった。
テトラサイクリンテトラサイクリン系"Streptomyces aureofaciens"が産生するクロルテトラサイクリンを元に合成したもの。タンパク質の合成を阻害。抗菌スペクトルが広い。
オキシテトラサイクリンテトラサイクリン系抗菌スペクトルが広い。
エリスロマイシン マクロライド系"Streptomyces erythreus"が産生するもの。タンパク質の合成を阻害。グラム陽性菌に有効な他、マイコプラズマにも有効。ただし、併用する薬剤によってこの副作用を強くすることがある。
バンコマイシン グリコペプチド系細胞壁の合成を阻害。他の抗生物質では効かないMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)にも有効で、究極の抗生物質とも言われる。
アクチノマイシンD 小児癌の特効薬。これはDNAに挿入・結合して遺伝子を変えてしまう。これが正常細胞に作用すると、発癌性を示すことになる(これは発癌性が強いことで知られている)。そのような制癌剤には発癌性もある。

 抗生物質や合成抗菌剤は食品衛生法により残留してはならないとされ、このため抗生物質や合成抗菌剤毎に屠畜前の使用禁止期間が設けられている。 しかし、実際にはこの検査が全てに対して行われるわけではないことから、残留している場合が少なくないようだ。 それらは肉よりも内臓に多く蓄積することから、モツ鍋などを常食するのは耐性菌の発生などの危険性が高くなる。 


参考文献

番号書名著者訳者出版社
1食卓の化学毒物事典渡辺雄二 三一書房
2気をつけよう食品添加物小若順一 学陽書房
3身の回りの有害物質徹底ガイドパット・トーマス佐竹元吉(監修)・中小路佳代子・小野寺春香武田ランダムハウスジャパン
4食べるな、危険!日本子孫基金 講談社
5悲しき国産食品小薮浩二郎 三五館
6毒物雑学事典大木幸介 講談社
7ヒバクシャ・イン・USA春名幹男 岩波新書
8チェルノブイリ
(上・下)
R.P.ゲイル
T.ハウザー
吉本普一郎岩波新書
9メス化する自然デボラ・キャドバリー古草秀子集英社
10合成洗剤 恐怖の生体実験坂下栄 メタモル出版