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サンタさん

クリスマスの朝、 ジュリが目覚めてリビングに行くと サンタさんが眠ってました。 ちょっとだけあやしいサンタさんです。 「ハハーン、砂町銀座のサンタさんだな」 しかし、どうしてここに居るのかな? プレゼントを配る前の休憩かしら。 「そうだ、寝ている間にプレゼントの中身を 少しもらっちゃおうかな」 と、よからぬ考えを起こしていると、 パジャマ姿のポポロンさんが起きてきました。 慌てて、 「あ、ポポロンさん、どうしてサンタさんが居るのかな?」 「プレゼントを配る子供たちがいないらしいよ」 え、子供ならいっぱい居るのに。 「サンタさんは子供たちの夢の象徴なんだよ。 夢見てもらえないサンタさんは存在そのものが否定されちゃうんだよ」 「そうか、崇拝されない神様が消えていくのと同じだね」 2人の会話を聞いてか聞かないでか、 サンタさんは目を覚ましました。 「もう、夢見る子供たちなんかいやしないよ。 昔は、サンタに贈り物をもらうために 皆よい子にしていたんだ。 そして、その子供が大人になり、 その子供にサンタの話をする。 そうやって、何世紀もこの仕事を続けてきたのに。 大人はサンタの話をしなくなった。 子供は贈り物をもらう事だけを考えている。 夢見る子供はひとりもいない」 そう言って、 サンタさんはオイオイ泣きました。 ジュリとポポロンさんは、サンタさんを慰めながら、 贈り物が少なくなってちっちゃくなった袋を トナカイのソリに乗せるのを手伝いました。 サンタさんは、 そのわずかな贈り物をわずかな子供たちに届けに 淋しそうに飛んでいきました。 「ポポロンさん、僕たちの次の世代の子供たちが生まれる まで、サンタさんはいてくれるのかなぁ?」 ポポロンさんは、 「きっと、ね」 と悲しそうに、 でも語尾だけは力強く答えてくれました。 来年のクリスマスには、 笑い顔のサンタさんに会えるといいなと、 ジュリは思いました。

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