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丘の上の愛2

ようすのオカシイニャニャニャンをさしおいて、 長い舌をシャーシャー出し入れするヘビに事の顛末を 聞いたポポロンさんです。 「あのう、あなたは誰ですか?」 そう、尋ねると、ヘビは話し始めました。 私は、この谷底の下にあるヘビの国の王様の息子です。 つまり、王子です。 名前は、ニョロロンといいます。 お連れしたお仲間のネコさんは、 昨日、天から降ってきました。 私どもの国では、天から降ってきたネコは、 神様の使いであるという言い伝えがありますので、 これは一大事と国中大騒ぎになりました。 しかし、普通ネコは身軽なものですが、このネコさんは、 なぜか着地に失敗して頭をしたたか打ちました。 そこで、私たちは、この神様の使いに何かあっては タイヘンと、昨晩、必死に看病いたしました。 その甲斐あって、今朝、お気づきになられたのです。 で、話を聞くと、どうも神様のお使いではなさそうです。 どうやら、お仲間と旅をしている途中のご様子。 お仲間もご心配しているだろうし、これも何かの縁と、 こうしてお連れした次第です。 で、道すがらお話を伺っていますと、お仲間は みんな種類の違う動物とのこと。 そこで、私もヘビの国の跡取りとして見聞を広めて いかなければならないので、旅をゴイッショさせてはもらえ ないかとお願いしたところ、御快諾いただけました。 私もみなさんのお仲間に入れていただけないでしょうか? 「なーるほど、そういう事情があったのかぁ(ポポロン)」 「おいおい、でも頭をうってるんだろ? 普通じゃないのかもしれないよ(ポポポン)」 「ぱおーん(パオオン)」   そこで、今一度、ニャニャニャンに 話を聞いてみることにしました。   「ねえねえ、ニャニャニャン、 ダイジョウブかい? どこも痛くないかい?」 「ええ、ダイジョウブですよ」 やっぱり、おかしい。 「ニョロロンを仲間に入れてもかまわないのかい?」 「ええ、旅はたくさんの仲間でしたほうが 楽しいものです。ニョロロンを仲間に入れて、 さあ出発しましょう!」 そう穏やかに話すと、元気よく飛び上がりました。 やっぱり、頭の打ち所が悪いんじゃないかなぁ、 とみんなは確信を持ちました。 それでも、いつものランボウさがなくて ちょっと気持ち悪いものの、静かでいいし、 ニョロロンも外見とはウラハラに感じのいい 穏やかなヘビなので、仲間に入れても 問題ないだろうと決まりました。 そして、いざ出発となりました。 ところが、まだ感覚がオカシイのか、 ニャニャニャンはパオオンの背中に乗ろうとして 足を踏み外して落っこちました。 その際、再び頭を打ちました。 「いってえ!」 大声を上げたニャニャニャンです。 「あれ、ここはどこだ? 俺はなにをしてるんだ?」 どうやら、ニャニャニャンは覚えてないようです。 そこで、みんなで事の顛末を説明しました。 谷底に落ちたこと、ニョロロンに助けられたこと、 ニョロロンを加えて旅に出ること、などなど。   「ニョロロン? だれそれ? え、ヘビ? キャー! よるな、よるな! ヘビ、だいっきらい!」   みんなで、ニャニャニャンを なだめましたが、ダメなようです。 命の恩人だよ、とか、とてもやさしいんだよ、 とか言い聞かせてもまったくダメです。 かといって、いまさらニョロロンになんて 伝えようと、頭を抱えてしまったポポロンさんです。 「いいんですよ、考えてみれば、ヘビの国の両親に、 旅に出るということを言ってませんし、 これで、私はけっこう毎日忙しいんです。 私は、ヘビの国で、みなさんの旅が無事に進むよう、 お祈りしています」   ニョロロンは、悲しそうな、 今にも泣き出しそうな顔をしていましたが、 ポポロンさんたちに精一杯のやさしい言葉を残し、 ヘビの国へと帰っていきました。 「ニャニャニャン! せっかく助けてくれたんだよ! ちゃんと、お礼は言ったのかい? 強がるのもいいけど、 ちゃんと礼儀はつくさないといけないよ!」 ポポロンさんに、きつく叱られると、ニャニャニャンは、 肩を落としヘビの国へと帰って行くニョロロンの後ろ姿に 向かって大声で   「ありがとう、ニョロロン!」 と、叫びました。泣き顔だったニョロロンは、 その言葉にたいして、満面の笑みで振り返りました。 そして、長い舌をシャーシャーと出し入れしながら、 帰り道には、ぜひともヘビの国に寄ってください、 お土産を用意して待ってます、 と言って、元気よく帰って行きました。   「よかったね、いいヘビで」 「うんうん、帰り道の楽しみが出来たね」 こうして、4人組は再び旅に戻りました。でも、 「ヘビの国にお邪魔するのはちょっとなぁ」 と、ニャニャニャンがつぶやくと、3人もうなずいたのでした。

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