住民登録が勝手に消された?

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まえがき

私は案外、几帳面な人間であると自分では思っている。
整理整頓の励行者ではないけれど、物のありかや、自分の身の回りの物事はきちんと把握していないとイヤな方だ。たとえて言えば、光熱費やクレジットカードの明細は毎月チェックするタイプ。
反面(?)面倒くさがりやでもある。必要のないことはしたがらない。一度チェックして納得したら、二度三度見直すことはしない。身の回りが煩雑なのも嫌いだ。一人暮らしが長い人間には多い傾向かもしれない。自分で自分の身の始末をするためには、状況はシンプルな方が良い。

そんな性格が裏目に出たのが、今回の事件と言えなくもない。

平穏無事な日々

私が現在の場所に住んで15年以上になる。入居したときに、現在の場所へ住民票の移動の手続きを行った。部屋を借りるのに、印鑑証明が必要だと言うことで、生まれてはじめてなかなか高価な「実印」なるものを作り、印鑑登録を行ったのだから間違いはない。住民登録が無ければ、印鑑登録もできない。

住み始めて2年ほどたった頃、当時勤めていた会社を退職。実は部屋の更新料が払えるほどの蓄えがなく、退職金を充当したのだ。(思えばセコイ会社であった。○井系列であることをふりかざし、家賃の支払いが苦しいことを訴える私に、通常なら親元から通勤する良家の子女しか採用しないのに、特例として雇ってやったのだからありがたく思え、などと言い、前借りにも応じてくれなかった。)
脱事務員、技術の習得、生活の向上を目指して、コンピューター関連のベンチャーに入社、が、入社10か月ほどでその会社はあえなく潰れた(^^;
現在の印刷屋に入社したのは昭和の最後の年である。最初は事務員で採用されたのだが、徐々に版下作成専用機の操作を覚え、技術職としてかなり重宝されるようになった。おかげで入社2年目くらいだろうか、特例として、現在住んでいる部屋を、会社が独身寮として借り上げてくれて、私は会社に寮費を払い込む、という形態になった。(思えば「特例」の多い人生だなぁ(笑))

さて、10年ばかり、平穏無事な暮らしが続いた。平穏無事すぎて結婚もできないから(笑)婚姻届を出しに役所へ行くこともない。子供もいないから、出生届けとも無縁。小学校入学時にも何か必要ですか?(笑)一人暮らしだから、死亡届は私じゃない誰かが出してくれるのだろう。(爆)
免許も持っていないし、取るつもりもないので、クルマを買うわけもない。高所恐怖症で、飛行機嫌いだから、海外旅行にも行かない。当然パスポートも必要がない。最近流行の携帯電話も持ってない。携帯電話を買うのに住民票が必要ってホント?
とにかく、お役所には無縁な暮らしが続いたのである。

お役所へはなぜゆくか

今年、西暦2000年は、私の「自分史」にとってもなかなか忘れがたい年になりそうだ。まず、景気は上向きになったという政府のお言葉に反して、勤め先の経営が傾きだした。たぶん、年内に自主閉鎖だろう。ジタバタする経営者は、寮の廃止を決定した。って対象者は私1人だから、焼け石に水だと思うのだが。(^^;
寮であった間は、大家(といっても、とある会社が所有者、間に管理一切を委託されている仲介会社が入る)対、私の勤務先の賃貸契約で、私が連帯保証人兼居住者であった契約が、大家、対、私の賃貸契約に変わる。長年住んでいるし、実態は継続と変わらないので手数料などはまけてくれたけれど、新たに契約書を取り交わし、敷金なども払い込まなくてはならない。15年前と同じで、契約書に印鑑証明を添付のこと、という一条があり、役所へ行かねばならなくなった。

印鑑登録をすると、カードを渡される。印鑑証明が必要な場合には、印鑑は必要ないが、このカードは必要だ。個人的意見を言わせてもらえば、なくしちゃいけない大切な「実印」の他に、なくしちゃいけない大切な「カード」が増える。なくしちゃいけないものが増えるのは、あまり良いこととは思えないのだけれど。私の場合、15年間一度も使ったことのないカードを後生大事に保管していたのだが、結局このカードは印鑑証明発行という目的には使われることなく、廃棄処分にされた。思えばあわれな奴である。
窓口に申込用紙と共にカードを渡し、1分もたたずに呼び出された。お役所仕事も速くなったものだと感心したのもつかの間。「このカードは使えません。」????????

何故どうしてを押し問答していく内に、奥から年輩の職員が出てきて、どうも抹消されているようだ、という。カードの登録番号がが抹消されているのか?と聞くと、そうなのだが、失礼だが日本国籍ですか、とか、最近引っ越ししていないかとか、妙なことを聞く。あげくに、実はあなたの住民票がない、というのだが、変に歯切れが悪い。

住民票がないという事実

覚えもないのに、住民票がないと聞いて、とっさに最近話題になる犯罪がらみ・・・他人の住民票を勝手に移動してしまう、等々を思い浮かべた。知人や知り合いのしわざとは限らないそうである。しかし余所へ住んでいることになっているなら、元々の住所であるここに、転出届けが出ているはずだ。

私「私、どこに住んでいることになっているんですか?」
役「それが・・・5年以上たっているらしくて、記録はないんです。」
私「誰かが勝手に動かしたとして、調べる手がかりはないんですか?」
役「本籍はどちらでしょう?」

本籍地の戸籍にある付票というものに、移転して届けた場所が残らず記録されるものなのだそうな。はじめて知った。遠方の場合、個人が戸籍謄本などを取り寄せるのには郵送しかないのでかなり時間がかかるが、お役所同士だと話が早いらしい。(個人情報の漏洩のような気がしないでもないが)電話で確認してもらったところ、最終転居地は現住所であるという。
結論。私は住民票のない住所不定者である。犯罪じゃなくてヨカッタァバンザ〜イ・・・ではないよね?どーして!

住民票はなぜなくなる?

死亡したときに、住民登録はなくなる。あたりまえである。それ以外に、役所の判断によって住民登録をなくすのを、職権消除というのだそうだ。
最近ではオウム信者の住民登録拒否などの話題と共に、ちらほら見かけるらしいが、私は初耳だった。当該住所に居住しておらず、連絡も取れない場合、職権消除になるのだという。オウムの場合は事情が違うだろうが、職権消除とは、職権(町役場なら町長さん、市役所なら市長さんの権限)によって消すってことだ。
しかし、私はちゃんと住んでいるし、連絡だってとれたはずなのに。

職権消除するにあたって、居住しているかどうかの調査が行われるのだという。
では、その調査は何故行われるのか?
1.第三者(多くは大家さんなどから)の申請。
2.役所から送った郵便物が不達になった場合。
だそうな。

私の場合、1.ではないだろう。2.はあり得る。郵便受けを壊されたこともあるし、郵便局の配達人が見つけられなかったかもしれない。都会の集合住宅、しかも築30年にはなろうかというボロでは、いたしかたないことだ。
そういや、友人から年賀状が返送されてきたが・・・と、電話がきたこともあったような。

が、しかし、再度言うけれど、「居住しているかどうか」の調査が行われたはずなのだ。

職権消除のための調査?

役所では書類をひっかきまわして、平成4年に職権消除された事実をつきとめた。が、5年以上経過した書類は廃棄しているので、何故調査が行われたか、どういう調査が行われたのか、まったく何もわからないという。

私のような賃貸居住者の場合、普通、大家さんに問い合わせるという。
まあそうでしょうね。しかし、手順としては当人に電話するほうが先ではないか?15年前の移動届に電話番号を書いたゾ。何のために、電話番号を記入させるのか?電話番号は変わっていないし、不在でも当時から留守番電話付きの機器を使用している。役人はうつむいちゃって返事ができない。独身者だし、どうせ蒸発だと決め込んで調査したのが見え見えだ。
大家さんに問い合わせて、確かに契約者は変わっていただろうけれど、契約書には居住者名も書かされた。緊急連絡先まで書かされた。最初私が契約していた頃の連帯保証人は、私の兄である。現在も同じ場所に健在である。
どう見たって、役所の調査ミス、はっきり言って手抜き調査である。そう断じたら、役人は「あなたから見たらそう見えるでしょうが・・・」と言う。誰から見たってそうだ。

住民票と住民税

私はずっと、会社から住民税を天引きされている。で、税金課で調べてもらったところ、きちんと払い込まれている。住民税とは、住民登録している人間にかかる税かと思っていたら、実は、住民登録と住民税とは、何の関わりも無いのだという。税金課でそう説明されたし、後で法律を調べたら、確かにそうだった。住民税とは、実際に居住していると認められる場合に掛けられるもので、たとえば単身赴任のお父さんが、住民票は家族のところに置いたままでも、赴任先で住民税を払うことになり、住民票を置いてある役所では払わなくても良いのだそうな。
サラリーマンではなく自営業などだったら、私の住所に税金の請求書が来て、もっと早くに発覚しただろう。しかし、役所では、会社が税金を払い込んでいる場合、会社が当人の居住を保証したとして、調べることはないという。

また、住民課の「居住しているかどうかの調査」で、税金課に問い合わせることはないのだという。個人情報の漏洩云々が理由だとか。住民税を払っているかいないか、払っているとしたら個人か、勤務先の代行か、なんてことが知られたら困るような個人情報とも思えない。知らない内に住民登録を職権消除される方がよほど困る。

つまり、私の場合、同じ役所内の税金課では居住していると認定して課税され続け、住民課では居住を認めがたいとして住民登録を抹消されたという、間抜けな話なのだ。言い古された、縦割り行政って奴のすき間に落っこちてしまったのだ。

役所ってところは・・・

役所の窓口で、たまたま当たってしまった不運な係員に怒ったって仕方がない。責任者を呼んでこいと言ったって、平成4年当時からでは責任者だって替わっているし、責任者とは、つまり職権のある人だから、町長さんとか市長さん。呼んでこられるわけもないし、呼んでも意味ないだろう。本気で責任追及するなら裁判沙汰である。
そんな悠長なことをやっている暇はない。私は賃貸住宅の契約書に必要な印鑑証明を取りに来たのであって、取れなきゃ契約してもらえない。書類上の「住所不定」どころか、現実の宿無しになってしまう。

役所の方も、早急に住民登録を回復して欲しいという私の要望に応えて、手続きにかかった。しかし、現実に居住している証拠が欲しいと言われて、契約書を保管している仲介会社へ電話をしてもらったら、薄ら馬鹿な事務員が出て、契約書にはそう書いてあるが、実際に誰が住んでいるかまではわかりません、と言う。そりゃ、個人的にお知り合いではないからね。でも、契約書には居住者名が書いてあるのだから、会社のタテマエとしてはその人間が居住していることになっているはずではないのか?しかし、電話をしたのは私ではなく、お役人だから、そこで電話を切ってしまって、どうしましょう、と言う。
平成4年当時、どんな間抜けな調査が行われたか、わかった気がした。

やっぱり裁判か?!

居住している証拠は、会社に払っていた寮費の領収書でケリがついた。
手続きが進んで、最後の書類。そして言うことには、
「これは簡易裁判所に提出するもので、転出届をしなかった扱いになりますので、5万円の罰金になります。」

怒 怒 怒 怒 

が、しかし。すでに今までのやりとりで疲れていた。日も傾いた。
窓口の小役人相手に怒ってもしかたがない。
裁判所から罰金を払えって通知が来たら、また怒ることにしよう。



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