自転車でナビ

2003-05-25

アレコレ調べた割りに考えもなく GARMIN eTrex Vista を購入。 ナビゲーションと、電子地図と、コンパスと、サイクルコンピュータを同時に満足しつつ、走行記録を残せるというスグレモノ。 本来の用途は山歩き用な気もするが、自分の場合は専ら「自転車ナビ」だと思っている。 そしてその目的は十分に果されている。

準備

買ったからには直ぐ使いたい(遊びたい)ところだが、何しろ或る程度複雑な装置。 勘でいじってヘンな事になっちゃってもバカらしいので、ここは慎重に。 とは言っても、ちゃんと取説を読もうねと言った程度なんだが…。

取説は全部で 70ページくらいなのだが、なーんかギッシリ書いてあって、あまり読みやすくない。 まぁ、初心者でも簡単に分かる(つもりの)最近のパソコン関係の取説が読みやすいかと言えば、まったく違うのだが。 アレはアレで、ページ当りの内容が薄くて分からんな。 閑話休題。 ともかく、読みやすくはないが、書くべきことはちゃんと書いてあるのでよし。 2回目は読まないだろうなぁ。

PC との連携は未知数だが、とりあえず eTrex Vista 単体でできる事は概ね把握できた気がする。 全体的にファームウェアの出来がよく、操作に無理がない仕上がりに思える。 ココでこの操作をするとこうなるよね〜ってな事が、概ね思ったとおりに出来る感じで好印象。

ナビとは言っても、自分の中では "現在位置付近の地図も見られるサイクルコンピュータ" だ。 速度,走行距離,時刻が一緒に見られると便利だ。 幸い、地図ページでもナビページでも表示項目のカスタマイズができ、これらの情報を自由に組み合わせる事も可能。 とりあえずサイクルコンピュータで慣れた設定にして使ってみる事にしよう。

鶴見川源流へ行ってみた

さて eTrex を使ったナビゲーションだが、こいつは使える!! と言うのが現在の感想。 過大な期待をすると失望する事になるので、「ギリギリ使えるか!?」と言う程度に割り引いた方がいいかも知れないが。

地図データは、紙の地図には遠く及ばない。 けど、思っていたよりは使えると感じている。 DVD-ROMドライブが使えるカーナビとは違うんだから、情報がチープなのは仕方ない。 むしろ容量を考えると非常によくやっていると言えるかも。 データ的にはちょっと古い感じで、新しい道(2車線以上の太い道)が幾つも抜けていた。 自転車的には、サイクリングロードがそっくり抜けているのが痛い。

地図と現在位置,それと方位が分かるだけでかなり有用なのだが、やはりナビゲーションは便利だった。

コレを使って 鶴見川源流 に行ってみた。 源流の泉へ行くのは初めて、もちろん初めて通る道。 まぁ、簡単なルートだから地図を見て出掛けても問題ないだろうけど。 しかし全部覚える自信はないので、eTrex でルートを作ってルートナビでGo!!

地図上に表示されるルートをトレースする形で自転車を進める。 現地に行ってみると自転車が渡れない交差点だったりするので若干の経路変更を余儀なくされる場合はあるが、適当に迂回して再びルートに乗ってしまえばいいので余り問題にはならない。 何とかしれ>道路行政 ってな感じで、ちょっと不愉快なだけ。

全く迷わず目的地に到着した。 当たり前っちゃーその通りなんだが、途中で心配になったり、地図を確認したりってな負担が無いのは、とても楽であった。 あ〜文明の勝利。 v(^-^)

この辺は土地勘のある所に近かったので、eTrex を(ナビではなく)地図として使い多摩川へ。 府中〜二子玉川間は多摩川沿いに走り、二子玉川からは行き先ナビで自宅へ。 これも初めて通る道だったが、概ね真っ直ぐ帰り着く事ができた。 一本で行ける道が無いので、上出来だ。

軌跡ナビは使わなかったが、eTrex の各種ナビゲーションの様子は概ね体験できた。

eTrex Vista のナビ

文章で説明されるとスゴイ事の様に思えるかも知れないが、実は案外大した事はなかったりする。 先にも触れたが、過大な期待は禁物である。 サイズや消費電力を考えると、これだけの機能を持ち、また実用的に使える(ギリギリだが)のは評価に値するのではないか、と言う事だ。

てな事で、eTrex Vista が提供するナビ機能を紹介。

行き先ナビ

行き先を指定すると、向かうべき方位と目的地までの直線距離が表示され続けるもの。 まぁアレだ、高いビルを目印に進むような感じだな。 当然、道路は希望通りには通っていないので、なるべく方位を外さないようにして目的地へ向かう。 町中を自転車で走るなら、地図画面(直線のマーカが表示される)が便利。

自分の位置は地図の真ん中に表示されるのだが、できれば 前6:後4 くらいの比率だともっといいかも。 それ以前に、画面の横方向(ノースアップなら東西方向)への移動が狭苦しいので、んな細かい事を気にしても仕方ないって気もするが。

軌跡ナビ

「来た道をそのまま辿って帰る」ナビ。
ナビと言うか、単に地図上に軌跡が表示されているだけでは?

これも、曲がった角を覚えておくと言う、普段から普通にやってる行為を電子化したもの。 ポイント数が増えても問題ないのと,曲がり損ねても地図を見て復帰できると言う点が優れている。 自分の場合は行き過ぎる事が多いので、なかなか重宝する。

因みに、地図はノースアップ(北が上)/トラックアップ(進行方向が上)が選べる。 けど、トラックアップだと細かいカーブや角を曲がったりの度に再描画する必要があり、肝心な時に地図が読めない事が多い。 ノースアップが実用的。

ルートナビ

予め設定しておいたルートに従ってナビゲート。 一番「ナビ」らしいが、やってる事は「行き先ナビ」が連続しているに過ぎない。 けど、上手く設定してあればかなり道に沿った方向を指し示してくれるので、一番分かり易い。 曲がるべき交差点が分かるってのは便利。 ルートの設定は手動だが、あの道を通って、この交差点で曲がって、ってな思考そのまま電子化したもの。

カーナビではルート設定を自動でやってくれるし、確かに自動でやって欲しい機能ではある。 けど、単に目的地に到達するのが目的ではなく、「ココ通ってみよ」みたいな感じで地図を眺めるのもまた楽しいのであって、要するに自動化されていなくても問題なしと。

「こんど」のウェイポイントまではこれと言った不満もないのだが、できれば「つぎ」のウェイポイントの情報も欲しいものだ。 直進なのか曲がるのか、カーナビだと「200m先を右です」みたいに喋ってくれる様な感じの表示が出来れば便利なのになぁ。 地図で見ろって事なのだろうか。 でもナビ画面じゃ無理だし。

トリップコンピュータ

eTrex はサイクルコンピュータとしても機能する。 測位には非常に正確な時計が必要で、どんな仕組みなのかは知らないが衛星から時刻を得ている1らしい。 電波の到達時間を測る時計ってのもスゴイよなぁ。 つまり位置と時刻をセットで取得できると。

複数の位置からは距離が得られるから、これと時間を使えば速度を求められる。 スピードと移動距離を統計的に処理すれば、安価なサイクルコンピュータがやっている仕事はこなせる訳だ。 こんな、誰でも思い付くような機能はちゃんと実装している。 ま、測位誤差ってモンがあるから測位結果を生で使う訳には行かないようで、過去数秒のデータを使っている様子。 真の速度変化に対し反応はかなり緩慢だ。 まぁ、巡航時は安定しているので困ることはないが。

電池の持ち

電源は単三乾電池×2本。 2次電池(充電可能なやつ)も使用可能で、今のところ 1600mAh の NiHM電池で運用している。 カタログの電池寿命は 12時間(省エネモード時)だが、実際の運用ではそんなに持つはずもない。 フル充電からだと、標準モードで使って5〜6時間持続するかな。 たいていは前回の残りからスタートするので、散歩の途中で1回は電池交換が必要になる。 アルカリ電池ならもっと持つのかも知れないが、試していないので何とも言えない。

電池が消耗すると、その旨画面に表示される。 しばらくはそのまま動作するが、基本的にすぐ交換するのがいい様に思える。 試しに、eTrex で使い終わった電池をライト(CATEYE HL-500II)に入れてみたら、数分で灯りが消えてしまった。 二次電池は消耗すると急激に電圧が落ちるから、警告が出た時点でもう崖っぷちっぽい。 ライトを予備電池として持って行き、交換すればいいって運用は無理だな…。

そう言えば、電池の残量は問題ないのに勝手に電源が落ちている事もあった。 或いは、消耗の警告が出た後勝手に消えたり。 GARMIN の GPS は(マシになったらしいが)昔からこう言うことがあった様で、もう少し何とかして欲しい気もする。

体感的な話

上空が開けていて2前回と同じ位置からの起動では、かなり早く測位できるようだ。 川沿いのサイクリングロードで少し休憩してからのスタートでは、ほとんど気にならなかった。 対して店(ビルに入ったテナント)に寄った後の出発では、測位に時間が掛かると感じる。 こちらは、少し待たされると言う感じ。 開けた場所に出ると言う意味も含め、構わず出発してしまった方がよさげ。

eTrex は 12チャンネル3同時捕捉が可能で、3衛星を捕捉4できたらナビ準備完了となる。 捕捉できない衛星の位置も分かるのは、Almanac(アルマナック:軌道データ)を衛星から得ているから。 その軌道も微妙に調整されていて、そちらは Ephemeris(エフェメリス)と言うらしい。 前回終了時の Almanac や Ephemeris が使える場合は、再捕捉は速くなる。 逆にこれらが使えない場合は、再度受信する必要が有り捕捉に時間が掛かる。 電車で移動後はちょっと時間が掛かるように思える。

精度はよく分からないが、停まっているよりは或る程度の速度で移動している方が精度が高くなるような気がする。 ホントに気のせいかも知れないけど。 走っている時は、たいてい空が開けていると言う事情だったりして。 位置精度 6メートル とか表示されるんだよね。 SA5 が解除されたとは言え、ホントかな。

地図の表示上は、近場の道を見つけて補正している(設定でOFFにする事も可)。 あまり変な所を走っている様にはならないが、地図にない道を通っている時は妙な事に。 まぁ仕方ないね。

  1. 時刻を得ている
    eTrex の設定で、時差を設定する項目はあっても時刻を設定する項目はない。 外に出して測位すればOKと。 測位すると UTC(Coordinated Universal Time:協定世界時)が得られるから、これに時差を加えれば日本時間が出るという仕組み。

    参考までに、UTC と GMT(Greenwich Mean Time:グリニッジ標準時)は似て非なる物。 GMT は天体観測によって決められる時刻だが、UTC では原子時計によって決まる1秒を使っている。 地球の自転は微妙に遅くなっているので、放っておくと GMT と UTC はズレてくる。 で、時々うるう秒を入れて UTC の方を調節している。 現在では GMT はほとんど使われていない。

  2. 開けた空
    Open sky と言うらしい。 街路樹程度ではあまり問題ないが、森林の葉などは電波の到達を妨げるので測位できない事もあるとか。 ビルなどではマルチパスも問題になる模様。 ビル街でもなければ、車道の路側帯を走っていれば全然問題なし。 逆に、高速道路下は案外捕捉出来ていたり。 一番ヤバイのは、壁(ビルとか)。

  3. 12チャンネル
    GPS の衛星(NAVSTAR)は、24個飛んでいるらしい。 だいたいムラ無く飛んでいるとして、半分は地平線の下だから、12チャンネルなら見える衛星を全部捕捉できると。 ま、実際には5〜6個の事が多いかな。

  4. 3衛星捕捉
    2次元の測位には、3衛星が捕捉出来ている必要がある。
    3次元の測位には、4衛星が捕捉できている必要がある。
    技術的な話は Trimble技術情報がやさしくまとまっていて参考になった。

  5. SA
    Selective Availability。 元々軍事用の GPS では、民間に開放するに当たって意図的に精度を落していた。 有事(湾岸戦争など)の時は GPS の精度が向上していたのは有名な話だ。 日本時間 2000-05-02 13:00 にSA解除され、グッと精度が向上した(最大10倍)。

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