北海道オフロードTouring'92 10日目





8/20/1992 十勝海岸雨景色

[浦幌〜十勝海岸〜中富良野]


# 22 もーいーかげんにしてこの天気(;_;)

前日は確か9時に寝ついたはずだったんですが,この日は起きたのが朝の8時(^_^;)
いやはや,雨の林道ツーリングのハードさを今更ながら感じるのでした(^_^;)
それで,天気なんですが,思いきり強い雨が降ってる(;_;)
「ミッキーハウス」でゆっくりしてるのも手なんですが,天気予報によると, 十勝地方は明日までずっと雨らしく,いくらなんでもそんなに待っていられないし, ドライブインの運転手さんからの情報によると,山を越えた富良野のほうは晴れ間も出ているという・・・
当初の計画では,十勝海岸には11年前に世話になったおっちゃんが居たり, 襟裳岬には知り合いの先生が居たりするので,海岸縁りにはあと2泊くらいして,じっくり楽しむつもりだったんですが, とにかく今は太陽が恋しい・・・
これは十勝海岸は素通りして一直線に富良野に向かうしかない!と, 「風の子」の高橋さんおすすめの小学校の跡が民宿になってるという, 「いもやらだいこん」という宿に予約の電話をしたのでした(^_^;)

・・・といって,雨の中,元気に出ていけるはずもなく,とりあえず,朝飯を頼んで (「豚丼」という,あまり耳馴染みはないんですが,北海道の名物だそうで, なるほど昨夜の「牛丼」とは違って,こってりした,寒い中食べたら美味そうな感じのする味でした(^_^;)),その間に,札幌の奥さんの実家まで走るという,大田さんが果敢に出発して行きました。
大田さんが出てすぐに,宿のおばさんが尋ねるには,
お「あんたたち,昨夜は何を飲んでたの?」
H「ビール飲んだあと,お互い持ってたウオッカとウイスキーを飲んでたんですけどー」
お「いやね。あの人ね。昨夜たいへんだったんよ。夜遅くによその部屋までちょっかい出したりで・・・」
H「そうだったんですか? いやーぐっすり寝てたらしくて,全然知りませんでした」
うーん・・・ 確かに大笑いしてからの大田さんいうのは, それくらいしそうな勢いはあったかも知れない・・・(^_^;) しかし,そんな大騒ぎもものともなく熟睡してた私というのも結構なやつかも知れない・・・(^_^;)
何となく結構気力も充実しているようなので,カッパを着込んで,覚悟を決めて 朝は10時半頃,「ミッキーハウス」を後にしたのでした。
運のいいことに,出た途端,雨は小降りになって, こうなると十勝海岸への執着の強い私としては, 当初の富良野一直線の予定などどこへやら,
R.38から十勝海岸へ向かう R.336との分岐で,迷わず R.336へと行ってしまったのでした(^_^;)

# 23 十勝海岸雨景色

R.336,別名「ナウマン国道」というのは,十勝の浦幌から広尾(Hiroo)まで, 海岸に近い人口希薄地帯を淡々と走る道なんですが, 長い間,ダートがいっぱいだったことと,十勝川を渡る橋がないことで, 今はまだ,好きな人でないと通ることはない道です(^_^;)
しかし,昨年に完全に舗装されて,十勝川を渡る橋もこの冬には完成するということで, 変わっていくかも知れません。こもあれ,この夏が最後という渡し船は健在でした(^_^;)
・・・といっても,自転車しか渡れない1日5往復の形だけの渡し船なので, 渡船場まで行ったら,あとは十勝川の土手のダートを上流の橋まで走らなければなりません(^_^;)
このダートは見晴らしよくで,“天気なら気持ちいいだろうなー”と思いながらも,そこそこいい気分。
橋が見えてきたくらいのところに,
♪あの木何の木気になる木〜♪で有名なハルニレの木があって, “これは絵になるなあ・・・”と,思った時点で,豊頃(Toyokoro)の町まで「写るんです」を買いに行くという, のんびりしたことをしたのでした(^_^;)
ハルニレの木というと,結構観光のポイントになってるのかと思えば, クルマが近くまで入れないからか,天気のせいか人もまばらで,木をバックに写真など撮ってもらおうと, いざ木の麓にたどりついたら誰もいなくて,思いがけずぼんやりするのでした(^_^;)

橋を渡って,十勝川右岸の浜にある大津(Ootsu)という集落にはなつかしい思い出があります。
11年前に国鉄の周遊券で初めて北海道に行ったときに, 広尾線の大樹(Taiki)からバスに乗って,生花(Seika)という終点まで行って,海岸めざして歩いて, あと道もない海岸を延々歩いて,たどり着いたのが大津ということで,
“久々の大津はどんなもんかな?”とすごい楽しみだったんですが, 11年前とほとんど変わらない,乾いた感じのするところでした。
帯広なんかより,ずっと前から栄えたという経緯もあるところだけに, 風情は思いきりあって,11年前と同じような無常感を感じました。
しかし,大津に着く少し前から雨足が強くなって,肌寒いんですねー。これが。
“うーむ,昼からやばいのだが・・・”とか思いながらも, 手はビールの自販へと伸びていくのでした(^_^;)
“景色のいいところで,のんびり飲みましょう”と,大津を出て, 11年前と反対のコースで,たどり着いたのは長節湖(Choubushi-ko)。
キャンプ場もあって,このあたりでは賑やかな部類の湖なんですが, お盆過ぎいうこともあって,お店は全部閉まっててる。
しかし,雲がすぐ頭の上にかかっていそうな海沿いの湖いうのもオツなもので, 地元の釣りやら漁の人だけで,ライダーなど誰もいないという湖をどんどん行くと, 道が切れて,湖と太平洋がつながっているじゃありませんか!
いやー,雨が続くとつながると話ではきいてたものの, 前は歩いて渡れたところが,足を踏み入れるのもこわいほどの流れになってるというのは, 驚きました(^_^;)
そんなわけで,その流れを見ながらビールを飲んで, 少し温まったところで,内陸のR.336 まで戻って, 次の湖,湧洞沼(Yuutou-numa)を目指すのでした(^_^;)

湧洞沼は,十勝海岸ではいちばん大きい湖で, 前に行ったときは,驚くほどのアヤメの群生があったりして,花がすごいきれいなところです(^_^;)
地元が観光で売る気がないからか,北海道を回ってるライダーの間でも, まずは話題にならないところなんですが,とにかく私は一押しに気に入ってるので, 逆に今回行って大したことなくて,
“あれは初めての北海道だったからあれだけ感激したのかな?”と思うのが嫌というのもあったんですが, とにかく来た限りは足を運ぼうと,到着したら,いやー,期待を裏切ることはなく, 11年前と同じ人気のない海岸は,ハマナスとか花が咲き乱れていて, 舗装道の切れたところから砂混じりのダートに入って, 小雨の中ながらとびっきりのひとときを過ごすことになったのでした(^_^;)

強い思い入れは,思いがけない出会いを作るということで,地元の風情のおばさんが 練馬ナンバーを,興味深そうに覗き込んでいる・・・ “何なのかなー?”と思ったところで目があって・・・
お「にいちゃん,東京からかね?」
H「はい,湧洞沼は昔来て,気に行ったんで11年ぶりに来ました」
お「それはそれは・・・ いやー私もこの冬まで栃木は小山に居たんでーなつかしくてー」
H「今はこのあたりに住んでるんですか?」
お「帯広なんだけどー,昔は長節で牧場やってて,今日は主人と釣りにきてるんだわー」



のんびりした会話が続いて, “釣りというと何が釣れるのかな?”とか思ってたら,ご主人登場で, また話がいろいろ盛り上がって,湖では鮎を釣ってるとのこと。
これが内地(本州)じゃ考えられないくらい簡単にいっぱい釣れるということで, 私は釣りをしないので,基準がわからないんですが, 確かにクーラーには大きい鮎がいっぱい入ってました(^_^;)
そのご主人が大工さんだそうで,
“仕事は気の向いたときにまとめてやって,休みたくなったら, 2週間くらいキャンプ張って釣りをして・・・”いう悠々自適の生活をしてるらしく,
“確かに気候は厳しいけど,人情は厚いし,十勝に帰ってきてよかったよ” としみじみ言ってました。
家も格安で,広いものを建てることができたそうで,
“にいちゃん,また来ることがあったら,2階は空いてるから,泊まっていきな!”いう言葉に, 思わず甘えてしまいそうになる私でした(^_^;)
ちょうど子供さんが私と同い年くらいで,子供さんはしっかり小山で根を張ってて, 北海道に来ることはあるかどうかみたいな感じらしくて・・・
うーん,遠くに離れた親子いうのは,また一種独特の愛情が湧いたりするんだなーと あらためて思うのでした(私の家も例外ではないわけです)。

そんなわけで,思いがけず1時間半も喋り込んでしまって,最後に気になることとして
H「沼は海とつながってるんですか?」
主「いや,まだ大丈夫だ。でもこれだけ雨が続いたら2日後にはつながるだろうなー」
そんなわけで,砂混じりのダートをさらに先に走って行く覚悟ができたのでした(^_^;)
確かに,沼と海とは20m くらいの砂州で分けられていて, 4WDの轍のあとを,思いきり足をこすりながら, 荒馬に乗ってるような感じで越えました(^_^;)


しかし,これを越えてからが難関で,まともな道は次の生花苗沼(Oikamanai-tou)までないんですね。
一応,さっきのおじさんに“生花苗まで走ることはできる”いう確認はしてるものの 砂浜から丘に入って,けもの道っぽいところを進めば, 目が点になるほど馬鹿でかい水たまりがあったり (真剣に,BAJAにして,エンジンすれすれの深さがあったり・・・), おっかないんで,水はないだろういう確信で,茂みの中を突き切っていったりで, 不安なことしきりです。
しかし,気がつけばさっきの寒さなんかどこへやら, 汗ばみながら,すっかりナチュラルハイの領域に達してしまったのでした(^_^;)(^_^;)
休み休み行ったこともあって,おじさんと別れて1時間,生花苗沼に着いたときには, ノリの絶頂となって,道についたところでヘルメットを取って, 大声で中島みゆきなんか歌っていたのでした(^_^;) 傍目で見たら, かなりあぶないにいちゃんですね(^_^;)
でも,ここはほんとに誰もいない場所なのでした(^_^;)
畑があるくらいのところまでくると,
“おー,これは11年前に渡った橋だわ!!”とか,完璧に記憶の残ってる風景の中にたどりついて, このノリは生花の集落に着くまで続いたのでした(^_^;)

# 24 「いもやらだいこん」は遠かった・・・

生花で一服して考えるに,“ここから富良野まで何kmくらいあるんだろう?”
時間は4時半,“まあ2時間も走り通せば何とかなるかな?”といって走り出したら, 雨も上がりました(^_^;)
雨上がりの澄んだ空は,視界も思いきり広がって,遠いはずの日高山脈がすぐそこに見えたりで, ご機嫌のうちに,忠類(Chuurui)の村に着いて,R.236 を帯広方向にどんどん走る・・・
途中「幸福駅跡」というのがあって,“どんなもんかな?”と寄ってみたら, これが“こんな何もないところになんで?”というほどの人で,観光バスまで入ってくる。
そんなバスで東京から来たおばさんに練馬ナンバーいうことで
お“こんなとこまで来るのはたいへんでしょう?”
H“いやー,フェリーですからー”

幸福駅で旅情を満足できる旅もあったら,今日の十勝海岸みたいな旅もあるんだなあ・・・ と変に感心したのでした(^_^;)
(どちらがいいというのじゃないんですけどね・・・)

幸福駅跡にも,行かなければ味わえないいい味があったんで, カッパをたたんでのんびりしてると,いよいよ夕暮れ,
“こりゃさすがにやばい!”と,帯広の市街を避けて,道々を北西に進んで, 芽室(Memuro)で R.38 に戻ったときには,すでに日は落ちていて,GSに入って
H“富良野までどれくらいですか?”
G“んー,2時間くらいだね”
いやー,このハードな走りのあとにさらに2時間,闇の中は辛い・・・(;_;)
などと,のんびりしたことは言えるはずもなく, 石勝峠(Sekishou-touge)を登って,雨でもないのにカッパを着込んで(寒いからですねー(^_^;)), 山の道を行くと,西の空は日が落ちてからも結構明るくて, だんだん弱くなりながらも,富良野市内に着くまで,空の一部分は明るかったのでした(^_^;)

そんなこんなで富良野の駅に着いたのは,ちょうど8時くらいで, 宿の所在地,中富良野が,富良野の手前と考えてたのは甘いの極致なのでした(^^;)
富良野から旭川方向に10kmほど行ったマイナーな道々沿いに宿はあったんですが,
“我ながらよく見つけられたものだ”というくらい込み入ったところだったのでした。
「いもやら」のご主人は,ドクタースランプのノリマキセンベーみたいな風情の面白い人で, 食事の間,今日のノリの話を興味深そうにきいてくれたのでした(^_^;)
この宿は,さすが高橋さんおすすめいうだけのことがあって,部屋は広い,風呂は広い, 全体にスペースに贅沢な作りで,風呂上がりにスイカとメロンを腹いっぱいごちそうに なったこともあって,“こりゃ,連泊だわっ”と,早々決めてしまったのでした(^_^;)

広間には,カップルが2組と思ったんですが, 1組は群馬からの女の子ライダー2人組で(カオルさんいう名前に迷ってしまった・・・), もう1組は,長い間泊まり続けて農作業をしてるいう埼玉の女子大3年生と, 私と同じパターンで雨の十勝から今日着いたという仙台の社会人1年生いうことで, 穏やかな雰囲気で話は進んだのでした(^_^;)
(あと,宿の女性ヘルパーさんもいたから,計6人です(^_^;))
それが強物いうのはいるもんで,私が宿に着いた頃, 帯広から電話をしてきたいうカップルがいるという(^_^;)
そのうちに女の子3人が適度なところで切り上げになって, 仙台さんと女性ヘルパーさんの3人になって,そのカップルが宿に着いたのは11時。
クルマだったんですが,何でも今日はウトロから走ってきたということで, いやー上には上がいるもんです(^_^;)
それでおさまらないのが,このパワフルカップルで, “食事しないで走ってきたんで,コンビニまで買い出しに行きたい”という, とんでもないことを言いだして,
ヘルパーさんの“上富良野の駅まで行ったら24時間のコンビニはあるけど, かなり距離がありますよ”いう話に,“それじゃ,行ってきます”ですからねー(^_^;)

“1時くらいまでなら起きてるから”という私の声に,カップルが出ていったのは午前0時(^_^;) 長い間つけれなかった旅のメモとか,会計処理とかして, そのうちヘルパーさんも仙台さんも寝てしまって,気がつけば午前2時, まだカップルは帰ってこない。
“んー,こりゃホテルに直行したのかもねー”と, 気楽なことを考えながら,眠りについたのは,2時半くらいという, 私も十分パワフルな一日なのでした(^_^;)



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