揺らめく古都の抒情  の音楽の世界



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注目!
9月19日(日)、神戸チキン・ジョージ(078-392-0146)にて行われるBANANA SONGSのイベントに、
シネマアコシネマとして参加します。



シネマの雅やかな世界へようこそ
機械化され風化しつつある日本人の心を癒してくれる、
優美な音色のバンド、シネマをご紹介しましょう。
和製メロディック・シンフォ・バンド、シネマは次の3枚のアルバムを発表しています。



1st アルバム  The Seven Stories (マーキー BELLE95115)



seven stories 曲目
 1Labyrinth(迷宮)
 2やさしい風景
 3Hugging Me
 4La Luna
 5"One"
 6
 7kaya(渡月 〜 波間 〜 満夜)



シネマの1stアルバムですが、フロマージュ時代からの豊かな経験に基づいた音作りが
為されていて、既に、シネマとしての個性が確立している作品です。歌曲風の女声vocalの
特質を活かすべく、情緒豊かなアレンジ、メルヘン的で温もりのある憂愁を帯びた
メロディー・ラインが採り入れられています。



2nd アルバム  Into the State of Flux (マーキー BELLE00590)



flux 曲目
 1流転T
 2琥珀色の記憶
 3真凛
 4かげろうとひまわり
 5そよ風
 6こころを酔わせるわたしの心
 7夕凪
 8color of soul
 9流転U



1stと比べると若干インスト・パートの比重が高くなったような感じもしますが、
基本部分に違いはありません。violinの表情豊かなメロディーに、ゆったりとした
keyboardが素敵です。歌詞は一応ついていますが、「シネマ」というバンド名通りに、
聴いているうちに様々な映像が浮かんでくるような、imaginativeな作品です。
泣きまくるguitarソロも秀逸です。





3rd アルバム  Mindscape (マーキー BELLE04891)



mindscape 曲目
 1時の回廊
 2やさしい風景
 3そよ風
 4回帰線
 5水の丘
 6岸辺のない海
 7Departure for the Fortune
 8Labyrinth



躍動感のあった2ndに比べるとしっとりと落ち着いた風情があります。基調が
ロックであることに変わりはないですが、癒し系の静的な感覚を採り入れて
ますます叙情的に繊細に、傷つき疲れた心を優しく包み込んでくれることでしょう。
随所に繰り広げられる泣きのguitar、しみじみとしたviolin、そして温みのある
ビロードのような感触の女声vocal、心ゆくまでうっとりとさせてくれるロマン派傑作です。
フロマージュのアナログ盤に未収録だった‘回帰線’‘岸辺のない海’の再アレンジも
オールド・ファンの方は涙なしに聴けないでしょう。‘やさしい風景’‘そよ風’
‘Labyrinth’は1st、2ndとは別テイク、別アレンジになっています。




シネマのメンバーをご紹介しておきましょう。

藤本ひろみシャーマンのような雰囲気をたたえた、ロックには珍しいタイプの歌曲系のvocalです。ビブラートを効かせた美しいソプラノを聴かせてくれます。曲によってはkeyboardも担当します。
中西 則子流麗でメロディアスなviolin,violaにうっとりと酔わせてくれます。現在はフリーで活動なさっているそうですが、時々、楽団にも助っ人参加するとか...。
太田  亨CAMELのAndrew Latimer,GENESISのSteve Hackettを思わせるような艶のある泣きのguitarを聴かせてくれます。フロマージュ時代の「オフェーリア」からの参加です。HERETICではavant-gardeにも挑戦。
真下 正樹あまり前面に出てきませんが、シネマの屋台骨を支えるベーシストです。「こころを酔わせる心」ってどういう意味なんでしょう?フロマージュの最初期のメンバーでした。
北村 芳彦keyboardを担当しています。オカリナも演奏するというほのぼのとした感じの方だそうです。フロマージュ時代の「オフェーリア」からの参加です。お見かけはとても若そうですが...。
谷口 裕一ドラムスの担当です。メロディック系バンドだとどうしても活躍の場が狭まるようでお気の毒ですが、バンドのリーダーをなさっています。日本のメロディック・シーンを支えてきた不屈の人物です。

member
     左から、北村さん、太田さん、谷口さん、藤本さん、真下さん、中西さんです。



まだシネマの音楽を聴かれていない方のために、各曲を簡単にご紹介しましょう。



 Labyrinth(迷宮)

祭り太鼓のように響くドラムと、風化した心に人間的な優しさを呼び戻して
くれるかのような泣きのguitarが印象的な曲です。
人の足音のようなkeyboardが淡泊に左右を往来するのが、現代日本の姿を
象徴しているかのようです。



 やさしい風景

題名通りの優しく頬を撫でて通り過ぎて行く春風のような曲です。
藤本さんのvocalが繊細ですぐに崩れてしまいそうで、
華奢なガラス細工のような雰囲気をよく表しています。
中西さんののどかなviolinのアレンジも素敵です。


 Hugging Me

シネマの特徴をよく表した、日本情緒たっぷりの哀調を帯びた曲です。
アレンジャーにフロマージュ時代のkeyboardの嶋村さんの名前が見えます。
この曲も、中西さんの情緒豊かなviolinがしっとりと眼を潤ませてくれます。
控えめですが、太田さんのacoustic guitarも細やかな気品を添えています。



 La Luna

静謐を鋭利に突き通すかのような一条の光を感じさせるような曲です。
keyboardの何とも言えないコード進行がうっとりさせてくれます。
ハイトーンのbassや、実験的なguitarやシンセのトーンも決して
曲調を乱すことなく、妖しい月夜の情景に溶け込んでいます。
間奏の宙を舞うかのようなguitarソロも妙演です。
メロディック系の曲ではありますが、ドラムがちょっと凝ったリズムを
刻んでいたりしてニヤっとさせられますね。


 "One"

優しいkeyboardのトーンと藤本さんのソプラノが綾なす鮮やかな錦絵の
世界が繰り広げられて行きます。忘れかけていた子供心をふと思い出した時の
ような、ほんのりと温もりの感じられる曲ですね。
藤本さんの絶唱に酔いしれてしまいます。


 竹

これも繊細で叙情的な日本的な曲です。中西さんのviolinが味わい深く
心に浸み通ってくるようです。平安時代の蒔絵が蘇るようです。



 kaya

"Kaya"というのは古代史に登場する謎の小国の名前でしょうか?
歌詞に「かぐや姫」も登場します。メルヘン的な雰囲気のする
もの哀しい日本情緒に溢れる曲です。太田さんのBouzoukiが心の襞を
かき鳴らすようで、思わずいにしえの動乱の世界に思いを馳せてしまいます。


 流転T

北村さんのpianoソロです。1st,2ndとcrimsonトーンのジャケですが、
この曲はドロドロとした血流のようなものを表しているのでしょうか?
困難辛苦が待ち受けているような暗澹とした重苦しさも感じさせます。



 琥珀色の記憶

歴史を感じさせるようなイントロで始まります。藤本さんのソプラノの特徴を
活かしつつ、味わい深いシンフォ・サウンドが展開されます。弦楽を
思わせるようなkeyboardをバックにvocalやdistortion guitarの絡むあたり、
奥行きを感じさせながら、古式豊かなトーンに埋め尽くされた曲ですね。



 真凛

前曲と一転して、明るく爽やかで、それでいて、どこかに潤いを
感じさせる雰囲気の曲です。間奏部分で、繊細なkeyboardの和音に載せて
緩やかなviolinとguitarが絡み合ったりすると、思わず目頭が熱くなります。
気弱な若者、あるいは自分の気弱だった若い頃を優しくいたわるような、
そんな感じの歌詞がついています。



 かげろうとひまわり

violinが活躍する古風な雰囲気のする演奏主体の曲です。
私は、馬車の行き交う煉瓦道を闊歩する袴姿の大正時代の女学生とか
イメージしてしまいました。中間部の藤本さんのスキャットが
この曲のハイライトですね。終盤のメロディアスなguitarソロも
色鮮やかに輝いて聞こえます。steel guitarかな、WALLYという
'70年代の英国のバンドの"Urban Spaceman"という曲を彷彿とさせる
部分もあります。


 そよ風

初夏の陽射しを受けてキラキラと輝く広々とした草原を、優しく
撫でて行くそよ風のような、題名通りの明るい雰囲気の小曲です。
エレピのイントロに伴われて、オカリナの音色が実にのどかです。
張りつめた心を和ませてくれるような穏やかなviolinの響きが
澄み切った空気の中にこだまして行くかのようです。



 こころを酔わせるわたしの心

意味不明のタイトルですが、シネマのもっともシネマらしい曲です。
繊細叙情的で流麗な和風の旋律は聴く者を陶酔させてくれます。
重厚な雰囲気のvocalにguitarやviolinの漆塗りのようなフレーズが
深い彩りを添え、仁王像の睥睨の眼差しを刻みつけるかのようです。
この曲でも和太鼓のようなdrumsの迫力が印象的ですね。


 夕凪

疲れた心を優しくいたわり落ち着けてくれるような、静かで、穏やかで、
妖精の暖かい息づかいが漏れ聞こえてくるかのような柔和な曲です。
GENESISの隠れた名曲"After the Ordeal"を思い出します。
目をつぶって聴いているだけで心が洗われるようです。



 color of soul (魂の色)

20分近くに及ぶ大作ですが、ほぼ三部に分かれていまして、最初の部分は、
guitarの歌い上げる哀切感溢れる甘美で親しみやすいメロディーが印象的です。
歌メロも覚え易く、single cutすればヒットしないかな、とか思いますが...。
中間部は、keyboardがメインとなり、荘厳なGothic風の曲調に変わります。
オペラ的なvocalの後、ドラマチックに壮大に盛り上がりまして感動的です。
やがて、効果音などを用いた神秘的なkeyboardから、幻想的なguitarへ、そして
荘厳な弦楽的アレンジに乗って流麗なviolinへ、さらには、guitarのあでやかな
サウンドへと引き継がれて行きます。
最終部分にはいると、再びオペラのような伸びやかなvocalが登場して歌曲風に
なります。大海原に繰り出したかのようなアレンジに酔いしれてしまいますね。
気づかないまま聞き流してしまいかねないような控えめさですが、随所に
細かい音の飾りが散りばめられています。



 流転U

どこかやるせない絶望感漂うコーラスから、希望に満ちたvocalが
力強く立ち上がってきます。ジャンヌ・ダルクか卑弥呼のように。
そして無機的なpianoとともに終末を迎えます。




シネマの前身バンド、フロマージュをご紹介しておきましょう。

マーキーより、「オンディーヌ」(BELLE ANTIAUE 9458),「オフェーリア」(BELLE ANTIQUE 9459)の
2作品がリリースされています。
この2作品の抜粋からなる、「月に吠える」(Made In Japan Record MHD-25002)というCDも
出ています。

フロマージュは、'70年代後半より'80年代にかけて活動しました。かつて、中嶋一晃さんや、
永川敏郎さんも在籍された伝説的なバンドです。静的なシネマと比べると、ずっとロック本流寄りで
躍動感もあり若々しさに溢れていますが、バックの演奏の主体部分はシネマに通ずるものがあります。

1stのメンバーは、
近藤  芳弘guitar
嶋村 よし江keyboard
谷口  裕一drums
林   智久bass
東沢   学vocal,flute
ですが、2ndでは、
太田   亨guitar
北村  佳彦keyboard
田中  勇次bass
谷口  裕一drums
東沢   学vocal,flute
の面々です。

guitarのご両人はともにHackett風のguitarを聴かせてくれます。
keyboardは、嶋村さんがネオンサインの輝く洒落た繁華街の香りがするのに対して、
北村さんは、ストレートで純朴でメルヘン的な雰囲気がします。
谷口さんのドラムスは、シネマでは各曲の完成度を高めることに配慮して、
やや抑えつけられている感もありますが、フロマージュではロック・ドラマーとして
華々しく存分に炸裂しています。
何をおいても、シネマとフロマージュの違いは、東沢さんのvocalとfluteですね。
GENESISのPeter Gabrielのfluteはやや不安定な印象を受けますが、東沢さんの
fluteには滑らかな清涼感があって、フロマージュの大きな特徴になっていました。
vocalは堀江淳風の甘ったるい少女趣味的vocalですが、曲調にぴったりフィットして
いまして、メロディック系のvocalはこうなんだ、という感じです。
現シネマの藤本さんのvocalと東沢さんのvocalの対比もとても興味深いものがあります。

ondine 「オンディーヌ」はややジャズっぽい雰囲気などもありまして、
洒落たハイセンスな作品です。曲調としては、'60年代後半に
一大ブームとなったグループサウンズもの、例えば、タイガースの
「花の首飾り」をプログレ然として格調高く昇華させたものと
言うことができるでしょう。タイトル曲の「オンディーヌ」、
私は、KING CRIMSONの"Epitaph"を思い浮かべてしまいます。
そんな荘重感もある作品です。
ophelia 「オフェーリア」は'90年代に入ってオランダで一世を風靡した
SI系サウンドの走りと言えるような音です。全体的に哀愁感溢れる
メロディアスなハードめの曲が並びます。
「手の中のおもちゃ箱」という曲の東沢さんの絶唱には共鳴して
しまいますね。でも、この曲は打算無関係の男のメルヘンかな?
この曲とか、タイトル曲の「オフェーリア」とか、昔自分で
やっていた頃の曲調に重なるので、聴いていると自分で演奏している
かのような錯覚に陥ります。ヘタクソだったので、どこに応募しても
声がかかったことはありませんけれど...。

未聴の方は、ぜひ、フロマージュもお試しください。




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