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用語集 |
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- アザーン
- 礼拝の時刻を告げる肉声による呼びかけ。
- アッサラーム・アライクム
- 挨拶の言葉。「あなたの上に平安を!」という意味。ワ・アライクム・アッサラーム(そしてあなたの上にも平安を)と返す。季節や時間に関係なく、出会った時でも別れる時でも使う。
- アッラーフ・アクバル
- 「神は偉大なり」という意味のアラビア語。日に五回の礼拝の際、その初めに唱える。またジクル(神を賛美し称えること)という宗教行為やその他に日常の様々な場面で唱えられる。
- アバーヤ
- ガウン状の外套(正式な発音はアバーア)。男性用にも女性用にもこの言葉を使う。女性用のは真っ黒で、チャドル(ペルシャ語)の名でよく知られている。
- アミール
- 司令官、総督のこと。
- アリフ
- アラビア語の第1文字。数字の1のような縦一文字の形状。千夜一夜物語の中で、女性のすらりとした立ち姿を言い表す時に「アリフのような」という言い方で使われている。
- アルフラート
- ユーフラテス河のこと。
- イード・アルアドハー
- 犠牲祭のこと。巡礼月の7日から10日にかけて行われる。10日が巡礼の最終日でその日に犠牲が屠られる。断食明けの祭=イード・アルフィトルと併せて二大祭という。
- イスラームの家
- アラビア語ダール・アルイスラームの訳語。イスラームの広まった地域全体、つまりイスラーム世界を指す。
- イフリーキーヤ
- アフリカのアラビア語読み。アフリカ北中部、リビア西部からチュニジア、アルジェリア東部までの地域を指す。
- イフリート
- イフリートはジンの一種。巨大なものを動かすことのできる強いジンとみなされている。
- イマーマ
- ターバンのこと。巻き方や色はいろいろあるらしい。ちなみにアラブの伝統的な遊牧民はターバンではなく、四角い布をかぶり黒い輪っかで止めている。
- イマーム
- イスラームにおける指導者の意味。集団礼拝の指導者を指す場合もあるし、宗派それぞれの最高指導者を指す場合もある。スンナ派の場合はそれはカリフのことであり、シーア派の最高指導者は第四代アリーの子孫に限られる。「真のイマーム」の意は、その時正統なイマームは隠れていて存在しないが、やがてマフディー(メシア)として現れるという思想に基づくもの。
- イン・シャー・アッラー
- イスラーム教徒の慣用句。「もしも神が欲し給うならば」の意味。未来のことに関しては己の一存でできるわけではなく、すべて神の許しがあって初めて可能なのだという信仰の気持ちを表明するための言葉であり、約束不履行の定句ではない、とイスラム事典にはあるが実際にはそれに近いものがある(と思う)。
- ウード
- 琵琶に似ているアラブの弦楽器。詳しくは参考文献を見て下さい。
- ウラマー
- イスラームの宗教的知識を持つ人々のことを指す。宗教学者と訳せるが、職業や聖職者としての身分を表す言葉ではない。ウラマーは学者、教師、説教師、礼拝の指導者などだけでなく、イスラーム法に携わる者として裁判官、法学者などの職業にも就いた。ウラマーはムスリムの社会と政治的支配権力の間の仲介者であり、その政治的社会的地位は高かった。
- カーティブ
- 書記、あるいは秘書のこと。
- カーディー
- 裁判官のこと。イスラーム世界の裁判はイスラーム法に基づくため、ウラマーの中から選ばれる。
- キブラ
- 「向かう方向」を指すアラビア語だが、特にムスリムが礼拝の際に向かう方向、メッカのカーバ神殿の方向を意味する。
- クドゥス
- アラビア語でエルサレムのことをクドゥスと呼ぶ。イスラームにとっては第3の聖地。
- クフル
- アラビアの女性が用いる黒いアイシャドーのこと。コフルとも言う。クフルはアラビア語でアンチモンという化学物質を指し、それを含む黒い顔料を目の縁に塗っていた。おしゃれのためだけでなく、目に付く虫を除けるという実用もあった。ちなみにアルコールという英語はこの言葉が語源。
- クルアーン
- コーランのこと。アラビア語を正しく表記するとクルアーンになる。
- サーサーン王朝
- サーサーン朝ペルシア。イスラームが興った時イラン地方を支配していたペルシア人の王朝。イスラーム世界を拡げようと進出してきたアラブ人によって滅ぼされた。
- サファル月
- イスラームの暦で2月のこと。ちなみにこの物語ではイスラーム暦(1年が354日しかない)で表記するので、2月といっても、西暦でいう2月とは必ずしも一致しない。
- シーン
- アラビア語で中国を指す。
- シッキリーヤ
- アラビア語でシチリア島のこと。
- シャーバーン月
- イスラーム暦で8月。
- シャイフ
- 「長老」「老人」を意味するアラビア語だが、様々な集団の「長」という意味でよく使われる。
- シャッワール月
- イスラーム暦で10月。12月の巡礼月の準備期間の始まり。各地で聖地メッカへの巡礼団が結成され、旅立つ月。
- シュルタ
- 警察、警察長官のこと。
- シンド
- インダス河河口及び下流域一帯の地域を指す。
- ジクル
- 「思念すること」「口で言い表すこと」の意味。イスラームにおいては、決まりの言葉を口にして「神の栄光を称えること」を指す。神秘主義においては、それを一種の称名として繰り返し唱え、それによって神を常に念じ神秘的合一体験に至る方法として実践されている。
- ジャーミー
- 金曜日の集団礼拝を行う大きなマスジド。街の中心的な役割を持っていた。
- ジュマーダー・アルアーヒラ
- イスラーム暦で6月のこと。
- ジン
- ジンは精霊、霊鬼と訳される。神と人間の中間の存在。人間は泥から作られ、ジンは火や焔で作られたとされる。ジンにも悪性のものと善性のものがいる。
- スーク
- アラビア語で市場のこと。
- スーフィー
- イスラームの神秘主義者。羊毛でできた粗末な衣をまとう者という意味。スンナ派イスラームの律法主義・形式主義への批判から、宗教的により敬虔に実践による信仰を実現しようとした人々。神との合一という神秘主義思想に基づき様々な修行を行った。
- スルターン
- スンナ派イスラーム王朝の君主が用いた称号。サルジューク(セルジューク)家はアッバース家の支配権力を奪うにあたり、イスラーム世界の首長であるカリフの地位はそのままにして、カリフから世俗的な政治権力を委任されるという形を取り、スルターンという称号を用いた。
- タクビール
- 「アッラーフ・アクバル」と唱えることを指す。宗教上の決まり文句でバスマラが行為の初めに唱えられるのに対し、タクビールは礼拝やジクル(神を賛美し称えること)の際に唱えられる。
- ダーイー
- 宣伝者、布教者の意味。
- ダーウード
- ダーウードとはアラビア語でダビデのこと。ダビデとゴリアテの話はコーランにも載っているが石を投げてやっつけたことまでは記述がない。でも有名な話だから引いてみました。
- ディーナール
- 金貨のこと。貨幣単位としても使われる。
- ディジュラ河
- アラビア語でチグリス河のこと。
- ディルハム
- 銀貨のこと。貨幣単位としても使われる。
- ナビーズ
- なつめやしのアルコール飲料。イスラームでは飲酒は禁止だが、ナビーズは度数が低いので、酒には入らないという説もあるらしい。
- ノウルーズ
- イラン太陽暦(ペルシア暦)の新年元旦。春分点を一年の始まりとする。ゾロアスター教由来の祝祭日だが、現在でもイスラーム暦とイラン太陽暦は併用され、ノウルーズはイランの元旦として祝われている。
- ハーラ
- 都市の街区。都市では部族、出身地、職業、宗教などを同じくする者が同じ区画に住み着いて小共同体を形成していた。表通りに通じる所に門があって夜は自衛する所もあった。
- ハールーン・アッラシード
- アッバース朝第5代カリフ。アッバース朝が最も栄えた頃の君主で、『千夜一夜物語』にも登場する。
- ハーン
- 隊商宿のこと。中庭を囲んだ1階は商品の倉庫や事務所で、2階以上は旅人の宿泊施設になっている。
- ハシーシーン
- イスラム事典によると、ハシーシーンとは「大麻野郎」という意味合いの侮蔑が混じった言葉で、ニザール派に対し他のムスリムがあてがった呼称という。それがヨーロッパに入り、暗殺者のことをアサシンと呼ぶようになった。「フィダーイー」の項参照。
- ハムル
- アラビア語で酒のこと。ハムルと呼ばれる酒の範囲はブドウ、ナツメヤシ、蜂蜜、大麦、小麦の5種を原料とした飲み物ということになっているらしい。イスラームにおける飲酒禁止はかなり厳格だが、『千夜一夜物語』を読んでも酒のことがよく出てくるし、酒を称えた詩も多く詠まれているので、過去の歴史において、どこまで守られていたかはわからない。
- ハリーファ
- カリフのこと。ハリーファとはアラビア語で「継承者」「代理者」という意味。神の使徒ムハンマドの代理として、信徒の長を務め、イスラーム国家を統治した。
- ハンマーム
- イスラーム世界の公衆浴場。蒸し風呂形式が主。町の社交場としての役割も果たし、特に外出もままならない女性たちにとってハンマームは大切な社交場でありくつろぎの場だった。
- バーザール
- ペルシア語で市場の意味。アラビア語のスークと同じ。ペルシア圏内に入ってきたので言葉も変えてみました。
- バスマラ
- 「慈悲深く、慈愛あまねきアッラーの御名において」という意味の決まり文句のことをバスマラという。イスラーム法の義務とされる行為と勧められる行為を行う際に、始めに唱える。また書物や文書の巻頭に記す。
- バラカ
- 祝福を意味するアラビア語。神が預言者や聖者たちに与えた超人的能力を表す。主にイスラーム神秘主義と結びつき、生存中だけでなく死後もその力は存続すると考えられ、墓石や遺体、遺物にバラカがあると信じられている。信者たちは墓の囲いや遺物に触れることでその力の恩恵を受けようとする。イスラーム世界の民間信仰です。
- バンジ
- 和名ヒヨス。ナス科の植物で幻覚、鎮静、鎮痛、乗り物酔い、喘息、酩酊、催眠、催淫等の薬効がある。「アラビアンナイト」ではハシーシュ(大麻)アフユーン(ケシ)とともによく出てくる麻薬で、主に眠り薬として使われている。参照:http://www.asahi-net.or.jp/~pv4r-hsm/poisonHI.html http://village.infoweb.ne.jp/~fwhk5674/sougen/data/hiyos.htm
- ヒジュラ暦
- イスラーム世界の暦。預言者ムハンマドがマッカ(メッカ)からマディーナ(メディナ)へ移住した年(西暦六二二年)を紀元元年としている。ヒジュラ暦二百年代中頃というと西暦八六〇〜七〇頃になる。
- ヒンド
- アラビア語でインドを指す。
- ビスミッラーヒ
- 「アッラーの御名において(いただきます)」という意味。食事を始めるときに言う言葉。
- ビントゥ
- ブンの女性形。娘の意味。この場合、「サイードの娘、ハルワ」という意味になる。
- ピール
- イスラーム神秘主義における導師、聖者。ピールはペルシア語でアラビア語のシャイフに相当する言葉。
- ファーティハ
- 開扉の意味。クルアーンの最初の章。『千夜一夜物語』の「アブー・キールとアブー・シールの物語」の中にファーティハの章を誦んで義兄弟の証を立てるくだりがある。
- ファジュル
- 夜明けの意味。空が白んできてから太陽が出る前までに礼拝を行う。一日の礼拝は、夜明け(ファジュル)、正午(ズフル)、午後(アスル)、日没(マグリブ)、夜半(イシャー)の5回に定められている。
- ファルサフ
- イスラーム世界の距離の単位。ペルシアのパラサングから来ている。1ファルサフは約6キロ。
- フィダーイー
- 宗教・政治的目的のために一身を犠牲にして戦う者の意味。暗殺者教団として知られるイスマーイール派の一派ニザール派の暗殺者を指す言葉であった。この場合、ダーイーは秘密結社の宣伝員、フィダーイーはゲリラの戦士みたいな感じで使ってます。
- ブルクー
- ベールを意味する一般的なアラビア語。形状によって様々な言い方があるらしいが、よく知らないので、ここではベール状のものをブルクーと総称してしまいます。
- ブン
- イブンの省略形。ビンと表記する場合もある。イブンは息子という意味。名前には姓はなく、代わりに父や祖父の名前を連ねたり、通り名を併記する。ちなみにアブーは父親という意味。
- ペルシア
- 地名は基本的にアラビア語にしているが、広義と狭義を合わせ持つ地名は例外にしている。ペルシアはアラビア語ではファールスとなるが、ファールスは南ペルシア地方を指す言葉でもあるのでファールスを地方名、ペルシアを国名として区別している。
- マギ
- ゾロアスター教の祭司。キリスト教でイエスの誕生の時、捧げ物を持ってきた三人のマギは「東方の三賢者」「東方の三博士」と訳されるので、知識を持つ者という意味にも使われるのかもしれない。英語のマジック(魔術)の語源でもある。参照→ http://www5e.biglobe.ne.jp/~mandra/d1_magician.htm
- マスジド
- イスラームの礼拝所。モスクのこと。
- マッカ
- イスラームの聖地、メッカのこと。アラビア語を正しく表記するとマッカになる。
- マディーナ
- メディナのこと。預言者ムハンマドがメッカを追われ、移り住んだ街。イスラーム第2の聖地。
- マドラサ
- ウラマーを育成するための高等教育施設。通常神学校と訳されるが、イスラームに関係しない数学や医学なども教えられる場合があった。
- マムルーク
- トルコ人、モンゴル人、スラブ人などの白人奴隷兵。イスラーム社会にははっきりとした身分階層がなく、奴隷といっても人間としての権利は認められ、主人の許可を得れば解放され、自由人となることができた。マムルークも実力が認められれば解放され、司令官や地方総督に抜擢されることもあり、やがて国家の支配権を手にするものまで現れた。
- ミーラージュの夜
- 預言者ムハンマドの昇天の夜。ラジャブ月の27日の前夜がそれにあたる。ムハンマドは天使ガブリエルに連れられて翼のある天馬に乗り、エルサレムへ旅し、そこから光のはしごを登って昇天し、神の御前にひれ伏したと伝えられている。
- ミフラーブ
- モスクの礼拝室の四壁の中で、とくに聖地メッカに面する側の内壁中央に設けられるアーチ型の壁龕。礼拝室内のキブラの方角を示し、そちらの方を向いて礼拝する。
- ムスリマ
- ムスリムの女性形。女性の信徒のこと。
- ムスリム
- イスラーム教徒のこと。
- ムハッラム月
- イスラーム暦の一月。
- ムフタスィブ
- 市場監督官のこと。市場において取り引きの不正や法律違反者に対する処罰、度量衡、貨幣、適正な価格の監視をする役目を負っていた。その他、市場の秩序維持について幅広く監督した。
- ラジャブ月
- イスラーム暦で7月。この年は新年がちょうど西暦の1月頃から始まっているので、季節は夏です。
- ラバーブ
- 弓で弾くアラブの弦楽器。語り物師が伴奏に使った。
- ラマダーン月
- イスラーム暦で9月。この月が有名なイスラームの断食月。ムスリムは日の出から日没まで食べ物も飲み物も取らない。夜になると皆一斉に食事をするという月。
- ルール地方
- 現在ルーリスターンと呼ばれる地域、イラン西部からイラク国境まで広がる山岳地帯。
- ワクフ
- 政府や個人がマスジド,マドラサ(高等教育施設),病院などの公共施設を建設したり、慈善事業を設立した時、それに付随して土地・建物を寄進すること、または寄進された土地のこと。ワクフからの利益を施設や事業の維持運営に活用し、ワクフの所有権の移転は永久に停止される。その他、家族ワクフと呼ばれる子孫に財産を残すためのワクフもある。
- ワジール
- 行政の最高責任者を表す。「宰相」「大臣」と訳される。地方総督であるアミールの下にワジール職が置かれたかどうか定かではないが、ワジールには「補佐」という意味もあるそうだし、他に行政長官としての適当な言葉も知らないので使ってしまいました。
- 喜捨
- 喜捨(貧者への施し)も断食もムスリムの大切な神への奉仕である。神への奉仕は信仰告白、礼拝、喜捨、断食、巡礼の五つがあり、五柱あるいは五行と言う。
- 祈り(ドゥアー)
- イスラームにおいて信者の勤めとされているサラートはよく「祈り」と訳されているが、サラートは神を称える行為の総称であって、厳密に言うと祈りではない。サラートは「礼拝」と訳し、ドゥアーという言葉が「祈り」「祈願」を表す。ドゥアーは礼拝の一部で、所定の行為の後に付け加える祈願の部分のことを指す。
- 二大祭
- イード・アルフィトル(断食明けの祭)とイード・アルアドハー(犠牲祭)のこと。
- 日が落ちれば
- イスラーム世界では日没が一日の始まりとなる。
- 侮辱するような歌
- アラビアの詩では、未婚の女性の名前を読み込んで詠うことはその女性への侮辱とされる。いわゆるセクハラである。アラビアの有名な詩「ライラとマジュヌーン」でも、ライラに恋した詩人カイスはライラの名を詠ったために、ライラに振られて狂人(マジュヌーン)になってしまったのだ。この場合も婉曲ではあるが魅惑(フィトナ)という言葉を詩の中に入れているので侮辱に入るだろう。