作者にも言わせて!!

―― 第7回 ――

カール王子の物語(あらすじ)その1

今回から2回にわたって、ティアーナさんの考えたお話――『カール王子の物語』のあらすじを紹介します。

今から200年以上前のこと、まだ東ユーレシアが一つの王国だった頃のことです。 その頃、東ユーレシアは西ユーレシアやルム・デイリアと戦ばかりしていましたが、マルクスという王の御代になると、王は善政をしき、戦を嫌い、ひとときの平和が訪れました。 しかし、王の弟デロスは兄王を弱腰と決めつけ、自分こそが王にふさわしい者だと思っていました。 デロスは王の平和主義に反対している者や、東西ユーレシアの撹乱を狙う西ユーレシアの大臣を味方につけ、王と王妃を策略に落とし入れ、誅殺し、とうとう国を奪ってしまいました。

王の二人の息子は難を逃れ、わずかな供の者と一緒に都イゼルローンから西の森へ、さらにエルツ河を渡って、東の森へと落ち延びていきました。 兄のカール王子は18才、淡い金の髪に明るい水色の瞳を持つ若者でしたが、その美しい容貌に合わぬ、強い精神力と行動力の持ち主でした。 弟のロムル王子はまだ14才で、兄と同じ金の髪に深い空色の瞳を持ち、優しく賢い少年でした。

追手はしつこく彼らに迫り、かれらはついにヴァールス山地の山の中まで逃げていきました。 追手は山の中までは来なかったので、彼らは助かりましたが、今度は飢えと寒さで苦しみました。 そんな彼らを救ったのは〈小人の賢者〉でした。 小人の賢者は不自由な矮躯の代わりにすばらしい知恵に恵まれ〈竜の賢者〉に教えを受けて、自らも賢者となり、年老いてからはヴァールスの山中に一人隠れ住んでいたのです。 賢者は王子たちに様々な知恵を授け、デロスが追跡を諦めた頃を見計らって、ライゲン公のもとへ行くように助言しました。 ヴァールス山中で何ヶ月か過ごした王子たちは、デロスが追跡を断念したことを知り、山を降りてライゲンへ行きました。 ライゲン公はマルクス王が討たれたことに心を痛め、戦好きなデロスに反感を持っていましたので、落ち延びてきた王子たちを喜んで迎え入れ、かくまいました。

さて、ライゲン公には二人の美しい娘がいました。 姉のフィーリア姫は17才、妹のタニア姫は13才、二人とも美しい緑の瞳に抜けるような白い肌をしていました。 そして、フィーリア姫は磨かれた銅のように輝く赤い髪、タニア姫はつややかな漆黒の髪なのでした。 明るくしっかり者のフィーリア姫と繊細で内気なタニア姫は、森の中の公の別邸にかくまわれた二人の王子を何くれとなく面倒を見て、4人は親しくなりました。 特に人にあまり心を開くことのできないタニア姫は、ロムル王子だけには自分の心を見せることができました。 タニア姫は自分の秘密をロムル王子に打ち明けました。 彼女は鳥や動物と話す能力を持っていたのです。 ロムル王子の優しい心は、タニア姫の不思議な力を素直に受け入れました。 それから二人はよく森へ行って、鳥や動物とおしゃべりをし、楽しい時を過ごすようになりました。 すっかり仲良くなった二人は、お互い意識し合ってなかなか打ち解けない兄と姉をくっつけようと画策して、わざと二人きりにして、覗き見するなんてことまでしていました。

けれど、そんな楽しい日々も束の間でした。 デロスの密偵が王子たちを見つけてしまったのです。 ただちにデロスはライゲンに兵を差し向けました。 たまたま別の町にいたカール王子とタニア姫は国外に脱出できたのですが、フィーリア姫とロムル王子は人質としてイゼルローンへ連行され、ライゲン公は夫人と共に幽閉の身となってしましました。

カール王子とタニア姫は北の森へ逃れ、そこで、大きくなったり小さくなったりできる不思議な白い鳥と出会いました。 鳥と話のできるタニア姫が願うと、白い鳥は味方になってくれて、森の様々な困難を打ち払ってくれました。 王子たちは北の森を抜け、北海沿岸の都市国家レガに向かいました。

彼らがレガの国につくと、商人たちが彼らに、北海に住む妖魔〈三つ頭の海蛇〉を退治してほしいと申し出ました。 商人たちは船を妖魔に襲われて困っていたのです。 そして彼らは占いで、白い鳥をつれた者たちが妖魔を打ち砕くであろうという予言を得て、その者たちが来るのを待ち焦がれていました。 カール王子はもし退治できたら、自分たちの味方になってくれるよう商人たちに約束させて、海へ出ました。 しかし、人間に妖魔を退治することなどできるのでしょうか?

白い鳥は竜の島に住む青竜に助けを求めた方がよいと助言し、自分が使者となって飛び立ちました。 青竜は白い鳥の願いを聞きましたが、助けるには彼らの勇気と努力が必要だと説き、彼らに試練を課すことにしました。 青竜の試練とは、妖魔の住む岩礁の中にある、赤い真珠を採ってくることでした。 カール王子は船を岩礁の近くに寄せ、おとりになって妖魔をおびき出し、その隙に白い鳥に乗ったタニア姫が海鳥たちの助けを借りて、赤い真珠を取り出しました。 船乗りたちを危険に巻き込みたくないと考えていた王子は、船乗りたちを小船で逃がし、たった一人船に残って妖魔を引き付け、闘いました。 けれど人間には妖魔を倒す力はありません。 妖魔に襲われ、危ないところを青竜に助けられました。 青竜は王子の勇気を認めたのです。 そして、タニア姫が渡した赤い真珠を飲み込むと、真っ赤な炎を吐いて、妖魔を退治してくれました。 カール王子は勇気のあかしとして、竜から〈竜の涙〉と呼ばれる美しい宝石をもらい、レガの国に戻りました。 商人たちは大喜びで、王子に協力することになりました。 レガの商人だけでなく、北海沿岸のデンフォアレガ諸国全部の商人たちにも、王子は英雄として受け入れられることになったのです。

夢食いの木

次回はこの続きです。