作者にも言わせて!!

―― 第5回 ――

学校と結婚

前回、庶民の生活について書くと予告しましたが、実はそれほど細かく設定してはいないのです。 以前書いたように、政治、経済の部分はあいまいなままですし……。 とりあえず、今回は学校のことと結婚のことを中心に書きます。

ティアーナさんは、バイオンの東、12リールほどの所にあるフリルド村で生まれ育ちました。 フリルド村は割と大きな農村で、自作の人もいれば小作の人もいます。 ティアーナさんのお父さんのようによそからやって来て、小作として働き、一生懸命お金を貯めてわずかな土地を買い、小規模な自作になる人もたまにいます。 逆に村を出て、町で職人になったり、商売を始めたりする人もいます。 職業の貴賎や身分の差は、支配階級を除けばあまりありません。

村は本村と奥村に分かれていて、ティアーナさんの住んでいる所は奥村の方になります。 神殿や学校は本村の方にあります。 学校では、マスターが奥さんと交代で生徒の面倒を見ており、他に病人の世話もしています。 学校は初等科のみで、期間は6年です。 大体5,6才で入学しますが、卒業するのに6年以上かかったり、途中で辞めて仕事に就く子供もいます。 義務ではないので、その辺はいい加減ですが、就学率は高いです。 学費は収入に応じて決められます。

ティアーナさんはシスターになりたいという希望を持っていて、幸い成績も良かったので、先生の推薦を受けて、バイオンの町の学校の中等科に入学しました。 中等科は4年です。 ティアーナさんちは裕福ではありませんが、学費援助の制度があり、またバイオンに知り合いがいて、面倒をみてもらえたので、何とか通えたようです。 バイオンの町は職人の町ですが、流通も盛んで、人々の生活は比較的恵まれています。 職人の子供でも、家の手伝いをしながら中等科まで通う子も多くいます。 中等科を卒業すると、ほとんどの子供は仕事に就きます。 高等科に進む者は、王侯貴族とその家士、ギルドの元締めをやっているような町の名士の子弟、それにマスターになろうとする者だけです。 マスター候補生の選抜はとても厳しく、学力だけでなく、適性なども審査されます。 一方、祭司、シスターを目指す者は修道院に入りますが、こちらの選抜も厳しいものです。 ティアーナさんも審査で落とされて、村に帰りました。

高等科は4年で、バイオン大学と西ユーレシアの都オーセルの分校にしかありません。 マスター候補生には特に専門課程が課せられ、更に選抜されて修習科に進みます。 修習科はバイオン大学のみで、3年間ですが、実際にはマスターの試験に合格するまで何年もかかる人がほとんどです。

学校の話はこのくらいにして、若者たちの次のイベントは結婚ですね。 皆大体、10代後半から20代前半の間に結婚します。 人々の移動が自由な分、恋愛の機会も多く、庶民は恋愛結婚が多いです。 身分が上の方の人ほど、自由じゃないです。 ティアーナさんの場合、ギディアスくんとは町の学校で知り合い、卒業して何年か後に町で偶然に再会し、恋愛に発展、結婚に至るというパターンです。

庶民の結婚式は、この『賢者の結婚』に書かれているような古式ゆかしい式ではありません。 あれはごく限られた人だけがするものなのです。 どこまで形式にこだわるかは人によって違いますが、大体、夜の式はやらずに、ルディア神殿の参拝も昼間にしてしまいます。 式の日取りも満月にこだわらず、占いで縁起の良い日を選んで決めます。 格式張った家がわざわざ満月の日を選んで、ルディア神殿での式を夜に行なうこともありますが、その場合でも内陣には入りません。 白い衣を着るのと籠所にこもるのは、内陣で行なう式だけの習わしです。 礼拝堂での式は、花嫁さんを華やかな衣装と花で飾り、親族や関係者も一緒に礼拝堂に入って、誓約に立ち会います。 神殿前の広場に楽隊が来て音楽を演奏したり、花嫁花婿の行列に人々が騒いでいたりして、とても賑やかなものです。 ティアーナさんが言ってた普通の式とはそういうものです。

子供の数は2,3人、多くても4,5人です。 子供ができないと、養子をもらったり、場合によっては離婚ということもあるようです。 離婚する場合は間に人を立てて、一定のルールに従って手続きします。 結婚後の女性の苦労はこの世界も変わりません。

人の寿命は大体5,60年といったところです。 ギディアスくんのように若くして亡くなる人も結構います。 ティアーナさんのように、夫と別れて(死別でも離婚でも)夫の家を出た女性は、実家に身を寄せるか一人で働くかです。 ティアーナさんは一人っ子だったから実家に戻りやすく、恵まれてましたね。 働く場合は大きな家の女中さんになることが多いです。 自分で商売を始める人も中にはいますが……。 大学の下働きの女性もそういう人が多いです。

今のところ、考えている設定はこんなもんです。 でももし、この先続きのお話を書くとしたら、この設定が都合よく変わっていくことは多いにありえます……。

Marriage of Magus Julius

次回は『気について』書いてみようかなと思っています。