作者にも言わせて!!

―― 第1回 ――

かりそめの世界=借りものの世界

私が物語を書こうと思ったのは、一昨年の10月頃でした。それまで3年ほど続いた、精神的な不安定状態からようやく抜け出し、新たな道を歩み始めた時、ちょっとしたきっかけがあって、私の心の中に物語が生まれました。それで、自分の心の整理も兼ねて、ちゃんと形にしてみようと思い、書き始めたのでした。それが『東の森の賢者』の物語です。

さてお話を実際に形にするには、ストーリー以外にいろいろと用意するものがあります。物語というかりそめの世界を形作るもの、その土地の風土、人々の生活、衣食住から政治、経済、歴史、宗教に科学etc……。特にファンタジーというのは、ストーリーに沿って自由にあれこれ設定できる利点はありますが、その代わり、何から何まで自分で設定しなければなりません。この設定の作業はなかなかに面倒なものです。私は「物語を書こう!!」という意欲のあるうちに書き進めたかったので、この面倒な作業を大幅に省いてしまいました。

幸いなことに、『賢者の結婚』は賢者ユリウスの様々なエピソードの中では、プライベートな出来事なので、登場人物を最小限にし、政治経済などの設定も省くことができました。後はもうなりふり構わず、私の持てる知識を総動員して、あっちこっちから必要なものを借りてきて、なんとか体裁を整えました。風景は中世ヨーロッパを基調にして、キリスト教的なものを除き(でも人々の名前はキリスト教関係を平気で使っている)、気候はもうちょっと温暖にして、日本の長野くらいがいいなぁとか、科学は中国的なものを取り入れて、魔法の種は今習っている気功を下敷きにして、人々の様子はあの漫画とこの漫画を参考にして、あの部分はあの小説を採り入れて、このアニメからこの部分を借りちゃおう、などなど。地名なんて地図で適当に探して、一文字変えて使ったり(変えてないのもあったりして)。まあ、そんなこんなで、借りものの世界が出来上がったわけです。つぎはぎの借りものの世界はよくよく見ると珍妙だし、ちょっと節操がなかったなと今更反省していますが、動き出してしまったものはもう止まりません。後の祭りです……。

一つ言い訳させてもらうと、私が借りた世界のその出自は、全て私の大好きなものです。好きだからこそ、借りたかった、この気持ちはわかって下さい。

そして、動き出した世界はとにもかくにも『東の森の賢者』の物語の世界として独り立ちしたのです。オリジナリティのない世界がどうやってオリジナリティを獲得していくのか、それは作者の腕の見せ所なのでしょうが……嗚呼!!(長嘆息)(~_~;)

Julius Al-Kult