きんとさんのお気楽ゴクラクのーと

K.水谷


緑陰の町


7月 10日 (土) 今年は空梅雨〜

家で仕事をしているもので、週に一、二度の外出時以外はほとんど外へ出ない。買い物も歩いて3分程の所にスーパーがあるし、それじゃ歩いたことにならない。ので、たまに付近を散歩する。歩いて十分ほどの所に公団の大規模団地があり、その周辺に公園や緑地帯もあるので散歩にはうってつけだ。
この公団の団地は昭和30年代に造られた古いもので、4階建ての低層住宅と2階建てのテラスハウス(今風に言うと?)からなっている。建ってから40年以上経っているので、周囲に植えられた木々も大きく育ち、植栽も立派で、団地は緑に埋もれている。無機質なコンクリートの建物もそれだけの年を経ると、趣のある外観に見えるから不思議だ。車の多い表通りから一歩団地内に入るとホッとした気持ちになる。
そんなワタクシ的オアシスの団地も老朽化ということで建て替えが進んでいる。団地の建て替えはお金がかかるので、新しい建物は高層住宅になっている。新しい住人を入れてお金を補充するわけだ。しかし、まだ立ち退きが済んでない地区は古い建物が残っていて、ごちゃ混ぜの状態である。新しい地区は建物もきれいだし、まわりもきれいに整備されている。だが町並みを見ていると何かが足りない気がする。そう、緑が足りないのだ。新しく植えた木はまだまだ貧弱、前からある木も残してあるけれど、高い建物が木々を圧倒している。
圧倒的に緑の方が多い旧団地の地区から新団地地区に入ると、気分的にげんなりする。人工的な町並みに癒しはない。道路を挟んで新旧の建物が並んでいる地区に来ると、はっきりわかる。緑に埋もれた旧地区の側を歩きたくなるのだ。植物の緑というものは本当に癒し効果があるのだと実感する。見た目だけでなく、夏の暑い時は温度も二、三度違うという。木陰の涼しさはクーラーとは違って優しくて心地よい。
おそらくこの旧団地も建った当初は無機質で人工的な町だったのだろう。それでもたっぷりと取った緑地帯と並木のおかけで、こんな素敵な緑陰の町に育った。新しい団地も年を経ればそれなりに落ち着いて良い町並みになるのかもしれない。でもここまで緑に囲まれた環境にはもうならないだろう。
今はもう失われようとしている緑したたる団地の中を歩きながら、人間にとって本当に大事なものはなにか、なんてことを思わず考えてしまう。私の散歩もやがて寂しいものになってしまうのだろう。


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