きんとさんのお気楽ゴクラクのーと

K.水谷


アメリカンドリームの終焉


11月30日(土) 薄日、暖かい

「戦争中毒」というアメリカ製のマンガを読んだ。
マンガというにはト書きが多くて絵解き本といった方がいいかもしれない。
しかも訳本なのでちょっと読みにくいけど、なぜアメリカが戦争をやめられないか、ということについて事細かに説明してあって、興味深い。

最近は田中宇の国際ニュース解説なども読むようになって、通り一遍のTVや新聞の報道では絶対に出てこない世界情勢の裏事情(ちょっと穿った見方とも言えるけど)を知れば知るほど、アメリカという国がやってきたこと、やろうとしていることの愚かしさを痛感する。
9.11のテロ事件はアメリカがわざと起こさせた、まではいかなくても、事前に情報はあったのに防げなかった、ということは規制された報道の端々から出てきている話だが、アメリカが戦争をし続けるために見逃した、という陰謀説が流れてもおかしくないほどのことはしているようだ。
第一次、第二次大戦、日本との戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中米の軍事介入、アフリカ内戦、中東戦争、イランイラク戦争、湾岸戦争、ユーゴ紛争、アフガニスタン内戦…。
直接的にしろ間接的にしろ、20世紀に起こった戦争や紛争のほぼ全てにアメリカは介入している。
「戦争中毒」によれば、アメリカは建国の頃から、領土拡大と自国の利権のために軍事力を行使し続けてきたが、それによって軍需産業が拡大、戦争をすればするほどアメリカを支える資本企業が儲かる、という構図ができあがっていった。
しかし、戦争をするには大義名分が必要だ。
そこで、アメリカ流の自由主義、民主主義、資本主義を美化し、正しさを強調し、そうでない国は悪と決めつけることで、正義対悪の大義名分を作り上げた。
敵は最初はドイツや日本のファシズム勢力、そして次には共産主義勢力、ソ連崩壊で東西冷戦構造が崩れた後はイスラム勢力と変わっていったが、まず敵を探し出し、アメリカの流儀と違う国または勢力は敵あるいは敵になりうると判断し、相手に難癖をつけて反発したところを戦争に持ち込む、という手法は変わらない。

アメリカの自由主義、民主主義は日本にとって素晴らしいアメリカンドリームの象徴だった。
だが今にして思えば、アメリカの自由と繁栄はそのたくさんの戦争や紛争の犠牲の上に成り立ったものだ。
アメリカの富のために貧困に陥った国はいくつあるかしれない。
民主主義ですら、一見国民全ての民意が汲まれるようなシステムのように見えて、実は多数決の原理が勝ち組と負け組を作り出し、結局力のある者お金のある者の意見が支配していくという権力構造になってしまっているのだ。
戦争はそれに関わる企業に巨額の富を生み出すが、その富の出所は今やアメリカ国民の税金である、と「戦争中毒」は断言している。
つまりアメリカ国民は勝ち組の従順な奴隷(は言い過ぎか。搾取されている者ですね)か負け組にすぎないと。
アメリカの国費は47%が軍事費に費やされ、そのしわ寄せは教育福祉費やインフラ整備費に来て、充分な医療教育が受けられない人が増え、ホームレスも増大、橋や道路や上下水道はボロボロなのだそうだ。
「戦争中毒」でそういう話を読んで、幸福で裕福な夢の国アメリカは今や幻想に過ぎないのだなあ、とつくづく思った。
日本はその幻想に踊らされ、勝ち組のおこぼれに預かろうとしっぽを振っているだけなのだとつくづく思った。

アメリカの流儀がいつも正しいとは限らない。
内戦に顔を突っ込んで、アメリカの正義のもとに民主主義国家を造ったものの、うまく行ってない国も多い。
どこの国でも民主主義というシステムがその国の国民にとって最適とは限らないのだ。
それなのに戦争で荒れ果て充分な資産もない国に、その国の伝統もやり方も無視した理想的な民主主義国家を造れといい、後はほったらかしなのだから、傍若無人である。
特にイスラムの国々では、西欧流のやり方が通じない部分もあるし、彼らが自分たちの伝統を重んじるということもあって、アメリカの流儀押しつけは非常に嫌がられる。
自由主義、民主主義は国民一人一人が自由に生きていくこと、国民一人一人が国を作っていくという理想があるけれど、それを遂行するには条件があり、その条件を満たしてなければ落とし穴にはまってしまうということを忘れてはならないと思う。
その条件が満たされないならば、無理をして自由民主主義を導入しなくても、その国のやり方でまず国を立て直すことから始めればよいのだ。
しかしアメリカも本当の正義のためなら、その国の利益になるような援助をするべきなのに、それをしないのはやはりアメリカの利益のためだけに戦争をしているだけなのだろう。
そういうところにも、幻滅し嫌悪感すら感じてしまうのだ。

アメリカが戦争をやめられないのは、日本が公共事業をやめられないのと似ている。
税金をつぎ込み利益を生み出す事業に、官も民もへばりついてその蜜を吸い離れられなくなっているのだ。
日本がそのどうしようもない利権構造をなかなかやめられないのだから、アメリカもやっぱりそうなんだろうなと思う。
しかも日本はまだよそ様に迷惑をかけてないが(ODAなんかではちょっと迷惑かけているかな)、アメリカは迷惑かけまくりなんだから始末に負えない。
目下の敵イスラム勢力も、敵対行為をしていたらアメリカの思うつぼなんだからほっときゃいいのに、と思うのだけど、そうしないのは、アメリカとなにか協定でもできているのか? と穿った見方さえしてしまう。
つまり、お互い戦争で儲けましょう! みたいなね。
結局、儲けるのは一握りの人たち、犠牲になるのは国民、というわけだ。
早くアメリカ国民はこの悪習慣、悪循環の連鎖に気づいて断ち切ってほしい。
アメリカ国内だけでなく、地球上の国がアメリカの軍事力でめちゃくちゃになってしまう前に。
もう夢は終わったのだ。
それでもまだ夢を見続けようとしている人たちに、早く引導を渡さなければ(バブルの残夢を見続けている日本の企業にもね)。
「戦争中毒」についてはこちらに詳しい説明があります。
amazonbk1でも買えます。


戻る Copyright(c) 2002 K.Mizutani.All rights reserved. メール