きんとさんのお気楽ゴクラクのーと

K.水谷


著作権の功罪


8月24日(土) 秋近し

ちょっと長くなりそうなので掲示板じゃなくてこっちにした。
少し前に新聞に図書館と著作権の問題について載っていたのを興味深く読んだので、そのことについてだ。
その記事によると、文化庁の文化審議会で図書館等における著作物等の利用に関する会議が行われたのだが、その会議で図書館は貸本業と化している、という話題が出たのだそうだ。
つまり例えば「ハリー・ポッター」のような人気のある本を数十冊も購入し市民に貸し出しているのは、公共の図書館の目的を越えている→ただの貸本屋ではないのか→そこまでいくと著作権保護の問題にも触れるのではないか、という話であった。

私はあまり図書館を利用しないので、一つの著作を何十冊も購入しているという事態は全然知らなかったのだが、確かに「ハリー・ポッター」なら何十冊あってもずっと貸し出し中になってしまうに違いない。
図書館とすれば、それも市民サービスなので足りなければ何十冊だろうと購入して市民の要望に答えるのだろうが、著作の権利者側から見れば、それだけタダ読みしている人が増えていることに迷惑を感じるに違いない。
ちゃんと買って読んでよ!って思うよね。
でもそれじゃ、貸し出しするたびに著作権料をとったり開架で閲覧する時にも著作権料を取らなきゃならなくなる。
もっと極端に言えば、本屋で立ち読みすると著作権法に引っかかるのか、とか一人が買って回し読みするのも違法になるのか、なんて細かい問題も出てくるの思うのですよ。
でもちょっとそれは行き過ぎだよね〜。

音楽の著作権の問題なんかはかなり細かいことまで規定されていて、それから比べればまだ出版関係の著作問題はゆるい方だけど、それは音楽ほど細かくできないということもある。
それは著作というジャンルが芸術よりも学術の方に入ることが多いからではないか。
芸術ならばその創作物は純粋に作り出した人に属するものと言えるけど、学術はそうではない。
知識は広く世代を越えて蓄積されるものであって、その蓄積された知識をもとに書かれるものは厳密にその人個人の創造物とは言えない。
つまり著作物そのものにある程度公共性があると言えるのだ。
だから厳密に著作権を限ることはできないし、それをやってしまうと人類の知識の蓄積の妨げになる可能性もある。
だって、論文書く時には持論を展開するために必ず他の論文を参照したり引用するけど、そのためにいちいち著者に確認取ったりお金払ったりしないもんね。
あ、本として出す時は確認とるのかな、それはちょっと経験がないからわからないけど。
けれど古来から資料としての著作物は常に複写され(今はコピーだけど昔は書き写しだった)、多くの人に閲覧されるものだ。
そうやってその著作物が広まることで、知識も広まってきたのだから、著者の権利なんて小さいことは言ってられない部分もある。

知的財産という考え方はまだ新しくて、自分の発信した新しい知識や創造が広がっていく過程でどこまで自分の財産として認められるか、まだ明確な定義がされていない。
絵画なら自分の手を離れた時点で作者の権利は及ばなくなる。
音楽なら二次三次媒体による使用にも作者の権利が及ぶようになった。
著作はどう考えたらよいのだろう。
今までどおり一次媒体にのみ権利を付加すれば後はよしとするか、それともその先にも権利が及ぶようにするのか。
あんまり細かくやっちゃうとよくないんじゃないか、と私は思うけどね。
知識は広がってこそ、蓄積し発展するものだからな。
財産として囲い込んじゃうと、やっぱり広がりにくくなるものね。
それは学術的な著作だけでなく、普通の娯楽的な本にも言えると思うのですよ。
だって、金払って読め!というのなら、金のないヤツは読めなくなる。
もしお金がなくて図書館で「ハリー・ポッター」を借りて読んで、感化された素晴らしい才能の持ち主が更によい本を書いたら、その方が人間の文化発展のために良いと思うでしょう。
著作文化の世界にはそういう広がりだって必要だと思うわけですよ。

江戸時代の庶民文化の発展の中には、庶民も字が読め、次々と出版される娯楽本を貸本で読んでいたという事実がある。
日本の漫画の発展も初期の貸本によるところが大きい。
本が売れないという昨今の出版業界の悩みには同情するけれど、それで貸本業者を圧迫したり著作権を強化するのはやめてほしいと思う。
もっと別の方向で著作者を保護できればいいと思う。
どういう方法がよいのかはわからないけど。
著作者も図書館が何十冊も購入して何百人の人に貸してても、目くじらたてないでほしいな〜。
それはむしろ誇るべきことでしょう。
ま、私なんかは、自分の著作をタダで公開してるから、たっくさんの人に見てもらった方がむしろ嬉しいんですがね。
タダだからといって、みんなに読んでもらえるわけじゃないのです。
そりゃ、売れるほどいい作品書かなきゃダメってことなんですけどね。。。


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