きんとさんのお気楽ゴクラクのーと

K.水谷


これが日本の生きる道


4月19日(金) 藤香る4月?

bbs雑記帳の方に有事法制について書いた。
政治家さんたちも戦後世代になり、戦争を甘く見ている人たちが多くなったということなのかなあ。
野中さんはタカ派が多い自民党の中でも、戦争絶対反対のハト派で、それはやっぱり辛い戦争体験があるからなのだそうだ。
普段はあまり好きじゃない野中さんでも自衛隊問題に関しては「野中がんばれ!」と応援していたが、最近はめっきり発言力がなくなって、今回の有事法制も野中さんの圧力がなくなったから立案されてしまった。
アメリカに頼らず、自ら軍事を持たず、日本が平和に生きていける方法って本当にないんだろうか。
と考えて、以前ここで提案した国際災害救助隊について、ちょっとフィクションしてみました。

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「おおい、浅野〜、左腕にする雪が足らないんだ。こっちに集めといてくれよ!」
世代を超えて男の子たちに愛され続けている機動戦士ガンダムの巨大な雪像の肩の上で、佐藤が大声でわめいた。
僕はブルドーザーのエンジンをかけ、そいつをコロがして雪をかき寄せ始めた。
日本国立国際災害救助隊の札幌研修センターでの2年の研修もこの3月で修了する。
雪祭りの雪像造りは研修生の修了制作としてすっかり定着していた。
力仕事なんて少しもしたことのなかった僕たちも、これくらいの共同作業なら問題なくこなせるようになった。
ブルやユンポの操縦だって、2年前には考えもしなかったことだ。
今はこうして技術を身につけ、災害救助に対する心構えも学んで、それが人の役に立つと知って、自分の中に筋が一本通ったような、なんつうか精神的支柱みたいなものができた気がする。

5年前、自衛隊を母体とする国際災害救助隊設立に関する法案が国民投票で可決し、日本初の女性首相の下で実施されることになった時は、そりゃ国内はもちろんのこと世界中でもすったもんだの大騒動になったものだ。
けれど暗澹たる国際情勢の中で、これが日本の生きる道だと誰もが自覚した結果のこの成り行きに反対勢力は口をつぐむしかなかった。
サッカーの試合で言えば、敵対するチームに審判の笛を吹くのが国連だとすると、我が日本は担架を持って駆けつける救護員の役割になってしまったのだ。
救護員だから誰も攻撃は仕掛けられない。
ちゃちな軍事を持つよりはこの方がずっと安全だ、なんてちょっと強引な論理に防衛論者たちはねじ伏せられてしまった。
しかも2年間の研修義務を国民が持つことで、愛国心がどうの、国民の気概がどうのと精神論を説く右翼的な政治家たちまでも取り込んでしまったのだ。
一番反対したのはアメリカだったが、国際世論の圧倒的な賛成の前に身を引くしかなかった。
やれるもんならやってみな、みたいな半ば投げやりな態度でアメリカはこの救助隊を認めたんだけど、実際、活動が始まると国内の災害はもとより、世界各地で派遣の要請があり、結構重宝がられているのだ。
賛成した国々でさえ、日本がここまで救助活動できるとは思っていなかったので、驚いているみたいだ。
無論、日本だっていきなりそんな活動に入ったのではない。
今から10年前、今後のことを予想して実験的に自衛隊の中に災害救助隊の母体を作り、実際に活動しながらそのノウハウを蓄積してきた。
それが今僕たちの研修と実際の活動に生きているのだ。

研修は18歳から22歳の間にセンターに入所して、それから2年間をそこで過ごす。
学業との兼ね合いもあるから、いつ入所するかは個人の選択に任されている。
5年前に22歳以上だった人は、任意で研修を半年か1年間受けられる。
研修費と衣食住の面倒は税金で見てくれるけど、給料は出ない。
それでも、志願して研修を受ける社会人はたくさんいるんだ。
それくらい国民の間には関心が高いってことだ。
でも研修と訓練は結構厳しい。
軍隊までは行かなくても、警察とか消防の訓練と同じだ。
規則正しい生活、体力作りから始まって災害についての勉強、基本的な救助作業のノウハウ、法律の勉強、救命救急法、災害時のサバイバルのノウハウ、作業に必要な技術…。
もちろん研修だけでなく、実地訓練を兼ねた労働奉仕も常にプログラムに盛り込まれている。
1年目は基礎体力作りと勉強がメインだったから本当に大変だった。
2年目は専科に分かれてさらに技術的なことを学ぶ。
大型機械の免許を取ったのもその時だ。
実地訓練も多くなり、災害が起これば実際に救助にも向かう。
海外派遣はほとんど専門の救助官が行くけど、地震救助など大がかりなものは研修生も派遣されることがある。
僕の時は2年目の夏に秋田で大雨災害が起こり、初めて救助隊として実際に出動した。
土砂崩れの復旧作業で、いつまた崩れてくるかわからない崖の側で、泥だらけになりながら作業して、怖かったし大変だったけど、地元の人がとても感謝してくれてすごく嬉しかった。
今まで人に感謝されたことなんてなかったから、役に立つことをするって気持ちのいいもんだなってホントよくわかったんだ。

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こんなプロットでいかがでやんしょ。
時間が来たので今日はここまで。
続きは…、あるのかなあ…。


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