きんとさんのお気楽ゴクラクのーと

K.水谷


陰陽互根


10月 13日(土) 晴れ

今週からまたバイトが入り、パソコンを触る時間がなかなかとれない。
テロ事件とアフガン関連で「のーと」に書きたいなと思うことはいろいろあるけれど、いろいろありすぎてまとまらず、空しく頭の中を通り過ぎていくだけだ。
それにしても、アフガンが新たな戦火に見舞われると聞いて、胃が痛くなるようなショックを受けたが、今はもう立ち直っている。
結局、あんたにとっては他人事、その程度の痛手でしかないのだ、と言われちゃったらその通りなんだけど、当事者じゃないのは確かだし、当事者でもないのにいつまでもショックでオタオタしているのも困ったちゃんだしね。
本当に空爆は始まってしまったけど、今は冷静に受け止めて、私にできることはなんだろうか、ということだけを考えている。
とにかく寄付するにしても、何か行動するにしても、先立つものがいる。
つうわけで、今はバイトに精出すしかないのだ。

こないだ、気功の先生から興味深い言葉を習った。
「陰陽互根」
中国の陰陽思想における概念の一つだ。
陰陽思想は中国の自然科学、社会科学、人文科学等あらゆる学問において基本となる考え方なのだが、要するに一つのものの見方なのだ。
陰と陽の対立する要素を基本に据えるところは西洋にもある二元論的な考え方だが、単に相対的なものの捉え方をしているだけで、ある要素が一方から見ると陰なのに他方から見ると陽であったり、陽であったものが陰に変化したりとその対立は不変なものではない。
まして、どちらが良くてどちらが悪いという考え方もしない。
その辺が西洋の二元論とは異なるところだろう。
一つのものが二つの要素で成り立っていると考えるから、どちらも互いに欠くことはできない。
つまり陰の要素は陽の要素の根拠となり、陽の要素は陰の根拠となっている。
互いが互いの存在の根本原因になっているというのが「陰陽互根」の意味だ。
陰がなければ陽はない、陽がなければ陰もない、と書くと単純で当たり前のように見えるが、実生活でそれを認識するのは意外と難しかったりする。
だってさ、人間って結構自分本位で生きてるからねー。
自分を対立する二つの要素のどちらか一つに置いて他方を見たとき、その相手が自分を(あるいは自分の立場を)存在たらしめているなんて考えないもんね。
でも中国人の先生は、日本人は欧米人よりもこのことをよく理解できている、と言った。
そして、その例として日本の労使は対立関係にありながら仲良くしている、ということを挙げた。
いかにも、もと社会主義の中国の人らしい例の挙げ方だが、要するに労働者側も使用者側も、お互い相手がいなければ自分が存在し得ないことをわかっているから、歩み寄れるのだということを言っていたのだ。
日本には「陰陽互根」なんて言葉はないけれど、「和を持って尊しとなす」という言葉はあるし、自分と他者の両方を生かす知恵みたいのはあるのかもしれない。

そこへいくと西洋(イスラム世界も含めて)の二元論はいつの間にか善悪と結びついてしまって、どっちが良くてどっちが悪い、対立は絶対的なもので対立を解消するためには戦いしかなく、もちろん良い方が正義、自分は正義のために戦っていずれ正義が勝利する、みたいな図式になっている。
けれど何が良くて何が悪いかなんてのは立場や見方が変われば変わってくるものだし、悪に対する正義というのも自分を正当化する方便にさえ使われる危うい考え方だ。
現にテロ事件におけるアメリカもテロを起こしたとされるイスラム原理主義者も、双方自分が正義、相手は悪と主張している。
このままだと対立は激化し、互いに相手が滅びるまで戦い続けるなんてことになりかねない。
もちろん、アメリカ対テロリストではアメリカが滅びるなんてことはないかもしれないが、アメリカがウサマ・ビンラディンとタリバーンを壊滅してもテロはなくならない。
アメリカ自身がテロリストを存在たらしめている根拠を持っているからだ。
アメリカも早くそのことに気づくべきだ。
対立する相手の存在には必ず自分の存在に原因がある。
その原因を取り除くこともせずに、延々と戦い続けるつもりなのだろうか。
相手が滅びたら自分の存在価値もなくなってしまうのも知らずに。
いや、知っていて無視しているのかもね。
アメリカが常に仮想敵国を必要としているのも、この辺に根本原因があるのかもしれないな。
だからソ連や中国、イラクやイスラム諸国、そしてテロリストと次々と仮想敵国を作り、戦い続けてきたのかもね。
強いアメリカを存在たらしめるには常に仮想敵国が必要だから。
もういい加減にしたら、と言いたい。
だって、周りの者がいい迷惑だもの。

歴史の中で差別と抑圧が対立を生み、戦いへと発展していった。
しかし対立関係にあっても相手を抑圧しなければ、互いに共存できる。
そうやって平和に過ごしてきた歴史も確かにあるのだ。
いまこそ東洋の調和の知恵を生かしてほしい。
もちろん、日本にだって和を尊ぶ知恵があるのだもの。
今こそその知恵を生かすときじゃないか!
アメリカにしっぽを振っている場合ではないぞ、小泉クン、政府、マスコミ、みんな!


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