きんとさんのお気楽ゴクラク日記

K.水谷


人垣の長城
(内蒙古植林記・その6)


6月14日(水) 雨、よく降るな〜

5月5,6日(金,土)−寝台列車で一晩過ごし、朝になるともう河北省の豊かな農村地帯を走っていた。
内モンゴルではまだ新緑だったが、北京に近づくにつれ緑が濃くなり、春真っ盛りで一ヶ月ぐらい季節が違う感じだ。
だが周りの山々は木が少ない。
全くの禿げ山もあって、日本に比べればここもまだまだ乾燥している。
人為的な森林破壊はこの辺りの方が顕著で、万里の長城の裏山では緑化事業が盛んに行われ、日本のボランティア団体も幾つか入っている。
地球緑化センターも去年まで参加していたそうだ。

八達嶺(万里の長城)の近くの駅で降り、バスに乗って、緑化事業センターで朝食をとる。
おかゆが出たのがありがたい。
お陰でしっかり朝食をとることができた。
それから八達嶺を見学したが、ものすごーく人が多かった。
中国もゴールデンウィーク中で観光客が押し寄せてきているのだ。
それも半端な数じゃない。
長城は山々を縫うように走り、入り口から階段を上って城壁の上に出るのだが、その幅3,4m位のレンガの城壁の上が、遙か彼方までぴっちりと人で埋め尽くされている。
少しすいてる方へ登ったが、それでも大渋滞の上押し合いへし合いしてて、急な階段の所は将棋倒しになりそうで恐かった。
少し上まで登って見渡すと、長城の眺めだけでも壮観だが、人垣の長城もまたものすごーく壮観だ。
さすがは中国と言いたいところだが、長城にこんなに人が集まったのは、明の時代に作られて以降初めてのことなんじゃないかしら。
戦争の時だって、城壁の上にはこんなに人は集まらないと思うわ。
それにしても、10年前はこんなに観光旅行する人なんていなかったから、中国は本当に変わった。
目に見えて豊かになり、人々の生活も変わったのだ。

途中の大きなドライブインみたいな所で昼食を取り、おみやげを買って、北京に入った。
天安門広場の周りの建物には赤い旗がたくさん掲げられていた。
それを見て、やっと中国が社会主義の国だということを思い出した。
昔はどこの街角にも掲げられていた共産主義のスローガンはすっかり姿を消し、都市部では高層ビルがそびえ立ち、資本主義の国と変わらないほど物があふれ、便利になっている。
北京の高級デパートに行けば、お金次第でいくらでも高価な物、外国の物が買える。
資本主義の良いところを採り入れて豊かになるのは結構なことだけど、それに伴う悪い部分は真似してほしくないなぁと切実に思う。

北京の立派なホテルに泊まり、翌日帰国の途についた。
8日間は終わってみればあっという間だ。
大変なこともあったけど、ホントに楽しいツアーだった。
ツアーの仲間は皆、愉快でしかも真面目な人ばかりだった。
みんな本当に真面目に植林のことを考えていて、しかもボランティアするということがどういうことかよくわかっている人達だった。
植林ボランティアといっても、実際私たちのやることは植林事業のほんの一部分にしか過ぎない。
「植える」というおいしい所だけやらせてもらったに過ぎず、その後のケアは地元の人々の多大な努力を必要とするのだ。
それを考えたら「植えてあげた」という意識はとても持てないし、もしそんな傲慢な気持ちでやってたとしたら、こんな地道な運動は続かない。
「植えさせてもらう」という気持ちで参加すれば、それが自己の満足にもつながり、また来ようという気持ちにもなる。
ツアーの人々も皆、自分の働きを謙虚にとらえ、充分に満足し、しかも継続していこうという意欲の高い人たちで、だからこそ、楽しく意義のあるツアーになったのだ。

ボランティアというとなんか重いものを感じてしまいがちだが、「やらせてもらう」という意識を持てば、もっと身軽に経験できるんじゃないかしら。
それに一人だと辛いこともあるけれど、仲間がいれば助け合いながら、学び合いながら、楽しくできる。
仲間の存在は自分をもっと身軽にしてくれる。
私たちのツアーなんて、実際ボランティアと言うより、みんなでやるレクリエーションと言った方がぴったりくるような活動だった。
それで多少なりとも向こうの役に立ち、私たちも満足できたのだから言うことなしだ。
今後、こういう旅行って増えてくるんじゃないかな。
ただ観光するだけじゃなくて、何かを体験する、仲間を得る、そんな付加価値のついた旅行、こちらの体験を現地が受け入れることで現地も何らかのメリットになる、そんな旅行だ。
一つの目的のもとに人が集まり、仲間になり、一緒に成し遂げる、そんな体験を求めている人は、案外多いような気がする。

5月に入った日本は緑滴る季節になっていた。
向こうでは苦労して植えてあげなければならない草木が、日本ではうんざりするほど生えている。
大気は水を含んだスポンジのように潤っている。
なんという違いだろう。
今更ながら日本の自然に感謝してしまう。
そういう気持ちが持てるようになるというメリットも、このツアーにはあるなぁ。。。
いつかまた、自分の植えた松を見に行きたい。
私が行くまで、いや、私が行かなくても、立派に生長しますように。。。

(内蒙古植林記・おしまい)


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