きんとさんのお気楽ゴクラク日記

K.水谷


Live!


11月25日(木) 晴

私の心の奥の奥、一番深い底の所に暗い川が流れている。
心の内側を降りて行き、降りて行き、深い谷底のようなその場所に降りて行き、暗い川のほとりにたたずむ時、私の心は深い静けさと落ち着きを得る。
その場所へ降りていく時は、音楽に頼ることが多いが、その場所に誘ってくれる音楽は数少ない。
その数少ない音楽の中にE.クラプトンの曲が数曲ある。

何故か暖かくて静かで穏やかな彼の曲を初めて知ったのは、テレビドラマの主題歌になっていた「ワンダフル・トゥナイト」を聞いた時だった。
もちろん、「レイラ」とか有名な曲はそれまでも聞いたことがあったけど、クラプトンの曲と意識して聞いてはいなかった。
ちょうど「アンプラグド」がヒットしてた頃で、私もそれからしばらくしてCDを買った。

初めて彼のライブに行った。
あの深い色合いの柔らかなベルベットのようなギターの音を生で聞いたら、鳥肌が立つかしらん、と期待して行ったのだが、悲しいかな武道館の音はやっぱりとてもひどかった。
位置こそ正面だったけど、巨大なすり鉢のてっぺんに近いところで、すり鉢の底の舞台の彼は豆粒ほど。
顔は見えず、眼鏡が光っているだけ。
でもギターを弾く手元が、妙に明るく浮き上がって見えるのが不思議だった。
曲が進むにつれて、PAもうまく調節してくれるようになって、だいぶ聞きやすくなり、おとなしかったお客さんも昔の曲とかに声援を送っていた。
いい歳こいたおっさんが「エリックー!」なんて叫んでるのがおかしかった。
知ってる曲も知らない曲も、暖かみのあるサウンドが肌になじんで心地よかった。

2時間はあっという間。
彼の「サーカス」という曲のとおり「circus left town...」て感じで終わってしまった。
まるで儚い夢のよう。
CDやテープで聞くほうがよほど現実的なんだもの。
長い人間の歴史の中では、音楽はライブで聞くのが当たり前だった時代のほうがよほど長いのに、今はちまたに音楽があふれている代わりに、ライブで聞く音楽がとても貴重になってしまった。
そりゃ、遠い国に住む彼の音楽をライブで聞こうというのだから、金も手間ひまもかかるのは仕方ないけど。
夫は、どーせなら全曲アンプラグドで聞きたかったと言っていた。
それなら私はせいぜい200人くらいのライブハウスで聞きたいな。
ライブハウスでクラプトンのアンプラグド。
もんのすごく贅沢だね。
10万円ぐらい取られるかしらん...


戻る (C) Copyright 1999 K.Mizutani.All rights reserved. メール