きんとさんのお気楽ゴクラク日記

K.水谷


嫉妬


10月17日(土) 今日も雨

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さっきの電話…。 あれ、何だったのだろうか。 女の声で「シンジさんいますか?」 あの声、きっとあの女だ。 夫と逢っているあの女…。 そう、私は知っている。 夫が他の女と逢っていることを。 でも私は彼にそのことを問いただしてはいない。 黙っている。 何食わぬ顔をして…。 夫は私が知っていることを知っているのだろうか? 彼もまた、何食わぬ顔をして黙っているだけだ。 「シンジさんいますか?」 今日は会社は休みで、夫は家にいる。 昨夜、帰宅するのが遅かったのでまだ寝ている。 あの女のために彼を起こしに行くのはしゃくだったので、「出かけておりますが?」と答えた。 戸惑うような沈黙の後、「では結構です」とだけ言って、電話は切れた。 落ち着いた冷静な静かな声だった。 付き合っている男の家に電話をかけ、男の妻が出ているというのに、あの静かな声…。 それだけで、どんな女か想像できた。 あんな女を彼は好むのだろうか…。 私はちょっと苛ついて、独り言をつぶやいた。 「それにしても、何だって突然電話なんかかけてきたんだろう。私の声を聞いてみたかったとか?まさかね」 時計を見ると、針は正午を指そうとしていた。 夫の様子を見に寝室へ行った。 ふとんをはだけて、彼は寝ている。 ため息をついて、ベッドに腰をかけ、彼を揺り起こした。 「ねえ、起きて。もうお昼よ」 彼はうーんと伸びをして、眠そうな目で私を見た。 「なに怒ってるの?」 とろっとした声で彼が言う。 私は慌てて「怒ってないわよ、別に」と言い繕った。 あの電話のせいで、そんな顔になっていたのだろうか。 彼はゆっくり起き上がり、「そんな恐い顔しないで。せっかくの気持ちのいい朝がだいなしだよ」とささやくなり、私を抱きしめベッドに押し倒した。 不意打ちは彼の得意技だった。 それを好んでしているようなところがあった。 もっとも、最近はご無沙汰だったけど。 「ちょっとぉ、もうお昼なのよぉ」 とりあえずの私の抵抗を無視して、彼は私の服を引き剥がした。 レースのカーテン越しに差す仄明るい昼間の光の中に、私の裸の体がさらされた。 彼は目を細めて私の体を見ている。 あの女と比べている…。 私は直感した。 私は恥ずかしさで身をくねらせながら横を向いた。 心がうろたえている。 あの女と比べて、私の体はどうなのだろうか。 胸は…、腰は…、まだ子供を産んでいないから、体の線は崩れてないはずだけど…。 彼は羞恥と当惑を素直に表わした私の姿態をまだ見下ろしている。 「何、見てるの?恥ずかしいじゃない」 抗議の声がなぜか甘くなる。 彼は微笑み、自分もパジャマを脱ぎ捨て、私に覆い被さると愛撫を始めた。 「いいじゃないか。見られた方が燃えるだろう?」 誘うようなささやきが耳元をくすぐる。 胸に腰に太股に、そして敏感な部分に伸びる彼の手が、いつもより優しく丁寧な気がする。 まるで何かを確かめているように。 そうだ、確かめているのだ。 あの女との違いを。 体の違い、反応の違いを…。 あの女の静かな声が思い浮かぶ。 あの女はどんな体で、どんな反応で彼を魅了したのだろう…。 嫉妬心が私の秘めた情欲に火を付ける。 いつもより激しく彼の唇をむさぼり、いつもより甘ったるい喘ぎ声を出し、いつもより淫らな姿態になる。 「今日の君は素敵だよ」 彼の熱いささやきが追い打ちをかける。 彼は私を楽しんでいる。 嫉妬に駆られて身悶える私を。 彼は知っているのだろうか。 私が知っていることを? さっきの電話も? あるいは、あの電話も彼が仕組んだことなのだろうか? あの戸惑うような女の沈黙もそれで説明がつく…。 彼の滑らかで容赦のない愛撫が私を責め立て、思考をさえぎる。 もしそうだとしたら、私はまんまと彼の罠にはまったのだ。 私をもてあそんで楽しんでいる彼…。 悪魔のような男…。 でも、わたしは…、×××…。 ああ…、××××…。

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